この回は難産でしたが書きたかった所が書けたんで満足です。
side シド
シェリーは相も変わらずバレッバレの動きをしながら進んでいく。
その道中奴らが気づかない訳も無く……僕の手間がどんどん増えていくのだ。やれやれ…
斬って、投げ飛ばして、縛って、落として…人知れず葬ったと言っておこう。
そして彼女が階段に差し掛かったと思えば、四つん這いで昇っていく。…その体勢じゃ襲われた時、即座に逃げられないんじゃない?それに…
「…あぁっ!」
足元の注意が疎かになるよね。
シェリーがつま先を引っ掛けて階段から落ちて……僕はその華奢な体をしっかり受け止める。ついでに彼女が手に持っていたペンダント?のような物もキャッチ。
「…大丈夫?」
流石にこれ以上は見てられなかったから、モブとして助け舟を出すことにしたけど…このタイミングで良かったのだろうか。
「これ、落とすとこだったよ。」
大事そうに持っていたペンダントを渡す。恐らく、とんでもない値のものだったり、家宝だったりするのだろう。
「あわっ、ありがとうございます……シド君その怪我は!?」
「あぁ、奇跡的に一命を取り留めただけだから、気にしないで。」
あまり追求されると困るので軽く流す。いや、僕の心配はいいんだよ。問題は君自身だ。
「それより、色々言いたいことがある。独り言はやめましょうとか、考え事をしながら歩くのはやめましょうとか、足元に注意しましょう、とか…」
段々とシェリーが顔を赤らめながら申し訳ない、といった表情になってくる。
「でも先ずは…そのパタパタ五月蝿いソレを脱ごうか。」
足元を指差し、目線を下へ誘導させる。そこには濃いピンクのスリッパがあった。
スリッパ…そういえば、サンズも履いてたよね?
戦闘中とかもずっと着けっぱなしなのに、よく動けるなぁ。前世から特訓でもしてたのだろうか。
あれからシェリーともう少し行動を共にして、副学園長室へ。
「
「はい…脱出できていれば良いのですが…」
この場に居ない、となると様々な可能性が出てくる。まぁ、悪い方向には考えないようにしよう。
ドサっと備え付けのソファーに倒れ込み、足を組んで楽になる。案外良い座り心地だ。
五人……ここに来るまで五人を退けた。護衛の仕事も大変だね。
途中、モブ式奥義を発動しようと思ったけど、やってる間にシェリーがどうなるか分かったもんじゃないから、やむを得ず…
その当人のシェリーは棚をガサゴソと……あれ、何か本を取り出したぞ?
「ありました!」
その本をパラパラとめくり、出てきたページの挿絵を指差す。瞳のような形をした禍々しい球体…なにこれ。
「強欲の瞳というアーティファクトです。恐らくこれが魔力を阻害している原因だと…」
カードゲームにありそうな名前のソレは、どうやら中々凶悪な性能らしい。
効果範囲の魔剣士や魔力体から勝手に魔力を吸い取り、一時的に溜め込むことができるアーティファクト。で、その結果魔力を練るのが困難になる…とのこと。
「でも襲ってきた奴らは普通に使えてたよね?」
「それは魔力の波長を覚えさせ、吸収されないようにしたのだと思います。そうでなければ使用した本人も吸われてしまうので…」
おぉ、魔力の波長か。サンズの読みが当たってる。
「じゃあさ、無理やり魔力を使う、ってなればどうすれば良いの?」
「そうですね…感知できない程微細な魔力を使うか、吸収できないほど強力な魔力を練るか…まぁどちらとも人間には不可能なレベルですけどね。」
苦笑いを浮かべながらシェリーが言う。人間の力を超えた微細すぎる魔力か…じゃあ使えることは黙っとかないと。
「これだけであれば、ただ扱いが難しいアーティファクトで終わるのですが…凶悪、と説明したのは今から説明する部分にあります。」
そして一呼吸置き、また話し始める。
「…魔力を溜めるだけ溜め込んだ後、一気に爆発してしまうのです。」
…うーん、話が一気に面倒になった。いつ魔力を解放するか分からない以上、悠長にはしていられないか。夜まで何も起こらないことを願おう。
「その爆発の危険性から王都に保管していた筈だったのですが…」
「同じ性能の別物なのか、盗まれたのか…まあそこはさて置いて、対処法はあるの?」
そう尋ねると、シェリーは「はい!」と勢いよく答え、さっき見たペンダントのようなものを取り出す。
「このアーティファクトは強欲の瞳の制御装置なんです。本来、強欲の瞳はこの装置を使って魔力を長期保存することを目的だった…解読してやっと分かりました。」
「長期保存…つまり魔力の解放を止められると。」
「そうです!凄いですよね、この自在に魔力を保存し運用する技術を再現できれば、蒸気機関に代わるブレイクスルーに…」
研究者としての血が騒いだのだろうか、急に早口で喋り始めるシェリー。僕を置いていくのは是非ともやめてほしい。
「で、これからどうするの?」
「あ…そうですね、このアーティファクトの解読が全て終わったら、地下から大講堂へ向かいます。生徒が集められてるのはそこで間違い無いですよね?」
「そうだけど…地下から?」
「緊急時の脱出用にある隠し通路です。」
いいね、そういうの悪くないよ。
「これで近づいてアーティファクトを投げ入れられれば…」
ふむ、投げ入れるか……最後の詰めが甘いけど、万が一が起きたらシャドウになって暴れて何とかしよう。
「ただ…調整に必要なアーティファクトを研究室に置いてきてしまって…」
「なら、僕が取ってくるよ。トイレ行きたかったし丁度いいんだ。」
シェリーは不安そうな顔をしていたが、必要な物を教えてくれた。
大丈夫。君をここまで連れてきた時よりは疲れることもないからね。
そのままドアを開いて廊下に出たが…
「さっきと違って開放感が凄い!」
別にシェリーを悪く言う訳じゃ無いけど、勝手に見つかりすぎだし…
別にシェリーを悪く言う訳じゃ無いけど、危機管理能力がひどいし…
別にシェリーを悪く言う訳じゃ無いけど、僕のモブムーヴがしにくいし…
まぁ今は僕だけだし、気楽にやろうか…
「で、陰の実力者のムーヴはできそうか?」
「…随分早いお帰りだね。」
廊下を平然と歩く僕たち。とてもテロリストが此処を彷徨いているようには見えない。
普段の僕なら何にも気にせずに研究室に向かうのだろう。ただ今の僕の視線は前をいくサンズの足元、詰まるところスリッパに突き刺さっていた。
シェリーと違ってパタパタ鳴らないし、てか今までそれで戦ってたの?
「…ねえ、なんでサンズっていつもスリッパなの?」
とうとう堪えきれなくなって訊いてしまう。
「そりゃあ…うーん、見せた方が早いか。」
何を、と僕が言う前に片足のスリッパを脱いで、ブッカブカの靴下をスルッと取る。
すると細すぎる足…の骨が出てきた。
「この足だけじゃあ踏ん切りがつかなくてな。スリッパつけた方が動きやすいんだ。あと、脱げにくいようにスライムで弄ってるからスリッパは
確かにこの足ではスリッパ以外は履きにくいかも。サンズにとってはこれがベストと。
「でもアンタからこの手の話が出るとは思わなかったな。」
「実はさ、サンズも見たピンク髪の子…シェリーって名前なんだけど、スリッパでパタパタと五月蝿く……あ、そうそう。研究室向かってるのもその子関係だよ。」
「そういやネームドとか言ってたな。それと研究室に何の関係が?」
「アーティファクトの解読をするんだって。上手くいけば魔力を使えるようになるらしいよ?」
そう答えた途端、サンズの足がピタリと止まる。変なことでも言ったかな?
「それ、マジか?」
僕は特に迷うことなく首を縦に振った。
大講堂の壇上。全身を鎧に包み、その場にいるだけで背筋が凍るような威圧を放つ
「外の連中が騒がしいが、学園内は制圧完了だ。…途中魔力も使えないクセして舐めた態度取ってた騎士がいたっけかァ?まあこのレックス様の手でぶっ潰したがな。」
「そんなことはどうでもいい。アーティファクトの回収はどうした?…まさか忘れたなどと言う戯言を吐くつもりじゃないだろうな。」
「忘れた訳じゃあねェ。多分あのピンクの嬢ちゃんが持ってるだろうよ。居場所も分かってる。」
すると痩騎士は魔力を解放し、レックスの方へ向き直る。
「悪ふざけが過ぎるぞレックス。貴様の所為で計画に支障が出ている。早く行け…然もなくば、次に消えるのは貴様だ。」
「わ、分かった。分かったからその手を下げてくれ、すぐ回収するからよォ……あァ、そうだ。3rdどころか2ndまで居なくなった。もしかすっと、シャドウなんちゃらさんが来てるかもしれないぜェ?」
レックスはやや忠告にも近い報告を最後に伝え、気怠そうにこの場を去る。
「…漸く現れたか、シャドウガーデン。…だが私の夢は叶う。これで再びラウンズへと返り咲くのだ。」
痩騎士の不気味な笑い声は本人にしか聞こえず、その手中に
部下を何人か引き連れ、廊下を迷いもなく進んでいく。
レックスの足は間違いなく副学園長室に向かっていた。
しかし突然
「グァッ!」
背後から悲鳴。間違いなくレックスの部下のものだ。
ただ、そこにはもうその姿は無い。
続いて前から風を切る音。焦って振り返るも、さっきまで確かに存在していた部下の姿はもう無い。たった一瞬でレックスは一人となった。
「何だと…何が起こってる!?」
呆気に取られるという表現が一番適しているだろう。レックスはただ呟くことしか出来ない。だからこそ、後ろからの一撃に気づかない。
「グハッ…クソ、何なんだァ一体!…ガッ!」
(一撃一撃が重いッ、硬すぎる!そして見えない!ずっと後ろから受け続けてんのに、そっちを向いても何も無い!)
暫く受け続けるしかなく、攻撃が止んだのはレックスの息切れと同タイミングだった。
「…加速系のアーティファクト、そうなんだろォ!しつこく背後ばっか狙いやがって!ならァ、網だ!」
両手の剣の柄をぶつけると、赤い網がレックスを中心として広がる。
「お前がこの網に触れりゃ場所が分かる。その速さじゃ反動も酷い。詰みだぜェ!」
次の瞬間、下の地面が抉れるような音が聞こえ、下からは
レックスの眼がその正体を捉える前に腹部に直撃し、宙へ打ち上げられた。
そして、喰らって確信した。この白いモノが自分を追い詰めているのだと。
空中でぼやける視界が元に戻っていく…そして鮮明に目に入った。
「ホ…ネ!?」
レックスの頭が素早く回転し、思い起こすのは過去の報告。そして繋がるのは骨を使う者…ある骸骨の存在。
(シャドウガーデンかよォ!骸骨野郎はどこだ!)
しかし、それは誤算だった。相手が
骸骨探しにシフトチェンジしたレックスの顔面に、不可避と言って良い速さの拳が迫る。
その一発は不意打ちに近く、容赦無くレックスを隣にあった教室へ放り込む。
「ガッ…ハァッ…!」
(さっきとは違う鋭い一撃、明らかに拳骨。新手か!?)
教室の片隅まで吹き飛ばされたが、受け身を取って体勢をギリギリ立て直す。だがその教室は普通ではなかった。
ドシャリ…と湿った何かが落ちる音を聞いたレックスは其方に顔を向ける。そこには驚愕の光景が広がっていたのだ。
「な、う…嘘だろ!?」
当たり一面に広がる死体。それは学園生徒でも無く、学園教師でも無く、正真正銘教団員だった。
「出鱈目だ!何が…何が起こっている!?」
「君…」
「だ、誰だ!?」
「最高だね」
その後、レックスの悲鳴と共に血が吹き出す。
チルドレン1stとは思えない呆気ない最期だった。
作者の無駄話
ネタ分からなかったらごめんなさい。
あと台本形式です。
作者「今月忙しいなあ…更新サボろ…」
???「…どこへ行くんだぁ?」
作者「で、伝説の…超更新遅れユルサナイ人(友人)…!」
友人「更新しなければ…まずはお前から血祭りに上げてやる…」
作者「明日まで!明日までお待ちください!」
で、この話ができたってワケ。(自分が悪い)