こんなんでも読んでくれてる方々がいっぱいおるんや……作者頑張ります
うどん食べたい
「おかしいよな」
「おかしいな」
「おかしいですね」
「おかしいねー」
王女に告白して成功してしまった翌日の昼、俺たち4人は食堂で昼食を食いながら昨日のアレについて話し合う。
どうやらおかしいと思っていたのは俺だけではなかったようだ。
「正直言って、お前にアレクシア王女と付き合えるだけのスペックはない。俺ですら怪しいレベルだぜ?」
「クロノ君でオッケーなら、自分もいけたと思います。告白すればよかったなぁ」
さも当たり前みたいな感じで言ったのがヒョロで、呆れたように言いつつも何故か自信を持っているのがジャガ。
まぁお察しの通り、コイツ等はシドが認めたモブ友であるため、そんなスペックは無い。
ワンチャン、ほんとにワンチャン自称雰囲気イケメンのヒョロは行けるかも……いや、無理だな。
ジャガはもってのほか。
全方向モブ顔男だ。
とは言え、先程認識し合ったように今のこの状況は果てしなくおかしい。
俺は下級貴族よりも下、なんならそんじょそこらの平民よりも下の立ち位置にいるような男なのだ。
なんせ俺は家族なし、家なし、金なし、権力なしのフォーカードなのだ。
なんなら人間やめてるから人権もない可能性もある。
そうなれば不名誉なフルハウスの完成だ。
こうなったら潔くシドを殺してから腹を切って死のう。
となると、何故俺と付き合う選択をしたのか。
あの王女様、実は腹黒だったりするのか?
それとも頭がイカれていらっしゃるのか?
まさか何かしら裏があるのか?
……まぁどちらにせよ面倒なことに変わりはないが。
「……恋人やめてぇ」
周りの奴等に聞こえないほどの声量で愚痴をこぼし、俺は食事に集中する。
俺達が食ってるのは日替わり定食980ゼニー貧乏貴族コースという名のうどん。
とてもうまい。
味はいいし、極力長い間味わっていたいのだが、今はあまりそうしたくない。
なんせ周りにいる一般的な生徒達のざわめきが、俺の耳には届いているからだ。
『ほら、あれが……』
『嘘ー!あんなに顔怖いのに……』
『何かの間違いじゃ……』
『あ、私ありかも……』
『やめときなって!多分女殴ってるわよ……』
ってな女子生徒たちの一般的な会話をする声が聞こえたり。
『風の噂だとアイツ、弱み握って脅したらしいぜ……』
『マジかよあいつ絶対殺す……』
『演習で事故に見せかけて……』
『ここでやらなきゃ男が廃る……』
ってな男子生徒たちの果てしなく物騒な声が聞こえたり。
偏見や憎悪の集合体みたいなモンが俺に向けて解き放たれているお陰で、大変居づらい。
そんな中、シドだけは何も発せず、こちらをニマニマと笑いながら見てくる。
大変腹立たしい顔だ。
ここにフォークかナイフさえあれば襲いかかっていた。
なんなら箸で目潰ししてやろうかとも考えている。
「注目の人だね、クロノ」
「死ね」
「遂に暴言オンリーになっちゃったか……」
ニマニマとした笑みを続けながら煽るシドに対し、ノータイムで本音を伝える俺。
コイツと対話すると疲れるこらこそ、これくらいの対応の方が精神的に良い。
「……取り敢えず早く別れるのが最善策だな。どうせ何かしら裏はあるだろうし、あまり関わらずに過ごすとするか」
今度はこの机にいる奴等には聞こえるほどの声で呟く。
んで、すぐに飯を食う。
嫌な予感がするし、本能的に早く食った方がいいと言ってる気がするのだ。
「んだよ、そんなの勿体ねぇ。せっかくならとことん付き合えよ。あわよくばいい思いできるかもしれないぜ」
ニヤけながら言うヒョロ。
不敬罪で捕まりゃいいのに。
「ですね!なんなら自分が代わってあげても……へっ!?」
謎の自信を持ちながら言うジャガであったが、ありえないものを見てしまったのか、驚愕した声を上げて発言が止まる。
ジャガの発言が止まるのに合わせ、俺達3人はジャガが止まった要因であろう何かを見る。
そこには、ここに居るはずのない人物が立っていた。
「ご一緒してもいいかしら?」
第二王女、アレクシア・ミドガル降臨。
多分俺が感じ取っていた嫌な予感はこの事だったのだろう。
あまり関わらないようにすると決めたばっかりなのに、まさか本人が直々に俺の元に来るとは……めんどうだ。
そう思うと共に、飯を食う速度を上げ、完食する。
「……俺は食い終わったから、そこで仲良く食っとけ」
空になった食器を持ち上げ、席から立ち上がり、その場から逃げるように離れようとする俺。
が、それを王女は許さない。
「待ちなさい」
「ぐえぇ」
制服のネクタイ部分を掴み、俺を引き止めるアレクシア王女。
掴んだネクタイをそのまま引き寄せ、俺にだけ聞こえる程度の声で、耳元で囁く。
首が締まる。
「せっかく貴方の彼女が来たのよ?一緒に食べなさいよ」
「悪いが俺は食い終えたんでな。あとネクタイ引っ張んな」
「そう。それで?」
「……それで?」
「ええ。まだ私は食べ終えてないのよ?」
「……」
なんて我儘な王女様なのか……これはまた、果てしなく面倒くさい女に告白してしまったものだ。
あの日の俺を……あのテストをこの世から消し去りたいものだ。
「わかったら座りなさい」
「……はいはい」
諦めて元の席に戻ろうとするのだが、ここで違和感。
俺の隣に座っていたシド・カゲノー。
あの野郎、消えやがった。
「アイツ次顔合わせたらぬっ殺してやる……」
持ち続けている食器を割れない程度に強く持ち、怒りを抑えながら先程いた席に戻る。
んで、さも当たり前かのように俺の隣に座るアレクシア王女。
誰の許可で座ってやがる。
アレクシア王女が座ると共に、スタンバっていたメイドさん達が料理を机に並べる。
並べられたのは日替わり定食10000ゼニー超金持ち貴族コース。
格の違いを見せつけられた感覚だ。
「……それにしても量多いな」
「ええ、いつも食べきれないわ」
「勿体無いな……」
と、ここで俺の頭に電流走る。
ここで俺がアレクシア王女の料理食えば、流石に振られるんじゃね?
それに加えて俺の腹も満たされるとか、完璧すぎる作戦じゃね?
……やるか。
「なぁ王女様。食い切れないんだったら俺が食っても良いか?」
「ええ、いいわよ」
「んじゃありがたく……」
ちゃんと許可も貰ったんで、メインディッシュと思わしき肉を箸で取り、頬張る。
もちろん端っこからだ。
ここでど真ん中取るような規格外のアホおる?
居たとしたらソイツ人間の皮被ったバケモンだろ。
まぁそれは置いといて、この肉めっちゃ美味い。
値段がバカみたいな額だが、それくらいの価値があるんだと、食えば嫌でも実感できる。
この肉があまりにも美味かったもんで、思わず笑みが溢れてしまう。
さっきも言ったが、マジで美味い。
ちょっと前まで草とかよくわからん木の実食ってたからな……こんな美味いものを食えるだけで幸せなんだ。
「……ふふっ」
一切れの肉を味わいながら食う俺を見て、王女はほくそ笑む。
なんだ?
別れる意思でも湧いたか?
「随分美味しそうに食べるのね」
「実際美味いからな」
「なら、これも食べていいわよ」
「……ほんとか?」
「私は嘘はつかないわ」
「……後で何か請求するとかでもないんだな?」
「もちろん」
あまりにも魅惑的な誘いを聞き、つい目を輝かせてしまう。
こんな美味いものを無料でいただいてしまっていいのなら、とことん味わおうではないか。
ってなわけで、王女が差し出した魚系の料理、スイーツをありがたくいただく。
はたから見れば完全に餌付けされてるようにしか見えないが、それでいい。
食えるもんは食える時に食っとかねぇと。
「……そう言えば貴方、午後の王都ブシン流だったわね?」
「ん……そうだが、それがどうした」
一旦食うことに一区切りつけ、王女の質問に答える。
ほんとに「それがどうした」程度の質問内容だったのだが、一体何のための質問なのだろうか。
「一緒に受けようと思って」
「それは無理な話だろ。俺は9部で、王女様は1部なんだからよ」
「心配しないでもいいわよ。私の推薦で1部に席を空けてもらったから」
……これが圧倒的な権力か。
王族ってすげぇわ。
「……どうせ断ることは出来ねぇんだし、やってやるよ」
「話が早くて助かるわ」
アルファがよく浮かべる黒い笑顔とは少し違うが、それとどこか似た笑みを浮かべ、王女は食事を再開する。
この時大体察した。
あぁこの王女、きっと腹黒いんだなー……と。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昼食を終え、今は午後の実技が始まった。
普段なら9部であるため、あのクソボケカス中二病の地味で果てしなくうざい絡みに耐えながらやらねばならぬのだが、そんなストレスの要因は今ここに居ない。
なんせ今の俺は1部だから。
王女の権力バンザイってわけだな。
「今日から新しい仲間が入った」
そんな事を考えながらボケーっとしてると、1部の顧問であるゼノン先生が皆の前で声を上げる。
んで、そのゼノン先生の隣に立っている俺を皆に紹介する。
まぁ自己紹介は自分でやらなきゃならんのだがね。
「クロノ・フォルムーンです。お願いしやす」
あん時の誕生日パーティよろしくの挨拶をし、適当にお辞儀をする。
俺は誰の前であっても猫は被らないのだ。
ソーンのようにはならないのだ。
「みんな仲良くするように」
てな感じで稽古開始。
練習相手はもちろんアレクシア王女。
実力差で殺されるんじゃねぇのか?
「自慢じゃないが、俺の剣はからっきし駄目だ。馬鹿みたいに弱いぞ」
「心配しないで。コッチで合わせるから」
「……あいよ」
ワンチャン逃げれるかと思ったが、無理だった。
マジで剣は基礎しか出来ないのに……。
んで、そんなやり取りをしてから始めたのはマス。
マスってのは軽い実戦形式の稽古で、それを通して技や返しの確認をするってのだ。
だから決して実力を出し切ってやるのは愚か者のやる事だ。
周りの奴等がその悪い例ってやつで、魔力をマシマシに込めながらぶつかり合っている。
決してそれが悪いってわけではないのだが、今回の稽古にはあってない。
その点、アレクシア王女は素晴らしい。
使う魔力を最小限に抑えながら使い、太刀筋の良い剣を振るう。
基本に忠実で、基礎をしっかりとした、努力の結晶のような剣。
無駄が排除され、研ぎ澄まされている、一歩一歩基礎を積み上げてきた至高の剣。
冗談抜きで素晴らしい剣をしている。
いや、ほんとに素晴らしい。
そりゃ、『七陰』……主にアルファと比べりゃ相当な差があるが、多分太刀筋だけだったら超えてるんじゃないだろうか。
のびしろしかないわ。
それに剣以外も素晴らしいと来たものだ。
この稽古を始める前、俺流のストレッチをして身体をほぐしていたのだが、その際アレクシア王女は俺を真似てストレッチをしていた。
意識が高いからこそ出来るのだろう。
努力を重ね、基礎を鍛え上げるスタイル……俺に言わせりゃ、才能の原石でしかない。
そんなこんな考え事をしながらマスを続けてると、授業終わりを告げる鐘の音が鳴る。
案外早く終わっちまったもんだ。
「ありがとうございました」
「おう、ありがとうございました」
構えていた剣を降ろし、互いに向き合って例を言う。
「いい剣ね」
そこそこいい運動ができたもんで、身体を伸ばす俺に、アレクシア王女は言う。
そんな事を言ってるが、今やった剣は王女の下位互換程度の剣でしかない。
貴方のほうがもっといい剣だぞ。
「……でも、嫌いな剣」
あ、上げて落とされた。
今まで本心で褒めてた俺の言葉達返して。
「自分を見ているようだわ」
ゼノン先生の元へ向かいながら、そう呟いた。
大方、自分の剣をミドガル最強と謳われている姉と比べてしまっているのだろう。
いいぞぉ……挫折を味わえば味わう程、人間はより高みへと登れる。
強い奴ってのは、そこに至るまでの痛みを忘れない奴の事を言うんだから、そこで諦めず醜く足掻いてでも這い上がるんだぞ。
そんな事を考えながらしみじみ思っていると、アレクシア王女とゼノン先生の会話が聞こえてくる。
「それが君の答えというわけかな?アレクシア」
「ええそうよ。彼と付き合うことに決めたの。ゼノン先生」
妙に余裕そうな態度で尋ねるゼノン先生に対し、コチラもまた余裕綽々な感じで言うアレクシア王女。
なんか面倒そうな雰囲気がコチラにまで伝わって来ているのだが……まさかこの先生、王女の婚約者候補とか言わないよな?
「やれやれ、まるで子どもだな。いつまでもそうやって逃げられるわけじゃないよ」
「大人の事情は子どもにはわかりませんの」
「まだ公にこそなっていないが、私たちの婚約は……」
「まだ婚約者『候補』でしょ」
「君が承諾すれば話は進む」
「自分の結婚する相手は自分で決めるわ」
ハイ、預言者クロノ・フォルムーン降臨だ。
なんとなくわかってたよ畜生め。
何故俺がここに呼ばれたのかも、アレクシア王女……いや、アレクシアが俺の告白を断らなかった理由も。
ほんとに最悪だ。
これを聞いてしまった俺は確信してしまった。
この王女、間違いなく腹黒いんだ……と。
早いこと関係を絶とう。
今更ではありますが、クロノの見た目は無造作な黒髪ショートヘア、BLACKSUN版の南光太郎と同じ髪型に赤い目をしてます
イメージは必要だからね