*ホネの 実力者に なりたくて!   作:セッジョー

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*こうしんペース あげたい

自分がサンズ(怠惰)になったら駄目なんでね…
あ、UA56000ありがとうございます。


*策を 無視する そのホネ。

シドにとっては只のモブムーブにしか過ぎないその行動は、周囲の注目を掻っ攫い、絶望させるには十分なものであった。

 

そんな中、ローズは凍りついたような表情を浮かべる。

その原因は言わずもがな、身を挺して守ってくれたこの少年にあるだろう。

本来ローズが喰らう筈だった斬撃を受けた彼の体が地に触れる前に、手を背中へギリギリ滑り込ませて抱え込む。

 

「バカッ…どうして私を庇ったりなんか…」

 

まともに会話をしたことすら無い関係。その上で命を懸けてまで助けてくれたのは何故か。

ローズがそう問いかける間にも、彼からドクドクと出ていく液体は止まることを知らずに溢れ続ける。

その傷から目を逸らすように彼の顔を見れば、ゆっくりと口を開くのが目に入った。

 

「間…に…合っ……て、よ…か……」

 

そのまま少年は意識を失い、目は閉じられる。もう脈は感じられない。

最期の言葉は糸のように細く、弱々しく、活力の無い声だったが、ローズの瞳に映るその散り際の顔は……笑っていた。何かを果たした男の顔であった。

 

その瞬間、ローズの中で点と点が繋がる。

 

自分は愛されていたのだ…この少年にどうしようも無いくらいに。

大会での異常な健闘は何だったのか。

その際に見せた、火傷しそうな熱い信念を宿した瞳は何を見据えていたのか。

そして盾となってあの一撃を防いだのは何故か。

答えは全て、この少年によるローズへの愛に溢れた行動だったのだ。

 

ローズは王女である上、誰もが唸るような美貌を持っている。これまでアプローチを山のように受けてきたのは当然と言えるだろう。

 

「…シド・カゲノー君……!」

 

しかし、これ程までの……命を懸ける程の愛を捧いでもらったことは未だかつて無かった。

胸の内から熱いものが込み上げ、やがてそれは一筋の雫となって頬を伝う。

 

 

 

ただそれでも…現実はいつも非常である。

 

 

 

「大講堂へ移動する。ソイツのようになりたくなければ…大人しくついて来い。」

 

剣を眼前に突きつけられ、冷たく言い放たれる。その剣には彼の血がこびり付いていた。

反発するように睨みつけるが、何も変わらないのは当たり前。

剣も魔力も使えない今のローズには、無抵抗で応じるしか策は無かった。

最後にシドの顔を眺め、「ありがとう…」と告げて教室を出ていく。他の生徒も同様に其処を後にし、大講堂へ流れていく。

 

やがてその教室は一人の少年の死体だけが残った。

 

そして……

 

 

 

 

その()()は動き、胸を叩き始めた。

 

 

 

 

 

side シド

 

一回…二回…三回…四回…動け!

 

「ガハッ!ゲホッ…ゲホッ……はは、大成功だな。」

 

胸を叩いて四回目で止まった心臓が動き出し、あまりにも完璧な出来に笑みをこぼす。

 

十分間の臨死体験(ハート・ブレイク・モブ)…心臓を止めている間、魔力で脳の血流を正常に保つ。仕組みは簡単だが、一歩違えば後遺症、数歩違えばあの世行きの技…ってのがプロトタイプ版。

それが完成されたのが究極臨死体験(ハート・ブレイク・アルティメットモブ)

これはプロトタイプ版の方を何度も繰り返し修行し、研鑽を積んで、血管の位置や血液本来の自然な動きを理解した結果、生まれた奥義だ。

 

心臓を動かす十分か、モブとしての十分か…勿論僕は後者を選ぶ。だって奥義が発動できる又と無いチャンスだもんね。

今回は魔力が制限されててキツいかなーとか思ってたけど、魔力を細く加工すれば問題ないことに気づいた。これなら一時間くらいでも止めていられるね。

 

片手間に斬られた傷を魔力で治しながら、後ろに向き直る。目指すは…何処にしようか。

 

「さて…行くか!」

 

兎も角、ここからは…陰の実力者の時間だ!

 

 

────────────────────

 

 

同時刻、そんな騒ぎが起きているとは露知らず、シェリーは学園内の研究室にてアーティファクトの解析に没頭していた。

シェリーの耳に入る情報が極度の集中によって遮られ、廊下から聞こえる剣同士がかち合う音もその耳には届かない。

 

そして、その集中を中断させたのは…

 

パリィィイイン!!

 

「ハハッ!」

 

男が窓を突き破ってくるのと同時だった。

咄嗟にシェリーはアーティファクトを持ってその男から離れる。

 

「我らはシャドウガーデン…いや、シャドウガーディアンだっけか?…まァ、いいか……俺は()()()()、叛逆遊戯レックス様だァ!」

 

男の眼がシェリーの手中へ向かう。すると笑みを浮かべた。

 

「俺の仕事はペンダント型のアーティファクトの回収なんだが…分かりやすくて助かるねェ、嬢ちゃん。」

 

「ヒッ…!」

 

レックスは背中に手を回し、短剣を二本取り出し…シェリーの頭部を狙った一撃をくり出した。

 

が、それは直撃寸前で防がれる。

 

「させんっ!」

 

シェリーの警護にあたっていた『紅の騎士団』。その副団長のグレンが受け流す。

 

「へぇ、魔力も使えないのにやるじゃねェか。」

 

「実力差があれば受け流すのは容易いことだ。」

 

「実力差、ねェ……テメェ、俺より上だと思ってんのか?

 

急に声を低くし、グレンを睨みつける。だが、グレンは怯まずに剣を構えたままだ。

 

「あぁ、強いと思っているさ。…マルコッ!」

 

「はいっ!…グッ!シェリーさん、今のうちにッ!」

 

廊下から響き渡る金属音を出していた当の本人、紅の騎士団のマルコ。そこでの戦いは続いており、黒尽くめの男の剣を受け止めたタイミングでシェリーを逃すように仄めかす。

 

二人のその覚悟を受け取り、シェリーは駆け出す。グレンの断末魔が後方から聞こえたが、今はひたすらに背を向けるしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シド

 

最初に向かったのは屋上。

学園全体を見れるし、大講堂は天井が一部ガラスだ。

状況を見るのには最適の場所と言えるだろう。

 

大雑把に見ると…まず、人質を大講堂に纏めている。そして、警備は全滅。応援の騎士団は来ているものの、魔力の阻害で突入は難しい…と。

 

よく考えられた襲撃だ、僕としてもテンプレ通りでありがたい。

 

校舎に目をやれば、隠れている生徒を探し回る奴等の姿が其処彼処に見える。絵になる素晴らしい光景だ。

 

「…そして僕、意味深に見下ろす陰の実力者…! やりたいことリストの一つ達成だ!」

 

…しかし、だ。

 

これだけ良い点があるというのに最後の一点が目に余る。それは…

 

「美的センスに欠ける!」

 

TPOって何?って言わんばかりの黒尽くめ!真っ昼間から目立ち過ぎる!あれじゃ勘違いのクソダサファッションじゃないか!

 

「黒のロングコートは夜が一番似合うってのに…わかってないなぁアイツら。」

 

「なら、アンタのを白色にでも染めてみるか?」

 

「いやいや、陰の実力者っぽくないでしょそれ…ってサンズじゃん。」

 

気づいたら隣に骨が居た。

 

「よう。…どうしたその傷?」

 

サンズの目線が僕の腹部に集中する。モブ式奥義が─って説明しようとしたけど、「アンタのモブ談義は面倒だ」なんて言われて手で制された。酷い。

 

「…あれ、何でサンズは『近道』使えたの?魔力の阻害は?」

 

そう訊けば、サンズはニヤリと笑みを深くした。

 

「へへ…ちょっと魔力の()()をコピーした。ほら、奴等だけが魔力を使えるのは変だろ?だから試しに下っ端のを真似たら使えたぜ。」

 

魔力の波長は人によって違う。言わば指紋のようなものだ。因みにそれが滅茶苦茶乱れるのが魔力暴走だったりする。

 

「成程、そういう理屈で阻害が…でも僕はやらないかな。だってこのイベントを楽しみたいし、相手の策を完全に無視しても面白くないでしょ?」

 

ふと、隣を見れば呆れた顔つきで僕を睨みつけるサンズの姿が。…もしかして僕の顔に何かゴミでもついてる?

 

「アンタなぁ……で、これからどうするよ?制圧自体は即可能だが、人質が足を引っ張ってるぜ?」

 

「なら、夜までじっくり待とうかな。警戒もある程度解けるし、時間はたっぷりある…僕のコートもよく似合うしね。」

 

それまで何か暇つぶし…よし決めた。スナイパーごっこをしよう。

スライムで手に収まるコンパクトな弓を生成する。阻害されてもこのぐらいだったら問題ない。

後は心臓を狙って……shot*1

 

パキュゥゥンと風を切って飛んでいき、ターゲットの胸を貫いて血が吹き出す。その勢いのまま倒れてノックアウト。

 

まだまだ残りが居るから照準を絶え間なく動かす。警戒に勤しむ奴、窓から覗いて学園を眺めてる奴、隣に居た奴が突然倒れて焦る奴…頭やら心臓やらを撃ち抜き、一撃必殺だ。

 

「…次から襲撃する時には服装を考えて来るように。…ん?」

 

「おーおー、死体が散らかって…派手にやったな?」

 

隣で呟くサンズを尻目に、校舎を隙だらけで走る桃色髪のバカ…あれ?シェリーじゃん。*2

 

気をつけてるつもりなんだろうけどバレバレ。後ろからゆっくり迫ってるぞー…そこだっ!「グハッ!」

Mission complete

 

「あの走ってるの…アンタの知り合いか?」

 

「生憎のネームドだけどね。」

 

!…僕のモブ直感的にはこの事件、彼女を中心に展開される。このシナリオを進めなければ、陰の実力者ムーブができない…!?」

 

「独り言の最中悪いが、オイラは一旦ガンマのとこに行くぞ?」

 

知らぬ間に口に出ていたらしい。でもやる事は決まった。今回はお助けモブの役回りで行こう。

 

「じゃ、別行動になるね。後でまた合流しよう。」

 

「…こっちの動向は悟られるなよ?」

 

「それ、誰に言ってるんだ?」

 

サンズのジョーク混じりの発言に不敵な笑みを浮かべてそう返す。

 

そして、フッと空中へ両足を踏み出す。

屋上から華麗に飛び降りる僕…やりたい事リスト、もう一つ達成…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side サンズ

 

『近道』を使ってミツゴシへ向かう。

辿り着いたら、何やらガンマが慌てる様子が窺えた。

お、こっちに気づいたな。

 

「サンズ様…ご無事でなにより…」

 

「へへ、それよか状況はどんな感じだ?」

 

「はい、一応人員の確保は問題無いのですが…あの魔力阻害によって突入は難しいです。ご命令が出た場合は魔力無しで無理矢理にでも、という形になるかと。」

 

やはりそうなる、か…

 

「今回の件、アーティファクトが原因と見て間違いない。それを壊すか止めるか…いや、魔力を吸収するブツだ。壊したら何が起こるかわかったもんじゃないな。」

 

とすれば止めるのが正攻法になる。…アーティファクトを弄れるのはイータ。回収するのが一番か?

 

「…実は勝手ながら学園にニューを潜入させております。お役に立てば幸いです。」

 

「お、そうか…じゃあもう一度行ってくるぜ。アーティファクトを何とかしたら、ニューに連絡させる。」

 

「えぇ…此方でも用意を進めておきます。」

 

背を向けて片手を上げ、返事をする。

こんな重労働……今度休暇を挟むかな。

*1
いつも通りのネイティヴ

*2
漸く名前を覚えたバカ




劇場版残響編の特報来ましたね。モードレッドの講義は楽しいのだろうか…

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