真に守り抜く   作:しんぴのまもり

15 / 46
UA10000突破感謝します。


真守と師匠

6月20日、僕は久方ぶりに師匠の家に戻っていた。

 

「真守ー! 久しぶりだな!」

敬語も抜きに抱きついてくる師匠を受け止めつつも

 

「だいたい3ヶ月ぶりだね師匠。 前よりもさらに呪力が洗練されているけど何かあったの?」

と明らかに年齢に見合わない成長速度を見せていることを尋ねてみる。

 

「お、やっぱり分かっちゃうか? 実はまた私は呪術史に名を残すレベルの発明をしたんだ。 まだ試運転の段階だがいずれ真守にも見せてあげよう」

と答える。

 

師匠は特級術師としての力を持ち合わせていると同時に、僕の知っているどの術師よりも呪術について研究している博士としての側面を持ち合わせている。 以前何故そんなことをしてるのかと聞くと、単純な訓練だけじゃいつか限界が来るからと答えていたが、今でも五条悟以外には負けそうにもないのにこれ以上強くなる必要があるのかと僕は常々思っている。 

 

まあそれは置いておくとして、今回は突然呼ばれてきた訳だが何があったのだろうか。 師匠はフレンドリーに見えてその実ただの娯楽目的で何かをする事は殆どないストイックなタイプだ。 用もなしに呼んだだけとは考えられない。

それを言葉にして伝えると、

 

「あ、そうだったそうだった。 今日はこの事を伝えに来たんだった。 ……真守、これは私の憶測だが、これからはまた級に見合わない任務が来ると思う」 

 

「…え? この前師匠、上層部にそれをしないよう脅しつけたって言ってたよね。 何があった?」

 

「この前の家形の特級呪物だ。 あれのせいで上層部との縛りに抜け道が生じた。 実際の呪霊の級を確認せずに向かわせるだけなら、お前に手を出したのではなくただの確認不足だと言い張れるようになってしまった。 ……ごめんな、もっと縛りの内容を明確にしておくべきだったな」

 

「…いや、上層部も言葉巧みに何とか逃れようと必死だったろうし仕方ないよ。 つまり師匠が言いたいのは……

 

ここらで一度、実戦的な修行をつけるという事だよね!」

 

「そういう事だ! いつもの訓練所へ行こうか真守」

師匠はにやりと笑ってそう言った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

そうして僕達が向かったのは、とある山の中腹の洞窟、その中にある半径200Mの円型の広場で、接近戦にはちょうどいい塩梅の訓練所だった。

 

「ルール確認をするぞ真守。 私は呪力操作のみで戦う。 真守は自分の持てる力を全て使って私に挑む。 そして気絶するか降参するまで続ける。

これで良いかい?」

 

「良いよ師匠。 始めよう」

 

そう言うやいなや真守は術式を発動し、全力で踏み込み二宮丸を玉枝の首へ振り抜く。 相手が師匠な以上手加減や容赦は全く不要だった。

更に以前呪詛師と戦った時に呪術師には人と戦う手段も持っていると良いと理解した真守は対人の時限定で使う曲を用意している。 その曲は長い間聴いている真守ならともかく、普通の呪術師だとまず集中力が途切れるような酷く神経を逆撫でする音源だ。

 

「っと、」

 

そんな不意打ち同然の攻撃をやはり玉枝は余裕を持って躱わし、不協和音などまるで聴こえていないかのようにカウンターを鼻歌でも歌うような気軽さで鳩尾に突き込んでくる。 対する真守は玉枝が避ける動作を見せた瞬間刀に呪力を込めるのを放棄し、全力で呪力を鳩尾に注ぎ込む。 それでも尚残る吐き気と痛みに耐えつつ簡易領域を展開し、抜刀の構えを取る。

だがその試みは刀を再び振り抜く前に力尽くで腕を抑えられることで阻止される。 そんな結果は百も承知な真守は抑えられる数瞬前からすでに膝蹴りを放っていた。 当然玉枝もまともに喰らう訳はなく、その攻撃も恐ろしいまでの呪力が籠った左手によって堰き止められた。 

だがこれにより玉枝の両腕が塞がり、また刀を止めた方の手を真守はガッチリと掴む。

 

(よし、思い通りだ! 

僕のアドバンテージは師匠の戦い方をとてもよく知っていること、 それは師匠とて同じだろうけど、ありとあらゆる相手と20年以上戦い続けた師匠と数ヶ月前までずっと師匠と戦っていた僕とじゃ密度が違う。 覚えている癖の量が段違いだ。 師匠は戦えば戦うほどボルテージが上がるタイプだから、序盤に大ダメージを与えるしか勝ち目はない。 だから僕はここまで一回の防御の時以外呪力を殆ど込めていないし、術式のために使う音源も呪力の増加を重要視しない音楽を選んだ。 全てはこのたった一回の攻撃に全ての呪力を賭ける為に!)

 

(やっぱりマスターの狙いはそれだよね。 なら私もできる事をやらなくちゃね!)

 

そう決意を固め、真守は玉枝の額に渾身の頭突きを放つ。 無論玉枝と真守の呪力出力の違いを鑑みれば砕けるのは真守の頭だが、そのリスクを飲み込んだ上で真守は頭突きを選択した。 この限りなく集中力を得ている今の状態を利用し、黒閃を放つ為に。 今ここで勝つ為だけではなく、今よりも更に強くなる為に、呪力操作を全てミクに委ねて全力でヘッドバンキングを打ち込む。 

 

「合わせろ! ミク!!」 「任せてよ!」

 

 

 

「……やるじゃあないか、真守」

だが、その程度で出し抜かれるようなら、二宮玉枝は特級術師になるまでに20回は死んでいる。

呪力量、出力、操作性、体術、精神力、咄嗟の機転、頭脳、運、その他様々なステータスが高水準でまとまっているからこそ、二宮玉枝は特級術師になれたのだ。

そして今回も、玉枝は一瞬にて脳を回し最善の策を弾き出す。

真守の額が完全に加速し切る直前に冷静に自らも呪力を込めた額を前に突き出す。 ただそれだけでクリーンヒットすれば間違いなく黒閃に至れたであろう頭突きは、ただ額同士をぶつけた痛み分けに成り下がる。 

そしてお互いに火花が散るほどの衝撃が脳に行き渡るが、脳震盪で倒れるのは真守ただ1人だった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「…る! 真守!」

 

「……う…ぐ…」

頭がすっごくクラクラする。 僕は確か師匠に自爆覚悟で黒閃を狙いに…

 

「お、起きたか真守。 脳震盪って反転術式でも治りにくいんだな」

 

「師匠…てことは、自分は黒閃を出せなかったんだね」

 

「まあ黒閃になるはずの攻撃を無理矢理キャンセルしたからな、それと呪力操作を式神とはいえ他人に任せるのは少し感心しない。 だが、さっきの頭突き。 あれ自体はなかなかに良かったぞ。 今の自分だけじゃなく少し先の強くなった自分を想定したあの攻撃には花丸をあげよう」

クックと見た目だけは愛らしく笑いながら師匠は断言する。

 

だがそれでも、師匠に手も足も出なかったことには変わりない。

「そう…なんだ… 師匠くらい強くなるにはあとどんだけ鍛えれば良いのかなあ…」

 

「流石にそれを気に病む必要はないだろう、年季から何まで私と今のお前では桁違いなんだから。 多分お前の呪力出力と術式なら黒閃を出すか反転を習得するかすれば一級ぐらいすぐなれると思っているぞ。 そうすればお前は同い年の頃の私よりも強くなったことになるんだから、そんなに焦る事はないさ」

 

「そうそう、それに一年生の時点で二級術師は十分天才だよ」

 

師匠とミクがそう慰めてくるが、僕としては皆をいざという時守れるように出来うる限り早く強くなりたいのだ。 次の任務で特級呪霊が出てきたらそれこそ一巻の終わりなのだから。

 

それが表情に出ていたのか、更に師匠は言葉を放つ。

 

「なら、後数ヶ月待てば良い。 そうすれば必ず黒閃を出させてやるから、お前はそれまでに黒閃を放てるよう努力すれば良い。 いつ強くなれるか分からないからお前はそんなナイーブになっているんだ、違うか?」

 

「………」

 

「…まだ足らないか。 なら更にアドバイスをやろう。 私は術式と向き合う事が成長に最も役立った。 真守、お前のその術式、その効果、()()()()()()()()()()()()()()()

 

…ふむ。 どう言うことかは分からないけど、師匠がわざわざそういうという事は、その方面の拡張術式を創れば僕は更に強くなるという事なのだろう。

 

「ありがとう師匠、そのアドバイス心にしっかりと留めておくよ。 じゃ、僕そろそろ京都校に戻るね。 師匠の研究はまた今度見させてもらうよ」

「ありがとうね玉枝ちゃん、あんまり無理はしないでね」

 

「なんのなんの。 師匠としてこれくらいは当然のことよ」

 

そんな会話を終え、僕は荷造りをして再び京都校へと向かった。

外に出た後ふと振り返ると、すでに師匠は鍛錬を始めたようで、傍目にもわかるくらいの呪力が師匠の家から溢れ出ていた。

……本当に、なんであそこまで強さを求め続けているんだろうかな?

 

 




二宮真守:このままだと先の展開的に強さが足りなくなりそうだったのでテコ入れされたこの小説の主人公。
    今の強さは大体狗巻よりもちょい上ぐらい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。