真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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1年ぶりのミクの日。
後2、3回この日に出す気がする。


東京京都姉妹校交流会③-1日目終

 

(……分かっていた、分かっていたことではある……だが、ここまで差が!)

 

身のこなしと精密動作において、里香は真守の足元にも及ばない。

秤金次が盾となり、東堂葵と星綺羅羅が撹乱を行う。

更に隙を見て遠距離から加茂憲紀とメカ丸が地味ながらも援護をし、少しでも効果が出るほど弱体化したのならいつでも呪言を放てるよう狗巻棘がじっと隠れながら気を伺う。

 

だが、里香はそれを全てを圧倒的な暴力と呪力のみで跳ね除ける。

全方位に攻撃を仕掛け入れ替えの意味を無くし、星間飛行により何かに引き寄せられたならその何かを粉微塵にする。

血の束縛などまるで存在しないかのように暴れ回り、飛来する呪力の弾丸を片手間に払い除け、呪力量は微塵も衰える様子がない。

 

二宮丸を突き刺し、魂を揺さぶり、カウンターを入れても折本里香は揺るがない。

真守の今までの戦闘経験は、里香に何の痛痒も与えられていなかった。

 

(撹乱をし続けることで戦いを拮抗させることはできても、全く攻め手を見つけることができていない!

魂への打撃も、簡易領域による威力の上昇もこいつには通用していない、このままじゃ本当に西宮先輩が戻ってきてしまう!

そうなると、女性に対して敵対心が増加するこいつは、一体どうなる?

 

そして、その敵意に晒される、西宮先輩達は……!!

 

もう手段を選んでる場合じゃない、何としてでもこいつを無力化しないと……!

 

考えろ考えろ、こういう時こそ冷静に、だ!

絶対に今までの光景と情報の中に答えがある、そうじゃないなら五条悟は静観を貫いたりなんてしない!

どうすれば…………

! ……そうだ、あいつの行動原理は……)

 

真守が思考を巡らせる中、秤の不死身が終わる。

 

『……ハッ! 領ォ域展開!!』

 

何百回もの欠損にも怯むこと無く、不敵な笑みを絶やすことなく、秤金次は折本里香を領域の中に引き摺り込む。

これにより真守達には数十秒の猶予が与えられることになる。

 

折本里香を唯一足止めができているるのは秤金次の捨て身の防御と領域ぐらいのものだが、それも秤金次が大当たりを出し続けられているからこそ成り立っている拮抗。

それ以外にも腕利きの術師が山ほどいるのにも関わらず、折本里香は優位を保ち続けている。

 

その状況で真守が選択した行動とは……

 

「……乙骨憂太!!」

必死に動きを止めようとしつつも、効果は見られず振り回され続けていた乙骨憂太に対し真守は大声で呼びかけを行う。

 

「貴方にしか出来ないことを頼みにきた!

時間が無いので単刀直入に言う、折本里香を説得して、この顕現を止めてくれ!!」

 

(え? この人は……二宮君…て言ってたっけ?

確か真希さんが話していた……)

 

◇◇◇◇◇◇

 

「……んで、あの糸目の狩衣が加茂憲紀、こいつは御三家と呼ばれてる呪術師の家系出身だ。

当然、術師としての経験は今回のメンバーの中でもトップクラスに多いし、その上赤血操術という近中遠全てに対応できる術式を持っている。

こいつには実力の拮抗している棘を当てる、で良いんだよな?」

 

「ああ、あいつだと綺羅羅の術式もすぐ看破するかもしれないからな、頼んだぞ棘」

「しゃけ」

 

「それから、さっき八ツ橋を渡して来たのが二宮真守。 こいつは金次が相手する東堂葵の次に危険なやつだ。

私らと同じ一年なのにも関わらず既に一級術師となっている上に5人しかいない特級術師の1人、二宮玉枝の弟子だ」

 

「師匠なのに苗字が同じなの?」

 

「……ああ、勝負には関係ないから深くは語らないが、構わねえよな。

術式は式神術の一種らしいが…詳しい事はよく分かんねえ、今のところ関東方面にはあまり来てねえからな。

で、こいつが来た場合は……憂太。 お前が対峙しろ。 悔しいが、金次以外であいつに勝てるのはお前ぐらいだ

……クソッ」

 

「……真希さん、二宮さんと何かあったの?」

「いや、会ったことすら無い……が、1人しかいない妹との同級生で異性な上に、二宮にはちょっとした噂があってな……。

それが真希はどうにも気になるらしい、機会さえあれば一対一で圧迫面接をすると言わんばかりだな」

「ツナマヨ」

 

「聞こえてんぞパンダ!」

 

「げっ、オレパンダ、ニンゲンのコトバワカラナイ。 

 

……まあ、俺は二宮真守の事は知らないが、玉枝の方の二宮なら正道経由でまーまー知っている。

その上で言うなら、玉枝が見込んだ奴なら多分悪いやつではないさ。

が、それはそれとして実力に関しては想像よりも一段多めに見積もっておいた方が良いって感じだな。

 

今この世界であそこまで強さに対して貪欲なやつは中々見かけない。 そいつの弟子が生半可な実力な訳はないだろ」

 

◇◇◇◇◇◇

 

(この人と僕は全くの初対面だ。 

けれど、パンダ君は悪い人では無いと言ってたし、さっきこの人は本気で友達の為に怒っていた。

……信用しても、良いのかな)

 

「……僕も、これ以上里香ちゃんが人を傷つけるのは見たくない。 

だけど、僕は里香ちゃんを止められていない。

 

でも、君がこの状況で話しかけて来たってことは、僕が里香ちゃんを止めることが出来る、そんな作戦があるってことなんだよね?」

 

「作戦なんてないよ! 

僕は京都校の中で下から数えた方が早いくらいそういうことが苦手なんだよ!!」

真守は突然キレた。

 

「……え、えええ!?」

 

すぐにスンとした顔に戻りながら真守は乙骨憂太に自分の狙いを話し始める。

「作戦なんて今回は無い。 というか折本里香は作戦でどうにかなる範囲を超えている。

……けど、貴方の呼びかけが成功する根拠ならある。

貴方は友達の為や、大切な人の為なら何だって、それこそ命だって張れる、そういう人に僕は見えた。

なら、絶対できる。 無いところから力を湧かせるなんて事は誰にも出来ないけど、友達を助ける時、元々持っていた伸び代を一気に放出することなら、貴方はできる」

二宮真守は知っている。 大切な何かのために動く時の爆発力を。

 

「そして、折本里香の行動方針は貴方を守ることだ。

その行動は恋心から出ている。

 

なら、貴方が本気で怒り、止めればおそらくあの暴走は止まる」

二宮真守には理解できた。 怨霊となるぐらい大切な人が居るのに、その人に嫌われることを進んでする筈はないということを。

 

どちらも、二宮真守のこの数ヶ月の短くも濃い学生の経験から学んだことだ。

 

「それにもうひとつ、貴方は曲がりなりにも特級術師だ、ならきっと僕よりもずっとその時の爆発力は……」

 

急いで3つ目の根拠も言い終える前に、秤金次の領域が崩壊する。

 

「さあ、もう何ラウンドかも覚えてねぇが、もう一度勝負だぜ! 折本里香ァ!!」

 

「もう時間か!

乙骨憂太、つまるところ貴方には、折本里香を本気で怒り、本気で叱って欲しい。

そうすればきっとこの暴走は止まるはずだ。

 

何度も言うようだが、これは貴方にしか出来ないことだ。 どうかよろしく頼む」

 

そう言い残すと真守は秤と東堂の援護に入る。

真守にも東堂にも流石に疲労が見えて来たが、それでも折本里香を死ぬ気で抑え込み直撃だけは決して許さない。

この調子なら、いつまでも足止めを続けられるのではないか、そう乙骨憂太が錯覚しかけるほど、異常なまでにこの新世代を担う即席チームの連携は凄まじいものだった。

 

……ただし、真守達は今のこれが全力100%の力だが、里香はそうでは無い。

里香が苛立ちを覚え、呪力へと昇華させるたびにギアは天井知らずに上がり続け、その度に真守達の身体には傷が増える。

 

その様子に意を決して乙骨憂太は口を開く

「……里香ちゃん! やめて! 僕はそんな事は望んで……」

 

「……憂太゛、悲しいの? 

 

…………お前らの、せい゛、か?」

だが、まだ届かない。

そもそも折本里香か呪霊となってからの6年間、あの乙骨憂太が一度も愛する人の暴虐を止めなかったという事はまず有り得ない。

 

折本里香を止めるには、彼女を冷静にさせる何かが必要だ。

 

(……駄目だった、か?)

「なら別の作戦を立てるしか……っがっ!」

 

策の決壊に気を取られた真守の胴体に、ついに里香の平手がクリーンヒットする。

山から飛び出てもおかしくない威力だったが、幸運なことに遅れて来た真守の体力はまだ残っている。

そのお陰で吹っ飛び切る前にたまたまあった御神木のように馬鹿でかい大木に捕まることで何とか完全な戦線離脱を免れる。 

しかし、この状況で一級術師の肋骨がベキベキにへし折れ一瞬でも動きが止まる事は当然大惨事に直結する。

 

「あ゛、ァア゛、ああぁあ゛ア!!」

ついに憎いやつに攻撃が当たった。

そのことに歓喜の悲鳴をあげた折本里香はトドメを刺そうと真守に雨あられのごとく呪力の弾丸を連射する。

 

真守はそれを二宮丸を以て弾き飛ばせるが、弾いた呪力は胡散せず周り……他のメンバーに降り注ぐ。

 

「なっ…!? まずっ」

「綺羅羅!!」

 

そしてよりにもよって1番当たると重症を負う綺羅羅に呪力弾は多く飛んでいた。

さすがにこの状況には五条悟も動くだろうと真守は咄嗟に天を仰ぐ。

 

が、まだ五条悟は動かない。

 

「……本気で? 本当に何を考えて…」

 

 

 

『動く、な』

真守の焦りと困惑に対して、答えはすぐに現れた。

 

本来なら弱ったところで更にデバフを打ち込む役割だったはずの狗巻棘が、咄嗟に仲間を守る為に呪言を使ってしまったのだ。

 

「! ゲホッゴホッ」

呪力差により喉が潰れ、激しく血反吐を吐き、その痛みは立つことすらままならない程だった。

しかし、狗巻棘の、その目は決して恐怖などには染まってはいない。

むしろ折本里香を呪言で止めることができたことに心から喜んでいるようで、その顔には不敵さと安堵が入り混じった笑みが浮かんでいた。

 

「……狗巻、君?」

その覚悟に、高潔な精神に、乙骨憂太の心は激しく動かされる。

その心に、その瞳に、狗巻棘の意志が伝播していく。

 

「……おまえ゛、なに、した゛?」

一方、里香の注意は自分に何かをした狗巻棘へと向く。

特級呪霊を呪ったその代償としてまともに動けない狗巻に、里香は拳を握りしめ、振りかぶる。

 

「あ、あ゛あ、ああ゛あアアア゛!!!!!!!!」

「……に、げ……ろ」

 

 

 

 

 

 

「やめろ、里香」

その一言で、折本里香の動きはピタリと止まる。

 

「ゆ、憂太?」

 

「それ以上、狗巻君に……いや、全員に手を出すな。

僕の大切な友達や先輩、貴重な同期の人達だ。

誰に怪我をさせるのも、僕は許さない」

 

「!! ごめんなさい、ごめんなさい!!」

先ほどまでの暴君はどこへやら、折本里香は幼子のような弱々しい声をあげながら乙骨憂太に泣きつく。

 

「うん、大丈夫だよ里香。

止まってくれてありがとう」

 

「怒らないで、嫌いにならないでぇ……」

 

「ならないよ。

ほら、みんなにごめんなさいしようか」

 

「………………」

「里香?」

 

「…………ご、ごめんなさいぃい゛いいいいい」

 

こうして、交流会初戦を荒らしに荒らした折本里香は乙骨憂太の鶴の一声によって完全に制止する。

それと同時に、その場にいたほとんどが膝をつき、ほっと息を吐く。

 

(や、やっと終わった……。

乙骨憂太に折本里香を止められるだけの才能があって本当に助かった。

 

 

 

……ん? もしかして、ここまで見越していたから五条悟は動かなかったのか?

だとしたら五条悟は、良くも悪くも本当にイカれている人だな……。 呪術師らしいといえばらしいけれども

 

ま、狗巻棘以外には目立った怪我もないし、その人も家入さんやあの呪詛師があっという間に治してくれるはず。

なら乙骨憂太が一皮剥けたっぽいし、結果オーライと言っていいでしょ)

 

そんなことを思いながら、二宮真守は五条悟の終了宣言を耳にするのだった。

 




乙骨憂太:里香の暴走を止めたことにより呪術師としての才が開花した。
     このまま数ヶ月の間成長し続ければ原作夏油なら純愛砲を使わずに勝ち切れるぐらいになるが、はてさて。

五条悟:避難組は下山したし残りも満身創痍なので終了を宣言した。
    これにより1日目は引き分けになったので2日目の個人戦の優勝者で勝敗が決まる。

狗巻棘:この後家入硝子と元呪詛師の治癒によって完全復活した。

追記
この小説に感想を書いてくださった方、ありがとうございます。
余計な事を書いてしまうかもしれない為返信はしてませんが、しっかりと目を通して喜んでいます。
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