真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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真守と付喪①

7月17日、僕と西宮先輩は廃病院の任務へと向かっていた。

 

「西宮先輩、今更だけど箒に乗せてもらって良かったの? 僕結構筋肉ついてるから見た目よりも重いと思うんだけど」

 

「良いの、こうしないと二宮君遅刻しちゃうでしょ。 せっかく人が近寄らない場所が任務地なんだから、術式を有効活用しないと」

 

「凄く助かるよ、今度パフェでもご馳走するね」

 

そんな会話をしながら思った以上に力強い箒に乗って目的地へと辿り着く。

 

「ん?………あ!」

 

「え、ちょっと!?」

 

そこにいた補助監督は、僕にとってとても馴染みの深い人だった。

その人と会うのは余りにも久々だった為、箒が降下する前に思わず自分から飛び降り手を振って声をかけに行ってしまった。 

 

 

「久しぶりだね、()()()()!」

 

「……こちらこそお久しぶりです、二宮様」

 

「ねぇ、バランスが崩れるからいきなり箒から飛び降りないで……本当に誰? 知り合いなの?」

 

「あ、ごめん西宮先輩。 こちらはさっきも言ったけど黒井さん。 僕がまともに家事もできないくらい小さい時、師匠が長期任務に行く時に毎回来て保育士みたいな事をしてくれた人だよ」

 

急いで降りて来た西宮先輩の困惑したような声を聞いて流石に僕も我に返り、軽い謝罪と説明をこなす。

 

「ふーん……え、てことはこの人少なくともアラサーなの!?  若っか! 私とそんな変わらないように見えるんだけど!」

 

「あはは…そう言ってくれるのは嬉しいですけど、今年で42歳になるんですから、私なんてもうおばさんですよ」

 

「4……2?」

まあ、黒井さんと会ったら誰でもその感想になるよね。

 

そこからしばらく完全に打ち解けた西宮先輩がどんなメイクをしているのか聞き出す時間が続いたが、流石に任務の前だという事を思い出したのか

 

「それで、今回はどんな任務なの?」

と質問してくれた。

 

「はい、今回の任務は大きく分けて2つ、推定この廃病院の中にいる呪霊の跋除及び昨日この中に入る所が目撃されて以来行方不明の女子高校生の捜索です」

 

成程、一般人が居る任務は初めてだが、こういう時は生きている前提で行動すべきなのかな。

まあ兎も角これを聞かなきゃはじまらないだろう。

 

「その女子高生の特徴って何かある?」

 

「はい、目撃者曰く、ストレートロングの髪型で、薙刀のようなものを担いでいたようです」

薙刀……? 部活動か何かかな。 まあ身体能力が高いなら、呪霊の位によっては生きているかも知れないし、プラスに考えておこう。

こっちには索敵が得意な西宮先輩もいるし、まずはその子を安全な場所まで運んでから…いや、西宮先輩の索敵能力は屋外でこそのものか。

 

「……ん? そう言えば、室内戦なのになんで西宮先輩も任務に指名されたの?」

 

「それが…指令書には何も書いてないんですよね。 ただこの二人をこの任務に指名する。とだけ」

 

…………なんかきな臭いな。 はっきりと僕を害そうとする事はできないとは言え、警戒だけはしておこう。

 

「それでは帳を下ろさせていただきます。 危なくなったらすぐに逃げてきてください。

─────闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「なーんか、静かすぎるわよね」

 

そんな事を西宮先輩は呟く。 確かに先輩の言う通り、行方不明者が出るような建物にしてはあまりにも呪いの気配がしなかった。 範を使えばまた違う印象を受けるのかも知れないが、今の僕は縛りの効果により使えないので呪力探知に勤しむしかない。

そんな風に何処か不気味な感触を漂わせつつも僕達は奥へ奥へと歩を進める。 その途中にはメスなどの元が歴とした建物だと分かるような機材が幾つかあったが、そのどれにも残穢は付いていなかった。

 

「ふーむ……これもしかして女子高生はただ迷子になっただけなんじゃないか?」

そんなあり得ない事を口走るぐらいには、呪霊の気配は少なかった。

 

「んー…… !……そう言うわけでもないみたいよ」

そう言った西宮先輩の視線の先には、ボロボロの姿で薙刀を杖代わりに歩んでくる女性の姿があった。

 

「ハァ……ハァ……

! お前達…肝試しか何か知らないが……ここは辞めた方が良い。 ここは本当に化け物が出…るぞ。 私…が、幾ら切り刻んでもちっとも堪えた様子が……無かったんだ、あいつは……人が勝てる存在じゃあ………ない」

 

「安心して、私達はその化け物を倒すエキスパートよ。 ……よく、よく1人でここまで生き残ったわね。 後は私たちに任せなさい」

と言って西宮先輩が優しく抱きしめる。 それにより緊張の糸が切れたのか、薙刀の女性はバタリと意識を失ってしまった。

 

……………………………

 

「西宮先輩、その子を帳から連れ出して病院に送ってあげて。 ここの呪霊は僕が倒しておくから」

 

「え? そりゃあこの子を安全な場所へと連れ出すのは当然だけど、わざわざ私が病院まで行く必要ある? 黒井さんがタクシーで連れて行けば良いと思うんだけど」

 

「……いや、その子は見た目以上に重症だし、何より呪いに当てられているんだよ。 西宮先輩の箒で一刻も早く病院に送り届けた方が良い」

「それに非術師が薙刀で斬り刻めるような呪霊とかたかが知れているし、僕だけで十分祓えるよ」

 

「ふぅん……? まあ確かに万が一の場合を無くすのに越した事はないわね。 分かったわ、しっかり私がこの子の命を助けて見せようじゃないの」

 

そう言って西宮先輩は薙刀の女性を連れて建物から飛び出ていった。

 

 

「……よし、じゃあ行くぞ、ミク」

 

「ハァ…… 後で西宮ちゃんに怒られても知らないからね」

 

「もし生き残ったのなら、その後で幾らでも怒られればいい。 まあそれも僕の予測が外れていれば全てただの杞憂なんだけど……」

 

そう言って僕は範を発動させる。

そしてこの建物にいる呪霊の詳細が分かったことで、僕の推測が残念な事に的中していたことを嫌でも理解した。

 

最初の違和感はここに至るまでに残穢が全く無かったこと。 これはここにいる呪霊が少なく、殆どこの階層には来ていない事を表している。

ならば何故、薙刀の彼女は一晩あったと言うのに、ここまでこれていない?

だがこれは彼女が生きているという仮定を捨てるか、いっそ西宮先輩に冗談混じりに呟いた呪霊がそもそもいないというトンデモ説を唱えれば簡単に解決できる程度の違和感だった。

 

もう一つの違和感は、先程の彼女との対面の時。 彼女が生きていただけでも最初の違和感にますます拍車が掛かり僕を困惑させたが、何よりも僕が動揺したのは、あそこまでボロボロだったのにも関わらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()ことだ。

西宮先輩はありがたいことに気づいていなかったが、同じく刃物を武器として扱う僕には分かった。

彼女は呪術師でこそないが、間違いなく強者側の人間だ。

おまけにその推測の根拠として、彼女の薙刀のネームプレートには、聞き覚えのあるとある名字が記されていた。 

 

つまりこの先にいるのは……呪力が使えない事を差し引いても、強者である彼女があそこまで死にかけるレベルの呪霊だ。

 

……正直僕も先輩と一緒に帳を抜けて逃げたかったが、僕らの次に特級呪霊相手に送り込まれるのは、一級術師の東堂先輩かもしれない。

というかむしろ上層部なら嫌がらせ込みで詳細を隠して飛び込ませる可能性の方が高いまである。

東堂先輩がどの位強いのか分からない以上、ここでこの先にいる奴をなんとかするのが僕にとってのベストだ。

 

意を決して階段を登り、ドアを開ける。

途端、一気におどろおどろしいまでの呪力の圧が襲いかかる。 

範によって分かっていたことではあるが、やはり結界術で間接的に知るのと実際に呪力の圧を受けてみるとでは大違いだな。 

 

 

「行くぞ、ミク。 最低でもこいつを数時間後帰ってきた西宮先輩が祓えるレベルまで弱体化させる」

 

「……分かった。 毒を食らわば皿まで、マスターの式神としてとことん付き合わせてもらうよ」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「……はっ!」

 

「あ、もう起きたの? えーと、大道茜ちゃんだっけ。 病院まではまだ時間があるから、もう少し寝た方が良いわよ」

 

「……いや、もう大丈夫だ。 それよりも、あの一緒にいた男はどうした?」

 

「二宮君なら1人で貴方を襲った化け物を退治しにいったわよ。 大丈夫よ、私達はとっても強いんだから」

大道茜を安心させるため、西宮桃はわざと子供に言い聞かせるような口調で断言する。

だが、大道茜の目は、他のところに向いていた。

 

「…………お前達が強いのかはそういうのの専門家ではない私には分からん。 だが、あいつのところに急いで向かった方が良い」

 

 

「あいつが私が倒れる直前、自分の死を覚悟したような顔をしていたのを見た。 うかうかしているとお前は、大切であろう友人を1人失うことになるぞ」

 

 




大道茜:一般通過大道鋼の血縁者。
廃病院に妖が出るという噂を聞き、いざとなったら斬れば良いと肝試し気分で潜入した。
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