黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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赤いメーターが三つ目に到達しておる こんな作品を愛してくれてありがとう
今回でガッツリオリジナルは終わるはず
土佐造り食べたい


24話 緊急事態だ

 

 イプシロンは歓喜に満ちていた。

 直近は任務やシロンとしての活動、その他諸々が募りに募り、親愛なる主と同等に好意を抱くブラックと、久方振りに顔を合わせることができたのだから。

 『キングストーン』だけか浮いた、少々格好つかない姿ではあったが、それ以降はいつも通りの彼だった。割と酷い発言をされたような気もしていたが、その努力を褒められたのは素直に嬉しかったのだと、今になって改めて思う。

 更に、本日彼と最初に顔を合わせた『シャドウガーデン』の構成員は自分なのだろうという妄想にも似た考えが、喜びと言う火に薪をくべていた。*1

 

 その感情は、動きからもわかりやすく読み取れたろう。小気味良いメロディーを鼻歌に乗せて、そのテンポに合わせるようにスキップを、踊るように踏む。

 

(早くブラック様に御食事をお渡しに行かなければ♪)

 

 片手に持った銀色のトレーに乗せた、3つのバーガー。イータとブラック、そして自分の為のバーガー。それを落とさずステップを踏み進むその様は、『緻密』の二つ名に恥じない動きと言えるだろう。もっとも、淑女らしさは捨て置いているのかもしれないが。

 己の浮かれ具合を客観的に見てしまったからか、小躍りするように浮かれていた足を止め、文字通り、足並みを揃えるように歩き出す。カツカツと、一定のリズムを鳴らすヒール。装いを正すように、スライム製の黒いドレスに歪みがないように、魔力を流す。

 

 そのタイミングで、廊下の角から現れた。

 宿敵、天然(ベータ)が。

 目と目が合う。その瞬間から、勝負は始まっているのだ。もっとも、ベータにとってはそんな事ないのかもしれないが。

 

 コツコツと足音を鳴らして歩むベータに、正面から当たりに行くイプシロン。胸と胸がぶつかり合う。天然と養殖、それぞれが形を変えては揺れ動く。

 

「……ちょっと。そこ、どいてくださらない?」

「ごめぇん!!胸が大きいものでつっかえちゃって!!ほんと胸が大きいもので!!実は今日も困った事があったのよねぇ!!」

 

 なんとわざとらしい台詞だろうか。なんとわざとらしい演技だろうか。もしかしたら、ベータの脳裏にはそのような疑いが過ぎったかとしれないが、それはイプシロンの次吐く言葉によって吹き飛ぶことになる。

 

「先程ブラック様とお会いした時……腕、組んじゃったのよ」

「なっ……腕を」

「それにぃ……あっつーい視線を注がれしまったの。私のコ・コ・に♡」

「んな……ッ!?」

 

 天然討伐を踏まえたマウンティングを果たすべく、もたれ掛かるようにベータの胸にぶつけていた胸を離すイプシロン。そのまま、形が整った張りのよい己の胸を指差し、あざと可愛らしく悩みを吐露する。

 

「まさか……そ、そんなわけないです!あのブラック様が、あの堅物のブラック様がそんな事を!」

 

 焦るベータ。あわあわと慌てつつも、その発言の真偽を問う。

 しかしその問いは、くねくねと艶めかしい動きをしながら答えられることになる。

 

「いーえホントよ?だから私も驚いてしまって……」

 

 イプシロンの発言は決して嘘ではない。実際に腕も組んだし、胸も見られた。なんなら褒められている。

 だがそれは、ベータが思い描く腕組みのシチュエーションとは大きく外れている。それがより、ベータの心を傷付ける。イプシロンの口調はあまりにも胡散臭いが、嘘偽りでないのは目を見ればわかってしまった。

 

 人が焦る様というのは、己が想像するよりも顕著に出るもので。ぷるぷると小刻みに震える身体。落ちないよう必死に堪えた涙を孕んで潤う瞳。可愛げのある可哀想な姿の完成だ。もしこの場にブラックが居れば、すぐにでも慰める程の姿だ。

 もっともそれは、イプシロンの自尊心を肥大化させ、煽りを加速させる為のアクセルにしかならないのだが。

 

「だってぇ、私なんかよりもベータのほうがずっとスタイルも良くて可愛いんだから!当然ベータもブラック様から熱い視線……何より、腕を組んだことだってあるよね?なにせ『七影』は勿論、ニューも経験があるらしいもの。ベータだって、ぎゅっと抱きついたこと、あるよね〜??」

 

 もはやその煽りは、誰にも止められない。

 先程まで片手で保持していたトレーを近場の棚に配置、両の手を後頭部で組む。スライムで形成された衣服越しではあるが腋を、さらには乳を強調するようなポーズを取って、ベータに迫る。

 近付けば近付く程、ベータの瞳で耐えていた涙が量を増していく。決して落ちはせずとも、されど増えていく。

 

「うっ、うぅ……私は……私は……っ!」

 

 ベータは記憶を巡らせる。偉大なる二方と出会った日を、大切な家族と過ごした日々を、世界の闇と陰ながら戦った日々を。それでも、記憶のなかに該当する記憶は見つからなかった。

 お察しの通り、ベータにそのような経験は無かった。ブラックとも、勿論主であるシャドウとも。

 

「あれあれ?もしかしてないの?そんなにおっぱい大きいのに?くびれもあるのに?足も長いのに〜?」

「う……ううっ!」

「私より会う機会多いのに〜〜??」

 

 もはやブレーキを失った煽りは暴走運転の域に達する。単に相手の長所を述べるだけ。これだけなら相手を褒める言葉でしかないが、ここに「褒められた該当者は褒める側が出来ていることを出来ていない」という条件が付けば、話は大きく変わってくる。その前提が付随すれば、嬉しい褒め言葉は、激しい煽り言葉へと変化する。

 浴びせられた褒め言葉と、ダメ押しの事実。ベータの耐えに耐えた我慢を決壊するには、十分過ぎた。

 

「うええええん!!」

 

 大粒の涙を落としながら、その場でクルッと180度回転。ダッと逃げるようにベータは駆けていく。正しく敗走だ。

 その姿を瞳に焼き付け、イプシロンの胸に刻まれる、勝利の二文字。勝ちの確信が、自ずとその右腕を天高く突き上げていた。

 

「ブラック様、そして主様の寵愛を受けるのはいつだって私……」

 

 勝利の熱はそのままに、置いたトレーを片手に戻す。その頃には煽りを愉しむ顔から、確固たる決意を持った顔立ちへと変わっていた。

 

「天然モノなど、淘汰されてしまえばいい……」

 

 虚乳と巨乳。決して終わることのない戦いに勝ち続けるという、確固たる決意を。

 

 その後は難なく研究室へと辿り着いた。もっとも、難を作り出したのはイプシロン本人なのだが。

 研究室の無駄に重い扉をノックして、中を確認しようとする。まさにその時だった。

 

『ま、待てイータ!待ってくれ!』

『問答無用。ほら、隠さないで……出せないでしょ』

 

 特大の難が発生した。

 扉に触れようとしていた手が寸前で止まる。凍ったように、時か止まったように動きが止まる。

 中で何が起きている?その疑問が何度も何度もイプシロンの頭を駆け巡る。息を切らしながらイータを静止するブラック。その静止を振り切り何かを出そうとするイータ。

 巡れど巡れど、結論はあまり考えたくない一つにしか辿り着けない。

 

(……いえ、落ち着きなさいイプシロン。ブラック様が、あろうことかイータと……はっ!?!?)

 

 ふと、イプシロンの頭に過る、イータの部屋を掃除していた時、不意に聞いてしまった発言。単なる独り言と割り切っていた言葉が。

 

『世紀王の力……子供に、遺伝するのか……研究したい。次、ここに来た時……ふふっ!』

 

 大きな点二つが太い線で繋がった瞬間、イプシロンの脳から何かが砕ける音がした。

 気付けば、もうまともには働けない脳の力は借りずとも、手はドアを空けていた。それはもう、勢いよく。

 

 時に、思った事をそのまま言うと、大抵の場合何かしらのトラブルが発生したり、良くないアクシデントに巻き込まれるきっかけになったりする。雄弁は銀、沈黙は金とは、よく言えたものだ。

 では、そんな問題を起こしかねない率直な言葉は、何に値するのか。

 

「なにヤッてんですか!!」

 

 恐らくそれは、鉄屑にも満たないだろう。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「なにヤッてんですか!!」

 

 ある種、拷問部屋へと変わった研究室の扉を、プシが勢い良く開く。顔真っ赤にして、声高々に、多分とんでもない誤解を引っさげて。

 

 大抵の場合、デカい音だったり、突然の来訪者が来たりするとそちらに意識がいくなり、今やってる行動が止まるのがセオリーだ。

 

「……やっと、出た」

 

 だがイータはそのケースから大きく外れるようで。

 プシが来ようとお構いなしと言わんばかり。眉一つ動かさず、俺が魔力で位置をずらし続けていた『キングストーン』を引っこ抜く。長い間身体に入っていたからか、謎の神経と繋がっている。

 引っこ抜くまでの間、無駄に身体を切って傷付けようとしなかった以上、最低限の優しさは持ち合わせているのだろうか。そんなわけないか。イータだもんな。

 

「ほんとになにやってんですか!?」

「イプシロン……うるさい」

 

 取り出されてしまった『キングストーン』を見て、目を丸くして驚くプシ。そんなに驚いて、初めて見たわけでもあるまいし……いや、イータがそれを取り出して掲げてるのを見たらビビるか。

 2度目の大声にはさすがに反応を示したようで、『キングストーン』片手に大声の主に軽く愚痴を吐く。

 

「……安心しろプシ。なんとか生きてるぞ」

「なら良かった……ってなるわけないでしょ!!」

 

 一瞬安堵したかと思えば、すぐさまハッと気付き、ぷんぷん怒る。表情がコロコロ変わるってのはほんとに面白いものだ。

 

「んんっ!それで、なんでこんな事になってるのよ」

 

 そうイータに問えば、俺と『キングストーン』を繋げていた神経を断ち切ってから行う後処理の手を止め、ピースサインを掲げ、言う。

 

「許可はおりてる。ぶい」

「ぶい、じゃないのよ」

 

 目線が俺に向く。疑いの眼が俺を見る。

 その目から逃れるべく、腹から噴水のように出ていた血を魔力で堰き止め、掲げる手は縛られたるので魔力でピースサインを作り、言う。

 

「黙認しちまった。ぶい」

「ぶい、じゃないんですよ」

 

 俺に付けられた拘束具を外しつつも、ため息混じりに吐かれたプシの言葉には諦めを感じとれた。

 先程からずっとウェイターの宣材写真みたいに持ち上げていたトレーに乗ったバーガー2つを取りつつ、机に向かったイータのもとへ行く。

 そこまでの道程で床に落ちてた糸を広い、それに魔力を流して傷口を塞ぐ。

 

「……で、イータ。それ取り出して何するつもりだ?」

 

 バーガーを差し出しつつ、己のスライムで慎重そうに持った『キングストーン』を見つめるイータに問う。

 そんな俺の後ろから、はむはむとバーガーを啄みつつぴょこと顔を出すプシ。多分これ素でやってる。可愛いやつめ。

 

「色々……準備完了。ブラック、魔力止めて」

「はいはい」

 

 言われるまま、『キングストーン』を抑え込むようにして包んでいた魔力を解く。

 瞬間、スピリタスでフランベをしたかの様な勢いで力が湧き出る。紅に揺らめいて、何処か神々しい、気味の悪い光。

 

「なっ、なんなの……この力!?」

「これが、『キングストーン』……通常出力の量、やっぱり、増えてる。多分、マスター以上」

「どうりで」

 

 シャドウと同等、もしくはそれ以上の力の権化を前に、プシは驚愕の表情。俺とイータは既に何度か見たことあるため、淡々と定例報告のように話す。

 よくもまぁ、こんなバカ出力エネルギーを体内で留められるものだ。我ながら日々の努力に感心してしまう。

 

「……確認完了。抑えて」

「人使いが荒いこと……」

 

 いつも通り握って押さえ込むイメージで、体外の『キングストーン』の力を抑え込む。

 ほんと、スライムを介した魔力操作が他より劣るだけでそれ以外はシャドウレベルでこなせる。もっと努力しなければ。

 

「……はっ。ちょ、ちょっとイータ。あんな力出したらここがバレちゃうんじゃ」

「問題無用。エネルギーの、認識阻害……この部屋なら、出来る」

「それならいいけど……」

「ナチュラルに凄いもん作ってるな」

 

 各々バーガーを食いつつ、抑え込んでも尚力が滲み出る『キングストーン』を見る。プシは一際、未知なる広がるをした赤い石に興味津々だった。

 机に置かれた『キングストーン』。次は何をするのかと見ていれば、スライムをハンマー状に変えて振り下ろすイータ。

 本来は単なる強度テストだったのだろう。フルパワーで振り下ろしたわけではなかったし、破壊するつもりなら俺に任せるはずだろう。

 

「あ」

「は?」

「へ?」

 

 だからこそ、この破壊は誰も予想できなかった。

 机上に広がる、真っ二つに分断された『キングストーン』。周りには8つほど小さな欠片、一つだけ周りと比べて大きい……それこそ、BLACKSUNの『キングストーン』と瓜二つだ。

 

 いや、そんな事はどうでもいい。

 

「……割れちゃった」

「割れちゃったじゃないぞおい……真っ二つじゃねぇか真っ二つ」

「どうすんのよこれ……ブラック様の大切なものなんじゃ」

 

 放心、この二文字が今の三人にはよく似合う。

 イータは焦るでもなく淡々と今起こったことを話し、俺は怒るでもなくより明確に現状を伝え、プシは慌てるでもなくかすかな心配を俺に向ける。

 

 大変気まずい空気が流れる中、それは唐突に起こった。正真正銘、不思議な事が起こった。

 砕けた『キングストーン』が、部屋の窓から差した陽射しを浴びたその瞬間、部屋全体を紅く染めるように光った。

 眩い光の中、咄嗟にイータ製のグラサンを装着して発生源を見る。そこには、太陽の光を受けて2つに分かれた『キングストーン』が重なり合う姿が。

 

「おお……」

 

 周囲の欠片を取り込むこともなく重なった2つの『キングストーン』は、足りない部分を補うように、その箇所を埋めるように生成していく。

 形成される度に強まる光。見続けるほど痛くなっていく眼。それでも、その光に魅入られているようで、目を離せない。

 俺が憧れた『黒い太陽』へと至る為に、欠かせない歯車が発する、太陽を超えるような輝きから。

 

「ブラック、危険」

 

 感嘆が口から溢れ、放心するように見続ける俺の視界を、イータの白衣が覆って遮る。薬品に似た、ほんのり良い香りが鼻を過る。

 

「……悪い」

「お安い御用……ぶい」

 

 袖内から見えた指は、V字に開かれていた。

 光の収まりは、白衣の布越しでも明確に感じ取れた。それに合わせるように袖から解放される。

 机に目線を落とせば、完全なる球体へと姿を戻した『キングストーン』と、その周りにちりばめられた、8つの欠片。

 

「……戻ってる。興味深い」

「欠片はそのままなのに……」

 

 興味津々な目で、完全復活した『キングストーン』を見る2人の合間をすり抜けて、『キングストーン』等を確保する。

 

「んで、もう見たいもんは見れたか?」

「んー……一旦は、よしとする」

「んじゃ戻すぞ」

 

 完全に接合していたわけではない腹を破くように開き、そこに『キングストーン』をぶち込む。そうすれば、『キングストーン』に自動回復機能が付いてるのか、じわじわと肉体が復元されていく。

 

「……よし」

「やっぱり、何でもあり」

「その戻り方はよしでいいんですか?」

 

 思ったより発生しなかった痛みにはあまり気を留めず、持ちっぱなしだったバーガーを食い切る。それに続くように2人も食べ切った。

 

「それじゃ、適当にアルファに顔出してくる。あんま研究だけの生活は控えろよ、イータ」

「まぁ……善処は、する」

「……頼むぞプシ」

「善処できるものなら既にしてます」

 

 まぁ十中八九無理だろう。イータの三大欲求は『知識欲・実験欲・発明欲』なのだから、食も睡眠も介在する余地がない。あのプシが遠い目をしているのが滅茶苦茶な真実をより確固としているだろう。

 バーガーの包み紙をゴミ箱と思わしきものに入れようとしたところ、プシが回収に来てくれた。ありがたくそれを任せて、部屋から出る。

 7つの『キングストーン』の欠片を背に、去っていく。

 

 

 

 部屋から出てすぐ、『キングストーン』が何かを感じ取る。突然腹から出し入れされたことによる拒否反応かとも思ったが、そうではないという事は感じ取れた。

 

 バトルホッパーが来る。

 俺に何かを伝えようと、必死になって向かってきている。

 アルファに会いに行く予定を外し、窓から建物外へと向かう。するとそこには、瞳を赤く光らせるバトルホッパーと、スライムスーツと同じ、もしくはそれ以上にぴっちりしたライダースーツに身を包んで、被ったフルフェイスヘルメットから靡くダークブラウンは三つ編みにしているニュー。

 いつの間にか俺よりもライダーとして格好がついている。ちょっと複雑な気持ち。

 

「緊急事態です、ブラック様」

 

 ヘルメットを外し、なんともまぁ真剣な眼で俺を見つめて口を開くニュー。

 緊急事態とは言っているが、何かと『シャドウガーデン』の面々は一つの小さな物事を大きく解釈する癖がある。それは階級が上に行けば行くほど酷くなる。全部シャドウの責任だ。

 まぁ、恐らく今回もそのパターンだろう。

 

「アイリス王女から呼び出しが」

「馬鹿な」

 

 訂正しよう。緊急事態だ。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ブラックが研究室から出てすぐ、イータは机に向かう。欠けた7つの『キングストーン』の一つを手に取り、まじまじと見つめる。

 

「そう言えばイータ。ブラック様からあの石取って、結局何がしたかったのよ」

「『キングストーン』は、あくまでおまけ……今日は、ちょっとした、確認」

「おまけでお腹を切り裂くんじゃないわよ……それで、確認って?」

 

 至極真っ当な言い返しをしつつも、イプシロンは今はもう光を放たない宝玉の欠片をじっと見続けるイータの近くへ歩む。その足音を長い耳で聴き取ったからか、資料をスライムを介してイプシロンに差し出す。

 

「これって……ブラック様のレントゲン?」

 

 どうやらイータは『キングストーン』の摘出をする前、厳密に言えばベットに寝かした際、ベットに仕込んでいたであろう器具で撮影していたようだ。

 渡された資料に、イプシロンは目を通す。イータの面倒を見る機会が多い以上、イプシロンにはある程度人体の知識があった。それ故に、僅かながら違和感が生じる。

 

「人の身体……じゃないわね、コレ。まぁ怪人だからそれはそうなんでしょうけど」

「次に……これ」

 

 今度は、フォルダに挟まれていた資料を手渡す。ブラック以外の怪人が多く纏められていたものから、カマキリやムカデといった、虫系統の怪人達をピックアップして。

 

「怪人の構造……殆ど同じ。昆虫の怪人は、特に顕著」

「そうね。でもブラック様とはだいぶ違う……あれ、ブラック様って確か」

 

 浮かび上がる疑問。

 ブラックはいったい、何の怪人であったか。黒鋼の鎧を身にまとった、あの怪人は、何の生物を基にして作られていたか。

 疑問の解は、イータの口から淡々と告げられることになる。

 

「ブラック……バッタの、怪人。同じ昆虫怪人でも……全く別物」

 

 同じ虫系統の怪人。しかしその中身は別物。怪人の中でも『世紀王』であるが故なのか、将又別の何かがあるのか。

 

「これは、私の……考察」

 

 『キングストーン』を机上に置き、身体ごとイプシロンに向き合う。あまりにも真剣なイータの眼に、イプシロンは息を呑む。

 そして告げられる、イータの考え。

 

「ブラックは、人間でも、怪人でも……ない」

 

*1
実際は3番目(1番、ニュー 2番、デルタ)




長い長いは文が長い
オリジナル話多すぎ問題ではあるけど作品タグにわざわざ「オリジナル展開」ってつけてるから許してもらえてると信じたい
書きたいものを本能のまま書く、そういうタイプの見切り発車
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