まさかまさか……前回だけで評価をくださった方が4人も来てくださるとは
それも全員高評価
ホントにありがとうございます!!
炙りサーモン食べたい
強い振動で何度も揺れる地下水道。
恐らくデルタが暴れまくっているのだろう。
我が弟子ながら、加減ということが出来ないへっぽこである。
まぁそこが愛くるしいのだが。
そんな鬱蒼として、淋しげな地下水道に、コツコツ響く足音。
ここ数分、俺は見張りの兵どもを倒しては進んで倒しては進んでを繰り返していた。
大変苦痛だ。
「人間ってのは粘り強いもんだ……こんなとこで再確認したくなかったが」
歩み続けていた足を止め、取り敢えずその場に座り込む。
ここは光が入りにくいもんで、『キングストーン』が上手いこと活性化してくれない。
まぁそれでも余裕で戦えるから問題はないのだが……ここで怪人が出たら多少は苦戦するだろう。
多少は。
「……とは言え、『英雄の血』ねぇ」
体育座りで維持していた身体を横に倒し、アルファと会話していた内容を思い返す。
教団の愚か者共は『英雄の血』を活かして己の肉体を不老不死のものにしようと企んでいるらしい。
んで、面白いことに『ゴルゴム』の参同者共もほぼ同じ様な理由で怪人になろうとせっせとやってるらしい。
どちらも最終目的地点は違えど、辿り着こうとする仮定は似ている。
そのせいで怪人やら教団関係者が増えているというのも、中々に迷惑な話だ。
「めんどくせぇ……」
横になっていた身体を床と並行になるように倒し、天井を見ながら愚痴をこぼす。
恐らくその血を使って不老不死になる為の研究でもしてるんだろう。
それか教団に捕らえられた悪魔憑きの娘に血を打ち込んで覚醒でもさせるのだろう。
まぁ興味ないからどうでもいいが。
とは言え、どう転ぼうともコチラにとって厄介で迷惑である事に変わりはない。
正直な話、今回の事件は俺が居なくても解決しそうな内容ではあるのだ。
……でもまぁ、今回の件は『ゴルゴム』も関わってんだし俺が頑張んなくちゃな。
もしかしたらソーン関連の事でなにかがわかるかもしれないしな。
「んじゃ、そろそろ行きますか」
寝転がっていた身体を無理やり起こし、再び歩みを始める。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
クロノ・フォルムーンが地下水道を彷徨い出したのとほぼ同時刻。
囚われの身であったアレクシア・ミドガルもまた、地下水道を彷徨っていた。
長い間まともな食事を摂らず、ただ血を抜かれ続ける生活を送っていた為か、腕や足、身体全体が痩せ細っている。
それでも尚ミスリルの剣を片手に、道も、形状も、何もかもわかっていない地下水道を歩んでいく。
「退屈は人をおかしくする」とは良く言えたものだが、よく狂わなかったものだ。
長い長い一本道を進み、角を曲がったその先に奴は居た。
「勝手に逃げられては困るな」
「あ、あなた……どうしてここに」
そこに居たのは、アレクシアにとって見知った顔で、心の底から嫌っていたあの男。
ゼノン・グリフィである。
「ここが私の施設だからだよ。私があの男に投資した。それだけさ」
「……っ!」
戸惑いや迷い等の感情がないような、まるで自分のやった事が正しいことであるとでも言いたげたな表情を浮かべながら言うゼノンに、アレクシアは顔を歪める。
「……よかった。私、あなたのこと頭おかしいんじゃないかってずっと思ってたのよ。やっぱりおかしかったのね」
だが腐っても王女様と言うべきだろうか。
アレクシアは怒りのボルテージを抑え込み、クロノに対してよく見せるあの笑みを浮かべ、ゼノンに向かい言葉を放つ。
「どうでもいいさ。君の血があれば」
「どいつもこいつも血の話……」
「君の血と、研究があれば私はラウンズの第十二席に内定する。剣術指南などというくだらない地位ともおさらばだ」
ゼノンの放った意味のわからない言葉に対し、アレクシアは表情は然程変えなかったものの、疑問を持つ。
「ラウンズ?狂人の集まりか何かかしら?」
「教団最高の十二騎士、『ナイツ・オブ・ラウンズ』。今と比較にならない富と名声だ」
アレクシアの問いに対し、飄々とした態度で答えるゼノン。
「本当はアイリス王女の方が良かったが、君で我慢するさ」
飄々としつつも、少しニヤけながらゼノンはアレクシアに言い放つ。
その言葉は、アレクシアにとって地雷と言うほかないものであった。
アレクシア・ミドガルの姉にてこの国、ミドガル王国の第一王女、アイリス・ミドガル。
俗に言う天才肌の剣士であり、努力肌の剣士であるアレクシアとは真逆であった。
さらに、アイリスの剣は『凡人の剣』と呼ばれるアレクシアの剣と真逆の剣、『天才の剣』と呼ばれている。
アレクシアは、最も近くでアイリスの剣を見ていたからこそ憧れ、目指していたのだろう。
だからこそ、どれだけ努力しようとも辿り着けない『天才の剣』に対し、何処か畏怖の念を感じていたのかもしれない。
強大過ぎる姉という存在。
『凡人の剣』を貫こうとするアレクシアにとって、果てしなく巨大な障壁になる存在。
そんなアイリス・ミドガルと比較される事は、アレクシアにとって唯一の禁忌なのだ。
抑え込んでいた怒りが溢れたアレクシアは、ゼノンが次の言葉を述べるよりも前に剣を振り下ろした。
振り下ろされた剣はゼノンの首を捉え迫っていた。
だが、相手は腐ってもこの国の剣術指南にて教団の第十二席候補。
アレクシアの剣は、首に届くよりも前に弾き返された。
「失礼。君は姉と比べられるのが嫌いだったね」
「……ッ!」
余裕綽々と言った感じで剣を弾くゼノンと、弾かれた勢いで後退するアレクシア。
二本の剣は何度も衝突しあい、何度も空中に火花を散らす。
このせめぎ合い、二本の剣だけを見れば、互角のようにも見えるだろう。
だが、剣を振るう二人の表情を見れば、どちらが上に立っているかは一目瞭然だ。
アレクシアは険しく、ゼノンは余裕綽々の笑み。
「いつもよりはいい。しかし所詮は『凡人の剣』だ」
ゼノンの嘲笑うように言い放った言葉に泣き出しそうになるも、怒りでその感情をかき消す。
歪む表情。
響く金属音。
続く拮抗状態。
それを動かしたのは、アレクシアだった。
溢れ出した怒りに任せ、斬り掛かってくるとゼノンは考えただろう。
だが違った。
「……ええそうよ。私は『凡人の剣』よ」
アレクシアはゼノンの言葉を受け止めたのだ。
かつてまでのアレクシアであれば、恐らく姉の剣、『天才の剣』を真似た剛剣を放っていただろう。
だが今のアレクシアは違う。
今の彼女には、彼女の剣を、彼女の努力する姿を認め、好きだと言ってくれたあの男が居る。
それだけで、彼女の自分の剣に対する思いは大いに変わっていたのだ。
「それでも……」
剣を握る手が強くなり、刀身に鮮やかな黄色の魔力が込められる。
その魔力は徐々に徐々に肥大化していく。
それこそ、従来のアレクシアが持つ魔力量を超えたのではないかと思えるほどに。
「アイツが好きだと言ってくれたこの剣は……この剣だけは!」
肥大化しきった魔力を纏った剣は、アレクシアがいつもの構えを取るに合わせ、量はそのままに圧縮していく。
その剣は、『凡人』と呼ぶにはあまりにも強すぎる剣であった。
「……ッ!」
流石に危機感を感じたのか、ゼノンは己の剣に魔力を込めて、防御の構えを取る。
魔力が籠もった2つの剣はぶつかり合い、互いに弾ける。
相手を倒す覚悟で挑んだ剣と、相手から身を守るために構えた剣。
どちらが上に立つかは、明々白々というものだ。
「驚いた。まさかここまでとは」
アレクシアの剣によって付けられた頬の傷から流れた血を拭い、確かめながら言う。
その言葉は、何の含みもない言葉だっただろう。
この勢いのまま戦えていれば、ゼノンは敗北を喫していたかもしれないだろう。
……そう、戦えていれば。
「ぐっ……」
アレクシアが膝をついて倒れる。
原因は魔力の過剰使用。
大いなる力には大いなる代償が伴うのだ。
「どうやら限界のようだね、アレクシア」
そんなアレクシアの姿を見て、先程の余裕を取り戻したように言うゼノン。
「ま、まだ……まだ私は!」
「無駄だよ」
「っ!」
魔力が切れ、満身創痍と言っても過言ではない状態であるのに起き上がろうとするアレクシアの右頬を殴り、水路に叩き落とすゼノン。
「一緒に来てもらうよ」
「もうここまでなのか」と心の中で考えてしまい、アレクシアの瞳から一筋の涙が零れる。
その光景を、その一部始終を、あの男は見ていた。
アレクシアの剣を好み、人間の諦めない姿に毒された怪人は見ていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時に。
この世界で怪人になった9歳の頃から今日までの約6年間、俺は様々な人間をこの目で見てきた。
根っからのクズとか、正義の言葉を掲げただけのアホとか、どうしようもない愚か者とか……色んな人間を見てきた。
『怪人』という、本来ならこの世界に存在しないはずのイレギュラーに成ったからこそ、今までの『人間』としての目線を無くせたからこそ見えてきた者達だ。
正直嫌だった。
今まで気付けてなかった愚かさから目を背けたかった。
人間とはここまで愚かな者なのかと、何度も考え込んでしまっていた。
それでも尚、俺は人間が好きだ。
俺が見てきたのは、何も人間の駄目な所だけではないのだ。
例えばシド・カゲノー。
奴は人の皮を被った化け物だと最初の方は思っていた……なんなら今もそう思っているが、一応人間だ。
そんなアイツは、今まで見てきた人間の中で誰よりも努力を怠らない人間だ。
奴に天井や限界点は存在せず、常に上へ上へと驀進していこうとするような、何処まで言っても満足しないような人間だ。
例えばアレクシア・ミドガル。
奴は反吐が出る程の猫を被った腹黒性悪な、底意地の悪い人間だ。
そんなアイツは、突出して強い点は無いが、諦めずに基礎を積み重ねて来た人間だ。
奴はまさしくこの世界の主人公とも言える、先程のような『逆境』で強くなれる素質を持った、才能の原石のような人間だ。
だからこそ言えるのだろう。
『素敵だ』
『やはり人間は素晴らしい』
……と。
だからこそ、彼女を守るべく俺が行かねばならないだろう。
敢えてコツコツと足音を鳴らし、犯行現場へと近付く。
「……く、クロノ?」
ゼノンよりも先にアレクシアが俺に気付いたらしく、か弱い声で俺の名を呼ぶ。
……まぁ普通はサングラス1つで身バレを防ぐ事なんて出来ないよな、うん。
今までがおかしかっただけなんだ。
どうせゼノンにもバレるだろうし、ここらへんでサングラスは片付けて、一度その場に立ち止まってから口を開く。
「……一週間ぶりだな、アレクシア」
「どうしてここに……」
「腐ってもアンタは俺の彼女なわけだ。救わねぇ彼氏が何処にいる……まぁ名ばかりでしかないが」
「……そう」
いつものツンケンとした雰囲気がなく、完全にシナシナになってしまっているアレクシア。
君はホントにアレクシアなのか?と疑いたくなってしまう程には違和感マシマシだ。
もっとこう……あるだろ?
俺のことポチとか呼んだり、一応嫌がってんのに頭撫でたりとか……まぁやったらやったで見捨てるとは思うが。
「君は……そうか。クロノ・フォルムーン君か。まさかここまで来るとは思っていなかったよ」
「……」
「安心したまえ。彼女は既にコチラで保護したから、君はもう寮に戻ると良い」
「……そうか」
アレクシアと話し終えると同時に、俺の顔を見たゼノンが俺に気付き、何かよくわからんことをつらつらと述べる。
この状況で誤魔化せるわけねぇのに。
……まぁいい。
やりたかった事を一つやっておこう。
先程から意味のない言葉を述べ続けるゼノンの元に、一定の速さで歩み寄る俺。
決して魔力は込めず、殺意や殺る気は隠して、ただ近付く。
「……どうしたんだい?黙ってコチラに近付いて来て――」
いつもの胡散臭い笑みを浮かべ、対話を図ろうとするゼノンの言葉を、一定の距離に辿り着いた時点で遮る。
拳が届く距離だ。
何かしらの予備動作もなく、まさしく一瞬の隙に、己の右腕をスライムで包み込み、黒殿様飛蝗怪人の腕に変身させ、思いっきり殴り飛ばす。
BLACKSUNでも光太郎が一時的に後ろ脚だけ出現させてたし、それと同じ様なものだろう。
多分。
油断しきっていたであろうゼノンは、思いっ切り後方に飛んでいき、数秒経ってから壁にぶつかったような衝撃音が地下水道に響いた。
「少し黙れ」
変身させた腕を直ぐに戻し、恐らく聞こえていないであろうゼノンに対し、そう言葉を述べた。
まぁこれだけじゃ死なんだろ。
アレクシアが主人公みたいになってるねぇ……
あ、前回に引き続き余談です
そろそろ転スラ3期が公開されますよね?
んでんで作者の処女作である転デモの一周忌……じゃなくて投稿から一年が経ちますよね?
そろそろリメイク版、投稿すると思います
そうなったらますますコッチの投稿頻度がカスになる……それはほんとに許して
作者はね?やりたい事しか出来ないの