真に守り抜く   作:しんぴのまもり

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3月9日はミクの日。


真守と刀とロボットと①

「じゃあ最後、僕これ歌うね」

 

「良いねー! はいこれ、マイク」 

 

「かなり高い声が要りそうな音楽だガ、キーは下げなくて良いのカ?」

 

「何回も歌ってるし平気平気」

 

「あ”ー! 真依、そのラストのポテト私が先に手を伸ばしていたのにー!」

 

「早い者勝ちよ」

 

「2人とも喧嘩をするな」

 

休日も正午を周り、カラオケの利用時間も迫った時、ラストの一曲を真守は歌っていた。

 

この数時間、真守はかつてない程充実した時間を過ごしていた。

友達と歌い、喋り、楽しむ。 ただそれだけの、修行やら何やらが一切介入していないカラオケは、真守にとって初めての体験で、他の何にも代え難い時間だった。

 

 

「ふふ、真守が楽しそうでなによりだよ本当に」

と私、初音ミクは独りごちる。真守があそこまで良い笑顔を見せたのはいつぶりだろうか。 始めのやや緊張した感じもすっかり消え、今だけかもしれないけど敬語もなくして皆と喋れている。 せっかくの人生に一度しかない高校生活なんだから是非とも今回のような体験を何度も味わって欲しいものだ。

 

「ああ、真守(ルーキー)はこれまで修行以外のことをするだなんて考えもしてなかったからな…。

呪術師といういつ死ぬのか分からない仕事についているからこそ、今を楽しむのはとても重要だ。何より、学生時代の不完全燃焼は死ぬまで尾を引くものだからな」

 

「いやまあそれはそうだけど、君本当に高校二年生? 人生二周ぐらいしてない?」

独り言に割り込んで大人じゃないと分からないようなことを平然と話してくる東堂君に呆れつつも、真守の成長を私は静かに見守った。

 

◇◇◇◇◇

 

「いやー、とっても楽しかったよ。 来て本当に良かった…です」

 

「元に戻ってしまったカ…。 まあ、楽しめたのなら何よりダ」 

 

「ですねー。 それにしても、二人ともすごく上手でしたね。 二宮君は兎も角、メカ丸があそこまで綺麗にOP曲を歌えるとは思いもしませんでしたよ」

 

「アア、あれは出した声のキーを歌と同じように調整した上で流した物ダ」

 

「ズルッ!!」

 

カラオケが終わり、皆が現地解散した後、僕は三輪さんとメカ丸の二人と少し寄り道をしていた。

 

『へイたこ焼き3人前お待ち!』

 

「あ、ありがとうございます」

 

「俺は食べれないから、二人分で良かったんじやないカ?」

 

「まあまあ、こういうのは雰囲気が大事なんですよ」

 

そうして僕らが食べ歩きをしていると、三輪さんが話を振ってくる。

 

「そう言えば二宮君はなんで敬語を使っているんですか? ミクさんとのやりとりやカラオケの時の様子を見るに、私と違ってそれが素の口調ではないですよね」

 

プスリ。

 

「んー、何でですかね。 気づいたらこうなっていたと言うか…。 まあ相手に不快感を与えにくいという意味では結構気に入っていますよ」

 

「まあ、二宮君が不便じゃないならそれで良いですけ…ど……」

 

その時、三輪さんの体が不自然に痙攣し、突然倒れた。

 

「!?」

 

「三輪、どうしタ!?」

 

「闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え」

 

「……! 帳が降りている!」

 

帳は天元様の結界術を元にして使っている以上、呪霊が使えるような物ではない。 つまりこの帳を下ろしたのは……

 

「呪詛師カ! なぜ今こんな所デ…」

 

「とりあえず、戦闘準備をしておきましょう」

僕は素早く二宮丸をバッグから取り出して構える。

 

「凄いな今の学生は。 ロボの方は機械だからある程度は予想していたけど、式神使いの方も耐えるのか」

 

と言い帳を下ろしたと思われる呪詛師が姿を現す。

 

「…どういう術式だ」

 

相手の術式が不明でかつ人によっては即詰みに繋がる以上、術式が強化されたとしても正体を判明させた方が有利になると考え、僕は術式の開示を促す。

 

「知りたいか、教えてやる。 私の術式は『吹き毒呪法』だ。 相手の呪力量によって効きめが変わる毒を吹き矢のように放てる。

 目安としては平均的な一級呪術師なら30分程で動けなくなる感じだ。 今回のように生捕にする必要がある場合には凄く役に立つぞ」

 

一級術師が30分なら、術式を発動さえすればそこそこ時間はありそうだが、問題はそこではない。

1番最初に三輪さんがやられた以上、生捕にするとは言っていたがいざとなればあいつは三輪さんを人質にする可能性がある。

つまり今回は、三輪さんに近づかせないようにしながらこいつを素早く殺す必要がある訳だ。

 

「行けるか、メカ丸」

 

「ああ、当然ダ」

 

 

 

帳が降りたところから少し離れて、額に縫い目のある女が、面白そうに中の様子を透視していた。

「さて、どうなるのかな。 あれが任務をきっちりと遂行すれば与幸吉の本体を見つけずともこちらに引き込むことができる。

実力から言えばそれは可能なんだけど、あの二宮玉枝の一番弟子がそう簡単に行かせてくれるのかどうか。 まあもし上手くいかなかったら地道に本体を探すだけさ。 今は一先ず、お手並拝見といったところかな」

 

暗い陰謀は、既に動き出していた。

 




呪詛師の等級は深くは考えてないけど準一級と一級の狭間ぐらいかな…。
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