*あるホネに 憧れた 男。
気づいた時にはもう憧れていた…
ただそれは届かぬ高みで…
どうやっても現実では不可能であり…
それを語ると馬鹿にされる…
ただ……諦めなかった自分が居た。
確かに『今の世界』では不可能だ。
だが、『転生』ができれば、と信じ、今できる努力を重ねることにした。
…それからの人生、オレは『避ける技術』を必死に磨いた。
最初の頃は体がボロボロになった。だが何年もすれば慣れ、満身創痍になっていた自分は見る影もなく、無傷でいられるようになった。
修行方法は単純、攻撃を与えてくる人間というのは暴走族ぐらいしかいない。…まあ、ご想像通り戦いまくった。
その結果、人間の限界に近い『空間認識能力』を得た。
五感を最大限に使うことで自分の周りに大体何があるのか分かるというもの。
どんな不意打ちもオレに対しては無力に等しいものになった。
そしてどんな時でも笑ってられるような精神力。
こちらはチンピラを倒している最中に身についたものだ。
今世での下準備は大雑把ではあるが終了。できることはやった。後は『転生』を待つのみ…
そして……その時は来た。
『現在14時23分!〇〇発〇〇行きの国際便が突如降下し、海上で爆発…、…!……。』
飛行機に乗ったオレは海外に修行に行く予定だったのだが…どうやら今世とはここでお別れのようだ。
最期が飛行機事故とは……相当運が悪いのか良いのか…
そして、オレは飛行機事故を通して人の限界を実感した。……ここまでの規模では空間認識能力がなんの役にも立ちやしない。
爆発していく飛行機の中、最期に見えるのは走馬灯…
あぁ…あの「スタイリッシュ暴漢スレイヤー」とか言う奴。
暴走族を倒す最中で一回戦ったきり、引き分けで終わったのだが、頭に残るのはその『眼』、それはオレと同じだった。
また会って話がしたいものだが……どうやら叶わない夢らしい。
そしてオレは今の己の無力さを痛感し、そして来世への希望を持ちながら意識を手放すのだった。
享年18歳。
……ここまでが僕が死ぬまでの過程であり、
そして『オレ』が……いや…
『オイラ』が
知らない天井だ…
と、まあ転生には成功した。
「…産まれたぞ!元気な男の子だ!」
「えぇ、えぇ、元気な子ねぇ。」
眼を開くと父らしき人と母らしき人。そしてラノベでよくあるタイプの建築様式…中世ヨーロッパってところか?
何よりこの動かしにくい小さい体が転生したぞと述べている。とりあえず産声でも上げとく。
「オギャー!オギャー!」
そして…ここで想定外の事態が起こる。
「弟の方も眼を開けたぞ!」
「まぁ!ふふっ、元気な双子ね。」
なんと弟が居ることが判明。パピルスみたいで丁度いい。てか滅茶苦茶嬉しい。
「オンギャ!オンギャ!」
「あなた? 名前はどうするの?」
「決めてあるぞ! 兄が『サンズ・アンテ』、弟が『パピルス・アンテ』だ!」
…名前ぇ!どうしてこうなった?神が手回しでもしたか?
ってか弟もパピルス『みたい』じゃなくてパピルス!…巻き添えくらったみたいでなんか申し訳ない。
そんな感じでオレの転生は始まり、産声を馬鹿デカくせざるを得なかった。
6年後
無事6歳になった『オイラ』はこの世界の情報を集めまくっていた。
文字やら情勢やら政治やら技術の発展やら…収集は中々大変だった。
一人称を『オイラ』に変えたのはサンズになれる可能性が1%でもあることが分かったから。ま、変わったのは言動もなんだけど。あと、いつもオイラはニヤニヤするようにしてる。原作通りな。
…さっき言った『可能性がある』ってのは、なんてったって魔力があるからだな。色々試行錯誤してみて分かったんだが、魔力の持つ可能性は無限大。今は魔力操作こそが可能性を広げると読んで、日々練習中だ。
因みに、アンテ家は片田舎で中々良いところの侯爵家。だからこそ色々自由にやらせてもらってるし、親もそれを認めてる。
「
お?なんて考えてたら呼ばれたな
「あぁ 兄ちゃんはここ
ツクテーン
ご定番のサムいギャグはしっかりやってかないとな。
「さむッ!…ってそうじゃなくて! 今日もボクの稽古につきあってもらうからねッ!」
雰囲気とかそっくりに育ってしまった弟。人間だけどちゃんと性格がパピルスなんだが?…オイラはなんもしてないぜ?
あ、そうそう。稽古というのは剣のことで、ウチの家系は『魔剣士』という魔力で体を強化して戦う剣士を代々排出している。
「へへへ、いいぜ。やってやるよ」
正直、サンズに剣は合わんとか言われそうな気がする。でも、骨を使って剣みたいに戦うサンズはカッコ良さそうだから剣術は大事にしてるんだ。実際そういう創作作品みたことあるし。
つってもオイラは剣術を並で使える程度で、パピルスは剣士のセンスが
…もう一度言うぞ?それはもう
パピルスに剣術のセンス与えた奴は出てきてもらって…
ま、つまりは…
「ググッ!ウオァッ!危ねっ!」
「兄ちゃぁーん!まだまだ速度上げるよッ!」
弟の猛攻を避ける兄という構図の出来上がり。
本当に誰がこんなセンス与えたんだ?
前世で磨いた力を持ってしてこれは……魔力恐ろしや…
いや、こっちは魔力使ってないんだけどな。
まあ避ける特訓になるし、パピルス的には一番の練習になるらしいからほぼ毎日やってる。
一発当たったら魔力使ってやってやると言ってもう半年くらい経つが。
「へへ、最近は魔力無しだと流石に危なくなってきたけどな?」
「それ兄ちゃんが異常なだけだよ。ボクの剣を魔力無しで避ける人とかまだ兄ちゃんしか知らないし。」
「へへへ、どんな強い攻撃も避ければ0ダメージってな」
「それもそうだなッ!ニャハハハハハ!」
笑い方も原作通りだし…
へへへ、こんな日々が続くのも全然悪く無いな…
3年後…
よう。9歳となったオイラは魔力の修行のため、家を出て近くの森で魔力操作の訓練を行っていた。自分でいうのもなんだけど、サンズを目指すために寝る間を惜しんで努力したから、魔力量が多すぎて家じゃ全力を出せないんだよな。
今日も今日とて魔力の修行中だが、ここで一旦サンズの能力を纏めようと思う。
1、骨攻撃。白い骨を使う。骨は折れることはないし、人を簡単に貫通できる。地面からも生えるし、横からも上からも出る。
2、青攻撃。青い骨を使う。青い骨は基本的には人体を透けるが、人体がその骨に当たった状態で動けば、骨が実体化する。動けば体を貫通するので実質拘束可能。持続時間が短い。
3、重力操作。対象を上下左右に重力を変えられる。
4、ガスターブラスター。ブラスターによってビームを放つ。発射まで時間があり、見てから避けられるが、ダメージが大きい。
5、近道。過程をすっ飛ばす。つまり、出発→移動→到着の内、移動をすっ飛ばし、出発→到着とでき、実質瞬間移動が可能。
そこに行くまでの道のりはまだまだあることが分かるが、魔力の可能性は無限。いつかできると信じる。
そんなわけで、今日も遅くまで訓練をして…
そして……いつも通り、本当にいつも通り、家に帰ると…
いつも世話になっている執事、メイドは息をしておらず、地面は返り血で染まり、家は半壊。そして、パピルスが抵抗したであろう剣筋が家に傷をつけて見られた。
何より… 父と母が奥の方で血塗れで剣を刺されて放置されていた。
「クソッ!…パピルスッ! 居るか!? 返事をしてくれ!」
パピルスの安全確認が最優先だ!
そう判断し、声を荒げて叫ぶ。
その時、ザザっと地を踏む音が聞こえ、オイラは家の影に誰かがいると気づいた。
「ッ!パピルスか!?」
きっとパピルスだ!…と、
が、現実は非情だった。
「へぇ…お前が『兄ちゃん』ね」
「…ッ!?パピルスッ!? 誰だ、お前!」
『剣を突きつけられたパピルス』と共に『謎の男』が出てきた。ただ、パピルスを見たら致命傷は無い。
大丈夫だ。一旦冷静になれ…落ち着くんだ。
「…何が目的だ。アンタ」
「フッ…弟の命が惜しくば…大人しく同行してもらおうか?」
「兄ちゃん…」
「チッ…」
思わず舌打ちする。
ハァ…仕方ない…か。
「…分かった。」
弟を拘束した奴だ…恐らく、『オレ』が動けばすぐにパピルスは切られる…
…着いた先は研究施設。
外見からして既に気味が悪い…
そして、オレ達は檻の中に収監された。
「俺たちの目的は実験体を集めること…侯爵家の体はどうやら質が良いらしい。フッ……今頃あの家は焼けて、お前ら一族は山火事で全員死んだことになってるだろうよ。」
「……ふざけるのもッ…」
「パピルスッ!よせ…」
今は冷静であるべきだ…
そう伝えてこの状況について考えるが…
詰みだ。
パピルスを見捨てるなんて真似、オレには出来ない。
第一、サンズならそんなことはしない。
「アンタらは一体、何なんだ…」
「フッ…冥土の土産に教えてやる…俺たちはディアボロス教団…目的は魔人ディアボロスの復活だ」
「魔人なんて御伽話だぞッ!居るわけがないッ!」
その通りだ。御伽話の魔人の復活?正直言って意味がわからない。
…が、これほどの組織力…本当なんだろう。
「フッ……まあ精々頑張れ…生きれないだろうがな!」
「クソッ…」
馬鹿にしやがって…
そして……研究員らしき者に抵抗もできず、ブスリと注射器を刺され、意識が消えゆくのだった…
「パ…パピル、ス…」
次に意識が目覚めたのはどこか知るはずもない森の中……雑音が聞こえる。大雨が降っているらしい。
周りには誰も…いや1つ何かがいる…
まだ眼も十分に開けないくらい死にかけてる…
捨てられたのか…いや!逆に考えろ!ここで生還すれば!
漸く眼を完全に開くとそこには…
「……骨?」
目に入った自分の右手を震えながら見つめる。
自分の手が骨に…いや!それよりも!
「パピルスッ!大…丈……夫………か…」
原作のような骸骨姿のパピルス…だけど自分とは違い、助けるにはもう……
「兄…ちゃん。」
「ッ!……すまない…パピルス…守れなかった……うっ…」
涙が溢れ……助からないと分かってしまう……ごめん父さん、母さん……パピルスを守れなくて……
「笑ってよ…兄ちゃん。」
「えっ…」
「ボクは兄ちゃんの笑顔が一番好きなんだ…だから…」
パピルス…
「……へへへ…全部0になっちまったから…これから
「ニャハ…ハ…ハ、ハ……やっぱり……兄ちゃん…は……
笑顔が…いち…ば…ん……」ガクッ
「パピルスッ!!!!!」
暗い夜の森の中、大雨は激しく体を打ちつけ…水滴はさっきまで弟だった骨の上を流れ続けるのであった…
そう…物語の真の始まりはここから…
これは
「…オレはサンズになる……そして…ディアボロス教団を潰す!!!」
サンズはもっと怠惰だって?まだオリ主君はまだサンズになってないから当然だ!
原作サンズは相手(プレイヤー)に敵意を向ける際に一人称が『オレ』二人称が『おまえ』になります。オリ主君はこれを無意識にしています。