真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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真守と熱①

 拳がぶつかり合い、その衝撃により赤い火花が、呪力の衝突により黒い火花が炸裂する。

今までの戦いとは比べ物にならない力と痛みがお互いの拳に伝播するが、両者共にその場から足を動かす気は微塵も無い。

 

 真守が秤のその力を認識し二宮丸を鞘走り、秤金次もまた真守の脅威を認め腕を振り上げ無から電車の扉を発生させる。

コンマ数秒で扉が閉まり真守の首を挟みつけ、秤の腹筋が鋭く切り裂かれる。

真守が更に刀を押し込むよりも一瞬早く秤が真守を蹴りつけ、再び2人は試合開始時の位置へと戻る。

 

(なんだあの人の呪力……!? 紙やすりのようにざらついているとでも言えばいいのか? 今の僕でも凄く痛い!!)

 

(思っていた数倍ヘビーな威力……! 呪力が無限に増える術式を持っているせいだろうな。

小手調べだろうがなんだろうが全力投球! 威力の平均値なら乙骨にも負けてねえ!!)

 

 お互いに予想を遥かに上回る相手の強さに驚愕する中、秤は1つの思いを口に出す。

 

「お前、強いな。 後輩の癖にやるじゃねえか。

……だが、まだ熱としては今一つってとこだな。

さっきの妹の方の禪院との一方的な戦いで少々冷めちまってるんだ。

もっと熱々の一撃をくれよ。 じゃ無いとノリ切れねえ」

 

(……熱?)

聞き慣れない怪訝な顔をするが、すぐにあることに思い至る。

 

(要は本気を出せないってことか。

好都合。 領域を見てみたかったとはいえ、決勝に進むのが先だ。

初手で勝ち切ってしまおう)

 

そこで二宮は、ついこの間完成した拡張術式を試してみることにした。

 

「僕の術式は、流す音楽のテンポに乗って動くことで呪力や目に見えないステータスを増やすことができます。

 その音楽にミクが歌い、挙印を組み、舞うことで僕の術式効果は120%……いや、今なら200%の力を発揮します」

 

(術式の開示か……!)

 

「最近、思ってたんですよ。

 このミクによる術式効果の上昇を、術式対象の拡大に充てたなら、目に見えるものだって急速に増やせるんじゃないかな、と。

 そして、さっき西宮先輩が術式対象の拡張を眼の前で見せてくれました。

 だから思ったんです。

 

 今なら、こういう事も、出来るんじゃないかって!」

 

 真守が腕を後ろに動かし勢いをつけ、前へ突き出す。

 

 真守は一歩も動かず、足はただ力を入れるために踏ん張ることに使っていた。

 にも関わらず、真守の左腕は、秤金次のタンクトップをしかと掴んだ。

 

 

 真守の腕はその太さを保ったまま、なんと5m以上に引き伸ばされていた。

 

「マジか!? こんなに驚いたのは千と千尋のハクが竜になった時以来だぜ!!」

 

 意外といい人生を送っている秤がそう叫ぶのをシカトし、真守は術式を一瞬だけ解除し、腕を一気に戻す。

 そして再び術式を発動。 16分の1拍子の音をミクがセレクトし、それに乗った秒速16回の動きで一気に呪力を取り戻す。

 

 その全ての呪力を右の拳に込め、顔面に跡ができる勢いで秤金次を殴り飛ばす。

 

 「がっ………ははっ! 良いな、激アツじゃねえか!!」

 

 既にその体は場外の空中にあるのにも関わらず、血塗れの顔で秤は壮絶に笑う。

 

 組むは財を象徴する弁財天印。

 熱を愛する賭けの胴元秤金次に相応しいその印と同時に秤は叫ぶ。

 

「領ォ域展開!!」

 

 距離が出来たことを利用して真守に邪魔される前に発動されたその結界は完全に秤が地に落ちきる前に世界を分断し真守を呑み込む。

 

 その速度はかつて見た天候を司る自然呪霊の展開速度を遥かに上回り、簡易領域を張るのを諦めるよりも更に早く真守は領域のルールを理解させられる。

 

 瞬間 真守の脳内に流れ込む

 

 ()()()()()()()()

 

◇◇◇◇◇◇

cr私鉄純愛列車

 

⭐️ルール説明

「坐殺博徒」 は 実在のパチンコ台 をモデルにした 領域 だ!! ルールは 簡単!!

  図柄を 3つ 揃えれば 大当たり!! 大当たりを 引けば 俺(秤) は

  あるボーナス が もらえるゾ!!

  どんな ボーナスかは 当たってから の お楽しみだ!!

 

⭐️予告演出

 

 

  ………………………

 

 

 

⭐️リーチアクション

 

 

  ………………………

 

 

 

~以降、ひたすらパチンコの仕組みについての頭の痛くなる説明の数々

 

◇◇◇◇◇◇

 

(結局当たったら何があるか分からないのか!!!?

1番重要なところが明かされてないじゃないか!?!!)

 

 真守の心の底からの叫びなどなんの意味も持たず、演出は無情にも進んでいく。

 赤のパチンコ玉、緑のシャッターが無から現れ、真守を攻撃する。

 予告が終わると同時に5のリーチが掛かり、交通系ICカードリーチが作動する。

 

夕輝『遅刻遅刻~~~!!』

 平凡という言葉が似合う男が遅刻に焦り、改札口に駆け込むのを横目に真守は領域への理解を進める。

 

(このキャラクターが何事もなく改札を通過できたら大当たりになるわけか。

とはいえそこまで悪い状況でもない。 演出の攻撃はどれも大した事ないし、何よりコレが当たる確率はなんと1/239、そうそう当たりはしない。

つまるところ長引かせさえしなければこれはただの秤金次にバフをかけるだけの領域だ。

 

今回は予告もリーチアクションも弱かった以上、まず当たるはずは……)

 

夕輝『よっしゃー! 間に合ったー!!』

 

 男が改札口を通過し、スロットの最後の目が5で止まる。

 

「…………え?」

 

     ド     ド     ド

      キ     キ     キ

       ュ     ュ     ュ

 

 秤が大当たりを引き当てた事実を、真守は嫌でも受け入れなければならなかった。

 

「俺さ、甘でもマックスでも 30回以上ハマったことねぇんだわ」

 

 鬱陶しい程の大当たりの演出とやかましく鳴り響く音楽の中、秤の領域は崩壊し、いつの間にか2人はリングの中に戻っていた。

 

 秤金次の呪力は今までに見たどんな術師や呪霊よりも満ちて漲り、領域が途切れた癖にいつまでもうざったく流れ続けるチープな曲は真守の流す音楽を相殺する。

 今となっては相手の妙な曲に心を掻き乱される真守ではないが、シンプルに自分がリズムに乗るべき曲が聞こえ無くなるのは流石に困る。

 

(……結局大当たりの効果は超強力なバフだったのか? だとしても大分厳しいことに変わりは無いが…

仕方ない、医療班なら間違いなくくっつけられるだろうし……この人なら、それを恨む事も無いはずだ)

 

 数秒の間に繰り返される刀と肉体と呪力の激しいぶつかり合い。 呪力出力の差に押されつつも、刀というリーチや時折飛び出すトリッキーな腕伸びによって真守は互角以上の戦いを示す。

 その最中、攻防の一瞬の隙を突いて二宮丸が鋭く閃き、秤の左腕を両断する。

 

「……その腕ではもう戦えない筈だ、早く医務室に行って治してもらうのを……!?」

 

 だが、真守が目を向けると、秤の肘から先は何事もなかったかのように存在し、その拳は真守の鳩尾に深く食い込む。

 

(反転術式!? こんな一瞬で腕を生やすなんて五条悟や師匠でも出来ないのに!

 

いや、それよりもまずい、このまま落ちたら場外負けだ! 負けてたまるか!!)

 

「伸びろ!! 腕!」

 再び腕を伸ばしリングの端を引っ掴み、長さを戻す事でリング内に戻りにいく。

 

 だが、その隙を秤は見逃さない。

 

「ここだ!!」

戻る途中の真守の肘を秤は強かに蹴り飛ばす。

 

「~~~~~~ッ!!!!?」

辛うじて手を離すのは堪え、リングの中には戻れたものの、真守の肘の骨には細かく亀裂が入る。

 

「やっぱりな、お前のそのピッコロみてえに腕を伸ばすその技。 流石にノーリスクとはいかねえようだな?

 おそらくだが、腕を伸ばすごとに強度も比例して減ってくんだろ。

 強力なのは間違いねえが、ちゃんと使い所を考えねえと敗因になるぜ、その技は」

 

(……この人、見た目と言動と雰囲気とは裏腹に頭もキレる!

こんな短時間で僕も気づいてなかった弱点に気がつくだなんて!)

 

「……どうやら、あの人に勝ち切るには、何かしらもうひと工夫が要りそうだな」

 相手の生命力の高さにより完全に殺さないよう気を使うという思考が消え、本気の戦闘により禪院家の性格が色濃く出た真守はそう呟く。

 

「やってみろよ、今の俺はお前との激闘でノリに乗ってるんだぜ?

 もっと熱くしてくれるってんならよお、是非ともそうしてもらいてえなァ!! ハハハッ!」

それを耳ざとく聞きつけた秤はそう叫び、漲る呪力でトびまくりテンションを少し引くぐらいアゲまくる。

 

真守は警戒を、秤は興奮を示すが、どちらも未だ自分が負けるとはカケラも思わない自信に満ちた顔を浮かべる。

 

丁度そのタイミングで4分11秒がすぎ、秤の呪力が凪ぐ。

 

それを確認すると同時に真守が地を蹴り、秤が再び挙印を結ぶ。

まだまだこの試合の熱は、尽きそうに無かった。

 




 真守の拡張術式
 ついに目に見えるものまで増やし始めたが、歴戦の術師の秤には一瞬で弱点を見抜かれた。
 インパクトは絶大だが力は弱くなるし一瞬とはいえ術式を解除しないと元に戻せないので使い所を見極めないと負けに直結する。
 
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