真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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駄菓子屋のシン陰流当主は本編よりも前に二宮玉枝に殺されています。


襲来のN

……知らない天井だ。

 

確か僕は、呪霊を祓った後急に意識が遠のいていって…それでそのまま気絶したのかな?

 

じゃあ多分ここは西宮先輩が運んで来てくれて……

 

「おぉ、起きたのかい。 君、丸一日寝込んでいたんだよ」

聞き覚えがあるようなないようなそんな声が聞こえてきたのでとりあえず起き上がる。

意識ははっきりしているし呪力も黒閃のおかげかしっかりと満ちている。

左腕も繋がっているし1日たっぷり寝入った事で全快したのだろう。

 

そして顔を上げ、僕に話しかけてきたその人物を確認し……殴り掛かる。

 

「うわっと! 待て待て、待ってくれ。 今の私は君の敵じゃないよ」

 

なぜなら、そこに居たのは、数ヶ月前に交戦した呪詛師だったのだから。

 

「なんでお前がここに居る? 来い、ミク。 目覚めて早々で悪いけど戦うかもしれない」

 

そう問い詰めつつもベッドの横に置いてあったスマホと二宮丸を引っ掴み、素早く術式を起動する。

 

「だからそんな殺意を剥き出しにしないでくれって。 今の私は京都側の医者なんだから」

 

「…………はぁ?」

何を言ってるんだ? でまかせか? 

そう突然の宣言に思考を巡らせる中、扉がガラリと開く。

 

「あー、信じられない気持ちは分かるが、そいつの言うことは真実……でもないけどまるっきり嘘でもないぞ真守」

 

「師匠! ……つまりどう言うこと?」

 

「二宮特級術師、気心の知れた相手だとそんな口調になるんだね。 えーと、じゃあ順を追って話そう」

 

僕は師匠に質問したはずなのに、この呪詛師は相変わらずの減らず口で会話に割り込んだ上に、長々と聞いても居ない身の上話を始める。

 

「君達に負けて五条悟に捕縛された後、私は縛りで話せないこと以外洗いざらい吐いたことでなんとか死刑は免れたんだ」

「とは言っても私は呪詛師だ。 反転術式をしてもらえる理由なんてあるはずも無く、色々と吐くまで死なない程度の応急処置しかしてもらえなかった」 

「だから結局、君の刺し傷が化膿しちゃって生死の境を彷徨うことになっちゃったんだよ」

「で、ここで私の術式を思い出して欲しい。

何ヶ月も前のことだから、少し難しいかも知れないけどね」 

「私の術式は吹き毒呪法、その名の通り呪力を毒に変え、吹き矢にして打ち出す術式。

……はっきり言って戦闘用の術式としては弱い部類に入るけれど、毒の威力だけは本物だ」

「君たちとの戦いでは麻痺毒しか使わなかったけれど、勿論他にも色々と種類はある。

例えば……血を凝固させたり、とかね」

「ここまで言えば分かるだろう、薬は過ぎれば毒となるように、毒も正しく使えば薬となる。

こうして傷口をかさぶたで塞いだ私は、総監部からその術式の価値を認められ、縛りと見張り付きではあるものの、雇われ呪術師になれたと言うわけさ」

「そしてその術式の性質上、こうやって医者紛いの任務も振られることもあるということだ」

 

……はっきり言ってほとんど聞いていなかったが、要はこいつは術式を評価されて術師に転職したという事だろうか。

にわかには信じがたいし、そもそも一度殺し合ってる以上こいつに好感なんて持てるはずも無いが、そういうことならこいつを殺すわけにもいかない。

 

「……分かりました。 ただ、メカ丸や三輪さんの所には顔を出さないでくださいね。 殺し合った相手と話すというのは、普通ならそれなりに神経を減らすはずですから」

 

「うわ、やっぱり君口調変わりまくるねー。 ……そんな目で見ずとも、自分から恨まれてる相手に顔を出すほど物好きじゃないよ、安心してくれ」

 

……やっぱりこいつ、一度殴っておこうかな。

 

そんな考えが頭によぎるぐらいにはこいつとの会話はストレスが溜まる、今後はなるべく怪我をしないような立ち回りを心がけよう。

師匠とも話したかったが、あいつは絶対茶々を入れてくる。 仕方ないがまた今度にしよう。

そう思いつつ、一言礼を言って僕は素早く部屋から退出した。

 

 

「ハァ…… あ、西宮先輩! 元気そうで良かっ……」

 

 

「……二宮君? 怪我はもう平気なの? なら、ちょっと私とお話ししない?」

 

そこには、西宮先輩がいた。 ……ただし、怒髪天を衝くような形相をしている西宮先輩が。

……そう言えば、後で説教をするって言っていたなあ。

 

その後、数十分に渡り西宮先輩のお説教は続き、最終的にこう結んだ。

 

「……まあ、ここまで色々と言って置いてあれだけど、私が一番言いたいことは一つ、少しは相談してってことよ。

 

気づいて無いかも知れないけれど、入学したての頃の加茂君との対話の時も、最近あった真依ちゃんとの会話の時も、二宮君は自分から重要な何かを話そうとしたことが殆ど無いのよ。

何でも頼りすぎるのも呪術師としては問題だけど、一切頼ろうとしないのは人として問題よ」

 

「いや…でも、相談したら、西宮先輩は危険に躊躇なく首を突っ込むでしょ、僕はそれが嫌だよ」

 

「当然よ、それが私なりの先輩としての心得だからね。 ……まあ、本当に邪魔にしかならないのなら、別の方法でのアプローチも考えるけどね。

 

兎も角、後輩に全部背負わせるなんてありえない。 何かあったら、話せるところまでだけでも良いからまずは相談しなさい、絶ッッッ対に、何としてでも力になってあげるんだから」

 

勝気な笑顔をズイと近づかせ、そう西宮先輩は宣言してくれる。

 

その余りにも頼もしい一言には、有無を言わせない力があった。

別に友達に助けてもらうことは変なことでは無い。

そんな当たり前のことが分かっていなかったのだろうか? 僕は。

…いや、多分僕は、万一にもみんなに嫌われるのを恐れていたのだろう。

相談するというのは、少なからず相手の時間を自分の為に使わせることになるのだから。

 

「……うん、分かった」

それを超えられたこれからはきっと、今まで以上にみんなと仲良くできるはずだ。

ワクワクしてしまうな。

 

 

……しかしなんだろう。 先程から妙に顔が熱い。

こういう時は目を見て返さなきゃいけないはずなのに、西宮先輩の目を見れない。

やけに心臓がうるさい。

 

一体、どうしたというのだろうか。

 

「じゃ、ありがとう西宮先輩、また今度ね」

 

とりあえず不審に思われるわけにもいかないし一旦離れようそうしよう。

まだこれは相談すべきことと決まった訳でもなし。

そうだ、黒閃を出した今ならきっとあれもできるはずだ。

ならそれを試してみなくちゃ。

 

そんな風に心が乱れてたのが良くなかったのだろう。

余り前を見れてなかった僕は、前から来ていた人とぶつかってしまう。

 

「あ、すみませ…」

…この人は……

 

「あん? …誰かと思えば真守君やん、元気してるん?」

 

……誰だっけ? 

声の一つ一つに悪意が滲み出ているから少なくとも仲は良く無いはずだけど…全く見覚えがない。

 

「ああ、そう言えば君は俺の事を知らんのやね。 俺は禪院直哉って言うんや。 うちのおっさんらがよく口にしている、禪院家の逃亡者って君やろ?」

 

! 禪院家の術師か。

 

「……まあ、そうですね。 それがどうかしたんですか? 言っておきますけど、僕は禪院家に戻るつもりは……」

 

「いや、そういうわけやない。 別に俺は君みたいなんが戻ろうが戻るまいがどうでもええわ」

 

「ただ、少し興味があってなぁ。 禪院家から式神風情の指図で逃げた挙句、女に匿われて生きていたやつの顔はどんなんなんやろって。 それをちょいと拝みに来たんや」

 

こいつ今師匠とミクのこと悪し様に言った?

この人とは絶対に仲良くなれないなこれは。

 

……まあ、禪院家の価値観ならそんなものか。

 

「式神じゃ無くて初音ミク、女じゃ無くて二宮玉枝です。 取り消してください」

この人もある意味禪院家の被害者なんだから、ここはたまたま呪縛を解けた僕が大人の対応をしないと…

 

「はぁ? なんで取り消す必要があるん? 別にどうでもええやろ呼び方なんて。 

そんなことより、やっぱり腑抜けた顔してんなぁ。

呪力の質自体は年の割には悪くないから勿体無いわ。

 

学生生活に甘んじとるからそんな腑抜けてるんちゃう?」

 

「……別に、強さだけを大事にしている訳では無いので」

僕が過ごしてきた学生生活を馬鹿にされたな今。

 

まあまあ、とはいえ、とはいえだ。

僕はこんな医務室の近くで暴れるほど考えなしでは……

 

「そうなん? 君、才能をドブに捨てる天才なんやな。

才能と言えば、君の同級生には真依ちゃんがおったなあ。

 

あれはどうせ術師の才能なんて無いんやから、さっさと戻って女としての役目を……」

 

……2人の呼び方を改めようとしないどころか真依さんの悪口まで言い出した。

 

 

ぶん殴った。

 

 

「…チッ、文句があるんならまずは言葉で言えや。 

まあええ、こうなるんやったら話は早い。

表出ぇ、稽古をつけたる」

 

望むところだ。

僕にとっての戦いのゴングはとうに鳴っている。

 

こうして、突発的に禪院直哉との戦いは始まった。

 




禪院直哉:お互いがお互いの一番尊んでいるものに殆ど価値を見出していないので二宮真守とは滅茶苦茶相性が悪い。
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