真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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東京京都姉妹校交流会②

「フハハハ! やはり、特級を冠するだけはあるな、折本里香よ!」

 

恐ろしく速いが単調な攻撃を紙一重で躱し、カウンターを幾度となく入れ続けるが、特級過呪怨霊折本里香のカラダには傷一つつかない。

 

「ほう…! ならこれはどうだ?」

ならば自然の力に頼るのはどうか、とわざと大木や岩盤が真後ろにある状況で回避をするが、呪いの女王がたかが木々や石に傷つく訳もなく、まるでプリンか何かのように全て容易く破壊し尽くされる。

 

「次だ、高田ちゃんの導きに従うならここが弱点のはずだ」

隙をつき急所と思しき閉じた瞳を殴り飛ばすが、一瞬痙攣したようにも見えたという程度で終わり、逆に腕を掴まれ投げ飛ばされる。

 

「なるほどな、ならば次は…… 」

東堂の策は全てハマっているのにもかかわらず、それらは圧倒的なパワーとアジリティにより悉く破壊し尽くされる。

 

普通なら絶望感を覚えるようなその状況に、しかし東堂葵はますます笑みを浮かべる。

 

「ア゛、ああぁああ゛!!!!」

 

「! グッ…」

 

だが、攻撃が当たらないことへの苛立ちでギアが上がり続ける里香の型も何もないがむしゃらな振り回しがついにクリーンヒットし、東堂葵は20メートル先まで吹っ飛ばされる。

 

「里香ちゃん、止まって! 僕は大丈夫だから!」

「ゆ、ゆ、憂太あああぁああ!!!!!!」

 

一方当の乙骨憂太は必死で止めようとするが、あまりの興奮により聞こえてすらいなかった。

もう少し呪術師としての経験を積めば、あるいは鶴の一声で制止できるのだろうが……

 

''今''の乙骨憂太には、それは難易度が高いようだった。

 

「……やはり、このレベルを相手取るには、術式を使用する必要があるか!

相手にとって不足なしとはこの事だ!」

 

パン!と軽快な音が鳴り響き、乙骨憂太と入れ替わった東堂が背後から里香の背中を思い切り蹴り飛ばす。

 

「痛い゛いぃ゛!」

 

その後の里香の攻撃も即座に不義遊戯を発動させ、再び背後から攻撃するが、出てくるのはその一言だけで致命傷には遠く及ばず、その力は五条悟が祓いきることはほぼ不可能だと断言した呪霊の力を顕著に語っていた。

 

再び乙骨憂太と不義遊戯で入れ替わり、完全なる予想外の位置から鉄山靠をかまし、依代である乙骨憂太との距離を離すが、里香の激しい憤怒により呪力出力に陰りは全くと言って良いほど見受けられない。

 

「これは予想以上の難物だな……だが! 激しい怒りにより動きは至極読みやすい!

ダメージの入る攻撃さえ見つけられれば、勝利への道は必ず開かれる!

 

第三ラウンドだ! 呪いの女王よ!!」

 

「憂太を゛、かえ゛せ!!!!」

 

では、五条悟はこの状況で何をしているのかというと……

 

今のところ、介入する姿勢は微塵も見せていなかった。

 

「うーん、僕が割って入るのも悪くはないし、そっちの方が安全なのもその通りなんだけど……」

 

そう独りごちながら脳裏に浮かぶのは期待の生徒、乙骨憂太の爆発力と秤金次の豪運、京都の東堂葵の安定力に二宮真守のポテンシャル。

間違いなく、この先の呪術界を担うであろうこの4人に対し、どう接するのが最も成長へ繋がるのか。

 

「この4人がいて、この程度の折本里香の顕現なら……

これぐらいが、1番みんなの為になるかな。

……期待してるよ、皆」

 

そう言うと五条悟は術式順転『蒼』を起動し、滝に突き当たって途方に暮れている二宮真守と激戦区までの一本道をゴリゴリゴリと平らに削り取る。

 

「っ!? ━━━こっちか!」

 

「よしよし、流石に進みたい方向と逆方向へ進んだりはしないみたいだね。

……というか、今のでほとんど混乱せずに走れるのか」

五条悟はそう言って観戦を続ける。

 

無論死者が出るようなら止めるが、硝子の治せる範囲なら怪我をしても別に構わない。

……と言うより、そこまでの怪我人が出ることはもうそうそう無いだろう。

そう五条悟は判断する。

 

其方を見れば、既に駆けつけた秤金次が大当たりを引き当て、十数回ほど致命傷を負い、治っていた。

 

「ははっ! こんなに死にかけたのは久しぶりだぜ! 折本里香!!」

 

無論合流したのは秤だけでは無く、その近くにいた加茂憲紀や禪院真依もこの異常事態の詳細を確認しにきている。

「言っている場合か! ッ赤縛!

……真依! お前はパンダと真希と共に離れておけ!」

 

「言われなくてもそうさせて貰うわ……は? 嘘でしょ!?」

そう言ってそそくさと真依はその場を離れる……前に、里香の意識が何故真依達の方へと向き、其方へ呪力の弾丸を放つ。

おそらく女性に対し拒否反応を起こしたのだろう。

 

「駄目! 里香ちゃん!」

ギリギリで乙骨が手を出し軌道が逸れたことでことなきを得たものの、里香の追撃の手は緩まない。

 

「憂太に゛、ちかよるな゛あぁあああ!!!!」

 

「離れてるじゃないの……! まずっ」

「真依!!」

一歩逃げ遅れた禪院真依に二発目の呪力弾が目の前に迫り……すんでのところで箒が袖に引っ掛かり真依と真希を避難させる。

 

「桃!?」

 

「はあ、はあ、ま、間に合った……ぜ、全力で飛ばして正解だったわね……」

 

「そのようだナ……三輪、お前は真依達と避難しておケ、今やここですら巻き添えを喰らいかねなイ」

 

「確かに、私にできそうなことはぁ……無さそう、ですね……」

数分前、メカ丸達登山組も異常事態を察知し計画を変更していた。

メカ丸のジェット噴射と西宮桃の熟練の箒操作により、何とか真依達の救援に成功する。

だが、この状況ではメカ丸以外は足手纏いと言わざるを得ない。

 

今まで通った道を戻ることで真依達は戦線を離脱しようとするが、女性が増えたことにより里香の怒りは更に加速する。

 

「ちかづ、く、なぁ! ちかづくなああぁああああ!!!!!!!」

 

「やばっ」

 

大きな呪力弾で駄目ならもっと大きな呪力放出を。

そう言わんばかりの馬鹿げた濃さの呪力の結晶が里香の口に集まる。

 

まともに当たらずとも即死しかねないその呪力の塊は、果たして放出されることは無かった。

 

東堂の不義遊戯によって不完全なままどこかと入れ替わった……訳ではない。

狗巻棘が無理を承知の上で呪言を使い押し留めた……訳でもない。

 

数十メートル先から飛来したその刀は、折本里香の身体に易々と突き刺さり、痛みのあまり呪力弾は里香の口の中で暴発する。

 

「……やっと来たか、真守」

 

「ごめん、遅れた。

 

その分、後は僕が主軸となって戦わせてもらう」

 

試合開始から20分経過、東京京都両生徒、全員が合流。

 

◇◇◇◇◇◇

 

……本当に、本当に危なかった。

後少しで、僕はみんなを永遠に無くしていたかもしれない。

 

「…………よくも…!!」

これまでにないほどに、ドス黒い感情が腑から湧き出てくる。

呪力が、今までにないほど満ちるのを感じる。

 

これなら、きっとこいつを……

 

「ちょっと待ってマスター、気持ちは理解できるけれど、里香ちゃんを祓おうとするのは悪手だよ」

 

「……理由は?」

 

「1つに、里香ちゃんは五条悟が祓いきれないと断言した呪霊、マスターがいくら激情で呪力が燃えたぎっていても祓うのはまず無理。

 

もうひとつの理由は……それをしたのなら、多分乙骨君が精神に不可逆なダメージを負う。

さらに言うのなら、今は五条悟が空から見守っている状態、ここは全員が納得のいく展開を目指すのはどうかな?」

 

「………………」

 

ミクの冷静な指摘によって、一気に頭が冷えていくのを感じる。

どうやら、自分のいないところで友達が危険に晒されたことに、自分が思っている以上に動揺していたらしい。

見れば、秤金次と東堂先輩の撹乱は十分折本里香を翻弄している。

 

落ち着け、僕にとっての最優先事項は、友達が取り返しのつかない事態になるのを防ぐことだ。

それが起こらないと確信できるのなら、1番のハッピーエンドを目指しても、きっと問題ないはずだ。

 

「……西宮先輩、二級未満の術師を連れてここからの避難誘導、頼んでも良い?」

深く息を吸って、目標には何が必要かを冷静に判断する。

それだけで、視界がどんどんクリアになっていく。

 

「うん、任せて。 ……あんまり長引くようなら戻ってきちゃうから、心配させたくないならちゃっちゃと済ませちゃってよね」

 

「分かった、こっちこそ任せておいて」

 

今日はあくまで交流会、命の奪りあいでは決してない。

そのことを胸に刻みつけ、僕は折本里香レイド戦に突撃した。

 

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