真に守り抜く 作:しんぴのまもり
ミゲルとオリ主の術式がかなり被りましたが続行します。
5月16日 僕は今日も呪術師として任務に勤しんでいた。
「「「ダンご゛……だンゴ……」」」
「遅い」
呪力による身体強化によって相対的に鈍く見える攻撃を受け流し、返しの刃で3匹まとめて一気に切り伏せる。
「「「ダンッ……」」」
「これで終わりっと」
「お疲れ様マスター。 帰ったら買っておいたみたらし団子でも食べながらゴロゴロしようか」
「あの呪霊の後に団子勧めてこないでよ」
今回の任務ではカビた団子のような見た目をした呪霊が三位一体の連携で襲ってきたが、個々の戦闘能力が低い為然程苦戦せずに倒すことに成功した。
5月に入ってから4月の時のように階級以上の力を求められる任務はめっきり来なくなり、怪我を治す為に師匠の所へ行く事が少なくなった。 その上術式の都合上スマホの充電はできる限り満タンにしておく必要があるので、僕は至急伝えたいことがない限り用事は直接会って済ませている。 それにより僕は近いうちに話し合う相手のはずなのにも関わらず、未だ九十九術師と会う日も九十九術師の外見すらも知らなかった。 一応、師匠はOKと送ってくれたのでいつかは会えると思うんだが……
その事を考えると少しだけ不安になるが、ネガティブ思考を続けても良い事はないと思い直し、考えても仕方ない、余りにも期間が開けばそれこそ直接会いに行く理由になると自分に言い聞かせる。
バスを降り、てくてくと京都校に向かい、扉を開けて皆に無事戻ってきた事を報せる。
「ただいまー、皆聞いてよ、今日祓った呪霊がさ……」
「で、君達はどんな女が
「…………………」
「話すつもりはなイ」
どうやら僕は戻るタイミングを完全に間違えたらしく、視界には明らかに困り果てている加茂先輩とメカ丸に女性が既視感のある質問をふっかけていた。
「……………………しまったかも」
「! やあ、君が二宮君だね?」
僕がこの
おそらくは東堂先輩が事あるごとに話していた師匠はこの人なんだろうが、何故今こんな所にいるのだろうか。
「……初めまして、東堂先輩に何か御用ですか?」
「いや、葵は今日は関係ないよ。 というか、用があるのは君の方だろう?」
「じゃあなんで俺たちに用がないのにあんな質問をしてきたんダ……。 まあ良イ、で、本当に二宮がこいつを呼んだのカ?」
「いや…? 確かにいつか東堂先輩の師匠には会ってみたいとは思ってたけど……」
そう正直に答えた僕に女性は一瞬だけキョトンとした顔を浮かべた後、ニヤリと笑ってこう言った。
「違う違う、意外と鈍いね。 じゃあ……
特級術師 九十九由基と言えば分かるかな?」
「…………成程。 加茂先輩、メカ丸、席を外して欲しいんだけど、良い?」
通りで呪力の圧が桁違いなわけだと思いつつ、僕は2人に退席を頼んだ。 …まあ、メカ丸は兎も角、加茂先輩は別に居てもらっても構わない話だけども。
◇◇◇◇◇◇
2人は外に出ていって、茶菓子も十分用意した。 いよいよ九十九術師との交渉が始まる。
「玉枝の頼みとはいえ私もそこまで暇というわけじゃないからね。 用件は簡潔に手短に話してくれるとありがたい。
それはそれとしてどんな女がタイプなのか聞いても「では単刀直入に言いますね」
「あなたは天与呪縛の解き方を知っていますか?」
僕は九十九術師が余計な事を言い出す前に機先を制して要求を簡潔に伝えた。 こちらとしても別に長引かせたいわけじゃない。
「ちぇ、最近の子はノリが悪いな。 まあ良いや。 …………天与呪縛の解呪方法か、教える前に幾つか質問をしても良いかい?」
構いませんと言うと、最初に飛んできた問いは
「まず、何でそれを君の師匠ではなく私に相談しにきたんだい? 呪術への理解度なら君の師匠だって私と遜色ないぐらいにはあるだろう」
というものだった。
「結界術や式神術はもちろん、呪力、術式など一口に呪術と言っても色々あります。 その中で天与呪縛は魂が密接に関わる分野と教わりました」
「そしてあなたも知っているとは思いますが、師匠の専門分野は術式の方に偏っています。 そしてあなたは呪霊を無くす為に動く中で、魂について深い見識を得たと聞きました。 故に魂についての相談に最適な人物は誰かと考えた結果、貴方を呼ぶことを真っ先に思いつきました」
別に隠すことでも無いと、僕は質問に対し考えていたことをただ淡々と答える。
「成程、どうやら何も考えずに交渉しようとした訳では無いらしいね。
二つ目。 私も研究者だ、苦労して手に入れた研究の成果を只で渡す事はできない。 そして君は私の研究結果と引き換えに差し出せる様な何かはあるのかい?」
これも事前に必ず聞かれるだろうと予想していた質問だ。 師匠もそうだが、世間に出していない研究の成果を躊躇いもせず見せる学者は殆どいない。
「確かに僕自身はまだ16歳の若輩なので、貴方の研究の成果に釣り合うようなものは持っていません。
ですが、貴方の最終目標の呪霊の完全消滅、それに僕の術式────初音ミクはきっと役に立つと思います」
「……詳しく説明して貰おうか」
「僕の式神が最初から持っている能力として、僕に術式が発現した日までの知識が詰まっています。 勿論なんだろうと知れるような万能なものではなく、得られるのは
「……! それってもしかして…」
「知りたくありませんか、今はとうに紛失している、過去の呪術の常識などを。 きっと御三家の資料よりもよっぽど貴重な情報があると思います」
「……良いだろう。 対価としては十分だ。
最後だ、これを教えてくれたら私の持っている天与呪縛の情報の全てをあげよう」
その言葉を聞き、僕は正直まだあるのか、と思ってしまった。 なぜなら、話し合う時に間違いなく聞かれるだろうと思って事前に考えて置いた先の2つと違い、ここから出てくる質問への返答は全く考えておらず今この場で考えるしかないからだ。 その為、内容によっては納得されられるような答えを返せないかもしれない。 そんな緊張を抱えた僕にしてきた問いは、
「そもそも君は何故天与呪縛の解き方を知りたいんだ? もしかしてさっきのロボットの子の為かい?」
というものだった。
そうですけど何か?
「正確に言うなら真依さんもですけどね。 自分に良くしてくれた人達に目に見える形で何かを返したいというのはそんなにおかしいですか?」
「おかしくは無いね、けれどもここは呪術界だ。何かを叶えるためには何かを危険に晒す必要がある。 私が考えている解き方だって決してノーリスクという訳では無い。 そして自分の為にではなく他の人の為に動いた結果、自分が被害を受けることになった時、君はその良くしてくれた友達を恨まない自信はあるかい?」
「……確かに師匠も言っていましたよ。 呪術師として生きるのなら、行動の理由は常に自分のためであれ、と。 だから僕は自分の行動をこう解釈することで、折り合いをつけます。 今していることは、
少し無理があるし、これを師匠が聞いたら呆れ果ててものも言えないような杜撰な結論だが、これが僕の今考えている答えだ。 これで納得してくれないなら他を当たるしかない。
「…まあ、君が躊躇い無くそう言えるのならそれで良いんだ。 元々この質問は大先輩からのお節介のようなものだしね、はいこれ」
「何ですか? これ」
「私のメアドだよ。 これに後で私の持っている天与呪縛の情報を要約して送るから、君も式神に私の送ってくる質問にじゃんじゃん答えてくれ」
「じゃ私は用事も済んだし帰るよ。 葵によろしくね」
僕が礼を言う暇もなく九十九術師はそう手短に伝えると颯爽とバイクに乗って何処かへと去って行ってしまった。
……とりあえず今は、メカ丸や真依さんの悩みが解決しそうなことを喜ぶということにしよう。
「……あ、好み聞き忘れた」