世界の癌に立ち向かう最終戦士。
その力は、世界を超え、時間を超えてまた別の世界へと舞い降りる。
白昼堂々、それは飛来した。
隕石のようなその物体は、すさまじい威力と共に地上へ激突し、街を破壊しながら出現した。
そこにいたのは、男だった。
続けざまに男の放った光が、街を燃やす。
そして炎の中に立つ男が、笑う。
「聞~こえるか人類諸君! 俺は『ヴァレド・オクスカ』! またの名を『
地球に降り立つと同時に周囲を破壊し尽くしたその存在、CDはさらなる侵攻を開始する。
「俺の目的はカンタンだぜ、この世界を、壊すんだよォォ!」
と、広がるばかりの炎に一台のバイクが突っ込んでいく。
その排気音に耳をすませたCDは
「…なんだ?」
自分の方へと大きくなっていく排気音。どうやらバイクが近づいてきているらしい。
「まさかこの状況下で俺ンとこに来るヤツがいんのかよ…」
CDのため息と共に、バイクに乗った男が炎を割って到着した。
「お前…ナニモンだ?」
「…俺は『
「ほう……お前まさか、『
聞き慣れない単語に雄弐は目を細めると、CDは笑いながら訂正する。
「はは悪いな、こっちの言葉だよ今のは。平たく言えば…“世界を救う戦士のことを覚えてる野郎”ってとこだな」
「ディヴェルトのこと知ってんのか」
「ディヴェルト! アイツはそう呼ばれてたのか。ま、今となればどうでもいいが」
そう告げると、CDは腕から生えた大砲を雄弐へと向ける。
「厄介なアンニャローを覚えてるとかまた面倒なヤツだぜ。消えな」
と、雄弐はバイクのメットインスペースから不可思議な端末を取り出す。
思わず興味が湧いてしまったCDは手を止める。
「? なんだそいつぁ」
「気になるか? 教えてやるよ」
《ジェネレートドライバー》
腰に取り付けられ、ベルト状になった端末から響く音声にCDが口笛を鳴らす。
「もしやディヴェルトの模造品か…」
「その通りだ。ディヴェルトのように、俺は…CDから世界を守る戦士になる!」
雄弐の親友であり
加えて、雄弐は
「…変身ッ!」
その言葉と共にスロットを中央部へ移動させると、雄弐の周囲を光が多い、装甲をまとわせる。
《インジェクト・プロジェクト・ジェネレート―――フォーム・アット・“ホーネット”》
変身音が轟くと、CDの前には蜂を模した戦士が立っていた。
黄色と黒のツートンと、機械的なダクト、右腕に取り付けられた針のようなパーツが特徴的なその戦士は、臨戦態勢を取ると高らかに名乗りを上げる。
「『仮面ライダープロトヴェスタ』…としておくか。行くぞCD!!」
「来いよ!!」
背部スラスターを噴射させ、プロトヴェスタが飛び立つと右腕の針を射出する。
難無く回避するCDだったが、それは
かつての世界で金剛が開発したCDに有効な衝撃波を放つ弾丸、それを再現した銃撃はCDに撃ち込まれると予想以上のダメージを叩きこむ。
「ぐへぇッ!!」
「食らいやがったか馬鹿野郎!」
衝撃によって転がったCDは痛みに
「効いたぜ今のは…まさか人間がここまでやるとは思わなかったぜ……」
「分かったんなら諦めろ! これ以上この世界を壊すんじゃねぇ!」
特殊銃を構えるプロトヴェスタを見たCDは、ゆっくりと目を閉じて微笑んだ。
「これで俺もおしまいか…なら1つ教えておくぜ、強き人類よ」
「…?」
「さっきお前の言ってたディヴェルトだが、ヤツは“光を失った”」
なんだと? とプロトヴェスタが問う。
彼の動揺を見てCDはさらに笑う。
「俺が以前訪れた世界でディヴェルトに選ばれた男は、自ら世界を滅ぼし、悪逆となり下がった。ヤツと共にいたディヴェルトもその影響を受け、俺らの同類、カンケルデータになっちまったさ」
「何を言ってやがる…!?」
「おっと、信じるも信じないもお前次第だがな、お前が憧れたヒーローさまはもういない、そう言ってンだよ。
「もう喋んなお前!」
プロトヴェスタが特殊銃を連射し、CDを蜂の巣にする。
あまりにも呆気無い勝負だったが、仮面ライダーの力を試用するにはいい機会だった。
なんとか勝利をおさめ、帰還しようとするプロトヴェスタだったが、その瞬間、倒されたはずのCDから大砲が発射された。
非常に大きな爆発を生むその砲弾は、プロトヴェスタに直撃し、重いダメージを食らわせつつベルトを破壊、変身を解除させてしまった。
「……CD!!」
「死んだと思ったか? 甘いな。俺たちゃ世界を破壊するんだぜ…結構頑丈なのよ」
痛みによって動けずにいる雄弐を見下ろし、CDは不敵な笑みを浮かべる。
「もうこの世界には戦えるヤツぁいないのか? ならオシマイだな! ディヴェルトもいない! 戦士もいない! 戦う気骨のある馬鹿はいねぇのかよ! ま、俺がぜんぶ壊しちまうがな!! ッーハッハッハァッ!!」
高笑いを響かせるCDに雄弐は悔し涙をこぼす。
こんな奴に世界を明け渡す訳にはいかないのに、自分にはもう、何もできない。そんな諦めが、心の中で沸き起こる。
「……いいやまだだ、まだ俺は生きてる! 俺が生きてるなら、まだ戦える! 戦えるなら、まだ勝てる!!」
さきほどの攻撃で落下していた特殊銃を握った雄弐は、無謀にも走り出す。
10年前、最低限の武器だけ持って、生身でCDへ向かって行った日を思い出す。
あの日と同じだ。闘志を無くすな。希望を見失うな。
そうすれば、きっと―――。
「この世界は…終わらせねぇぞぉおぉおッ!!」
彼の叫びに呼応するように、鐘の音が鳴る。
それは、雄弐にとって、聞き覚えのある荘厳な響きだった。
「…この音」
「そうだ、CD…来たみてぇだぞ、ディヴェルトがッ!」
雄弐の言葉にCDが動揺する。
確かにディヴェルトはカンケルデータへと
だが、今。
雄弐の腰には“あのベルト”が巻かれている。
彼が、ディヴェルトなのだ。
「嘘だ、ディヴェルトは、アイツは!!」
「大体わかったぜ、CD。ディヴェルトはお前の知らない別の世界でCDの力を克服して、変わったんだよ……『仮面ライダー』にな!」
形勢が一転したことを確信した雄弐が笑うと、脳内に情報が流し込まれる。
それはディヴェルトの声。今までディヴェルトとして戦ってきた者たちの声だった。
“雄弐、良く頑張ったな。ここから反撃するぞ”
「…小林さん!」
“野郎に手痛いのを食らわせてやれ!”
“みんなの笑顔を守りましょう!!”
“お前の大事な人を守るために戦え”
“君ならきっと、
「任せろ!!」
ディヴェルトから聞こえる、過去で、あるいは未来でディヴェルトだった人々からの声援。
それが雄弐の背中を押し、溢れる勇気が彼を動かす。
「行こう、ディヴェルト―――」
「―――変神ッ!!」
白と金の戦士が、誕生する。
仮面ライダーディヴェルト。
世界を救う因果の名を背負いし、究極の力。
「なッ、なッ、なんでディヴェルトが…いんだよ!?」
汗を噴き出して焦るCDにディヴェルトは歩み寄る。
「やめろ、近付くな! 俺は世界を、破壊―――」
「してみろよ。俺がお前を破壊する前にな!!」
圧倒されたCDは恐怖のあまり逃げ出す。
以前戦った相手とは思えないディヴェルトの覇気に彼は冷や汗を垂らす。
(なんだアイツなんだアイツなんだアイツ!? 戦ったら…死ぬぞ!?)
宇宙に飛び去るCDを追いかけ、ディヴェルトが跳躍する。
「……CD…逃げるつもりなら殺しゃしねぇが―――次に悪さをしたら…承知しねぇぞ」
「ハ…ハイ」
恐れで引きつりながら返事をしたCDがその世界を後にする。
幸い大きな被害をまぬがれた地球に、雄弐は思いをはせる。
(小林さんも見たのかな…この景色)
CD撃破に至らず、再構築が起こらない世界では、誰もがCDのことを、ディヴェルトのことを覚えていた。
多くの人々が、その雄姿を目に焼き付けたのだ。
後にこの世界では、対CD用武装派遣員『ライドエージェント』が採用されることとなる。
自分たちの世界のみならず、他の世界にも現れるCDに対抗するための組織が結成されるのだ。
世界に
社会を
それは、今も―――。
―――だが、人々は諦めず立ち向かい続ける。
その勇気は世界を超えて繋がり続け、希望をもたらす。