仮面ライダーディヴェルト   作:虎ノ門ブチアナ

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#1 勇の世界

 世界の癌に立ち向かう最終戦士。

 その力は、世界を超え、時間を超えてまた別の世界へと舞い降りる。

 

 

 

「この力は……『ディヴェルト』? お前はそう言うのか」

 

 瓦礫と化した繁華街にて、男はその力に選ばれた。

 

 Die Welt(ディヴェルト)―――それは世界をまたぐ救世の(きざし)

 

――

 

金剛(こんごう)、CDはどこ!?」

「アズールベーカリーを右に曲がった交差点の真ん中、そう、そこだッ!」

 

 インカムからの案内に従い、銃器を構えた少年が走る。

 CD(コンバート・デモリッシャー)…そう名乗る存在が現れてから1年、この世界は彼の一方的な破壊行為によって滅亡の一途を辿っていた。

 だが人類は、兵器を開発し、生存可能な居住地を確保しながらCDに抗い続けていた。。

 

「くたばれCDィィ!!」

 

 少年が銃を乱射する。

 その弾丸は全てCDのまとう甲冑のような装甲に命中し、わずかながらダメージを与えていた。

 

「! 効いた、さすが金剛の開発した新型弾だ!」

 

 喜んでいるのも束の間、CDからの反撃が開始される。

 手から放たれる光弾が周辺を爆破し、その威力に少年はよろける。

 

雄弐(ゆうじ)! 今すぐ退避しろ!」

 

 金剛からの指示を受け、雄弐は退路を確認、走り抜ける。

 

「今回はちょっとダメージ受けてたみたいだぞ!」

「オーケー、だが継続しての戦闘は危険だ。さっきの攻撃で建物か脆くなってるみたいだ」

 

 了解、と雄弐が返すが、背後から爆発にも似た音が聞こえた。

 その正体は、跳躍したCDであった。

 人間離れした身体能力で雄弐の前に着地したCDが手の平を彼に向ける。

 

(マズった…!)

 

 雄弐が死を覚悟すると同時に、CDから光が放たれる。

 その眩しさと恐怖に、雄弐は目をつむる。

 

(って…あれ、光は…?)

 

 一向に光が当たらないので雄弐が目を開くと、眼前で純白の鎧をまとった戦士が光を防いでいたのだ。

 

「大丈夫か」

「は、ハイ」

「下がっていろ」

 

 戦士の野太い声に気圧(けお)され、雄弐は言われた通りにする他無かった。

 

「CD…よくもこの世界を」

 

 臨戦態勢に入る戦士だったが、CDは廃墟の影に隠れ姿をくらましてしまった。

 

「……逃げられたか」

「あ、あの!」

 

 戦士の力を解除し、人の姿をあらわにした男へと、雄弐が話しかける。

 

「さっきはありがとうございました!」

「当然のことをしたまでだ。ケガは無いか」

「はい…あなたは?」

 

 そう問われると、男は胸ポケットを少しまさぐると、何も入っていないことを確認して咳払いした。

 

「俺は小林。あのCDと戦い続けている者だ」

「っと、俺は阿部(あべ) 雄弐って言います。それと今の力は?」

 

 それはな、と小林が言うと再び胸ポケットに手を忍ばせる。

 

「…スマン、昔はタバコを良く吸っていたんだが、癖が抜けなくてな」

「それならウチの拠点に残りがあったはずっす。こんな時代だから一部の嗜好品を食料と交換してくれる行商がいるんでね」

「……世話になる」

 

――

 

 雄弐が拠点に戻ると、金剛に小林を紹介する。

 (こころよ)く歓迎する金剛に小林は少し違和感を覚えた。

 

「ここには他に仲間はいないのか?」

「ウッス、人が多くても揉めちゃって、今は2人でやりくりしてます」

「そうか…邪魔しちまうな」

「いえいえ、小林さんは命の恩人だ、ずっとってのは難しいかもですけど、しばらくいてて大丈夫ッスよ」

 

 そう言って笑いながらタバコを渡す雄弐に小林は頭を下げる。

 

「それで金剛、と言ったか。お前は自分で武器を作ってるんだってな」

「ハイ、武器だけじゃなくてここのインフラも俺がまかなってます」

「ならコイツについて話しても驚かねぇな」

 

 小林が腰に謎のベルトを出現させる。

 

「コイツは『ディヴェルト』、頭ン中でそう言ってきた。“別世界から俺達を助けるために来た”ってことしか分からないが、コイツがあればCDを倒せる……それは間違い無い」

「興味深いですなぁ、少し解析させてください」

「ああ、このベルト外せないらしいからこのままで頼む」

 

 金剛が近場の作業台からケーブルを拝借すると、ベルトに接触させていく。

 

「それにしてもお前らは若いのにたくましいな。1年で鍛え上げられたとは思えん生命力だ」

「へへ、元から図太くやってたんで、親や先生にも迷惑をかけちまいましたが、今は恩返しもロクに出来ねぇっすから……せめて全ての元凶をブッ潰してやるしかねーんす」

 

 食事の準備をする雄弐が笑うが、小林はあまり良くないことを聞いてしまったとうつむく。

 

「…俺も、自分の話をして良いか」

「もちろん! 遠慮しないでいいっすよ」

 

 小林はタバコを吸おうとするが、未成年の少年らがいることに気付いて胸ポケットにしまいこんだ。

 

「俺は元々自衛官だったんだが、CDに成す術が無くてな。まぁお前らの知っている通り現代火器ではアイツは倒せなかった。あの時守ろうとしてた町ごと、何もかもヤツに壊された」

 

 ディヴェルトの力を手に入れた小林だけが(たたず)む、“街だった場所”は、静寂だけが広がっていた。

 その時、小林はディヴェルトを必ず倒すと決意した。

 

「…俺はあれから、CDを追いかけ続けてきたが、結局ロクな結果を残せていない。情けない限りだ」

「でも、小林さんが助けてくれたおかげで俺生きてますし」

「そのディヴェルトってのがこれから人類が逆転する切り札になるかもですよ!」

 

 2人に励まされ、小林は微笑む。

 

「そうだ小林さん、もうすぐで飯ができるんで食ってってください!」

 

 小林がうなづくと、衝撃と共に拠点が大きく揺れる。

 

「なんだ!?」

「……今日こそ決着をつける」

 

 淡々と小林がつぶやき、ベルトに取り付けられたケーブルを金剛に取ってもらい、外に出る。

 

「お前らは必要な物を持ってここから離れろ」

「CDなんですか?」

「多分な」

 

 CDと聞いて銃を取り出し構える雄弐だったが、小林に止められる。

 

「やめておけ、ここは俺に任せてくれ」

「それでも、俺達は今まで生き延びてきた人間として戦わなくちゃいけないんですよ!」

「違う! …お前らはこれからを生きる人間だ。生きろ、そして未来を繋げ」

 

 小林に(さと)され呆然とする雄弐を置いて、彼は走り出す。

 

 向かってくる小林に気付いたCDが光弾を放つ。が、それらは小林には届かず、彼の歩みを止められない。

 

「待たせたな、CD!」

 

 光弾による爆発を背に、小林の腰に現れたベルトへ手をかざす。

 

「―――変神」

 

 CDが連射する光弾の中で、究極の戦士が爆誕する。

 すなわち、ディヴェルト。

 

 ディヴェルトの力を察知したCDが彼を追跡するが、想像を絶する俊敏さのディヴェルトを目視できず、背後から鉄拳を食らう。

 

「まずは一発…!」

 

 CDは再び光弾を発射、辺りを根絶やしにするが、ディヴェルトには当たらず、今度は蹴りを見舞われる。

 予想外の打撃によって体勢を崩すCDにディヴェルトは感動すら覚えていた。

 

「これが…ディヴェルトの力…! これならみんなを助けられるッ!」

 

 ディヴェルトには光弾が当たらないと学習したCDは手に光を収束させて刃を形成し、直接の肉弾戦に持ち込む。

 武器を持たないディヴェルトにとっては不利に見えたその戦法だったが、そんな小細工は通用しない。

 

「安っぽい剣がなんだ!」

 

 ディヴェルトの繰り出す手刀がCDの光刃を砕き、怯ませる。そしてその隙に腹を蹴り込む。

 

「この世界を見てみろ! お前のせいでまっさらだ!! この悔しさが、怒りが……お前の振りかざした力に負ける訳が無いだろッ!!」

 

 全身から光線を放ち反撃するCDだったが、ディヴェルトに全て防御されてしまう。

 うろたえるCDを見逃さず、ディヴェルトは彼の顔面を掴み、後頭部を地面へと沈める。

 

「見えるか、お前が唯一奪えなかったこの青空を!」

 

 逆光にあてられたディヴェルトの姿はまるで獲物をほふる獣のごとき恐ろしさを秘めていた。

 その恐怖に負けたCDは最期の断末魔を上げる。

 人とは思えないその気味悪い叫びにディヴェルトの動きが止まる。

 その隙にCDがディヴェルトに組み付き、ゼロ距離で光弾を浴びせる。

 

「チッ、邪魔だ!!」

 

 ダメージは軽いが、凄まじい力で張り付くCDに手間取ってしまう。

 このままでは手数で押されてしまい、危険であった。

 

「…離れろォォォ!!」

 

 油断していたCDの背中に弾丸が撃ち込まれる。

 CDが攻撃の方向を振り向くと、そこでは雄弐と金剛が笑っていた。

 

「今だぜ金剛!」

「あいよッ!」

 

 金剛が持っていたリモコンを操作すると、CDの背部に強力な衝撃が加わり、ディヴェルトを放す。

 

「ディヴェルトから解析された、CDに有効な衝撃波を起こす弾丸だ!」

「プラス、ヤツの内部に埋め込まれる弾丸! 人間サマを舐めんな!」

 

 思わぬ助力にディヴェルトが親指が立てる。

 と、CDは再び絶叫を上げると、全身を発光させる。

 それはまさしく、最後の輝きと言わざるを得ない、本能が危険を訴えかける光であった。

 

「! 雄弐、金剛!! 今すぐここから離れろッ!」

 

 CDを抱えたディヴェルトが上空へと跳躍する。

 

「小林さん!!」

「…じゃあな!! これからの未来を頼んだぞ!!」

 

 どんどんとディヴェルトの姿は見えなくなり、やがて大きな爆発が見えた。

 

「……嘘だろ」

「小林さん……」

 

 膝から崩れ落ちた雄弐のもとに、光が降り注ぐ。

 その光は世界を包み、再構築を開始する。

 

――

 

 ―――あれから10年。

 CDが存在したという記憶、歴史が抹消され、人々は平和な時代を享受していた。

 

「雄弐! お前が昔から頼んでたヤツもうすぐ完成するぜ!」

「ああ、金剛…本当にありがとう」

 

 この世界の全ての人は、かつてディヴェルトという英雄が未来を守ってくれたことを忘れている。

 

 雄弐を除いては―――。

 

「時空間移動システム…これで今度は俺達が別の世界を助けに行くんだ」

「今度?」

「いや、なんでも無い」

 

 雄弐が微笑むと、金剛と共に世界を超えて人々に平和をもたらす力の開発を再開する。

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