side サンズ
さて、学園にカチコミしに行くと決まった以上、この骸骨の見た目のままじゃ確実にアウト。
「…だからって変装する必要も無いがな。」
普通だったら変装必須の領域となる学園だが、今回はちょっと特殊なケースだ。
このブシン祭予選大会なるものは全ての生徒が観客となって集う…つまりは唯一
オイラにとっては絶好のチャンスと言える。
だから今オイラは…
「呑気に
学園の屋外にある競技場にて現在進行形で行われていく試合、ここに来てシドの姉であるクレアの出場回となった。
因みに、オイラは魔力で
「はてさて、実力は如何に…」
始まったと思えば勝負は一瞬。砂埃が高く舞い上がり、その中心には剣を相手の首元へ押し付けるクレアの姿があった。
ふむ、流石特待生とでも言うべきか。剣の才がよーく伝わる一撃だったな。
そういや、シドに悪魔憑きを治されたって耳にしたが……こりゃ、将来化けるのかもな。
ま、実際に戦ってみれば実力なんか一発で分かるんだが…そんなシドは戦闘狂のただ一人だけでいい……ん?逆?
「お次が大本命のシドさんですよ、と…やらかしてくれるなよ…?」
懐から取り出したケチャップを呑み干しながら、そう呟くのだった。
side シド
僕はとても運が良い、そう言い切れる。……何故って?
こんな大舞台、しかもネームド相手でモブになれるのだから!
生徒会長ローズ・オリアナ。
生徒会長という肩書き、目立つ黄金色の長髪、そして芸術の国オリアナの王女であり、更に剣術の腕もトップ。
これでもかってくらいにネームド成分たっぷりな彼女が僕の相手だ。大当たりだね。
「この幸運に感謝しないとな…」
周りの観客席からは彼女への応援で溢れかえり、僕の事など誰一人として見ていない。
そう、このタイミングだから…モブとして一番輝くこの場所だからこそ、僕の奥義…モブ式奥義四十八手を魅せなくてはならない!
さあ、ローズ・オリアナよ!この厳しい修行の果てに極めた絶技を見届けるがいい!
「ローズ・オリアナ対、シド・カゲノー!試合……開始!」
ここにきて初めて僕の名前が呼ばれ、勝負開始の合図と共に僕も彼女も地面を蹴って斬りかかっていく。
第一ステップは問題無し、此処からが肝心な所だ。
第二ステップで体全体に激しく魔力を流し、一時的に著しく感覚を強化…つまり、世界の時がゆっくりと進む様に見える。
そして第三ステップ、遅くなった時の中で相手の一挙手一投足まで見逃さないようにし…
今だ!
両方の剣が交差する直前、右手に隠しておいた血液入りの袋を口へ放り込み、ワザと剣を下へ逸らす。そして僕の腹部に会心の一撃が入る瞬間に、右脚へ全力を注いで回転しながら…吹っ飛ぶ!
「ぎゃっぺええええええええ!!!」
相手は僕が何をしたのかは露知らず。情けなく血を口から吹き出しながら宙を舞う僕の姿があるだけ。
これぞ…
さあ、一回戦で無様に負けるモブの役は…まだ終わっちゃいないぞ!
「?…い、一回戦勝者、ローズ・オリア…」
「待ってくれ!これで終わりなんて冗談じゃない!…ゲヴぉおおおッ!ガハッ…」
更に血を口からぶち撒ける。
「き、君…本当にまだやれるのかい?」
「…審判、彼の目はまだ死んでないようです。」
僕の覚悟に満ちた表情を見たのか、ローズ先輩は試合を続行させようとする。
「ありがとうございます先輩……続けましょう、まだモブ式奥義は四十七も残っている…!」
ぶっ倒れていた体を起こし、さもギリギリかのように震えながら間合いを保つ。
そう、まだ四十七もあるのだ。そしてこの試合に、この瞬間に懸ける思いはそれより遥かに大きい。
再び向かい合い、お互いに接近して剣を振りかぶる。
…モブ式奥義の真髄をとくと見るが良い!
side サンズ
何 や っ て ん だ ア イ ツ (定期)
…いや、分かってたことだが!
奴がシドとして試合に出るってことで何やるのかと思えば、無様なのか派手なのかよく分からない吹っ飛びを計15回見せて去って行った…整理してもよく分からないな。しかも相手は感激したような表情を浮かべて…多分何度も立ち上がる姿を見たからか?
もう呆れるぜ…あれがアイツなりのモブってことにしよう。
じゃあこれで一旦観戦は終了。血をぶちまけてた張本人の元へ向かうとするかね。
…って訳にはいかないがな。
近道を使ってフッ…と消えると、
「…そりゃ、アンタらにとってもチャンスの日だろうな。」
「何っ!?…グボァッ…!」
心臓が素早く骨で貫かれ、黒い衣が地面へと横たわった。
「
魔力探知で検知したのは2人…少ないな。
「冗談で終わって良かったんだがな…」
ここまで条件が揃うといよいよ確定か…学園襲撃。
シャドウガーデンに報告でも行くか…今からでも遅くは無い。
「…アイツにちょっと伝えて帰ろう。」
用が決まればさっさと退散、退散!
side シド
結局、審判のストップが入ってモブ式奥義が33個も残ってしまった。そんでもって出血量云々で医務室行きになりそうだったし…まあ完璧なモブムーブができたから満足なんだけど。
「あの…」
「ん?」
ふと声をかけられたので振り向けば…ピンク髪の…誰だっけ、学術学園の生徒?
「お…お怪我は大丈夫ですか?」
…あぁそっか、怪我をしてないのを誤魔化すために顔の8割を包帯でぐるぐる巻きにしてるんだった。
でもこんなモブに興味を持つなんて珍しい子だな。
そのままお茶でもという流れになって、近くのテラス席へ腰を下ろした。
そこに居るほとんどの生徒が学術学園の所属で、魔剣士の脳筋達は全員大会の方へ出向いているらしい。
「試合、見てました!剣術の試合とかいつもは見ないんですけど、何度も立ち上がって…カッコ良かったです!」
え、モブに対してカッコいいなんて、本当変わってる。まぁ僕もモブは好きだし否定はしないけどね。
するとソワソワしながら両手で大事そうに支えていた小さい袋を僕に向けて差し出す。これは…?
「クッキー、焼きました…お返しに…!」
お返し…一体何のことだろうか。少なくとも僕は何かあげた記憶がない…あれ、何か思い出せそう…?
「あ、ありがと。」
戸惑いつつも取り敢えず受け取る。…やっぱり駄目だな。必要じゃないことは思い出しにくい。
「も、もしよければ…友達からお願いします…」
「友達?」
どうなってまたそんなことに?でも、問題もなさそうだし…
「いいよ。」
と告げると、彼女の表情がパァッと明るくなり、一安心した様子が窺えた。まぁ、女性に恥を眼の前でかいて欲しくないしね。
「やった!やりました、お義父さま!」
「え?」
彼女の目線の先には初老で長身の男性。僕が関わりたくない相手が新聞を読んでいた。
ルスラン・バーネット副学園長…明らかな重要キャラの一人だ。そしてこの子の正体は彼の娘、シェリーバーネット…か。
僕が認知したのを確認してか、彼も僕のテーブルに同席する。
これは完全に予想外だ。この二人はどうしようもないくらいのネームド。モブキャラとして関係は築きたくなかった…!
学術学園は関わりが薄いから油断してたな。失態だ。
「あっ…怪我が痛むのですか?」
妙に落ち込む僕の姿を見てだろうか、そんな質問が飛んでくる。いや、君たちのせいだよ?*1
「いやいや、大丈夫。」
「ちゃんと医師に診てもらいなさい。後遺症が残れば大変だよ?」
「はい、帰りにでも。」
異常なしと診療されると大変だから口先だけ、だけど。
副学園長は届いたばかりのコーヒーを一口ズズッと啜ると、話し始めた。
「この娘は研究一筋でね…今も騎士団の依頼を受けて、アーティファクトの研究に没頭している。…そのせいか、ろくに友達も居なくてね…」
「お、お義父様!」
少し恥ずかしくなったのだろうか、シェリーは思わず声を上げるが、それを笑いながら宥めるルスラン。仲睦まじい家庭とはこの事を指すのだろう。
「…今はこうしているが、色々あったんだ。出来れば仲良くしてやってくれ。」
「はい…」
モブだったら大歓迎なんですけど…とは言えないので素直に返事をする。
仕方ない。大怪我って事で何日か休んで距離を取ろう。
顔面いっぱいの包帯を見せたらあっさり早退の許可が出されたので、姉の目線を掻い潜りつつ帰路を辿る。
色々あったけど、満足し切れなかったなぁ。もう一種類パンチが欲しいとこなんだけど…
「よう…」
「…その登場飽きたぞ。」
いきなり背面に現れるのはちょっとヒヤッとするけどね。
「今日も今日とていいモブムーブとやらに励んでるみたいだな?」
「そうだね、でもちょっと失敗もあったけど。見てたの?」
「へへ、そうだ。嬉しいか?…ま、本題はそこじゃないんだがだな?」
あ、本当に見てたんだ。でも本題って…
「単刀直入に言うぞ?…この学園、襲撃されるかもしれない。」
……な、何だと!?
王都郊外の廃墟にて…
「…何?人形3名が?」
「はい、連絡が完全に途絶えました。ただ、学園内では噂にすらなっていないとの事です。」
一人の教団員からの報告を受けたのは、赤い軽装をした若い者、そして重厚な鎧に全て覆われた騎士。
「前の人斬りの人形もやられちまったし、シャドウガーデンとやらが釣れてんじゃねえのか?」
「ああ、恐らくそうだろうな…」
軽い口調で喋る若い者に対し、騎士は低く、冷淡にポツポツと言葉をこぼしていく。
「こりゃあ作戦もバレてんじゃねえの、元
そう、この者こそがチルドレン1stの叛逆遊戯のレックス。
「問題ない。むしろ釣れていれば…好都合と言うものだろう。」
そして元ラウンズの痩騎士…学園崩壊は近い──
襲撃!?つまり、夢にまで見たあのシチュエーションが現実で!?
これは、絶対!絶対!ぜぇーったいに参加するしかないっ!
──ことは無いのかもしれない。
絵の構図云々は他の方々が出しているイラストをうまい具合に持って来たので似ている部分が多いです。だから構図が同じ!死刑!とか言わないで…(懇願)
因みにファンアートはいつでも、だれでもウェルカム、です!