真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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真守と拳銃①

 ────二宮と初めて会った時、私は一瞬硬直してしまった。 

なぜなら、その緊張したような顔が、余りにも思い出したくも無いあいつらに酷似していたからだ。 その余りのそっくりさに大嫌いなあいつのいる東京校の方へと転入することすら考えた。 その考えは歌姫先生の苗字の紹介によって安堵と入れ替わるように消えたが、今思えばあれは先生の気遣いだったのだろう。

 

あれはその時から三週間ほど経った頃だろうか。 二宮の人となりも分かってきて、特に気兼ねなく話すことができるようになったその頃、私は二宮の出自を知ってしまった。 色々なことが脳裏を駆け巡ったが、まだその時は目標や家出の理由、そして何より二宮の性格を知っていたお陰で動揺を抑えられた。 大丈夫だ、あいつは、二宮はそんな奴では無い。  そう言い聞かせていた時に霞から伝えられたのは、二宮が複数の思考回路を持っていることだ。 

───二宮は、禪院家(あいつら)の思考をする時がある。 その事実だけで私は今までと同じように接する事は不可能だと確信した。 だがあいつはそんな事はお構い無しに話しかけてくる。 流石にずっと友好的に話しかけてくるような奴を邪険にし続けるのも抵抗があるが、それを踏まえても尚私は二宮に目を合わすことすらままならない。 なぜなら私の中にはある一つの最悪の可能性が頭をよぎり続けているからだ。

 

二宮の最もしたい事 それは────

 

◇◇◇◇◇◇

 

6月3日 ジメジメとした梅雨に入り、やや気分が下がりつつも僕は任務の集合場所に向かっていた。 

九十九術師との接触で得た物は非常に多く、知った事を応用すれば天与呪縛を解くことは不可能ではないと僕は確信した。 だが、それを行うには僕の能力がまだ足りていない。 よって僕がやる事は今までと変わらず、呪術師としての腕を磨く事に終始した。 やはり黒閃でも出さない限り、僕は一度ここで停滞することになってしまいそうだ。 そんな事を考えている内に、目的地と、そこで待つ2人が見えてくる。

 

「すみません、遅れましたか?」

 

「いえいえ、まだ全然大丈夫っスよー」

 

一時間ぐらい早く出たのにも関わらず、今日も道に迷って時間ギリギリの到着になってしまったが、補助監督の新田さんはありがたいことに快く許してくれた。

 

「………………」

 

一方真依さんはなぜか目を合わせようとしない。 誕生日パーティーの時は仏頂面ではあったものの丁寧に祝ってくれていたが、それ以来僕は真依さんに意図的に避けられているのだ。 これに関しては本当に心当たりがないので、他の皆に聞いてみたりもしているが、手掛かりすら見つからない。

 

「あー、何かあったのかは知らないっスけど、お二人とも、ひとまず今回の任務の説明をしてもいいっスか?」

 

「あ、はい。 お願いします」

「えぇ、良いわよ」

 

「今日の任務は大量の低級呪霊の跋除っス。 以前この屋敷で自殺した人が出た事で事故物件となり、その後噂が噂を呼んで新しく住む人も居なくなり現在の伏魔殿じみた場所に至ったようっス。 このままだと遠からぬ内に今いる呪霊がどんどんと力を増し、全部高位の呪霊に成りかねないので今の内に一匹残らず祓うように、とのことっス」

 

ふむ、まあ割りかし良くあるタイプの任務だな。 僕にとっては呪物の回収だの何だのよりは単純でやりやすい部類だ。 ただ一つ気になるのは……

 

「質問、良いですか? 今の内容だと別に僕がいなくても問題ないような任務だと思うんですけど、そんなに今任務が少ない状況なんですか?」

 

「あれ、聞いていないっスか? 今回の任務は真依さんの昇級任務でもあるんスよ。 なので二宮君は真依さんが本当に危ない時を除いて手を出さずに、真依さんが三級術師の実力を持っているのかを確かめて結果を私に伝えて欲しいっス」

 

成程、つまり今回必要なのは真依さんの実力を見分ける観察眼か。 となるとミクには……。

 

「では説明も終わりましたので帳を下ろすっス。 くれぐれも無理はしないように!

────闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え」

 

新田さんの詠唱と共に黒い帳が降り、中には僕と真依さん、そして数多の呪いが残る。

 

「……じゃあ、とりあえず中に入ろうか」

 

「……ええ、そうね」

 

お互い言いにくいが言いたいことがあるという感じのギクシャクとした雰囲気を保ちつつも、僕らは呪術師として呪霊を祓いに不気味な館へと潜り込んで行った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「中は思ったよりは綺麗だね」

ミクの言う通り、何ヶ月も手入れを誰もしていない割には鼠1ついなかった。 おそらくは呪霊が全部食い尽くしたのだろう。

 

「新田さんから見取り図はもらっているから、これを参考にして進んでいこうか……ん?」

 

「どうかしたの? マスター」

 

「いや、この間取り……なんか……」

 

「?」

 

 

 

 

 

「あ゛…りガたぃ」

「ヅまんね゛ーヨ」

「……ハヤく!はヤク!」

「窓ネェゾオ!Ⅰ?!」

 

「っ!?」

 

ミクと真依さんにその違和感を伝えようとしたその時、突如として図書室の扉が破られ、四級と思われる複数の呪霊がこちらに向かって踊りかかってくる。

 

「……続きは後の方が良さそうだな」

 

「そう、ね!」

真依さんは素早く拳銃を取り出し、低級呪霊を次々と撃ち落としていく。 三級呪霊はどんなに強くとも基本的に銃があれば問題なく倒せるので、一対一なら真依さんの敵では無い。 問題は今回のように敵が大量にいる時の場合だが……。

 

「っ! ちいっ!」

懸念は現実となり、リボルバーに入っていた六発の弾丸があっという間に切れ、呪霊もここぞとばかりに襲ってくる。 

ここが三級術師に真依さんが相応しいかどうかの分水嶺になるだろう。 一応もしもの時に備え、二宮丸を取り出しつつも僕はもう暫く様子見に徹する。

 

「こ、の! 舐めんじゃ無いわよ!」

真依さんはワイルドにも拳銃を鈍器として利用して服を引っ張ってきた蠅頭を祓う。 そして拳銃をやたらめったらに振り回し、ある程度呪霊と距離を取ったのを確認すると目にも止まらぬ速さでリロードを済ませ残った呪霊を一発で撃ち抜く。

……思ったより強いな真依さん。 

銃などの遠距離用の武器は自分から完全に離れた状態の物体に呪力を篭らせ続ける必要があり、刀よりも呪力を込める難易度が高い。 それをメインウェポンにしているだけあって真依さんの呪力操作は僕の予想以上に洗練されていた。 

 

「凄いね真依さん。 これなら三級術師には問題なくなれるよ」

 

「二級のあんたに言われても嫌味にしか聞こえないわよ。 ……後もう一つ、いいかしら」

 

最低限の会話しかしようとしない向こうからの提言に驚きつつも先を促すと、真依さんは僕の常識ではまずしないことを提案してきた。

 

「できるのなら昇級審査は不合格にしておいてくれるかしら?」

 

「……え?」

 

 




二宮の内面の深掘りは一旦この章で終わります。
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