真に守り抜く 作:しんぴのまもり
「来い、ミク」
「了解 マスター」
「お、それが噂の君の式神か」
「そのとおり。 アドバイス、呪力供給、呪力増加全てをこなせる凄いやつだよ」
早速真守は術式を解放し、開示を行う。
それによって呪力がどんどんと増加していくことで、ほんの少しだけ薄れていた意識が再びはっきりとしてくる。
(相手の術式は奇襲向け…にも関わらず、僕らが倒れていないこの状況で焦っていないということは、相当肉弾戦に自信があるのか?)
そんなことを考えつつも遠距離攻撃を持たない真守は二宮丸片手に突撃する。
「はっ!」
裂帛の気合いを持って放たれた振り下ろしは、ヒョイと避けられる。
「筋は悪くないけど、その術式は速さまで上げてくれるものではないだろう? その振り下ろしは悪手じゃ…」
余裕の顔つきで呪詛師は隙を咎めようとする、が。
─それはかの剣豪、佐々木小次郎の秘技。 剣術の到達点の一つ。
日本最速の鳥類が身を翻すが如く、一撃目を囮とし、二撃目を必中の刃へと研ぎ澄ます。
──奥義 燕返し!!
「っ!?」
全力で仰け反ることで間一髪致命症は避けるが、その顔には深い傷が刻まれる。
「あっぶな。 でも同じ手は二度はk」
「
体勢を崩した呪詛師に対し、容赦なくメカ丸が砲撃を打ち込む。
「やったカ!?」
「多分まだだ!」
「痛った…」
真守の言葉通り、ある程度手のひらを火傷しつつも、重い傷を負った様子もない呪詛師が土煙の中から現れる。
「頑丈だナ… 。 一旦帳を破って逃げるカ? このまま戦えば先にお前が限界を迎えかねなイ」
「…1つ、案がある。 悪いけど、近接戦を挑んで貰って良いか?」
と何かを思いついたかのような表情を浮かべた真守が提案すると、メカ丸は一瞬迷ったような沈黙をしたものの頷き、呪詛師に対し向かって行く。
「前衛交代? 確かにロボ相手だと私の術式は効かないけど、毒が効かないやつの対処法ぐらいなら当然考えているよ」
そう呟きつつも呪詛師はメカ丸の攻撃を受け流し、的確に
「予想通りあいつ体術もいける口か…。 悪いけど刀を貸してもらうよ三輪さん」
真守はしばらく様子を見たのち、やはりこれしかないとばかりに三輪霞の持つ鞘から刀を抜き取り呪詛師に目にも止まらぬ速さで切り掛かる。
再び体に傷がつきつつも、呪詛師は余裕を崩さない。
「佐々木小次郎の次は宮本武蔵かい!? 少々安直じゃないかと思うけどね!」
「シンプルイズザベストという言葉があるだろウ!
「ハァッ!」
ザザンッ
「っ! ちいっ!」
だが真守の連撃とメカ丸の斬撃の連携によって、呪詛師には少なくない傷がつき始め、その余裕にも陰りが見える。
しかし呪詛師は動揺を最小限に抑えて焦ることではなく策を弄することに脳のリソースを使う。
(これは少し不味いな。 幾らステゴロもできるとは言えどこうも手数でゴリ押されるとどちらが先に限界を迎えるか分かったもんじゃない。 しかも式神使いの方は呪力がどんどんと増えていくし。 …あいつがしてきた依頼は生捕だったよな? なら…)
「しゃあっ!」
呪詛師は柔道の要領でメカ丸の足を払い、先刻の関節技の応酬で脆くなった腕を回転させ一瞬でへし折る。
「ナッ!」
そしてメカ丸を持ち上げながら真守の方に向き直る。 そして脳内では今までの戦いからの考察を交え素早く思考を回していた。
(こいつが本体なのか帳の外から遠隔操作されたスペアなのかは私には分からないが、ロボットなんだ。 仮にこれが本体だとしてもこの程度では死なないはずだ。 ……だが学生にとってはそういう問題ではないんだろう? 仲間が盾になることで生まれた隙で毒矢を二度打ちして巻き返してやる!)
「下手に刀を振り回すなよ! 友達が壊れてしまうぞ…… …!?」
真守が危惧した人質作戦は、三輪ではなくメカ丸を使って行われた。 呪詛師の読み通り本来呪術師であってもまだ子供である生徒たちには人質作戦は効果覿面。 だが、それでも呪詛師は、それ以外の幾つもの要素を見誤っていた。
1つ、メカ丸の情報を羂索から必要以上に貰っていなかったことで、メカ丸の構造が一体しかない貴重な分体ですらない、壊れたとしても天与呪縛と術式の都合上いくらでも換えが効くただの呪骸だとまでは分からなかったこと。
2つ、それによりメカ丸の破損の度合いは生捕にするために控えめとなり、真守への視線と射線が180cmの恵体として作られているメカ丸によって遮られたこと。
これにより、真守の行動への咄嗟の対応が困難となった。 だが、それでも硬直した生徒1人ならばその後突飛な行動をしたとしても余裕を持って矢を突き刺して押し切れるという確信があったし、実際それだけの実力を呪詛師は持ち合わせていた。
だが、最後の、そして最大の誤算が、致命傷となった。
3つ、前述の二つの要素により、ミクや二宮玉枝のように真守のことを理解してないと予想できない行動を真守は即座にとった。
「……マジか」
呪詛師の腹には、メカ丸の体を貫通して飛び出していた二宮丸が、グサリと突き刺さっていた。
倒れ伏す呪詛師の視界には、普段のような敬語を使っている時でも、カラオケの時のように敬語が取れてフレンドリーな笑顔で接している時とも違う、情けが一切存在しない冷たい目でこちらを見つめる真守の姿があった。
三輪の刀: 珍しく折られることも鈍扱いされることもなく活躍した。