黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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2年ぶりなのに色んな人に見ていただけるのありがたすぎる
感想とかももっと欲しいナ〜(強欲)
恐らくちょっと前からでしょうけど総合評価が500を超えており感謝の極み……この調子でなんかすごい作品になりたい
さんま食べたい


18話 俺より弱いくせに

 

 嘗て……否、今も尚、『黒い太陽』に憧れ焦がれ続ける男が居た。

 男は肉体を、精神を、技術を、鍛え上げた。

 血が滲んでも驀進を止めぬ豪胆さで、ただただ鍛え続けた。

 

 それでも届かなかった。届けなかった。

 憧れが増せば増すほど、時が経てば経つほど、その憧れへの思いは募りに募る。

 いつしか憧れは肥大化し、その強さは神ごときでは届かない、天よりも高く、崇高なものへと至った。

 男の中で『黒い太陽』こそが最強、『黒い太陽』こそが至高。

 

 『黒い太陽』こそが、ただ唯一の憧れ。

 

 故に男は諦めなかった。諦めきれなかった。

 そのあまりにも大きすぎる憧れに、己が至るための道を。

 

【問一】肥大化した憧れに至るためには。

【解答】憧れよりも強くなればいい。

 

 その思いは、死して尚輝き続け――――――

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 目が覚めて、まず目に映ったのは寮の天井。

 どうやら情けなく気絶したこの俺をここまで届けてくれた優しいやつがいるようだ。

 その優しさに甘んじて睡眠までしていたようだ。感謝せねば。

 

「ん……出力は問題なさそうだな」

 

 あんなバカが使うようなバカみたいな技を使ったせいで『キングストーン』のエネルギーに異常がないか、確認するため腹部に出現させる。

 身体を巡る熱いエネルギーが弱くなったということはなく、寧ろ僅かながら力が増しているように感じる。

 

「またか」

 

 出力が高くなった『キングストーン』を魔力でぎゅっと握るイメージで抑え、ぐでっと横になっていた体を起こして動き出す。

 部屋一面を見渡せば、あんだけシドの家具でゴチャゴチャしていた部屋が整理整頓されていた。

 

 そして気付く、机上に置かれた手紙。

 水色の封蝋で閉ざされた手紙には、仄かながらミツゴシ製の何処か甘くフローラルな香水の香りが香っている。

 恐らくヒヤシンスの系統だろう。

 

「プシか……あとでお礼言わないとな」

 

 差出人は恐らくプシ、もとい『緻密』のイプシロン。

 魔力操作に関しては間違いなくシャドウに続く程度には上手く扱えると思うが、何故か過去の俺はスライムを介した魔力操作は苦手だった。

 その時先生になってくれたのがプシだった。

 

 『絶対に実現させてやる。バレたら……いえ、出来なかったらもう明日はないと思って試してみるのはどうでしょう?』とか『一部部だけに流すだけじゃダメなんです。もっとこう、全身を盛る……じゃなくて、全身に魔力を流すような、そんな感じで』とか……今思い返せば、俺はプシの実態を知ってるから、わざわざ訂正する必要なかったよな。

 まぁ現にそれで成功してる訳だ。

 改めて感謝しないとな。

 

 ちなみにだが、「プシ」の呼び名は俺が適当に付けたあだ名のようなものだ。

 他の『七影』と比べて『イプシロン』の名は比較的長く、可能なら呼びやすいように……と考えて作ったわけだ。

 この呼び名、わりと適当につけたものだったはずだが本人からは高評価だったようで、イプシロンと呼ぶよりもプシと呼んだ時のほうが比較的返事が弾んでいた。

 

 そういう時アルファたちはすんごい目で俺を見てたような気もするが……まぁ気の所為だろう。

 気のせいであってほしい。

 ほんとに。

 

「やべ、もうこんな時間か」

 

 荷物と手紙を手に、いつも通りの列車に駆け足で向かう。

 手紙の内容は向かう道中に見れば十分だろうし、何よりこのままだと乗り遅れる。

 遅刻してあのバカに煽られるのはこちらとしてもごめんなのだ。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 なんやかんやあることもなく、いつも通り日常が流れてお昼頃。

 久しぶりに日光浴をして『キングストーン』と肉体を労りながら、結局見れなかった手紙に目を通す。

 

 内容を簡単にまとめるとこうだ。

 

・気絶したブラック様は私、イプシロンが責任を持って助けました。感謝してもいいですよ

・アルファ様がすっごい怒ってたので覚悟はしておいてください。私ではどうにもなりません

・久しぶりに古都にも顔出してください。イータが目をキラキラさせて待ってますよ

 

 仕方ないとはいえ三分の二が面倒ごとだ。

 やはり年甲斐もなくはっちゃけてはいけない。

 とはいえアルファがすっごい怒ってたのか……あのアルファがか……

 

「面倒くさいことになるな……」

「あら、随分辛気臭い顔ね〜ポチ」

 

 手紙をしまい、現実から目を背けるように閉じてゆっくりしようとする俺。

 そんな俺から日の光を遮るようにして堂々と立つ、白銀髪の女、アレクシア。

 面倒ごとはまだまだ続くようだ。

 

「……なんだ猫被り。日光浴の邪魔すんな」

「あら、もう鳴かないのね」

「耐性が付いたみたいなんでな。もう簡単には靡かんぞ」

「ふーん……」

 

 やけにつまらなそうな顔を浮かべ、寝転がる俺の横にさも当たり前かのように座るアレクシア。

 そこから離れるように立ち上がり、落下防止の柵にもたれかかると、よりつまらなそうな顔をしたアレクシアが立ち上がる。

 

「それで、何の目的でここに来た」

「……チッ。昨日の事件について、一応あなたにも伝えておこうかと思ってね」

 

 超が付くほど不機嫌そうになっているのには触れず、話を聞くことに徹する。

 

「まだまだ裏がありそうな事件だけど、表面上は解決ってことになったわ。でも姉様は専門の調査部隊を立ち上げる準備をしているし、私も協力するつもりだからまだこれからね」

「あんま首を出すのは推奨できないが……まぁ俺を巻き込むなよ」

 

 今回は教団、ひいては『ゴルゴム』関連の事件だったから首を突っ込んだが、そうじゃない問題にまで巻き込まれるのは勘弁だ。

 

「約束はできないわ。まぁ何はともあれ、あなたの容疑は晴れたわ。迷惑かけたわね」

「ほんっとにな。5日間食わず飲まず眠れずはさすがに堪えたぞ」

「……悪かったわよ。その辺の問題は私関係ないけど」

 

 じっと睨みつけてみると、珍しいことにアレクシアが申し訳なさそうな顔……はすぐに解け、呆れよりの顔で謝罪の言葉を俺に投げる。

 勿論、これはアレクシアのせいかと言われればそうではないが、まぁ八つ当たりということで。

 

「それと、昨夜の2()()の爆発。未知のアーティファクトの暴走って事で始末がついたから、念のため伝えておくわね」

「おお」

 

 完全に呆れ顔に移り変わったアレクシアが、その顔のままで淡々と言ってくる。

 

 そう、昨夜の爆発は2度発生していた。

 一つは俺、もう一つは察しの通りあのバカ(シド)だ。

 

 なんでも街中にアレクシアの血を大量摂取して暴走状態になった悪魔憑きの娘が現れて、その対処にシャドウが動いたらしい。

 本人曰く、『クロノだけに美味しいとこ持ってかれるのもアレかなって思って、僕も動いちゃった!』とのこと。

 その結果、小規模の核『アイアム・リトル・アトミック』でその悪魔憑きを倒しつつ回復、その後は騎士団が保護することになったらしい。

 

 とはいえ、あのアレクシアがあの咄嗟の約束を覚えて、ちゃんと守っていたとは。

 あのアレクシアが。

 

「……何よその顔。約束守ったことがそんなにおかしい?」

「当然」

「失礼ね。私をなんだと思ってるのよ」

「悪人」

 

 疑うような顔が張り付けたような笑顔に変わり、スラリと抜かれる白銀の剣。

 ほんのりと魔力が乗せられた刀身は、見事俺の首を捕らえて薙ぎ払われる。

 

「っぶね」

「躱すんじゃないわよ。当たらないじゃない」

「当たりたくないから躱してんだよ極悪人」

 

 無論この程度の斬撃にあたる俺ではないため、刃が喉元に触れるスレスレで躱す。背後が壁じゃなく柵で助かった。

 少々危なかったが危険察知、並びに反射神経が鈍っていないかのチェックをここで出来たんだ。アレクシアおうにょ様々ってな。

 

 だがまぁ、やはりと言うべきか。

 今までの訓練の成果か、魔力の込め方にまで無駄が削がれて来ている。

 流れるように、さらには殺さない程度の魔力で斬りかかる。流石俺が見込んだ人間。

 俺に向けて斬りかかる点以外は及第点だな。

 

「じゃあもういいか?俺は十分太陽光浴びれたからそろそろ中に戻りたいんだが」

「待って。二点、言っておきたい事があって」

「なんだよ」

 

 柵からぴょいと跳んで離れ、屋上から出る扉へと向かうこの俺の袖をぎゅっと掴んで止める。

 止め方が異様にいじらしい。お前本物か?

 

「まず一点目、改めて感謝の言葉を言っておこうと思って。前に「お前の『凡人の剣』が、お前の諦めない姿が好きだ」って言ってくれたでしょ。遅くなったけど、ありがとう」

「おう」

 

 少々恥ずかしそうに、それでもしっかり目を見て俺に感謝を伝えるアレクシア。

 そう言ってもらえるなら何よりだ。

 にしてもまぁ、よく一言一句覚えてたものだ。

 

「ようやく自分の剣が好きになれたの。まぁ……そのあなたのお陰よ

「あん?」

「な、なんでもないわよ。2度は言わないから」

 

 紅潮した頬を腕で覆い隠すようにしてこちらから目線をそらすアレクシア。

 勿論この俺が聞き逃すだなんてわけもなく、俺のお陰で自分の剣が好きになれたというのは聞こえている。

 敢えてあの反応をしたのは……なんでだろうか。

 ちょっとしたいたずらごころみたいなものだろうか。

 

「んんっ!そして二点目、これまで付き合っているふりをしてきた訳だけど、今回の事件でゼノンが死んでくれたからもうお役御免よ」

「そうか……ようやく解放か」

 

 こんな冷静な面で話を聞いているが、心の中でガッツポーズが隠しきれない。

 ようやくこの面白さよりも面倒くささが勝っていた生活から解放されるのだ。

 こんなにもポーカーフェイスができているのが奇跡だ。

 

「そこで一つ提案なんだけど……」

「まさかこのまま恋人関係を続けよう……だなんて言うわけないよな?お断りだぞそんなの」

「……チッ

「音デカ」

 

 図星かよ。

 嘘つくの下手かよ。

 

「というか、アレを見た上でもまだ仲良くしようとするか?俺は怪人だぞ?常に命と『キングストーン』を狙われてるんだぞ?」

 

 俺自身は何ら問題のない、慣れた事ではあるのだが、そこに「ただの人間」が交わるとそうはいかない。

 最近の怪人は、あのツルギバチのように少々厄介になっている。

 守りながら戦うリソースを割けなくなる日が、いつか来てしまうかもしれない。

 俺が巻き込んだせいでアレクシアが被害者になるなんて展開は、こちらとしてもごめんだ。

 

「それでもよ。昨日みたいな技使って、倒れたとこ狙われたら流石に無力になるでしょ?」

「それは……そうだが」

「そういう時、わたしがすぐに守ってあげるわよ」

 

 自信満々で、余裕綽々といった笑顔に、思わずこちらも笑みがこぼれる。

 ほんと、心が強い人間には敵わないものだ。

 

「俺より弱いくせに」

「減らず口は一丁前……ね!」

「っぶねぇっての」

 

 再度斬撃を回避する。

 あくまで最低限の動きで、無駄のない回避行動をとる。

 

「いいから当たりなさい!」

「そんな滅茶苦茶な剣が当たるかよ。感情任せじゃろくな事にならんぞ」

 

 その後、昼休みが終わるまで斬撃を躱し続け、終いには今までどおりの稽古をすることになった。

 

 夕方、この屋上に訪れた生徒はそこで大量の斬撃跡、一本の折れた剣を発見することになる。

 しかし大量の傷が残っていたにも関わらず、遺体やそれに相当するものは付近に見当たらなかった。勿論、争いをしたと証言する生徒も。

 結果、事件は迷宮入り。後にこの一件は『勝利者のいない死闘事件』として学園七不思議になるのだった。

 




シャドウ新必殺技『アイ・アム・リトル・アトミック』
…範囲を狭めることで、本来の『アイ・アム・アトミック』よりも精密な魔力操作が行えるようになり、暴走した悪魔憑きも人間に戻せるようになる。ずっとそれだけ撃ってくれ。『私はちいさな核です』

これでようやく一区切り
長い……長くない?
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