真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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真守と拳銃③

突如として言い放たれたその宣言は、いつも飄々とした表情を崩していなかった真依さんの真剣な表情と相まって十分に僕の歩みを止めるだけの重みを持っていた。

 

「……本当? 一応言っておくけど、それは今僕の中で最も重要なことの一つだ。 もし適当に言っているのなら真依さんでも…」

とほぼないと思いつつも牽制を掛ける。 他の皆と違って(東堂先輩は除く)、今の真依さんは何を考えているのかが少しわかりづらいのだ。

 

「ええ、私なりにしっかりと考えたつもりよ」

毅然とした顔で真依さんは迷いなく答える。 

その顔を見て、僕はやっと真依さんの本気を感じとれた。

 

「なら是非とも教えて欲しいな。 正直言って僕だけだと少し手詰まりになりかけていたんだ」

くるりと振り返って意見を求める。こればかりはミクに頼っても上手く行かない。 心の中を読み取るのは、例え長年連れ添った相棒でもままならなかったのだ。 だからこそ真依さんが答えかそれに連なる手掛かりをくれるのなら僕は1にも2にもなくそれを知りたかった。

 

「まず、貴方には禪院家としての人格がある。 そう霞から聞いたけれども、あっているわよね?」

 

「……否定はしないけど、それは戦う時にしか表に出ないし、そもそも今のこの話とは関係ないよね?」

 

「私が言いたいのは、禪院の人格があるのなら、

 

…貴方には()()()()()も少なからず入っているはずということよ」

 

 

 

…? 話がよく見えてこないな。 確かに真依さんの言っていることは合っているが、ただそれだけだ。 僕の知りたい事との関連性が全く読み取れない。

そう思い首を傾げていると、言いたいことが伝わっていないと分かった真依さんはやや苛立ったような様子を見せつつもさらに詳しく話す。

 

「…話は早くとも察するのは遅いようね。 つまり、貴方の成し遂げたい目標は、普段の人格ではなく、禪院家の人格が志した目標なんじゃないの、ってことよ。」

 

そんな事を言われても、僕は人と話した事自体そこまで多くないし、そもそも言葉の裏を見抜くというのはのは相当のコミュ強か仲が良い人同士じゃ無いと困難だと思うけど…

まあ今それは重要じゃ無いか。

 

「…仮にそれが合っていたとして、禪院家の人格が志す目標は一体何なんだろう」

 

「……それは具体的にはまだ分からないけれど…禪院家の考えを正し、貴方の家族とまた一切の蟠りなく過ごすことのできる日を作る…とかかしらね?」

 

真依さんも流石にそこまでは考えていなかったようだった。だがさっき真依さんに言ったようにこんなただの推測でも僕にとっては新しい意見な以上とても有難いものだ。 故に、頭ごなしに否定せずに、ぱっと見突飛にも思える説にもしっかりと思案を巡らせる。

 

……その結果、確かに真依さんの言うことは結構的を得ているかもしれないと僕は結論付けた。 なぜなら自分が家出を決意したのは禪院家にいた時だから、当然師匠には出会いすらしていないし、その頃はまだミクの言っていることが正しいのかどうかも分かっていなかった。 ならば確かにその頃の行動指針は必然的にそれまでの常識…禪院家の思想を元にしたものになるかもしれない。 その頃の僕が優先順位として父親を第一に考えていたとすれば、真依さんの例にもピタリと当てはまる。

だが、真依さんには確かそこまで僕の過去を詳しくは話していなかったし、真依さんもそれを元にしたような口ぶりではなかったはず。だから僕はそれの真偽の前に

「…確かに僕の今までを考えると一考の余地はあると思えたけれど、真依さんは僕の何を見てその結論に至ったの?」

と聞かざるを得ない。

 

「……大体は霞から貴方が禪院家の部分を持っていると知ったことからの直感的な決めつけに論理を肉付けしていって出した結論よ。 後一番私が違和感を持ったのは……貴方が一度も禪院家のことを悪し様に言おうとしなかったことかしらね。 一緒に暮らすことができないほど大切な相手が自分と考え方が違うと分かり、決別した時、大体は自分を正しく思いたい為に対象を必要以上に貶めるものなのよ。 なのに貴方はその素振りすらも見せなかったから、貴方はまだ禪院家と決別しきってないんじゃないかと思ったって訳よ」

 

誰かを思い出したかのような苦虫を噛み潰した表情をしながら真依さんは答える。

 

「…余計な注釈が入ったかしらね。 で、どうなの? 私の予想は当たっているかしら?

 知ってはいると思うけれど、私は貴方と違って禪院家もそこにいる奴らも大っ嫌いよ。 貴方が禪院家の為に動くと言うのなら、幾ら貴方自身が善人だとしても今後の貴方との接し方は大きく変わることになるわ」

 

若干緊張が孕んだそれは最後通牒のようだった。 ここで答えを誤れば、間違いなく真依さんとの友情は失われると、そう直感的に悟った。

故に、一度目を閉じて深く考える。 真依さんの予想を聞いたその上で、自分は何を優先させるのかを。

 

禪院家で父さんに呪術について教えてもらった思い出、師匠と一緒に鍛錬をして共に強くなっていった思い出、ミクとカラオケの採点で初めて90点台を出せた思い出、そして京都校の皆との最高の誕生日パーティーやカラオケの思い出。

その他にも沢山の思い出が浮かんでは消えていった。 その過程で、自分が禪院家の価値観を否定しているのにも関わらず、未だ禪院家を捨てられてはいないこともよく分かった。 そして、それでも自分が今の京都校の皆と過ごすこの環境を絶対に手放したく無いと思っていることも。 

思考時間が分に入り始めたあたりで、漸く結論ができ始める。 それを真依さんに伝える為、僕は目を開け、真依さんを真正面からしっかりと見つめて答えようとした。 しかし……

 

 

 

真依さんは、視界のどこにも映らなかった。

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