フランスパン食べたい
突然だが、俺は仮面ライダーが好きだ。
その中でも特に「仮面ライダーBLACKSUN」が好きなんだ。
あのシリアスな世界観……は一旦置いといて、BLACKSUNのビジュアル!
正しく『最強』って奴だろ……ホントにカッコいい。
だからこそ、俺は心の何処かで彼に憧れていた。
仮面ライダーBLACKSUNという存在に、南光太郎という男に。
故になりたかった。
BLACKSUN……『黒い太陽』に。
そう心に決め、俺の人生の方針が決まった。
俺の「そうなりたい」という気持ちは、そんじょそこらの憧れから成るものではない。
この熱は心の奥底で永遠に燃え続け、決して消えること無く、俺を動かしてくれた。
『黒い太陽』になるための原動力になってくれたのだ。
まず大切なのはその強靭な肉体とフィジカル。
生身の状態で蜘蛛怪人に脚を刺されても動じず、逆に抜けないようにして、その上で先端を潰せるように。
生身の状態で金鳳花怪人の花の棘攻撃を、最短の動きで防げるように。
生身の状態でSHADOWMOONに心臓を潰されようと、直ぐに変身に移行できるように。
人間の身体では到底辿り着ける地点ではないが、死ぬほど努力して、少しでも近づけるようにした。
柔道、空手、剣道、合気道、ボクシング、総合格闘技……さらに深いところまで行けばネットで調べた暗殺術……それ以外にも他多数。
取り敢えず、強くなるための努力だけは一切怠らなかった。
無論それだけで止まるほどの『愛』ではない。
本当に愛しているのであれば、見た目にも気を付けるものだ。
普段から服装は黒のロングコートとVネックの薄手の黒のロングシャツ、黒のボトムス、そして色は違うが黒の指ぬきグローブを着用、おまけといっちゃなんだが、サングラスも装着するようにしていた。
そしてバイク。
BLACKSUNでは然程出番がなかったものの、最終話のオープニングがかっこよすぎたんで、バイクにも乗れるようにしたいのだ。
てなわけで、16の時に原付免許、小型限定普通二輪免許、AT小型限定普通二輪免許、普通二輪免許等々……。
まぁ取れるバイク免許は片っ端から手に入れた。
とは言え、BLACKSUNに出てくるバトルホッパーのベース車両はホンダのCB750F。
大型なのだ。
つまるところ、18になるまでは乗れない。
だから今は乗ることを諦めて、バイクの『システム』を調べることにした。
例えばエンジンの構造。
一度自分で調べてみて、トレーニングの空き時間で作成したりした。
なんならもうそろそろでバトルホッパーが完成するかもしれない。
俺もそろそろ18になるから、バトルホッパーを乗りこなすのも時間の問題だろう。
あ、そうだ。
ほんっとについで感覚なのだが、太陽についても調べてみた。
『黒い太陽』になる以上、ホントの太陽のことも知っておこうっていう、そんくらいの興味でだ。
まぁ詳しいことを述べるといろんな数式を出したりする必要があるもんで面倒だ。
だから、掻い摘んで話そう。
太陽のエネルギーは核爆発の何兆倍も強い。
更に付け加えると、太陽が1秒間に放つエネルギーは、水爆、それもかの有名な「ツァーリ・ボンバ」を10億個集めてやっとなのだ。
これだけ聞けば、太陽の凄さがわかるだろう。
……とまぁ、そんなこんなし続けて数年経って、もう高校から卒業するのも秒読み位になったとある夏のある日。
俺はとある確信に辿り着いてしまった。
人間は、どんなに強くなろうと『限界』を超えられない。
必ずしも何処かで大きな壁にぶつかり、挫折するのだ。
南光太郎は身体に赤い『キングストーン』を埋め込まれたことによって、黒殿様飛蝗怪人になり、その強大な力を手に入れたのだ。
あの尋常じゃないタフさは、ただの人間が辿り着いていいものではない。
どれだけ努力しようとも、すべてをぶっちぎりで超越できる圧倒的な力というのは手に入らないのだ。
それがただの人間というものだ。
精々今の俺に出来ることは、群れてるだけのチンピラ共を全滅させる程度。
頑張ればヤクザも行けるだろう。
ただ武器があるとなれば話は変わってくる。
近接武器ならショベルで対応できるが、飛道具……それこそ銃なんかが来ればヤバいだろう。
とは言え、もしかしたら、ほんの僅かな可能性でしかないのだが、極限まで鍛え上げれば軍人すらもボコボコに出来るのもしれないけど。
だが、それほどまでに強くなろうとも太陽には勝てない。
それで『黒い太陽』を名乗るなど、おこがましいにもほどがある。
それは『黒い太陽』に対する侮辱に等しい。
ならばどうやってこの問題を解決するのか。
それは言葉にすれば、果てしなく単純明快でわかりやすい、たった一つのシンプルな答えだった。
『キングストーン』を見つけ出し、それを身体にぶち込むのだ。
『キングストーン』
それは神秘の石にて、作品中のキーアイテム。
赤と緑、太陽と月の石が揃うことで創世王を継ぐ事が出来るのだ。
BLACKSUNの設定だと、二匹の特別な飛蝗から抽出されて、日食の特殊条件下で変質した唯一無二の高純度結晶が『キングストーン』と呼ばれてる……らしい。
つまるところ、『キングストーン』があれば俺は人間を超越し、俺の理想、『黒い太陽』に成れるのだ。
馬鹿とでも阿呆とでもなんとでも言うがいい。
どれだけ罵声を浴びようとも、俺は必ず見つけ出してやる。
「いつか俺が『
空に浮かぶ強敵を見上げ、俺はショベル片手に付近の山へと進行していった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あまりにも無謀な散策だったためか、いつの間にか青黒い夜の色が頭の上に拡がっている。
そんな暗い空を、月は照らしてくれている。
「……まぁ、そう簡単には見つからんよな」
そこら中に開けまくった穴を眺め、持ってきたココア缶の蓋を開けて飲む。
口全体にココア特有の甘さが広がる。
やはりココアは良い。
俺の脳にエネルギーを与えてくれる。
とは言え、こんな方法じゃ見つからないというのは明々白々だ。
なんせ『ストーン』は、怪人の中に埋まっているのだから。
地面を掘って出てくるなど、普通にありえないのだ。
必要になってくるのは怪人に勝って、石取って、俺が取り込むこと。
そして何より、怪人を見つけることだ。
俺が生きていた人生の中で、今までにない無理難題。
されど、諦めていい理由にはならないし、なるわけない。
『黒い太陽』に成ることに、妥協はいらないのだ。
妥協をして成った『黒い太陽』など、それは偽りでしか無い。
「……なんて言ったは良いものの、そろそろ挫折しそうだよ俺h「魔力!」……マジか」
己の信念にほんの一握りの後悔を浮かべていると、付近から何者かの声と何かを打ち付けるような衝撃音が聞こえる。
これも普段の耳トレの効果なのだろうか。
聞こえてきた音を頼りに、俺は何処か心を踊らせながらその声のもとに駆け寄る。
そこにはドデカイ岩に頭を打ち付ける白装束を身に纏った男が居た。
男の頭からは、間違いなく血がたれ流れているのだが、それでも尚頭をぶつけ続ける。
そして男は叫ぶ。
「魔力ぅぅぅ……まりょぉぉぉおく!!」
静かな森にドデカイ衝撃音が響き渡る。
間違いない。
こんなイカれた行動をするような奴だ。
絶対怪人の類だ。
怪人じゃなかったとしても怪人に類似した何か、少なくとも物の怪の類であることには違いない。
そんな確信を得ていると、暫定怪人野郎はおぼつかない足取りではあれど、そこそこの速さで何処かへ駆け出していく。
となれば、今の俺がやるべき事、成すべき事はたった一つだろう。
「待てやかいじぃぃぃいん!!」
全力で怪人狩りを遂行する!
お前を殺して俺が怪人になる!
俺がBLACKSUNになるのだ!
いつの間にか俺の足は、駆け出していった怪人を全力で追いかけるように速度を上げていった。
「魔力!魔力!魔力!魔力魔力魔力魔力魔力!!!!」
「怪人!怪人!怪人!怪人怪人怪人怪人怪人!!!!」
怪人は木の根に足を取られようとも、そのまま転がるように、獣のようにある一点目掛けて走る。
それに負けじと、俺もさらに足を早め、加速に勢いを増して駆ける。
互いに足を止めること無く、怪人が目指す光り輝く場所へと駆ける。
そして俺も怪人も、山から同じタイミングで飛び出した。
「あ……?」
「え……?」
光り輝いていたモノ。
それはこの世に存在するはずのない『魔力』、或いは新たな創世王の誕生シーン
……って訳も無く。
俺の耳が聞き取った音は、けたましいほどのブレーキ音。
そしてトラックの衝突音であった。
――高校最後の夏。
俺、
まぁ少なくとも、極々ありきたりな生涯は終了したのだ。
……そう、人としての生涯がね。
陰の実力者になりたくて!のアニメを一気見した故に二次創作書きたい欲望が暴発しました
多分、いや必ず亀更新になるとは思いますが、生暖かい目で見てやってください