黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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土曜20時更新、徹底したい

アレクシア主体の話になると比較的シリアスになるのかもしれない
ほんと、比較的シリアス
コーラ飲みたい


20話 明日から話しかけて来んなよ

 

 空高く長く昇っていた日が落ち、紫掛かる王都を4人で駆けていた。

 

「おい急げ!門限間に合わねぇぞ!」

「クロノ君達が悪いんですよ!アンケートでイチャコラと……!」

「お前等だってさっきの店員さんのことしつこく聞いてきたじゃねぇか」

「まぁまぁ。チョコはあげたんだからそれで勘弁してよ」

 

 時間的にそこそこ余裕を持って出てきたはずだと言うのに、色んな質問投げかけてきた2人に、急いで走る事になった責任がある。もっとも、俺もシドも前を走る2人の速度に合わせてるだけだが。

 さっきのお姉さんと何してたかとか、人には言えないアンケートしてたのかとか……何だったんだよあの質問は。

 

「それでクロノ。候補って?」

 

 前方にいる2人には聞こえない程度の声で、シドが尋ねてくる。

 俺の推測も100正しいとは思えないが……まぁいいか。

 

「9割教団、1割アレクシア」

「ふーん……その心は?」

「前者は罪のなすり付け目的、後者は……やりかねない、とか」

「なるほどねぇ」

 

 自分で聞いといてそんな興味なさそうな声で答えるかよ普通。

 

「まぁなんにせよ、『シャドウガーデン』の名を騙るのは許せないかな」

「同感だ……あん?」

 

 珍しくシドと意見が合致したことに驚く俺の耳に入る、剣と剣が交差する音。

 その音は鍛錬のそれではなく、命と命がぶつかり合う、激しい殺し合いの音。

 

「シド」

「うん、確かに聞こえた」

 

 先を走る2人に気づかれない、先ほどより小さな声で確認しつつ、音の出元の方向に目を向ける。

 

「いいな?」

「いいよ。ちゃんとやっつけてね」

 

 認可が降りたのを確認し、荷物をシドに投げ渡す。

 そして直ぐ様右足に力を込め、それを軸として180°グルっと回転。

 

「すまんお前等。ミツゴシに財布忘れた、取ってくる」

「ちょ、おい!」

 

 最低限の情報だけ伝え、走りによる勢いを殺すことなくそのまま来た道を駆けていく。

 先程のような押し問答をする暇は、ない。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 剣と剣が強くぶつかり合う音が路地裏に鈍く響く。

 対峙するのは漆黒に身を纏いし者、自らを『シャドウガーデン』と名乗る男。

 アイリス姉さまには無断で出てきちゃったけど……私の判断は正解だったみたいね。

 

 相手は相当な実力者ではある。けど剣の構えも、型も、振り方も、何もかもが滅茶苦茶。

 対する私は、基本のんの字まで綺麗になぞって到達したような『凡人の剣』。その上、クロノとの鍛錬で過去の自分を凌駕出来るほどには強くなれている。

 

 私のほうが強い。

 かといって油断はしない。

 いつ卑怯な手を使われても対象できるよう、常に気を張り詰めて剣を振るう。

 感情任せにならぬよう、冷静に、平常心で。

 

 剣をこちらに向けて突撃する黒ずくめ。

 その剣先をしっかり捉え、剣を弾く。

 大きく身体のバランスは崩れ、隙だらけの胴に一閃。石畳が赤く染まっていく。

 

「もう諦めなさい。あなたでは私に勝てないわ」

 

 剣に付着した血を、柄を叩いて振るい落とす。

 やはりクロノのように上手くは行かないようで、僅かながら赤く染まった剣を男に向け、降参を促す。

 このまま降伏してくれたらありがたかったのだが、揺ら揺らと、身体の軸が不安定になりながらも男は剣先をこちらに捉え、口を開く。

 

「我等はシャドウガーデン……」

「何故罪の無い人を殺めるの?それがあなた達の……シャドウという男の意志なの?」

「我等はシャドウガーデン……」

「さっきからそればっかり。それ以外喋れないようになってるの?シャドウガーデンとやらは相当闇が深いのかしら……洗脳とかされてたりするの?」

 

 質問をすれど投げれどまともな返答は聞き出せず、男は先程よりも不安定な剣先でまた突撃してくる。

 

「我等はシャドウガーデン……!」

「してそうねっ!」

 

 本領発揮ができなくなっている今、武器を弾くには絶好の機会だ。

 こちらに向かってくる剣を、その刀身を見る。流れ方を予測し、自分の剣先に神経を研ぎ澄ます。体さばきと剣の操作を一体化出来るように。

 相手の刀身がこちらの刀身丁度半ばに至った所で、剣を回転。多量の出血によって握る力が弱くなった拳で剣をつかみ続けることは出来なかったようで、剣は宙を舞う。

 剣が無くなったからといって、男の勢いが消えることはなく、武器もなしに己の身だけでこちらに向かってきた男を、柄頭で首元ガッと殴る。

 男の勢いが横から下になり、丁度いい位置に腹部が来る。

 蹴りやすい位置に。

 魔力を右足に多く流し、勢いよく男を蹴り飛ばす。

 

「……ふぅ、これで終わりよ」

 

 石畳に、ドサッと男が落ちる音と、遅れてカランと剣の落ちる音が響いた。

 既に相手は武器を持っておらず、横たわった身体からは血がダラダラと垂れ流しになっている。

 

 勝利と呼ぶには十分と思われる状況。

 勝った。

 

 

 

 『それが油断だ。慢心すんな』

 

「……ッ!」

 

 脳内に響いた、彼の声。

 それがあったから、背後から迫る殺意に気が付けた。

 

 突如として繰り出された斬撃を前転して回避、隙だらけの私に向けられた追撃をなんとか剣で弾き、そのまま剣を薙ぎ払うように振るも、バックステップで避けられる。

 乱れた呼吸を整えつつ状況を把握する。

 新たな黒ずくめが3人に増え、それぞれがこちらに剣を向けている。今はまだ倒れているが、こいつが起きれば敵数は4人。

 状況は最悪だ。

 

「か弱い乙女相手に3人がかり……卑怯だと思わない?」

 

 こちらはまだ完全に疲労が回復しているわけではない。

 意味はないだろうが、少しでも隙を作る為に対話を試みる。

 が、返答はなく、警戒心を解くことなく近付いてくる。

 

「それともデートのお誘いかしら?それならごめんなさい。私、気になってる殿方がいるから」

 

 ジリジリと滲み寄られつつも、決して背後は取られないように立ち位置をずらす。

 この状況下で不意打ちを喰らおうものなら……考えるだけでおっかないことになる。

 そうはならないよう、全方位に警戒する。

 

「遊ぶくらいならしてあげてもいいわよ。勿論、一人ずつだけど……ッ!?」

 

 先手は男達から。

 まず一人目が左側から突撃。余力十分にその攻撃をしのぎ、カウンター狙いで剣を振るう。命中はするも、それが致命傷に……なんなら怯ませる傷にも至らなかった。

 次に二人目が正面から突撃。剣を振るい、隙だらけの胴に向けての突撃。反撃できるほどの余力はないものの、辛うじて剣で受けて距離を取る。

 最後に三人目が右側から突撃。回避行動をした際、足元がわずかに揺らぎ、先ほどよりも不安定な状態で突撃をされる。己の体力不足を呪うばかりだ。

 だがしかし、流石は私。体を反るようにして奇跡的に攻撃から回避する。

 躱しきった。

 

 

 

 はずだった。

 

「ァグぅッ……!」

 

 倒れていた男が最低限動けるほど体力を回復してしまったのだろう。意識がそこまで回せなかった私の腹部を、男の靴がめり込んだ。

 

「ガハァ……」

 

 蹴り飛ばされた報復か、めり込んだ足で壁にたたきつけられる。

 傷口からバキバキと骨が数本逝った音が、身体を巡って聞こえる。

 折れた骨が内臓に刺さったのか、口から血が流れ出る。

 

「……っこの!」

 

 まだ剣が手から離れていない。身体は諦めきっていない。

 剣先を男の足に捉え、勢い良く突き刺す。

 が、寸前で避けられ、剣は石畳に突き刺さる。

 足による支えがなくなり、自立する程の体力が残っていない身体が石畳に突っ伏す。

 

 口から鉄の味が止まらない。

 痛みが治まらない。

 寧ろひどくなっている。

 血がどくどくと流れ出している。

 死にたくない。

 このままでは殺される。

 

 だから仕方がない、そう思い込まなければ、コレに手を出す覚悟が決まらなかった。

 あの事件の際、こっそりくすねていたあの薬。

 怪人になったゼノンが、怪物に変化したあの薬。

 

「……胸糞悪いけど、仕方ないわよね」

 

 薬に手を出そうとすればするほど、何度も何度もアイツの顔が反芻する。

 だって仕方ないじゃない。あなたは此処にいなくて、助けを呼ぼうにもこんな時間じゃ頼れる人は居ない。護衛だって付けずに来たんだから。

 

 だからそんな顔で私を見ないで。 

 私はあなたが思っているよりも弱くて、情けないのよ。

 

「堪忍してちょうだい……」

 

 今にも涙が溢れそうになりつつも、薬を口に運ぶ。

 その時だった。

 

「変身ッ!!」

 

 微かに聞こえた声。

 黒き怒りに溢れているようで、それでも安心する声。

 最期にあなたの声が聞けたのなら……それが幻聴だとしても、まぁ、それも悪くないのかも。

 薬を持つ手から力が失せ、僅かな力で顔を上に向ければ、月光を背に落ちる陰が。

 

 初めに光あり。

 光は次第に強くなり、爆発と見紛う輝きが私を覆う。

 

 降りてきた白い光は、次第に目に映る情報を白から黒へと変えていく。

 その目は、空から姿を隠した輝く太陽のようで。

 その肌は、剣一つ通さない黒鋼の鎧のようで。

 

「仮面ライダー……ブラック!!

「……クロノ」

 

 あの日私を救ってくれた姿とよく似た、それでいて違う、白い煙を上げる戦士が。

 仮面ライダーが、月夜から降り立った。

 

「ライダーパンチ!!」

 

 着地と同時に地面を蹴り、真っ赤に燃える、巨人の剣のような拳が、黒ずくめの男の頭部を砕く。

 クルミが振り下ろされたハンマーで叩かれて、砕けるように。

 むせかえるような血の臭いが路地裏に満ちる。

 

「……『シャドウガーデン』の名を騙る愚者共が」

 

 だらんと垂れ下がるように落ちた頭のない死体を踏みつけ、弾ける鮮血と共にドスの効いた低い声が耳を通る。

 血が減っていたからか、その声に恐れていたからか、震えが止まらなくなる。

 どうやらそれは奴等も同じようで、霞がかる視界には確かに動揺が隠しきれていない男達が映る。

 

「……チッ!」

 

 私がかすり傷をつけた男が、懐から注射器を取り出す。

 ゼノンが持っていた、怪人化の薬が入れられている注射器と同じ形状、同じ色だった。

 それを己には刺さず、未だに血をダラダラと垂れ流していた男に突き刺し、注入する。

 

「ガッ、アァッ……!!」

 

 瞬間、光る身体。

 苦しむ声と共に光が薄れると、そこに現れたのは魚のような見た目をした、爛れた姿をした怪人が。

 条件が揃わなければゼノンのように上手くなれないのだろうか。

 

「役立たずの再利用か……厄介な事を」

 

 仲間1人を怪人にして、他2人は壁を蹴って屋根上へと逃げていった。

 その所為もあってか、ギチギチギチと、強く握った拳から劈くように音が鳴る。

 怒りに満ち溢れているのは、今の私の目ですら見て取れた。

 

「安心しろベニザケ。すぐあの世に送ってやる」

 

 声にならない雄叫びを挙げながら、魚の怪人はクロノに襲いかかる。

 瞬間、右手から出現した黒い粘液のようなものが縦に伸び、あの日見た剣の形に成っていき、固まる。

 今の私では捉えられないほど速い太刀で、怪人の身体は3枚に卸されていた。

 

「……クロ」

「何故だ」

 

 燃える怪人の死骸を背に、人間の姿に戻って私の方に歩み寄ってくるクロノ。

 戸惑う私。そんな事お構いなしに、私の襟元を掴んで倒れていた体を持ち上げる。

 

「うぐっ……!」

「何故その薬に手を出そうとした!!答えろアレクシア!!」

 

 血が滲む。

 怒号が耳に入らない程には痛みがじんじんと体全体に伝わる。

 

「だっ、て……それしか私、には……」

 

 喉から声をひねり出すようにして、我ながら情けないセリフを連ねようとしている。

 もしクロノが来ることが無ければ、私はあの薬に頼るしかなかった。

 そうする以外の選択肢が浮かばなかった。

 

 頭の中で構成された言い訳を無理にでも紡ごうとするも、それはできなかった。

 あの顔で、あの呆れるような顔で、クロノが私を見ていたから。

 

「……その程度か。その程度の弱い人間だったのか、アレクシア」

「な……何を、言って」

 

 掴む手の強さが徐々に弱くなっていく。

 その手が離されるよりも前に、ゆっくりと地面に降ろされる私の身体。

 先程逃げた2人を追いかけるためか、私に背を向けてそのまま足を進めようとする。

 

「ま、待って……!」

「もうこの事件に首を突っ込むな。この闇に、お前が望む答えはない」

 

 引き留めようと掴んだ私の手を、軽く払いのける。

 それでも、死に物狂いでまた足を掴む。

 

「私だって……私だって、あなたの……ッ!」

 

 『役に立ちたい』

 言葉にはできなかった。

 今のままでは何も役に立てず足手まといになるのがオチ。

 

 それでも。

 それでも……ッ!!

 

「……その目ができるならそんなもんに手を出すな、バカ猫被り」

 

 私の前にしゃがみ込み、傷口にそっと触れる。

 その声は、もう怒気を孕んでいない、あの時私の剣を褒めてくれた時のような、優しい声になっていた。

 

「『キングストーンフラッシュ』」

 

 その光は、あの日見た破滅の光ではなかった。

 優しく包まれるような、癒しの光。

 

「クロ、ノ……」

 

 お日様のような暖かさに誘われるように、私は意識を手放した。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 『キングストーン』は万能だ。

 だが、まだ俺はその力の真髄を発揮できない。

 『黒い太陽』足り得る存在に、まだ達していないからなのだろうが。

 

 そんな俺でも、軽い回復を他人に施すことは出来る。

 自己回復は何度もしていたが、他人に向けての回復は初めてだったが……まぁ上々だろう。

 

「……さて、どうするか」

 

 随分と心地良さそうな顔で気絶してやがるアレクシアに目を向けつつ、先程逃げた2人の男のことを考える。

 本来なら怪人をすぐに倒して追いかけれたんだが……短気は損気とはよく言えたものだ。

 このまま放置するわけにもいくまいし、かといってこんな現場を見られたら面倒なことこの上なくなる。

 

『アレクシア、アレクシア!』

 

 最前択を見つけれず悩む俺の耳に、遠方からアレクシアの名を呼ぶ声が近付いてくる。多分アイリス王女だろう。

 声の感じ的に、このまま直進してくれれば見つけれるだろう。

 

 なら、あとは王女様に任せよう。

 

「そんな遠くまで行ってないといいんだけどな」

「その心配は不要だ」

 

 頭上付近から聞こえてくる、本来居るはずのないやつの声。

 この場に留まると面倒になりそうってわけで、声が聞こえたほうへと跳ぶ。

 そこに、既に帰ったはずのシドが居た。

 

「シド?なんでここにいんだよ」

「なんか嫌な予感してさ、来てみたら怪人と対峙してるクロノと逃げてく2人の黒ずくめ。1人は僕が殺ったけど、もう1人はニューが情報引き出すって。だから任せてきちゃった」

「そういうことか……すまない、助かった」

 

 俺だけでもなんとかなったとは思うが、お陰で一旦の問題は早く片付いた。

 ニューにもシドにも、感謝しなければな。

 

「ちゃんと感謝してよねー。このままだとウンコ垂れ流しながら走るぞーって言って2人には先に帰ってもらったんだから」

「……」

 

 絶句。

 コイツは2人のモブ友がちゃんとクズだってことをあまり理解していない節がある。

 

「……明日から話しかけて来んなよ」

 

 明日以降クソ漏らしのレッテルが貼られるであろう男から踵を返し、寮に向かった。

 道中シドがとやかく言ってきた気がするが、すべて聞こえないふりをした。

 

 

 

 翌朝。

 王都の大通りに凄惨な死体が吊された。

 その死体に四肢は無く、腹には血で『愚者の末路』と書かれていた。

 

 流石にやりすぎ。

 中南米のギャングかよ。

 




ね、比較的シリアス
書くの苦手なのにシリアスしてる

時に拳を時には花をスタイルで人間を愛でる怪(しい)人
人間は人間のまま強くなるべき(強火思想)
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