真に守り抜く 作:しんぴのまもり
最近、この私西宮桃にはちょっとした悩みがある。
私が話しかけるたびに真守君が顔を逸らしてしまうようになったことは、まあ、別に良い。
可愛くて強い呪術師を目指している私にとって、いつか恋愛絡みの出来事が起こるのはある程度想像できていたし、危ない所を救われた上に、その後のやり取りで我ながらかなりの頼り甲斐を見せつけられて、ついでに推定私が好みにドンピシャな真守君が私を好きになったのも無理はないと、ある意味納得すらできる。
……そして実のところ、私も真守君の事を憎からず思っている。
真守君は真依ちゃんの苦労をしっかりと理解した上で真依ちゃんと仲良くできているし、それに関する話題を出さずに喋り散らせることからこれ以上無く意外なことに気遣いもできるらしい。
そしてどこぞの
さらに私の好みであるセバスチャンスタンとはやや離れてこそいるが十分な筋肉もあり、よっぽどの相手でも無い限り死なない強さと精神力も手に入れた。
だから、告白してきたのならその気持ちに応えるのも吝かではない、と、そう思えていた。
そしてそれから約数週間。 私と真守君の仲は何一つ進展していない。
…………………なんで?
あの顔は間違いなく恋をしている顔、それは間違い無いし、私からもある程度二人きりになった時そういう雰囲気は出せているはずよ。
なのになんで真守君は、逃げちゃうだけで何一つアクションを起こして……
「……ええい、まどろっこしいわね!
最近の私はとりあえず行動に移すのが吉と出るようになっているのよ、こう言う時は直談判よ!」
箒片手に私は真守君のところへと飛び出した。
◇◇◇◇◇◇
軽くノックをした後、勢いよく私はドアを開ける。
「二宮君! ちょっと良い…… ?」
椅子にもたれかかってる二宮君のところまで近づいて、私は声をかけようとするが、二宮君の様子によってそれは妨げられた。
「Zzz…… Zzz……」
もう午後になるというのに、二宮君はまだ眠りこけていた。
「あ、西宮ちゃん。 ごめんね、悪いけど昨日マスターがちょっと夜更かししちゃって。
伝えたいことがあるなら私の方から伝えておくよ」
確かに言われてみれば二宮君の瞼には、クッキリとクマが付いていた。
「……何をしてたの二宮君は、呪術師は身体が資本よ?」
「んー、それはまだ、言えないかも。 なんかサプライズにしたいらしいから」
そうミクちゃんは言葉を濁す。
これは一見軽く濁しているだけのように見えるが、その実口を割ることは絶対にない時のミクちゃんだ。
「ふうん……? まあ良いわ、無理しすぎてたら私がひっ叩いてベッドにぶち込めば済むしね。
……そうだ、これならミクちゃんに聞く方が手っ取り早いかも。
少し尋ねたいことがあるんだけど良い?」
「うん、良いよ。 何かな?」
「……えーーーっと、まず、二宮君が私の事好きなのは知ってるよね?」
「え、そうなの? 私式神だから、そういう細やかな機微が少し苦手なんだよね」
……しまった。 相談する人を間違えてしまったかもしれないこれ。
「あーいや、別に西宮ちゃんの考えが的外れとも思わないよ? マスターが西宮ちゃんを好きだとしたら最近の挙動不審にも説明がつくし、ただ本当にその発想が出てこなかっただけ。」
……今のやり取りではっきりした事が1つあるわね。
四六時中そばにいるミクちゃんですら恋心を知らなかったことは、二宮君がそういう話題を一度も出してない何よりも証拠。
つまり、二宮君はまだ自分の気持ちに気づけていないということね。
……まあ、ここまで勝手に心中を推測しておいてただの私の思い過ごしだったら、それこそ生き恥案件なんだけれど。
「……あれ? そう言えば二宮君、メカ丸と霞の関係には目敏く気づいていたような……。 それで私への恋心は気づけてないの…?」
「うーん……あ、玉枝ちゃんの本棚に埃の被った恋愛漫画があったから、それで客観的に見ることさえできれば色々と気づけるのかも。 ……で、西宮ちゃんはそれを確かめて何がしたいのかな?」
「えーっと、二宮君に自分の気持ちについて周りに相談するよう頼んでくれない? 二宮君の性格なら、自分の気持ちに気づいた時点で私に告白すると思うから、そうしたら私がそれに応えるって感じで」
「……ん〜? どうせ付き合う気満々なら、自分から告白したら良いんじゃない? 私もマスターと西宮ちゃんの相性はかなり良いと思うよ?」
「……別にそれは良いじゃない、それとも駄目?」
「えー……まあ良いけど、そんな事を頼むんだから、想いを伝えれられた西宮ちゃんはマスターと晴れて両想いになって、付き合う事になるんだよね? つまり、西宮ちゃんはマスターの事をそういう意味でも悪しからず思っているって事であってる?」
「……そのつもりよ」
こういうのに疎いというのは本当のようで、ミクちゃんは揶揄う気も微塵も無いというのにガンガンと詰めてくる。
まるで自分の意図的に目を逸らしている気持ちを深く掘り起こされていくようで、嫌でも顔が赤くなるのを感じる。
「じゃあそういう事だから、頼んだわミクちゃん、またね」
これ以上の会話は羞恥心が耐えられそうになかったので、私はそう言って私は這々の体でその場を後にした。
……後から思えば、この時にもうちょっと色々と注文をつけるべきだったかもしれなかった。
◇◇◇◇◇◇
それから数日程経過した後、私は偶々真守君と加茂君が話しているのを目撃した。
しかもその内容が、ミクちゃんに頼んだ事だったんだから、ついつい耳をそばだててしまった私はきっと悪くないはず。
……ただ、1つ予想外のことがあった。
「とまあこんな風に、西宮先輩と話そうとすると、なぜか言葉に詰まってまともに話せなくなるんだよ。
加茂先輩はこの現象の正体が何なのか分かる? このままだと西宮先輩と不仲になるかもしれないってミクに諭された以上、じっくりと事を進めるわけにもいかないし大分困ってるんだ」
「ふむ、二宮。 それはだな……
本人に対し何か負い目があると、円滑なコミュニケーションを取るのは難しくなるものだ。
西宮は良い人物だが、少々短気な節もある。 何かの拍子で怒らせてしまったのなら、その記憶がつっかえ棒になることは十分有り得るんじゃないか」
「成程……。 でも西宮先輩に怒らせてしまった時は、すぐに謝って許してもらってるしなあ。 ありがとう加茂先輩。 一応参考にするよ」
加茂君は、真守君や下手をすればミクちゃん以上にこういうことに疎いという事実だった。
加茂君は確かに天然染みた所があるとは思っていたけど、まさかこれほどだとはね……。
……まあ、まあだ。 今回はたまたま加茂君が相談相手だったからこうなってしまったけれど、真守君が相談できる相手は他にも何人か居る。
それにより自分の気持ちを自覚してくれるのなら、何も問題はないでしょ。
……そう思っていたこの時の私を、後に私はぶん殴ってやりたいと心から思った。
「……で、三輪さん。 最近こんなことになるんだけど、なんでだと思う?」
「あー、それならメカ丸が知ってるんじゃないですか? 最近たまにメカ丸が私にそんな対お「二宮、それは残念ながら俺には分からないナ。 真依辺りを頼ってくレ」
霞とメカ丸は霞が割と疎い側の人間な上にメカ丸が邪魔をしてくるので、むしろ答えが遠のいた。
「真依さん、……こういう事があったんだけど、何か分かる?」
「……知らないわね。 自分で考えたら?」
「そっか、ところでなんか最近また少し当たりが強くない?」
「私はむしろこっちが素よ。 最近やっと貴方を禪院家と重ねる事がなくなってね。 それとも
「いや、別にそういうわけじゃないよ。 それが素なら別に全然構わないから」
真依ちゃんはこんな時に赤裸々に語られる他人の恋事情への照れが混じった毒舌を披露し、真守君はろくに情報を得られなかった。
「東堂先ぱ……やっぱ良いです」
東堂君はそもそも真守君から話すのを途中で辞めた。
東堂君に呪術師に関すること以外を相談するのはやめた方が良いと判断したらしい。
おそらく……というか絶対東堂君が丁度高田ちゃんというアイドルの番組を視聴していたのは要因の一つだ。
楽巌寺学長と歌姫先生は最近交流会の準備で忙しいし……
……あれ?
これもしかして恋愛事が得意なのこの学校で今私しかいない?
い、いやまだよ。
真守君の交友関係はほとんどが京都校だけど、それだけというわけでもないはず。
黒井さん……は確か養護教諭の仕事もしているらしいから中々会えないだろうけど、茜ちゃん……もどう見ても疎いよりだけど……
……あ、そうよ! 玉枝さんがいるじゃない!
あの人は背丈こそ平均以下でちょっと慇懃無礼な所があるけど、それでもしっかりと歳を重ねている大人の女性。
きっと玉枝さんなら真守君の恋心に的確なアドバイスを……
「もしもし師匠。 …………という事があるんだけど……」
『真守、それは…………
……駄目かー。
こうなったら本当に打つ手が少なくなるのよね。
いざという時は私から告白するのも手…なのかな。
いやでもやっぱり、どうせなら向こうから告白してきてほしいなこういうのは……。
「……師匠、多分分かったかも。 有益な情報ありがとう」
私は思案に耽っていたが故に、その言葉を聞き流していた。
自分の勝手な京都校の恋愛に対するイメージ
加茂憲紀:鈍い
与幸吉:自分の感情はそこそこ自覚してるが恋バナは苦手
三輪霞:鈍い
禪院真依:知識はあるが経験は無い(ファンブック曰く普通の高校ならモテてた)のでアドバイスは不得意
西宮桃:割と鋭いし恋バナとかも得意な方
東堂葵:滅茶苦茶的確なアドバイスができるが誰も相談したがらない
オリキャラ達の恋愛偏差値
二宮真守:玉枝の持っていた本で勉強した為恋や恋愛の概念自体は知っているが、それを自分に適用するのは苦手。
幼い頃の玉枝への淡い恋心も黒井さんに指摘されて気づいた
二宮玉枝:恋愛漫画を持ってた割に大分疎い。 恋自体はしたことあるがそれを恋と認識しているかは微妙。
真守からの感情も気づいてない
呪詛師:恋愛事に繋げるのが早いしなんなら滅茶苦茶要らない首を突っ込みまくる。 一番傍迷惑な奴
大道茜:この作品全体で一番鈍い