黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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もうね……最高だよ!!!
油そば食べたい


15話 日が昇る頃には……

 

 ゼータを抱き枕にして快眠を得たあの日から2日が経った。

 5日間分の睡眠を濃縮したような、それ位の快眠だった。

 もう一度……いや、何度でもやりたいものだ。

 次夜にゼータを見つけたら問答無用でベッドに連れ込んでやろう。

 

 起きた時には居なくなっていたものの、ゼータがアルファと変わっていたとか言う心霊現象と呼ぶには恐ろしすぎる事例は、今回は無かった。

 ちょっと安心してる俺がいる。

 

 そんな俺は今、シドに呼び出されて、シドの部屋に盗って来たであろう高級品を飾っている。

 わざわざ俺の部屋にベッドだの机だの突っ込みやがって……最悪だ。

 

「クロノー、それもうちょっと右ね」

「はいはい」

「あ、行き過ぎた。もうちょっと左ー」

「……はいはい」

「うーん……やっぱさっきの方が良かったかも。クロノー、やっぱもう少し右ー」

「ぶっ殺すぞシド」

「急に怒るじゃん」

 

 仏の顔も三度とはよく言えたものだ。

 なんなら2回とも文句を言わずに直してやった俺を褒めて欲しいものだ。

 

「で、ここで良いのか?」

「うーん……オッケー!完璧だね。やっぱり良いねぇ、偶然拾った幻の絵画『モンクの叫び』!」

「偶然……か」

 

 盗賊をが奪ったものを殺った上で手に入れといて偶然とは、よく言えたものだ。

 それにしてもこの作品の名前……既視感ってこういう時に使うもんなんだろうな。

 

「あとはこのランプか」

「そうそう!」

 

 これまた盗って来たのか、両親からの仕送りで買ったのかわからないアンティークランプを設置する。

 こういうの骨董品って言うのか?案外これがあるから落ち着くって人間も居るんだよな。

 

「良いねぇ……心が満たされるよ」

 

 コイツみたいに。

 俺も前世ではBLACKSUN関連のアイテムは片っ端から集めてたし……多分それと同じようなもんだろう。

 

「そして最後に、今日届いたばかりのこれを……Set」

 

 謎のネイティブ発音と共に、ワインボトルの下に滑り込ませるように手紙を入れる。

 

「何だその手紙?」

「え?クロノの部屋に届いてたやつ」

「勝手に取ってんじゃねぇよ」

 

 ちょいとした疑問をシドにぶつけ、答えを聞き、急いで設置された手紙を奪い取る。

 何故そんな「なにも悪い事をしてない奴」の顔を出来るんだお前は。

 ナチュラルサイコパスめ。

 

 シドへの恨みを一度落ち着かせ、手紙に目を通す。

 書かれてあった内容はとてもわかりやすく、とある場所に来いという、至ってシンプルな内容だった。

 明らかな罠だ。

 

「……で、どうするの?行くのか、行かないのか」

「そんなの、お前なら言わなくても分かるだろ」

「だね」

 

 手紙を元の位置に戻しつつ、いつものサングラスを装着すると共に窓へ向かう。

 手すりに手をかけた所で振り向き、部屋の中央にドンと置かれた椅子に座るシド……否、シャドウに向けて口を開く。

 

「今日は俺が出しゃばらせてもらうぞ、シャドウ」

「ふっ……好きにするが良い」

 

 俺の宣言に、ワイングラス片手に答えるシャドウ。

 よっ、流石シャドウ様。

 許可も得た所で、俺は窓から外へ行き、手紙で指定されたあの場所へと向かう。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 夜風が吹き荒れる月夜、俺は路地裏に向けて足を進める。

 凍えるような寒さだ。

 こんな時にモフモフのアイツが近くにいればモフれていたのに……まったく、あの気まぐれキャットは。

 居て欲しい時には居なくて居て欲しくない時……は然程ないが、稀にそう思う時には居るし。

 

 ……まぁそういう所が面白いからいいんだが。

 猫だし。

 

 それにしても、明確な敵意を持ったような気配はない。

 誰かしら敵でも居るんじゃないかと思ったのだが?

 

「……なんだ?イタズラか?」

 

 だとしたらカッコつけてグラサン付けてんのがダサくなる……外そうかな。

 

 そんな事を考えつつ進んでいると、俺に向けて何かが飛来する。

 ソレを片手で受け止め、一瞥する。

 

「ブーツ……アレクシアのか」

 

 「何でこんな物が俺のもとに飛んできたのか?」と考えるよりも前に、その答えがやって来た。

 

「よう、色男。アレクシア王女の靴なんて持ってどうしたんだ?」

「あーあ。バッチリ魔力痕跡残ってるな」

 

 姿を表したのは俺を5日間も拷問してやがったあの騎士団の2人だった。

 

「……なるほど、そういう事か」

「ああ、そういうことだ」

「さっさと口を割れば痛い思いをせずに済んだのによ」

「クロノ・フォルムーン。王女誘拐の容疑で逮捕する」

 

 剣を鞘から引き抜き、嫌味ったらしい顔を浮かべる2人の騎士団。

 どうやら抵抗する事は許してくれないらしい。

 

 それがどうしたって言うんだ。

 

「……一度だけ質問する。答えれば痛い目を見ずに済む。アレクシアは何処だ」

 

 アレクシアのブーツをその場に放り、剣をコチラに向ける2人に対し、サングラスを外しながら言う。

 多少の圧は放ったのだが、まったく怯まなかったようで、剣先はコチラを向き続けている。

 

「おいおい!犯人はお前なんだから、俺達が知ってるわけか無いだろ?」

「それに、痛い目を見るだぁ?誰が?どうやってだよ!」

 

 ……なるほど。

 そう来るか。

 情報だけ吐いたら半殺しで許してやろうと思ったのだが、致し方あるまい。

 

「……なら、文句は言うなよ」

 

 腹部に力を込めつつ、ゆっくりと2人に歩み寄る。

 ありがたいことに俺と奴等との間は相当空いており、BLACKSUNのあのシーンを……金鳳花怪人のあのシーンを彷彿とさせる様な距離だ。

 となれば、やる事は1つだろう。

 

「おいおい!動くなよ」

「テメェ!痛い目見たいの――」

 

 片方が言葉を発し終えるよりも前に『キングストーン』を出現させながら駆け出し、その肉体をバッタ怪人へと変化させる。

 『リプラスフォーム』が全身を纏うよりも前にスライムスーツを起動させ、駆ける速度を上げていく。

 黒い帯状のスライムはベルトから身体へ、身体から頭や腕、足へと伸び、さらには先程まで存在しなかったバッタの脚を形成する。

 

 俺の姿はあの日見た憧れの姿、『黒殿様飛蝗怪人』に成っていた。

 

 変身を終えると共に雄叫びに似た様な声を上げ、金色の『破砕顎(クラッシャー)』を開き、発言途中だった方の男の左脇腹に思いっ切り噛み付く。

 

「ぎゃぁぁぁあああッ!!!」

 

 痛ましい叫び声を上げ、腹部から血を吹き上げながら後退する男。

 喰らいついた口はそのままに、右手で脇下、左手で左足をガシッと掴み、それぞれ上下に向けて力を入れ、勢い良く引っ張る。

 人間の体というのは脆いもので、3秒もかからずに上下が分離する。

 自分でやっていて何だが、大変恐ろしい事をしているものだ。

 品性と性根が常人の3倍程歪んでいて良かった。

 

「…………へ?」

 

 状況を理解できていなかったのか、地面に転がる下半身、壁にもたれ掛かる上半身を見て、素っ頓狂な声を出すもう一人の男。

 ソイツを横目に、噛みついた際に口に入った肉を吐き出し、口元を腕で軽くふく。

 

「お……お前、今何を!」

 

 ようやく状況を理解したようで、震える腕で剣をコチラに向ける男。

 このまま剣を振られてもめんどくさいと考えた俺は、魔力を練りに練りまくって硬化させた『穿滅腕(ディフィーターアーム)』で男の胸部を切り裂く。

 

「あぁぁぁぁぁあああッ!!」

 

 再び上がる痛ましい叫び声。

 少し後退し、膝をついて倒れる、地面に血を垂流してはいるが、まだ息はある。

 

「もう一度だけ聞いてやる。最後のチャンスだと思え」

 

 倒れた男の頭をガシッと掴んで持ち上げ、光の無い黒い目で睨みつけながら尋ねる。

 

「アレクシアは何処だ」

「……ふ、ふざけるな!騎士団を敵に回して……ただで済むと思うなよ!」

 

 ここで反抗するのか……素直に答えれば楽に殺ってやろうと思ったのだが、仕方ない。

 頭を掴んでいた手を離し、今度は首を掴んで持ち上げる。

 

「騎士団じゃなくて教団……いや、お前は『ゴルゴム』だったか」

「な、何故それを……!?」

「逆に聞くが、何故この俺が知らないとでも?」

 

 まぁゼータから貰った書類で分かっただけなんだが……まぁいい。

 

 そう言い、俺はスライムで形成されたスーツを解除する。

 それと同時に『リプラスフォーム』が俺の全身を包み込み、いつもの『BLACK』の姿に成る。

 改めて変化した俺の姿を見て、男は目を見開く。

 

「お、お前……!まさか!」

 

 ゼータの情報はしっかりとあっていたらしく、あからさまに動揺した震えた声で確信を得る男。

 この姿自体がゴルゴムを知ってるかどうかの証明になってくれる……ありがたいんもんだ。

 

「まぁそういう事だ。残念でしか無いな……せっかく『ゴルゴム』の関係者に会えたってのに、情報を抜かずに殺さなければならないなんて」

 

 赤い瞳をギラつかせ、首を絞める力を少し強くする。

 徐々に徐々に強くする。

 軽く恐怖を、このままだと殺されてしまうという恐怖を植え付けるように。

 

「ま、待ってくれ!話す!話すから待ってくれ!」

 

 焦りからか、はたまた命が惜しくなったのか、早口ではあるものの『ゴルゴム』の情報を言う。

 軽くまとめると、人間を怪人にするための薬品があり、それを身体に刺せば変化するということや、今回の首謀者がそれを所持していること等々。

 

「なるほど。で、アレクシアは何処だ」

「し、知らねぇ!ホントに知らねぇんだ!だから……」

「わかった。もう喋るな」

 

 掴んでいた手の力を僅かに緩める。

 呼吸の速度が上がってはいるが、先程から一転し、多少安堵したような顔をしている。

 何故だろうか。

 

「なら、お前はもう用済みだ」

「…………は?」

 

 そう言うと、男の表情は更に一転。

 安堵から絶望へ、絶望から戸惑い、さらに微かながら怒りが読み取れるような顔になった。

 

「何か勘違いしてるようだが、情報を吐いたからと言って殺さないとは言ってないぞ」

 

 何故助かるなんて思ってしまったのか。

 

 ……というか、その情報はゼータ伝えで既に知っている。

 今更確認されたところで何になるというのだ。

 

「まぁ安心しろよ。日が昇る頃には……」

「ま、待っ」

「すべてが終わるからなァ!」

 

 男の静止を無視し、掴んでいた手を離し、男の体を一時的に宙に浮かす。

 掴んでいた右手を離すと同時に、先程からずっと強く握りしめていた左手で、男が地に足をつけるよりも前に顔を本気で殴る。

 その勢いと力は素の人間が喰らって良いものでは無く、後ろに思いっ切り飛ぶでもなく、拳が直撃すると共に男の頭は弾け飛んだ。

 我ながら恐ろしい力だ。

 

「……はぁ」

 

 そろそろ雨でも降りそうな空を見つめ、少し大きめな溜め息を吐きながら変身を解除する。

 

 ここ最近の一番のストレスの原因を自分の手で滅せたのは喜ばしいことではあるのだが、如何せん先程から口の中が血の味しかしない。

 BLACKSUNのあのシーンを再現したかっただけなのに……こんなデメリットみたいなのがあるとは。

 何か食い物を……出来たら魚が食いたい。

 アジの開きとか。

 

 ……やるか。

 

「あ〜あ。こういう時に有能な子猫系情報屋が来てくれれば顎下撫でてあげるんだけどな〜」

「……!」

 

 その言葉と共に、先程から気配がだだ漏れだった建物と建物の間からゴソッと物音がする。

 普通にスパイ失格案件である。

 

 が、そんな事お構いなしに俺は言葉を述べ続ける。

 

「今出てきてくれたら尻尾の付け根トントンしてやるんだけどな〜」

「〜〜!!」

 

 物音がさらに鳴り、その上葛藤するような唸り声も聞こえてくる。

 よくもまぁ、こんなあからさまな罠にかかってるのに今までバレずに情報を奪えてきたものだ。

 なんならここに来る時も付けられてたのは分かってたし。

 

 ここまで来たらあとは一押しである。

 

「……一日俺を自由にする権利も上げてやろうかな〜」

「言質は盗ったよ!!!」

 

 そう言いながら俺に抱きついてくるのはゼータ。

 「今日は参加しない」とか2日前に言ってたくせに、何故ここにこいつが来ているのか。

 

「ったく……今日は参加しないんじゃ無かったのか?」

「そんな事言ってたっけ?」

「……気まぐれここに極まれりだな」

「ふふっ、冗談だよ。例の任務が1日で終わったからさ、適当に様子見に来たの」

「なるほどな。んで、アルファの方には顔出したのか?」

「まだだよ。真っ先にブラックに会いに来たんだからさ」

 

 顎下を撫でながら会話をしてるせいか、喉をゴロゴロと鳴らしながら中々嬉しい事を言って来るゼータ。

 何だお前、俺の事好きすぎか?

 

「まぁ後でで良いから顔は出しとけよ。んで、ここに来たってことは……」

「勿論。王女の居場所はここの地下水道。そこに教団のアジトもあるし、間違いないはずだよ」

「流石だな」

 

 ここに来た動機はアレだが、しっかり仕事はこなしてきているゼータに対し、労いの言葉を与えながら頭を撫でる俺。

 喉からなるゴロゴロと言った音は段階を上げて大きくなり、尻尾も左右に大きく振るゼータ。

 ご満悦そうだ。

 

「むふー」

「……なんか幼くなったか?お前」

「2日間も会えなかったんだから良いでしょ?今だけでも甘えさせてよ」

「……甘えん坊さんが」 

 

 撫でていた手を退かし、俺に抱きついて胸に頭をグリグリと擦り付けるゼータ。

 『七陰』の前では見せられない程には甘えてきている。

 こんなゼータは初めてだ。

 

 やられっぱなしってのもアレなんで、対抗するようにゼータの頭に顔を埋め、思いっ切り息を吸う。

 互いが互いに幸せを感じ合っている……素晴らしいものだ。

 このお日様の香りさえあれば口の中の不快感なんてすぐに消えるってものだ。

 

「……それじゃ、アルファのとこに顔出してくるから、もう行くね」

「おうよ」

 

 約一分間は互いに抱き合っていたのだが、それで満足したのか、離れるゼータ。

 制服が毛まみれだ。

 

 最近愛用してるらしいチャクラムをスライムで作り出し、恐らくアルファが居るであろう場所に向けて歩み始めるゼータ。

 何かを思い出したかのようにコチラを振り向き、優しい笑みを浮かべながら言う。

 

「約束、ちゃんと守ってよね?」

「わかってるっての……またな、ゼータ」

 

 その言葉に満足したようで、ゼータはニコニコの笑顔のまま飛び立っていった。

 こりゃ、終わってからも面倒そうだ。

 

「……さて、始めるか」

 

 改めてサングラスを装着し、地下水道に向けて俺も足を進める。

 

 何だろうか……俺の想定していないような面白い事が起きそうな予感がする。

 ……久しぶりに楽しめそうだ。

 




まぁ2年もあれば黒殿様飛蝗怪人位にはなれますよ、うん

これは余談ではありますが、最近ウマ娘を再開しました
トランセンドが癖に刺さりました……そこから久しぶりに育成したパマちんや一流、フジにエース達にもう一度何かを刺されまして……
そのせいで投稿も遅れちゃった☆
許し亭許して
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