黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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今回は比較的『七影』がいっぱい出るらしい
オラッ!!オリジナル日常話を喰らえッ!!
たこ焼き食べたい


23話 上かッ!!

 

 シドが治療の名目で5日間休むことになった。

 なんでも、あの後連行されてチェックされるまでにスライムと血液袋で傷を再現、包帯グルグルのミイラ状態にされていたらしい。

 その後性懲りもなく抜け出してピンク髪の生徒と出会ってたらしいが……まぁそこはどうでもいい。

 実際の怪我は0のはずなのに休んでるのが重要なのだ。

 ダイナミック仮病だ。

 

 ということで、それに合わせて俺も学校サボりを遂行することになった。

 

「なんか悪いな……ニュー、ホントにいいのか?」

「お任せください。完璧にこなしてみせます」

 

 目の前に対峙する、完全に俺そっくりの見た目になったニュー。化粧って怖い。

 

 サボりのきっかけは俺の一言からだった。

 まさしく今朝、誰もいない時間帯の校舎を練り歩きながら愚痴を呟いてた時。

 

『シドめ……合法的にサボりやがって。俺もサボりてぇ……』

『畏まりました』

『畏まりました?』

 

 といった流れで、今日はポニテで潜入していたニューに連れていかれた空き教室。

 恐らくニューは突然の激務でおかしくなっていたのだろう。

 取り出されたのはノコギリ、金槌を初めとした工具一覧。

 開始してしまった人体改造改め、化粧。

 とても怖かった。

 

 まぁそういった流れで、俺がサボってる期間はニューが俺の代理として生活してくれるらしい。

 なんか申し訳ないが、思ったよりニューが乗り気だったもんだから任せることにした。帰ってからバーガー奢ってあげよう。

 

「何かあったら……そうだ、来い!バトルホッパー!」

 

 窓の外に向けて名を叫ぶ。

 俺の意思に応えるようにタイヤをフル回転させて、バトルホッパーは現れる。

 それに合わせて窓から外へ。バトルホッパーの側へと向かう。

 

「トラブルが発生したらコイツを使ってこっちに来てくれ。俺のとこまでならすぐに来れるはずだ」

 

 頭部を撫でればご機嫌な機械音を鳴らすバトルホッパーを、俺に続くように外に出たニューの方へと向かわせる。

 俺と見た目は同じだが『キングストーン』がないのを感知したのか、警戒しているように見える。

 

「安心しろバトルホッパー、ちゃんと信頼できるやつだ。ほら、ニューも挨拶を」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 ニューからしたらよくわからない生命体に挨拶を強要されてる、なんて意味がわからない場面に当たるだろうが、なんとか納得してもらう

 

 まぁ問題かが起こるとは考えにくいが、念には念を入れておくのは大切だ。

 

「じゃ、任せたぞ」

 

 バトルホッパーの頭部に当たる部分を撫でようとして軽く体当りされるニューを背に、俺は『古都アレクサンドリア』へと向かうことにした。

 微かに心配が勝つが、もうどうにもならない。

 なんとか頑張ってほしい。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ロードセクター。

 

 元文明破壊用マシンで、今は暴力装置の域を超えた暴力装置。

 こいつは定期的な開発によって1200km/h程出るようになってしまった。

 下手すると俺のライダーキックよりも強い。

 『黒い太陽』を目指すうえで立ち塞がることになる壁を己の手で増やしてしまった。

 まぁ、どうせ超える壁だからそれはいいか。

 

 閑話休題。

 久しぶりの走行だったのもあり、もしかしたら感覚を失って最大速度まで達していないのかもしれない。

 それでも900km/hは出ているはずだ。

 それなのに……

 

「ししょー!!久しぶりなのです!!」

 

 それなのにロードセクターと同等の速度で付いてきてる愛くるしい弟子はなんなの。

 シドのガンダッシュと同等か、少なく見積もってもそれより少し遅いくらいなのに。

 強くなってるみたいで俺は嬉しいよ。嬉しいけど怖いよ。

 

「久しぶりだなデルタ。元気してたか?」

「デルタはずっと元気いっぱいだよ!ししょーも元気?」

「勿論。すこぶる元気だぞデルタ」

 

 デルタの持つすんごいパワーに関心を覚えつつ、『深淵の森』を併走しながら話す。よく喋りながらその速度を維持できるものだ。

 

「そうだデルタ。俺今日は古都で1日過ごそうと思ってるんだが」

「お泊りするのです!?じゃあデルタと一緒の部屋で寝る!!」

「流石に自室で寝るぞデルタ」

「やだ!ボスも呼ぶ!!」

「尚の事自室で寝るぞデルタ」

「むぅ……ししょーはワガママなのです」

「デルタには言われたくないぞデルタ」

 

 無邪気過ぎるデルタに微笑ましさを覚えながら会話を続ける。

 幼児と対話するような、そんな感覚。

 久しく失っていた不純さのない癒やしだ。

 

「あ!!だったらデルタ狩りに行くのです!!でっかいイノシシ獲ってくるのです!!」

「そうか。頑張れよデルタ」

「ししょーは行かないの?」

「師匠は休みたいからいけないかな」

「むぅー!!……じゃあ仕方ないのです」

 

 デルタが諦めを覚えていた。

 あのデルタが諦めを……涙が出そうだ。

 

「狩りはいつかボスとするのです!」

 

 諦めではなく妥協だった。

 まぁシドもデルタとは波長が合うだろうし、喜んで狩りを手伝ってくれるだろう。

 

「でも今日はししょーと一緒にご飯食べる!!」

「それならいいぞ。いっぱい食うためにもでっかいの捕まえてこいよ」

「うん!!デルタ頑張る!!行ってくるのですー!!」

 

 そう言うとデルタは木が生い茂る森へと方向転換、でっかいイノシシを探しに駆け出していった。元気いっぱいで大変いい。

 久しぶりだがすぐに終わった会話を噛み締めながら、俺は霧の中を少しずつ速度を下げながら進んでいく。

 

 霧を抜けて、やっと辿り着いた。

 莫大な土地に、壮大な建造物。

 そして何より目立つでっかいシャドウの像。

 悪趣味なんて言ったらここにいる全員から反感を買うだろうが、それでも言おう、悪趣味だ。

 

 さて、ここで一思案。

 仮にこのまま正面から城に向かったらどうなるだろうか?

 恐らく、空気がピリつく。

 腐ってもこの組織のNo.2、シャドウの相棒に当たる存在。

 『絶対』に順応する例外の存在。

 怖がられたとて、敬われたとて仕方がない節はある。

 

 だが、そうなるとちょっと、いやだいぶ面倒だ。

 人の上に立てる器ではないのに敬意を一身に浴びるのはどうも慣れない。何度もここには来てるが、それでも慣れない。

 そういうのは全部シャドウ様にむけてほしい。

 

 ってなわけで。

 

「よし、『キングストーンフラッシュ』」

 

 腹部に『キングストーン』を出現。

 僅かに光らせれば、俺の意思に答えるよう、次第に光が身体をすり抜けていく。

 

 透明な物質の仕組みを、かつて気になって調べたことがある。

 当時の俺は――最も、今の俺もそうだが――然程賢い人間では無かった為、明確な原理までは分からないし覚えてないが、大雑把に内容だけは覚えていた。

 確か、『光が対象の物体を通る際、吸収や散乱をすることなく通過すれば物質は透明になる』って感じだったはず。

 知識があれば後は力。

 それをイメージして、『キングストーン』の力を解放、さらにそれをスライムスーツでも応用してやる。

 最後に魔力出力を極限まで減らしたら、擬似的に透明人間化出来る

 

「何をなさってるんですか、ブラック様」

 

 はずなのだが……??

 

「プシ、俺が見えるのか?」

「お体やお顔は見えてないんですが……赤い光が、お腹からハッキリと」

「そんな」

 

 ふと腹部を見れば、真っ赤な『キングストーン』が

 ショックによって力が抜けると共に、膝から崩れ落ちる俺。

 やはり万能の『キングストーン』、完全に使いこなすのはまだまだ先なのか。

 

「どうして透明化なんて……」

「その、敬意の目で見られるのが怖くてな」

「……今更なのでは?」

「そうだが……」

 

 砂埃を払いつつ起き上がる俺に、正論の刃が突き刺さる。

 正しさは時に人を傷付けるものだ。

 

「ブラック様は主様と肩を並べるお方なのですから、もっと胸を張ってください」

「プシはないもんな、張る胸」

「今なんと?」

「ごめんじゃん」

 

 アルファに負けず劣らずの威圧感。

 この俺が咄嗟に謝罪にはいるほどの力を手にするとは。

 

「まったく……それで、本日はどのような要件で?」

「久しぶりに顔出しただけだ。暇を作れたんでな」

 

 ほんと、ニューには感謝だな。

 感謝と言えばそうだ、プシにも感謝しておかねぇと。

 あの時俺を運んでくれたらしいんだし。

 

「改めてありがとな」

「ふふん!」

 

 頭をわしゃわしゃと撫でてやれば、輝かしいドヤ顔が。

 思わずデコピンしたくなる衝動を抑えて手を離す……なんだその不服な目は。

 

「もっと撫でてくれても良かったんですよ?」

「遠慮しとく、よ!」

「あでっ……なんでですか!」

 

 抑えてた衝動はすぐに放たれ、ジト目で俺を見るプシのデコピンをお見舞いする。

 すればぷんぷんと音を立てるようにして怒るプシ。こう言うときの反応が良いから弄りやすい。

 

「まぁまぁ。とにかく、来たはいいもののやる事が特に無い俺を導いてくれ」

「もうっ!……仕方ないですね」

 

 我ながらあまりにも唐突な無茶振りだが、それでもプシは応えてくれるようで。

 行き場もなくひらひらさせていた俺の手を取り、流れるように腕を組む。

 『シャドウガーデン』内か、或いはやんごとなき身分の間で流行ってたりするのか、腕組み。

 

 ……にしても柔いな。

 

「養殖の凄みか」

「先日、ようやく99%まで到達致しました」

「流石だな。そのまま精進しろ」

 

 一見何かすごい計画の話をしているように見えなくもない会話。

 養殖による生物の生育、それの進捗が99%にまで至った……といっと内容っぽいだろう。

 だが、胸の話だ。

 偽りの胸の話だ。

 

 努力の結晶の柔らかさを噛み締めながら共に歩いて、到着したのは研究室。

 イータが居る場所だ。

 あの手紙には『目をキラキラさせて』待ってるなんてこと書かれてたっけか。

 行かなければ向こうからこっちに来て「突撃!お前が被検体!」されるだろうし、そんな事されるくらいなら自分から出向いたほうがいい。すこぶる効率的だ。

 効率的だってのははわかってるんだが……

 

「だからってここに誘導するかよ」

「だって〜場所は指定されてなかったですし〜」

「この野郎……」

 

 自分の頭をコツンと小突き、舌をペロッと出すプシ。

 可愛さよりギリムカつくが勝つ。

 というか、俺が助けた『七影』メンバーは俺を舐めてる節がある気がする。

 

「まぁ来ちまった以上仕方ない……プシ、軽い食事を3人分用意してくれるか?」

「勿論……って、3人分ですか?」

「おう。どうせまだ飯食ってないだろ?折角なら一緒に食おうぜ」

 

 どうせイータの事だ。

 軽く見ても3日は食事と睡眠を削って研究をしてるってとこだろ。

 バーガー1個くらいは食ってもらわないと。

 

「……っ!はい!不肖イプシロン、速やかに御食事を用意してまいりますわ!」

「張り切り具合凄」

 

 プシはお淑やかに駆けていった。

 あんな調子だとバーガー3個以上、なんなら本格的な料理が出てきそうだが……まぁなんとかなるか。

 とにかく、今は対峙している問題を終わらせなくては。

 

「入るぞ」

 

 ノックを3度、コンコンコンと叩いて扉を開ける。

 

 瞬間、力を発揮する『キングストーン』。

 バッタ怪人の姿から『リプラスフォーム』が形成される寸前でスライムスーツを起動。咄嗟の判断ではあったが、『黒殿様飛蝗怪人』へと変身する。

 この姿が一番動きやすい。

 

 部屋に入るなり降ってきた黒色の檻を、左側に跳んで回避する。

 イータの研究室は、俺が来るとき高確率で捕獲用のトラップが作動しやがる。

 だからこそ『キングストーン』が危険を察知して発動したのだろう。

 

 一度罠を避けたら終わり、って訳がなく。回避した先に、まるで動きを予測していたかのように飛来する黒い槍が2本。

 着地と同時に俺の腹部を貫くであろう弾道、このまま降りればザクっと刺さってジ・エンドだ。

 だからこその『黒殿様飛蝗怪人』の背から生える飛蝗の足だ。

 壁を壊さない程度の威力で蹴り、槍が飛んできた方向へ跳ねる。そのまま流れるように槍を掴んで着地する。

 

 まぁこの程度の槍が刺さったとて、先に砕けるのは槍のほうだろうが。そう思いつつも槍を握力で真っ二つに折る。

 硬化したスライムは維持されていた魔力が切れ、ドロっと地に伏す。

 

「ったく……イータ?何処だ?」

 

 部屋を中央から見渡せば、山積みになった資料や本、衣服、道具……汚部屋もいいところだが、本人には何処に何があるのか分かっているのだろう。

 辺りの道具一式から魔力の残り香がしまくるもんだから、イータの場所を特定するのに時間がかかる。

 

 瞬間、身体で感じ取る、膨大な魔力。

 イータの武器は球体のスライムを初めとした、不定形のスライム達。動かす為にも自ずと魔力の流れる量が増加する。

 大量のスライムを使用する上での欠点だと、イータがよく言っていた。

 

「上かッ!!」

 

 魔力を強く感じた上部の存在を撃退すべく、バッタの右足を引き千切り、エネルギーを送り込んで『世紀王ブラックブレード』……ではなく、ハリセンのように形を変える。

 見れば、こちらに向かって両の手を伸ばし、飛びかかってくるイータ。中々アグレッシブなことをする。

 照明による逆光のせいか体全体に黒い影が落ちている。

 軽くパシンと叩いてやろうとハリセンを頭部めがけて振り下ろす。

 

 頭部に当たる直前、溶けるイータの肉体。

 その姿は、魔力を失ったスライムのよう。

 

「……そういうことか」

 

 俺が攻撃を行なったのは、精密に作られたイータの姿をしたスライム。

 どうやら件の欠点は、本人よりも強い魔力を発生するものを囮にする、だなどという強引だが合理的な策で解決したようだ。流石の頭脳と技能と言うべきだろう。

 

 弱点の克服に成功していた関心からか、一本取られた敗北感からか、振り下ろしたハリセンをバッタの足に戻してくっつけ、背後から現れた本人と思わしき気配に振り向く。 

 決して何か抵抗するでなく、ただただ振り向いた。

 

「えい」

 

 そして俺を捕獲すべく振り下ろされた、虫取り網。

 

 ……虫取り網???

 

「……捕まえた、ぶいぶい」

「捕まった」

 

 喜びが隠しきれていないピースを片手に掲げ、俺を捕らえたイータ。さながら虫取りってかやかましいわ。

 抵抗するつもりは全く無かったのだが、流石にこの捕獲方法は癪だった。

 網と棒の繋ぎ目を強く掴めば、簡単に折れた。スライム製じゃねぇのかよこれ。

 

「じゃねぇんだよ。何しやがるイータ」

「二年間、研究の成果が音沙汰なし……ひどい」

「それは……すまなかった」

 

 無表情の中に寂しさが読み取れた。心にチクッと罪悪感のトゲが刺さった気がした。

 改めて思えば、ここへ来た時下手に抵抗しなかったのは、少しでも申し訳ないという感情があったからなのかもしれない。

 反省だ。

 

「だから……『キングストーン』の、排出……する」

 

 反省撤回だ。

 コイツ、理由をつけて解剖がしたいだけだ。

 少しでもイータに人の心とか存在してるものだと考えた俺が馬鹿だった。

 

 細身の腕からは想像できない力で抱きしめられ、拘束される。

 何かと思えば、白衣から伸びるスライム。

 イータの腕力が仮に1だとしても、スライムが99以上を補って100%の力を再現していやがる。

 

 そして何より密着状態だからこそ直で伝わるイータの想像できない程大きな胸の柔らかさ。

 本来ドキドキするシチュエーションなのだが、それ以上の脅威があるせいで素直に喜べない。

 なにせ既にスライムがメスを所持しているのだから。

 

「待てイータ。流石に死んじゃうと思うぞ。お前だって俺が死ぬのは嫌だろ?」

「科学の発展に……犠牲はつきもの」

「変に割り切りやがって……」

「それに、世紀王なら……そう簡単に死なない、でしょ?」

「……」

 

 痛いところを突かれて押し黙るしかなくなった。

 どうせ死なないなら良いかといった、諦めに似た感情でイータに身を委ねれば、流れ作業のように手足をスライムで絞められる。

 すればそのまま比較的物が少ない手術台に似たベットに寝かされる。イータの目がキラッと光った。

 

「それじゃあ……始める。痛かったら、あげてね」

「手足拘束されてんのに何をあげろってんだ」

「悲鳴」

 

 麻酔もなしで腹部にメスが入れられる瞬間、ふと思う。

 やっぱり遺書、書いとくべきだった……と。

 




ダイナミック他事してたら投稿遅れるガバ

デルタにししょーって呼ばれたい人生になりました
感想やここ好きを喰らいたくなるお年頃
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