世界の癌に立ち向かう最終戦士。
その力は、世界を超え、時間を超えてまた別の世界へと舞い降りる。
日本、岐阜県。
その地を残して、世界は焦土と化した―――。
その猛攻のさなか、なぜ岐阜…厳密にはその一部地域が被害を
岐阜在住の青年『
――
「透、落ち着いた?」
「ああ」
母から手渡されたコーヒーで手を温めながらうなづいた彼は、さきほどの力を思い出し、ため息をつく。
「さっきの…見てたよな」
「ええ、透の体が変わって、みんなを守ったのよ」
「コイツは、この力は、『ディヴェルト』と名乗ってた。どうにも俺がこの世界を救う戦士ってことらしい。イヤイヤ、ンー…」
自分にも言い聞かせるように淡々と説明する。が、どうにも透は落ち着かず腕を組む。
「あの力は凄かったが、結局この辺り以外は全然守れちゃいない…ライフラインもダメージを受けたし、親戚や友達だって、守り切れなかった」
「今ここにあなたや私、お父さんがいる…それだけでも嬉しいわ」
そうだな、とつぶやいた透はコーヒーを一口すすってテーブルに置くと、外出の準備を始める。
「コーヒーそのままにしといてくれ。ちょっと行きたい場所がある」
「秋穂ちゃんのところ?」
「お見通しだな…アイツが無事か心配なんだよ」
苦笑した透は上着を羽織って家を出る。
と、そこには若い女性が立っていた。
「…秋穂! ちょうどお前のところに行こうかと」
「なぁんだ、考えることは一緒だね」
秋穂が笑うと、
「寒いだろ、上がってけよ」
「お邪魔します」
透の恋人、『
素直で明るい彼女の笑顔に透は安らぐ。
「さっきの…なんか凄いヒト、あれ透だよね」
テレビでCDの攻撃を防いだ姿を目撃していた秋穂は開口一番に問いただす。
「イヤイヤ、ンー…実際そうなんだよな…俺自身も驚いてるが」
「私たちを守ってくれたんだよね。まずはありがとう、そう言わせてよ」
自分の状況を疑うこと無く受け入れる秋穂に、透は大きく息をつく。
「俺のことを怖がらないのか…?」
「全然? それよりも世界をメチャクチャにしたあのナントカさんの方が怖いよ」
「そうだよな……分からないことばかりだけど、秋穂や母さん、父さんも。俺の力があれば守れるかも知らない」
そう呟くと、透は右手を握りしめる。
と、手洗いから透の父が出てくる。
「おっ、秋穂ちゃん来てたのか。いらっしゃい」
「もう、お父さんこんな時にまで緊張感無いんだから……」
母の小言に平謝りする父に、透と秋穂は笑う。
しかし、その平穏を壊すようにインターホンの無機質な音がリビングに響く。
「…誰だ?」
「近所の小林さんかも知れないわね。心配して来てくれたのかも」
母の考えが当たっていることを信じて透はドアカメラを確認する。
そこに立っていたのは、女性のような
「ひっ!」
思わず悲鳴を上げる透だったが、大人しく玄関前で待っているCDに警戒しながらも接触してみようと考える。
「透、相手は誰だったんだ?」
「CD…世界をボコボコにしたアイツだ」
一気に場が凍りつく。
が、透は覚悟を決め、腰にベルトを発生させる。
「とにかく俺は出てみる。念のため一緒に来てくれ、みんな」
全員が近い位置にいる方が守りやすいと説明する透に従い、一同は玄関に集まる。
「今のところ攻撃の意思は無い。“ディヴェルト”の持ち主を一目見てみたいだけだ」
玄関の先から聞こえるCDの声に、透は
「ディヴェルトの力を知ってるなら不審なことはするな」
透の注意にはいはい、と答えるCDだったが、彼の姿を見た途端に目を見開いた。
「君は、クリアー……同胞じゃないか」
「同胞、だと…!?」
透が呆気に取られる。
「ますます面白いな…面白すぎて説明させてくれ」
なし崩し的に愛城邸に上がるCDに透は身構える。
「知りたくないか? 君自身のことを」
「……」
――
「これ、お茶です」
「お構いなく」
癖で茶を出してしまった透の母に、CDは会釈する。
「さて、突拍子も無い話になるが、『クリアー・デザイアラヴ』…今は愛城透だったか。君はかつて私と同じ世界を
目の前の彼女と同様に、以前CDと呼ばれていた透の前世は、『仮面ライダー』と名付けられた戦士らによって打倒されたのだ。
彼らの力によって倒されたCDは別の世界で転生し更生する。その例に漏れずCDであった“クリアー”はライダーに倒された後に“透”として転生したのだ。
「イヤイヤ、ンー…本当に突拍子も無いな」
「その口癖も昔のままだ」
「マジか」
「話を戻そう、単刀直入に言うと、私は君がまたCDになってくれることを望んでいる。同胞として、世界を破壊しつくすあの達成感を分かち合いたい」
真剣に相談するCDだったが、透は考えるまでも無く一言答える。
「断る」
「…そうか、なら仕方無い」
一瞬の内にCDが体から爆発を起こし、愛城邸から半径数km圏内を焼き尽くす。
「―――不審なことはするな、と言っただろ」
ディヴェルトの力により爆発を防ぎきった透は秋穂と家族の無事を確認すると、CDを睨みつける。
「俺には家族が、愛する人がいる。だからその昔の俺ってのにはならない」
「今の生き方で満足しているのかい? “クリアー”?」
「ああ、俺は―――“愛城透”は今、幸せなんだ。お前なんかに壊させはしない」
そうか、とCDが返すと、その下半身を爆弾にまみれた多足の異形へと変える。
「今度は君と一対一で勝負しよう。来てくれよ、透」
CDの挑発に乗った透はベルトに手をかざすと、ディヴェルトよりもたらされた言葉をなぞるように呟いた。
「変神」
瞬間、透の体は輝きと共に戦士の姿と
その光景に秋穂と両親は
「透! …帰ってくるよね?」
「ああ、待ってろ秋穂。それに父さんも母さんも……俺は俺として、アイツをやっつける!!」
その意志を告げると、CDと共にディヴェルトは上空へ飛び立ち、組み打つ。
「かつて君は言っていた…“透明になりたくない”と!」
「透明? なんだよそれ!」
ディヴェルトがCDを突き放し、
「過去の君は、生まれてから死ぬまでずっと孤独だったという…誰にも認知されず、誰にも記憶されず、それはまるで“透明になったみたい”だったと!」
「だからって世界を壊そうとしたってのか!?」
「実際壊したさ! そうして世界にとっての悪、癌になることでしか何者かになれなかった彼の気持ちを…他でも無い君が分かってほしいんだ!」
CDが体内から分離させた大量の爆弾がディヴェルトを襲う。が、全ての爆発を無傷でくぐり抜けた彼はCDの足を掴みながら着地、その勢いのまま彼女を振り回し、放り投げ、跳躍して追いつく。
「ふざけんな! 前世だか何だか知らないが、俺にそんな義理は無い! そもそもそんなことを言うなら…お前がいてやれば良かっただろ!?」
「私は彼に拒絶されたんだ!」
CDのパンチがディヴェルトを殴りつける。
「私の特別であることがクリアーの求めた存在価値では無かった…でも! 私には、彼を愛することしかできなかった!!」
ディヴェルトが硬直する。
世界を破壊するほどの力を持った超常的な存在に愛する感情が残っていたことに驚いたのだ。
「透…再びCDとなり、私を愛して…! そうすればこの世界を破壊しない!」
「……」
ディヴェルト―――透は思い悩む。これ以上家族や恋人を危険にさらしたくは無かった。
だが、自分の大切な人を思い浮かべたとき、答えは決まった。
「俺は…この世界で、愛城透として愛する人と共に生きる! だからお前とは一緒に行けない!」
「……そう」
「前世の俺が欲しかったものを俺は持ってる、俺はもう透明なんかじゃないんだ!」
それを聞いたCDはその場に座り込む。
「なんだ…君だけが幸せになっちゃってさ……私は、君を失って、ただ壊すことしかできなくなったって言うのに……」
「破壊しか知らない今のお前じゃ、出会いなんて無いぞ」
「じゃあ私は…どうすればいい?」
涙を見せるCDにディヴェルトはただ、ひとつの方法しか示せなかった。
「…お前を倒して、いつか幸せになれるように転生させることしか、俺にはできない」
そうだね、と一言こぼすと、CDは再び立ち上がり、上空へと舞う。
「君の力で引導を渡してくれ、クリアーに会えもしないのに世界をさまよって壊すなんて、
「わかった……じゃあな、CD」
「最後に君に会えて、良かったかもね」
ディヴェルトから放たれた光の輪がCDを囲み、光に変えていく。
痛みの無いようにと願う透の思いがディヴェルトに慈悲の力を付与したのだ。
安らかに消えるCDと共に、世界もまた再構築される。
「世界を壊したの許せねぇが、ありがとうな、CD。俺、お前や前世の分まで幸せになるよ」