黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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お ま た せ
あまりにも放置しすぎてしまったが、シナリオはこの頭の中にしっかり焼き付けてるから安心しておくれよな
ちなみに今回はちょ〜〜〜っとだけ長くなってるよ
復活記念ということで
ラスク食べたい


17話 『キングストーン……』

 

 殴った拳を軽く振り、少しずれたコートを着直す。

 本来ならシドにこの拳はぶつけるつもりでいたのだが、あの野郎は全部躱しやがった。

 魔力を込めていなかったというのに、あの野郎は全部躱しやがった。 

 

 すっごくムカついた。

 なんなら今もムカついてる。

 だからここでそれを発散してやった。

 すっごく気分がいい。

 清々しいなんて言葉じゃ言い表せない程に気分がいい。

 結局の所、ストレス発散に一番効率がいいのは暴力なんだ。

 

「よく飛んだわね」

 

 殴り飛ばした余韻に浸っていると、水路から這い上がってきたアレクシアがそう言う。

 先程まで水路で四つん這いになってたから仕方ないのではあるのだが、びしょびしょである。

 雨の日に捨てられてる子猫みたいな感じ。

 流石に寒そうだしこのコートは掛けてやろう。

 

「あら、ありがとう。気が利くのね」

「こんなでも俺はお前の彼氏なんだ。これくらいは当然だろ」

「ふふっ……そう」

 

 我ながら中々臭い台詞を放ったのも相まって場の雰囲気が僅かに和んだように感じる。

 その証拠ってわけでもないが、アレクシアはあの日俺が剣を褒めた時に見せたあの明るい笑顔を浮かべる。

 あの性格を知った上だと、この笑顔にそこそこ違和感が湧くのだが……まぁ、今はどうでもいいか。

 

「それで、どうして貴方がここに?」

「……だから、彼氏として助けに来ただけだ。何度も言わせんなよ小っ恥ずかしい」

「いえ、そうじゃなくて……どうやってここにたどり着いたのって事聞いてんのよ」

「わかりにくい質問だな……こっちで適当に調べてたらそれらしいとこが見つかった。だから来た。そんだけの事だ」

 

 まぁ実際はゼータからの情報頼りでしかないんだが……アレクシアに七陰、さらにはシャドウガーデンの事がバレるってのはあまりよくない事……のはず。

 なんとなくだがそこら辺のこと知ったらこいつが消されそうで少し怖い。

 あいつらは不要な殺しはしないからそこら辺は一応安心できるが、それはそうと不安でしかない。ゼータとか……一番あり得るかもしれん。

 

「まぁ、そんな事どうだっていいだろ。早く行くぞ」

 

 だいぶぶっきらぼうに言葉を吐きつつ、アレクシアの腕を掴んで先ほどまで歩いてきた道へ足を速める。

 

 もしさっき殴り飛ばした相手がただの人間であれば気絶してるだろうし、このままアレクシアを地上まで連れてって適当なとこに放っておけば学園のお偉いさん方が見つけだすだろう。

 我ながらパーペキなプランってやつだ。

 

「まったく……急に殴り飛ばすなんて酷いじゃないか」

 

 ……まぁ、『ただの人間』だったらの話に限るんだが。

 

 俺が殴り飛ばしたゼノンは、多少はボロボロになりながらもこちらに向かい歩んでくる。

 死なないとは勿論分かっていたんだが、もう少し気絶とかしてくれたほうが俺的には凄くありがたかったんだがな。

 

 普段通りの胡散臭い喋り方ではあるが、殺気を隠せていない上、既に片手は更に締まった剣の柄に添えられている。

 どうせこのまま突撃してくるだろうと読み、念の為アレクシアを俺の後ろに来るように少々力強く引っ張る。

 

 その直後にゼノンから出た台詞は、俺の意表を突いた。

 

「クロノ・フォルムーン……いや、『仮面ライダーブラック』!!」

「……おっと」

 

 鞘から引き抜いた剣を俺に向け、高らかに俺の名を、『仮面ライダーブラック』の名を叫ぶ。

 教団と関係があるということは分かっていたが……まさかその名を、『ゴルゴム』の関係者以外は分からないはずの名前で呼ぶとは。

 

 にしては妙だ。

 辺りから怪人の臭いが感じ取れない上、気配一つ感じない。

 たとえ姿は隠せていたとしても臭いや気配を消すことはできないはず。

 何が……何が起きている……?

 

「仮面ライダー……ブラック?」

 

 困惑する俺の後ろで、こちらはさらに困惑したかのような表情を浮かべながらそう呟くアレクシア。

 そういやそうだ、まったく無関係の人間もここにはいたんだ。

 

 なるほど、だいぶまずい状況だな。

 ここでアレクシアに俺が『仮面ライダーブラック』である事、それに伴って人ではないこと、『シャドウガーデン』の『ブラック』である事がバレるとホント色々めんどい。

 間違いなくアルファから説教されるだろうし、もしかしたらアレクシアが消されるかもしれない。

 それは何としてでも避けなければ。

 

「あぁそうさ。クロノ・フォルムーン改めクロノ・サウス。憎きシャドームーンと同じく『ゴルゴム』の支配者『創世王』の次期候補である『世紀王』。そしてその証を持つ『キングストーン』の所持者」

「何のことやらだな。わけわかんねぇ言葉つらつらとほざきやがって……さっきぶっ飛ばしたときに頭でもぶつけたか?」

「しらばっくれるか。まぁいいさ」

 

 あくまで何も知らないスタンスを貫く俺に対し、呆れのような感情を込めた言葉を放ち剣を捨てたゼノン。

 何が目的かと訝しむよりも先に、ゼノンは懐から注射器のようなものを取り出す。

 

「この薬はあの方から授けられた切り札。君と対峙するのであれば、これくらいは必要だろう?」

 

 解説を求めてないのにべらべらと語りだすゼノン。

 俺に向かい問いかけ、俺が答えるよりも先に己の体に針を差し、中には入っていた液体を押し込む。

 苦しむでもなく、雄たけびをあげるでもなく、注射器の内容物をさも当たり前のように受け入れたゼノンの肉体が輝き出す。

 

 まるで俺が変身する時のように。

 

 忌々しくも感じる光が薄れると、ゼノンの姿は人間のそれとは変わり、ツルギバチ怪人のような姿へとを変貌した。

 俺の知っている奴と違う点があるとすれば、右手にしか無かった剣が両手に装着してるってところくらいだろう。

 

「……これにより、私は人間の域を超えた究極の存在に、怪人になる。君と同じだ」

 

 二対の鋭い剣を無駄に煌めかせ、手に入れてしまった力をじっくり味わうかのように体を慣らす。

 

 それにしても……俺と同じとは大きく出たもんだ。忌々しいったらありゃしない。

 せっかく与えられた王道から逃げ出してまで邪道に進むとはな。

 

「まさか怪人になるとは……怪人()と戦うのに恐れ入ったか?」

「いいや?そんなチンケな理由じゃないさ」

 

 右腕の剣を、標準を合わせるかのようにこちらに向け、一呼吸置く。

 その瞬間、ゼノンはコチラに剣を突き立てて突撃する。

 

「私は君を倒し、キングストーンを手に入れ『世紀王』の座を得る。そしていずれは『創世王』に……その為にもここで完全試合をしなくっちゃなぁ!」

 

 くだらない目的を語りつつ、二対の剣で連撃を行う。

 今まで見てきたゼノンの剣とは違う、荒々しく、型も何もない無法な剣が俺を襲う。

 やたらめったらに斬るもんだからそこら辺の壁や天井が次第にぼろぼろになっていく。

 なんとか防ぎきってはいるがそれでも限界はくる。

 

 さてどうするか。

 このままじゃジリ貧だ。

 多分負けはしないが決定打がないから勝つこともできない。

 

「ほらどうした『世紀王』!変身してみろ!怪人になって戦え!そして『キングストーン』を寄越せ!」

「いちいち発言が鬱陶しい……なぁ!!!」

 

 斬りかかりながらも未だに「変身しろ」だの「『キングストーン』を寄越せ」だのほざくゼノンに憤り、少し強めに弾く。

 『キングストーン』があるから最強ではないというのが、わからんのかこいつは。

 

 

 

 ……仕方ない。

 ああなったらこちらも等々の力で対峙しなくては。

 怪人は怪人同士で殺りあった方が良いもんだろう。

 

 剣をゼノン目掛けて投げ捨て、先ほどから後ろで呆然と見ていたアレクシアに問いかける。

 

「……アレクシア。こっから起こる事は他言無用、俺とお前だけの二人だけの秘密だ。いいな?」

「はぁ?いきなり何を……」

「いいから!返事は「はい」か「YES」の二つに一つだ!」

「は、はい…?」

 

 困惑気味ではあるものの、言質は間違いなく取れた。

 俺はコイツを信じる。

 

「その言葉、絶対守れよ」

 

 そう言うと俺は壁を強めに殴る。

 乱雑な斬撃でボロくなった壁ってのは、思ったよりも簡単に崩れるもんで、それに連鎖するように天井が、さらにその上の階の一部が崩壊していく。

 崩れる度、開く度に穴のサイズは枚数に反比例するように小さくなっていく。

 されど地上まで届き、僅かな一筋の月光が、小さなスポットライトかのように俺を照らす。

 

 不十分だが、この程度の戦いならこれで十分だ。

 

「ゼノン……いや、ツルギバチ怪人!王道(人の道)を反れ、邪道(怪人の道)に溺れ、仮初の力で驕るなど……許さん」

 

 強く、強く拳を握りしめギリギリギリッと音を鳴らす。

 光を浴びた『キングストーン』に魔力を込め、腹部に出現させると同時にスライムを起動。展開状態の『世紀王サンドライバー』へと姿が変わる。

 右手を左腰方向に勢いよく降ろし、それと同時に左手を開き、右肩方向に勢いよく突き伸ばす。

 

「変……」

 

 伸ばした左腕で円を書くように回し、左腕が左上に到達したところで両手を右肩方向に伸ばし、力強く叫ぶ。 

 

「身ッ!!!」

 

 段階を踏むように『世紀王サンドライバー』は閉じ、『キングストーン』が煌々と赤く輝く。

 光とともに俺の肉体は人間のソレとは形を変え、怪人の姿に、そして仮面ライダーの姿に変化する。

 

 生物的な黒いボディ。

 我が身を守るようにして肩に覆われるバッタの脚。

 赤く光った流動路が俺の身体を走る。

 

 あの日、初変身の日から今日という日を待ち望んでいた。

 少々最悪の状況ではあるが、ようやくこの力を、前より成長したこの力を解き放てる。

 

「覚悟しろ、ツルギバチ。本当の怪人の闘争をその身に刻んでやる」

 

 肉体から蒸気を発したままで、俺は右肩の『黒肢脚』を掴み、勢いよく引き剥がし、『世紀王ブラックブレード』へと変貌させ、構える。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 そこでアレクシアが見たものは、現実とは思えない、まるで少し変な夢や奇妙奇天烈な物語のような光景。

 先ほどまで人の形をしていた2名がその姿を変え、人ならざる形になった2体が、目で追うことすら難しい戦いを繰り広げている。

 いくら頬をつねろうと、叩こうとも痛みは感じるが故に、「これは夢ではないのだ」と嫌でも突きつけてくるようだ。

 

 されどアレクシアはその戦いに見惚れていた。

 彼の使う剣技を、見覚えがあるどころの話ではないほどの剣技を見入っていた。

 なにせ、彼の、クロノ・フォルムーンの振る剣は……

 

「凡人の剣……」

 

 彼女が目標として掲げた凡人の剣、その完成形と言ってもおかしくはない剣だったのだ。

 その時、ふとアレクシアの脳裏にクロノの言葉がよぎる。

 

 『俺はお前の『凡人の剣』が、お前の諦めない姿が好きだ。何も俺とお前が同じだからとか関係なく、その姿が大好きなんだ』

 

 突出した才能も、逸脱した速さも、強大な力も、何もない。

 正しく凡人。

 されど凡人。

 基本を死ぬほど積み重ね、重ね続けたありきたりな剣。

 それでいて、最強の力を示す剣。

 

 ずっと忘れていた、思い出の、憧れの終着点を、言葉で、姿であの男は示していたのだ。

 

「……ズルいわね、ほんと」

 

 2対の荒れ狂う怪人の剣と、1本の冷静沈着に弾く凡人の剣。

 流派もなく、ただ振り回し斬撃を飛ばすだけの剣と、基本の型から無駄を排除した、研ぎ澄まされた剣。

 どちらが上であるかなどは、明白でしか無いだろう。

 

「ガアアアアァァァァァァァアッ!!」

 

 雄叫びにも、叫びにも聞き取れる音を上げるゼノン。

 その腹部には、もう何度目かわからない程の深い切り傷が刻まれていた。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「クソッ……クッソがァ……!」

 

 地に片膝を付け、切られた箇所を剣になった腕で覆うように隠す。

 すでに満身創痍に至ったかのような乱れた呼吸と共に、全く歯が立たないこの状況への苛立ちを声に乗せる。

 こんなにも圧倒的、他者から見てもどちらが優位か分かる戦況は、なにも『キングストーン』の力があったからではない。

 怪人なりたての人間と怪人歴約6年の歴戦怪人……実力以前に経験が違う。

 

「『キングストーン』め……これ程までの力を秘めていたのか!!」

 

 聞け話を。

 

「弁明のために一応言っておくが、キングストーンの出力は最低値だぞ」

「……は?」

「残りはすべて自前の魔力。それを無理やりエネルギーに変えてこの姿を維持してる、それだけの話だ」

 

 先程変身してから今に至るまで、普段の戦闘のように『キングストーン』の出力マシマシで戦っては居ない。

 どっかのカスが5日間という長い期間陽の光がまともに通らない空間に閉じ込められていたのだぞ俺は。

 あんな弱々しい月光ごときで変身が成功してたまるものか。

 怪人舐めんな。

 

「そんな……わけがあるか……そんなわけがァァァ!!!」

 

 激昂。

 高ぶる感情に身を任せたのか、ツルギバチの足元に転がっていた小瓶に剣を突き立てる。

 その中には、ずいぶん前にも見たことのある忌々しいものが入っていた。

 

「あるものかァァァ!!!」

 

 小瓶内に入っていた赤い錠剤、その大半を口内に放り込んだ。

 瞬間、跳ね上がる魔力は暴風となって吹き荒れる。

 まるで濁流かのように押し寄せてくる威圧感。

 身体に刻まれた傷は跡を残さず完治。

 その上、何故か背から徐々に伸びる二対の剣付きの腕。

 

 そう、中に入ってたのは教団御用達のドーピング剤。

 本来なら力を扱えず、飲み込まれて死んでってのがオチだが、ラウンズとやらはそうではない。俗に言う『覚醒者3rd』に至り、力を思うがまま使えるはずだった。ゼータ情報だからそこら辺は信用できる。

 

 だが恐らく、現状そうではない。

 ひっきりなしに聞こえてくる唸り声、痛みから逃れるためか、出現しつつある腕を無茶苦茶に振り回すせいで、損害が広がっていく。

 その分俺を照らす月光もより濃くなっていく。

 恐らくだが、怪人化した肉体と例のドーピングが奇跡的に反応し、怪人からも逸脱した、ただの化け物に成り下がったというわけだろう。

 随分と醜いものだ。

 

「醜い……」

 

 先程からずっと後方で戦いを眺めていたアレクシアの口から、俺と同じ思いの言葉が零れ落ちる。

 流石のアレクシアでもこんな姿になった元ゼノン先生を見たらビビるもんかと思ったが……俺は随分と見くびってしまっていたのかもしれない。

 

「醜イ……ダトォ……?」

 

 微かに残っていたであろう自我が、アレクシアの言葉に反応する。

 ようやく痛みに慣れたのか、4本の腕、その切っ先をすべてアレクシアに向ける。

 もはや先程まで誰と戦っていたかすら、敵が誰かすら認識できないようだ。

 

「コノ究極ノ力ガ醜イダトォォッツ!!!」

 

 背の羽根を高速で動かし、俺を横切ってアレクシアの首へと刃を届かせようとするツルギバチ。

 

「その通りだろ」

 

 無論俺がそれをみすみす見逃すわけもなく、ツルギバチの足をガシッと掴み、水路へと強く叩きつける。

 上がる水しぶきに合わせ、解読することすら難しい、言葉として認定できないような音をツルギバチは発する。

 

「人の道を逸れ、怪人の道からも逸れたお前が究極だとでも言うのか。あまり侮ってくれるなよ」

「貴様ァッ!!」

「人間ならば人間らしく、怪人ならば怪人らしく。己の力を積み重ね、ようやく究極への道は開かれるというのに、だぞ」

 

 自分の心の中で嫌な感情、多分怒りや憤りの類、それが煮えたぎっている。

 今までにない程に、だ。

 その感情に身を任せるように、ツルギバチを殴る。

 何度も、何度も殴っては殴る。

 強く、強く殴り飛ばす。

 それに呼応するように『キングストーン』から放たれる熱が増していく。

 

 ……折角だ。

 イータが言ってたアレ、試してやろう。

 

「キングストーン……バイタルチャージ」

 

 月光を浴びに浴びた『キングストーン』のエネルギー、静かながらも激昂する心に比例するように今にもはち切れんばかりの魔力。それを二重螺旋のように重ね合わせる。

 

 そして、収束。

 

 過剰なまでに重ね合わせた2つの力『キングストーン』を経由して体内全てに巡り、さらには体外へと放出される。

 

 放たれた螺旋状のエネルギーと魔力は付近一帯を赤く、紅く染め上げる。赤い魔力と紅いエネルギー、この2つが幾千にも重なり続けたその力の結晶は、美しく、どこか神々しく紋様を示す。

 それだけでは飽き足りず、徐々に収束し、俺とツルギバチを取り囲む。先ほどまで取り囲んでいたアレクシアを殲滅範囲から逃すように。

 

「綺麗……」

「何ダ、コレハ……コノ力ハ……」

 

 零れる称賛も、驚愕も、それすらどうでもいいと思えるほどに気分が高揚している。

 この心は、喜びの一色で支配されている。

 自分でも理解できるほどに。

 

 「あぁ、ようやく憧れの姿が()()()()()と。

 

「冥土の土産に魅せてやる。本当の究極の力」

 

 その目をかっぽじってよく見とれ。見惚れとれ。

 

「『キングストーン……』」

 

 腹部に当てた拳をひたすら強く握り、体内で暴れ続ける力を一点に、ただ一点に収束させる。

 エネルギーが収束していく度にごおんごおんと大地が、大気が、否、世界が震える。

 ある種結界のように取り掛かっていた力が『キングストーン』へ再収束。 

 

「『フラッシュ』」

 

 戦闘に慣れたが故に言い慣れた技名を発すると同時に、固定していた腕を解放、大の字を体全体で示す。

 

 そして、発散。

 

 器の蓋から強く抑えつけられていた力から蓋を外すように、練り合わせた2つの力を一気に解き放つ。

 混ざり合った2つの力は、もはや一つの、魔力ともエネルギーとも言えない、その様な言葉では言い表せない力へと変貌し、白く煌めく。

 その姿、もはや太陽そのもの。

 

 その輝きは、光よりも速く、先ほど示した結界内の全てを飲み込み、爆ぜる。

 いつしか光球は地下水道を突き破り、膨大なまでの力が天まで突き抜け、柱のように姿を現す。

 家も、大地も、その総てを掻き消すようにして。

 眩い爆発は夜の帳を薙ぎ払い、王都の空を僅か十秒間、青く染め上げる。

 

 奇しくもその攻撃は、憎たらしいシャドウの『アイ・アム・アトミック』と酷似していた。

 制御があまり効いてない分、劣化コピーもいいところだ。

 

「……に、二度と使うか、こんなバカ技」

 

 いつの間にか変わっていた人間の姿、その姿のまま、俺の意識は手からこぼれ落ちていった。

 消えゆく意識の中俺が見たのは、どこまでも続く、太陽のない青空と、崖のような荒地を降りて何かしらの言葉を発しながらこちらに向かってくるアレクシアの姿だった。

 




人間が自分の意志で怪人になるのは言語道断。必ず殺す。
By クロノ・フォルムーン
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