黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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着実と、ゆっくりとですけどお気に入りが増えていっている……この喜びはボディーブローのようにじわじわと来るぞ……
そしてUA15000突破!かんしゃあ〜
これからも頑張って読者の皆さんが楽しんでもらえて、なおかつ作者が満足できるお話を錬成しますぜ
ゼリー食べたい


13話 アルファ、ヘブンをくれ

 

 アレクシアが間抜けなことに誘拐され、その犯人として尋問を喰らい続けたあの日から5日が経った。

 

「おら、さっさと行け」

 

 超乱暴に外へ放り投げられるパンツ一丁姿の俺。

 存外強く投げられたのと、5日間休みなしで拷問された事による精神的疲労で立ち上がるのに時間が掛かってしまう俺。

 それな俺目掛けて俺から巻き上げられた荷物達が放り投げられる。

 先程から扱いが雑過ぎる。

 

「……とりま服着るか」

 

 『キングストーン』があるお陰で寒さに関しては問題ないのだが、流石にパンイチ姿は恥ずい。

 俺にだって羞恥心はあるのだ。

 それに、こんなボドボドな身体は隠しておきたい。

 多分今の俺、存在が事案みたいなもんだし。

 

 てな訳で脱がされた制服やらを着用するわけなのだが、身体の節々が傷だらけな上に両手の指の爪が全部剥がされてるもんで、やたら時間が掛かってしまう。

 嬉々として俺の爪剥がしたあの野郎共……絶対にぶち殺してやる。

 必ず俺の手で奴等の首を狩ってやる……必ずだ。

 

 そんな憎悪の炎を心の奥底で燃やしつつ、服を着る。

 ネクタイは……付けなくてもいいか。

 

「バトルホッパー……いや、今日は電車で帰るか」

 

 一通り支度を終え、俺を捕らえていた場所から離れ、いつも通りバトルホッパーに乗って寮へと帰ろうとする。

 のだが、後ろに2人分の影、そして魔力を感じ取る。

 おそらく騎士団の奴だろう。

 となれば、バトルホッパーを見せるのは悪手というもの。

 

 そんな訳で仕方なく電車に乗ったわけなのだが、そこでもやはり付けられている。

 ほんっと、用意周到なこった。

 犯人じゃないから何もおかしな行動はしないというのに。

 

 監視されながらも寮付近の駅まで辿り着き、そこからは歩いて寮に帰る。

 別に殺っても良いんだが……後処理が面倒いんだよな。

 

 ってことを考えながら進んでいると。

 

「後で……」

 

 白いローブを着用した女性が、すれ違いざまにそう言う。

 何処か懐かしい、聞き覚えのある声。

 記憶に残るささやかな香水の香り。

 

「……アルファか」

 

 すれ違った人の正体が判明したタイミングで、俺の背後からか小さな叫び声が微かに聞こえた。

 グッジョブだ、アルファ。

 奴等の死体はちゃんと片付けておくんだぞ。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 5日間という、長くも短くもない期間留守にしていた寮の自室のドアを開く。

 窓からわずかに降り注ぐ夕焼け色の陽の光が、俺の部屋の机の上に片膝を立てて座る金髪美少女エルフを照らす。

 何故か『ミドガル魔剣士学園』の制服を着用している為、短いスカートから健康的な太ももが丸見えである。

 大変素晴らしい。

 こんなにも可愛いエルフっ娘が部屋で待っていてくれるとは、本当に素晴らしいものだ。

 

「久しぶりだな、アルファ」

 

 そう言い、ベッドの上に座りながらアルファを見続ける。

 いやー眼福眼福。

 傷の治りも速まるってもんだ。

 

「ほら、これ食べて」

「おう、ありがとな」

 

 机から離れ、『まぐろなるど』のバーガーを渡してくれるアルファ。

 それをありがたく受け取り、頬張る俺。

 うむ、5日ぶりのまともな飯は美味い。

 頬が落ちる。

 

「……ふふっ、美味しそうに食べるわね」

「実際美味いから仕方ないだろ。せっかくなら幸せを噛み締めさせてくれよ」

「ええ。しっかり味わって食べて」

 

 聖母のように微笑み、俺が食べるのを待つアルファ。

 いい意味で母さんみたいだ。

 

「それにしてもだ。今日の当番はゼータだった筈だが、なんでアルファが?」

 

 一旦食う手を止め、アルファに尋ねる。

 

「あの娘は……確か潜入捜査をしてくるなんて言ってたわ。だから代役として私が来たのよ」

「……そうか」

 

 潜入捜査……ねぇ。

 恐らくゼータがそう言ったのだろうが、コレで潜入捜査か……。

 

「ま、そういう事にしておくか」

 

 そう呟きつつ、アルファから貰ったバーガーを食い切る。

 

「ご馳走様でしたっと」

 

 食い切ったバーガーの紙包みを丸め、ゴミ箱目掛けて投げる。

 見事命中した所で、ベッドに座ったままでアルファにとある事を頼む。

 

「アルファ、ヘブンをくれ」

 

 ヘブン、正式名称はヒートヘブン。

 ご存知の通り、BLACKSUNのあのヒートヘブンだ。

 一週間に一回は接種しないと心が落ち着かんのだ。

 

「ええ。そこの冷蔵庫であってるかしら?」

「あってるぞ。ありがとうな」

「いいのよ。私にできる事なら何でも手伝わせてちょうだい」

 

 うーん、この尽くしてくれる健気な姿。

 是非とも俺が拷問される事になった原因の性悪王女には見習って欲しいものだ。

 

「はい」

「助かる」

 

 わざわざ冷蔵庫からヒートヘブンを取ってきてくれたアルファが、ちゃんと手渡しで俺に渡す。

 渡されたヘブンの封を口で開き、青緑色のゼリーを食べる。

 先程食べたバーガーよりも断然まずいが、傷の回復は速まる

 

 

 

 ……ってわけでもない。

 何故なら、このヒートヘブンには創世王のエキスも、人肉も使ってない、至って平凡的なゼリーである。

 ただ単にこれ食ってる時が一番落ち着くってだけなのだ。

 イータに頼めば完成形を出してきそうだが……止めておこう。

 

「……ふぅ、生き返る」

 

 ヘブンが入っていた袋を改めてゴミ箱に投げ入れ、そのままベッドに向かって倒れる。

 

「もう……服ぐらい着替えなさいよ」

「無理だ。俺はもう寝る」

「あなたねぇ、自分の立場分かってる?このままじゃあなたが犯人よ」

「だな」

 

 奴等からしたら、平民以下でパッとしない学生なんてのは、犯人に仕立て上げるのに丁度いいんだろうな。

 厄介なもんだ。

 

 それに加え、今回の事件は王族誘拐事件。

 誰かしら死ななければ収まりがつかないとなれば、真犯人が見つからなければ俺が処刑されるだろう。

 

「騎士団は信用できないわ」

「ふむ……『教団』が関わってるのか?」

「ええ、間違いなく」

 

 ベッドに足だけ出して横たわる俺に、アルファは顔を近付ける。

 やばいいい匂いする。

 安心する匂いする。

 

「王女誘拐は『教団』の手の者よ。目的は濃度の高い『英雄の血』ね」

「と言う事は、まだあの猫被り生きてるのか」

「死んだらそれ以上血を抜けないし」

「それもそうか」

 

 更に距離を縮めつつも話すアルファ。

 正直話の内容の8割位は頭に入ってない。

 整った美形の極みのような顔があと少しでキスできるくらいの距離まで迫っている今、冷静で居られる訳が無いだろう。

 

「あなたがなぜ王女様とロマンスを繰り広げてたかは知らないけど」

「あんな罵り合いと訓練の日々をロマンスとは言わないぞ」

 

 ジトッとした目で俺を睨みつつ、俺の左頬に手を添えるアルファ。

 ほんのり感じる人肌が温かい。

 この感覚すらも懐かしいものだな。

 

「でも楽しそうだったわよ。あんな顔、見たことなかったし」

 

 添えた手に僅かな力を入れ、俺と目を合わせながら言うアルファ。

 その頬は、少し赤い。

 そんな反応をしたアルファを見て、俺は大体察した。

 

 アルファは今、嫉妬しているのだと。

 

「まぁ、そうかもな……だが」

「んっ……」

 

 頬に置かれたアルファの手を片手で包み込み、もう片方の手で抱き寄せる。

 エルフ特有の長い耳を俺の口元に近付け、囁くように言う。

 

「一番信頼してんのはお前達なんだ。それだけは忘れないでくれ」

「……っ!」

 

 エルフっ娘は耳が弱い。

 一般的日本人なら知っていて当然の、常識ってやつだろう。

 

 それを証明するかのように、アルファの顔は思いっきり真っ赤になっていた。

 

「……そ、そう。わかったわ」

 

 普段のような落ち着いた声を出しているものの、顔が赤いから焦っているというのが手に取るようにわかる。

 ああ、これが「支配感」というものか……素晴らしい。

 

 気付けば俺は、アルファの手を包みこんでいた手でアルファの頭を撫でていた。

 なんか……いいな、これ。

 

「ホントは私が貴方にしてあげたかったのに……」

 

 それはいけない。

 お前達の前では格好つけたいんだ。

 

 約一分程頭を撫でて十二分に満足したので、頭から手を離し、抱き寄せていた手も離す。

 

「あっ……」

 

 おいなんだその寂しそうな顔は。

 食うぞ。

 多様な意味で。

 

「……ま、まぁいいわ。この事件が解決したら、『まぐろなるど』をご馳走して。さっきのバーガー私の分だから」

「おう」

 

 必死にいつもの澄まし顔に戻し、俺から離れるアルファ。

 それと同時にスライムスーツを起動させ、その身を漆黒に纏う。

 エロい……じゃなくて、可愛い。

 

「貴方はしばらく大人しくしてて。準備ができたら報せをよこすわ」

「色々ありがとな」

「良いのよ」

 

 ベッドに寝転んだまま、俺の部屋の窓に向かって歩んでいくアルファを見ながら会話をする。

 そのまま部屋から出ていくと思ったのだが、アルファは一度その場で歩みを止める。

 

「ところで……あなたを尋問していたあの2人だけど、取り敢えず消しておいていいかしら?」

 

 俺の方を振り向き、恐ろしい笑みを浮かべて尋ねるアルファ。

 これは相当キレてるな……。

 正直アルファに任せたほうが早く済むのだが、それだと俺の気が収まらん。

 だから駄目だ。

 

「悪いがアルファ、それは俺がやる事だ」

 

 腰回りに『キングストーン』を出現させ、明確な意思を見せる。

 あの騎士団2人は俺が殺す。

 ああいう厄介なのがこの世界から居なくなれば、それで十分だろ。

 

「そう……でも気が変わったら言って」

 

 俺の返答を聞き、止めていた足は再び前に進む。 

 手すりに跳んで登り、また俺の方を振り返りながら言う。

 

「それに、今回の作戦にはデルタも参加するし」

「デルタも来るのか」

「ええ、貴方に会いたがってたわよ」

「そうかそうか……」

 

 我が一番弟子、『馬鹿』……じゃなく『暴君』デルタ。

 顔合わせるたびに悪意のない極悪タックルが飛んでくることだろう……アイツ、前よりも強くなってるし今度こそ死ぬんじゃないか?

 

「それじゃあ、また後でね」

 

 そう言いながら微笑み、アルファは窓の外へと消えていった

 改めて思うが、2年の間でアルファも成長したんだな。

 肉体的にも、精神的にも。

 他の『七陰』達にも早く会いたいものだ。

 

 

 

 ……さて、と。

 

「そろそろ出てこい。ベッド下のストーカーキャット」

 

 ベッドから起き上がり、ベッド下に当たるように『キングストーン』を光らせる。

 

「ふにゃ!?」

 

 急に過剰な光が入った事によって、ベッド下の存在は驚き、跳ね上がる。

 それによりベッドにぶつかる。

 なんか……2年の間でへっぽこになったか?

 

「まったく……久しぶりの再会なのに酷くないかな?」

「久しぶりの再会だってのにベッド下から現れてくるやつに「酷い」とか言われたくないな」

「うっ……ごもっともな意見だ」

 

 そんな会話をしつつ、ベッド下に隠れていた者はようやくその姿を見せる。

 

 白金色の尻尾をゆらゆらと揺らす、アイスパープル色の瞳をした猫の獣人。

 何故かスライムスーツの胸周りを大胆に開け放っている、意図がわからなければ露出狂と言われてもおかしくないヤバい猫。

 偵察行為、潜入捜査と称して俺の部屋に入り込むストーカー。

 

「……久しぶりだな、ゼータ」

 

 名前を呼んだからか、ピンと上に立った尻尾を見つめ、俺は先程までアルファが座っていた机に腰掛けた。

 




作者は七陰の中だとゼータとアルファが大好きですよろしくお願いします
好きなキャラが多いせいでメインヒロインをどうするか迷う

日に日にコメントを求める欲望が増えていく
我儘だってのは重々承知だけど……コメント、ください!
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