黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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こんな作品に10評価が!?
それも2つも!?
本当にありがとう!
プリン食べたい


5話 こんなんじゃ世も末だろ

 

「さぁ〜てどうしようかな」

 

 床に横たわる金髪美少女エルフを見つめ、シドは顎に手を当て、俺に問いかける。

 

「このまま「君は自由だ。郷に帰りな」って感じで送り出してみる?」

「そりゃ悪手だろ、シド。悪魔憑きって総じて家族から見捨てられてんだろ?コイツに帰るとこなんてないんじゃねぇのか?」

「だよねー……うーん……」

 

 再び悩みだすシド。

 

 悪魔憑きになったら、問答無用で追放、その後公開処刑される。

 あまりにもひどい話だ。

 恐らくこの娘も、悪魔憑きを発症して、そっからどっかに売り飛ばされる途中だったのだろう。

 ホントに可愛そうだ。

 

 可愛そうといえば、今のこの娘の状態もそうだ。

 何処かわからない小屋の中、真っ裸の状態で放置されてんだから……待てよ?

 真っ裸で放置してんの俺等?

 駄目だろそんなの。

 俺達倫理観何処に捨てちまったんだよ。

 

「……悩んでるとこ悪いが、この娘に早く服着せてやれよ」

「あ、それもそうだね。忘れてた忘れてた」

 

 俺が指摘すると、シドは俺の方に近寄ってくる。

 「いったい何だ?」という疑問を持つ暇も無く、シドは俺の着ていた黒いコートを剥ぎ取った。

 

「……え、何してんの?」

 

 俺の質問に答えず、シドは剥ぎ取ったコートをエルフの娘に被せる。

 

「これで良しっと!」

「いや、割と真面目に何してんの?なんも良くねぇんだけど?」

「え?なにか問題でもあった?」 

 

 何故かキョトンとした顔で尋ねてきやがるシド。

 問題しかねぇよ。

 

「俺さっきまでバイクの調整してたんだぞ?汗くせぇしオイルくせぇだろ。てかお前のスライム使えよ」

「いやいや〜。折角クロノが居るんだし、わざわざ使うまでもないかな〜って」

 

 普通じゃあり得ない行動に対し焦る俺に、満面の笑顔で受け答えるシド。

 今に始まった事ではないのだが、ホントにやべぇだろコイツ。

 

「ほらほら、その娘もそろそろ目覚めちゃうよ?こっちも準備しないと」

「お前……もういいや。んで?準備って何のだよ」

 

 シドとの一方的な口論を諦め、先程の発言の意味を尋ねる。

 一体何の準備をするというのか……。

 

「何って……そりゃ勿論、『陰の実力者ムーブ』だよ」

 

 これまた何故かキョトンとした顔を浮かべて答えるシド。

 そんな「これくらい知ってて当たり前でしょ?」みたいな顔しないでほしい。

 初耳なんだわ。

 

 戸惑う俺を横目に、シドは木箱の上に片膝を立てて座る。

 すっげぇ中二病的な座り方だ。

 

「ほら、クロノも!」

「お断りだ。そんな恥ずい事に俺を巻き込むんじゃねぇよ」

「釣れないなー」

 

 キラキラした目で誘ってくるシドに、呆れながら拒否する。

 んでもって、近くの樽の上に足を組んで座り、頬杖をつく。

 

「うーん……まぁそれはそれでいいかな。リーダーに呆れながらも着いてくるNo.2……みたいな!」

「もうヤダコイツ」

 

 どうやら何をやっても喜びやがるようだ。

 なんて面倒くさいのだろうか。

 

 とまぁ、そんな感じでやり合ってる間に、元悪魔憑きの娘は目を覚まそうとする。

 と同時に、シドは喉を鳴らし、声を整えてから喋る。

 

「目が覚めたか」

 

 シドが言葉を発すると共に、元悪魔憑きの娘はゆっくりと身体を起こし、自分の身体を見る。

 

「……あれ!?私の体!?……嘘!?」

 

 既に悪魔憑きが治っている体を見て、驚くエルフの娘。

 そりゃまぁ、絶対に治ることはない!なんて言われてる悪魔憑きが治ってんだからな。

 そう驚くのも無理はないよな。

 

「君を蝕んでいた呪いは解けた……もはや君は自由だ」

 

 え、待って?

 呪いって何?

 

「あなたが……私を……呪いって?」

 

 そりゃそうなるわ。

 なんせこの俺でも驚いたんだからさ。

 

「ああ、呪いというのは……君達『英雄の子孫』にかけられた、忌まわしき呪いだ」

 

 何だよ『英雄の子孫』って。

 ほら見てみろよ、エルフの娘馬鹿みたいに驚いてんぞ。

 

「驚くのも無理はない。だが君も知っているだろう?」

 

 そう言うと、シドは座ってる木箱の後ろにあった木箱から経典を取り出し、見せてくる。

 

「教典にある、三人の英雄が『魔人ディアボロス』を倒し、世界を救ったという御伽噺を……あれは、本当にあったことさ」

「えっ……!」

「魔神は死の間際、呪いをかけた。それが君を腐った肉塊へと変えたものの正体だ。だが、何者かが歴史を捻じ曲げ、君達『英雄の子孫』を『悪魔憑き』などと蔑まれる存在にした」

 

 よくもまぁ、そんな嘘をつけるもんだな。

 こんな作り話、普通は信じるわけ……

 

「……ッ!!」

 

 ……前言撤回。

 多分この娘、馬鹿みたいに純粋なんだ。

 疑うことを知らないんだ。

 

「その黒幕の正体は……そうだな……黒幕は……まだ口にすることはできない」

 

 流石のシドでも設定に限界が来たのか、存在しない黒幕の正体については伝えない。

 てか目が泳ぎまくってんのウケる。

 

「知らば君にも危険が……」

「構わないわ……!」

「え?」

「……マジか」

 

 エルフの娘から返ってきた反応は、俺もシドも想定していなかった。

 まさかここまで乗り気になるとは……予測できんだろ。

 見てみろよシドの顔。

 俺アイツのあんな焦った顔始めて見たぞ。

 ありがとうエルフっ娘。

 

「一体何者なの……?」

「……そ、そうか……ならば教えよう」

 

 動揺を隠しきれていないシドは、俺に助けを求めているのか、めっちゃこっちを見てくる。

 しゃーない。

 珍しいモン見れたし手伝ってやるか。

 

 まず真っ先に頭に浮かんだ候補は『ゴルゴム』

 だがこれは駄目。

 元悪魔憑きのこの娘を巻き込みたくないってのもあるし、シドに知られたくない。

 あくまでコレは怪人である俺の問題。

 コイツ等を巻き込んじゃいけないよな。

 

 ……あ、『ゴルゴム』といえば……あの神殿から逃げる時になんか見つけてたよな。

 確か……

 

「……『ディアボロス教団』だ」

「そ、そう!『ディアボロス教団』、『魔神ディアボロス』の復活を目論む者たちだ。やつらは決して表舞台には出て来ない……」

 

 思い出した明らか怪しい奴らの名を出すと、シドはすぐさま設定を練りだし、それをエルフっ娘に教える。

 無論、これもシドの創作物語だ。

 ホントすげぇよコイツ。

 利益が自己満足のペテン師だ。

 

 そんなペテン師のシド、略してペテンシドの話を聞き、エルフっ娘の心情は怒り心頭といったところ。

 なんて感情豊かなのだろう。

 こんな「くっ……殺してやる」って顔出来るんだ。

 

「我等が使命は、その野望を陰ながら阻止すること……かな」

 

 うんうん。

 中々綺麗にまとまったじゃねぇかよ。

 事前情報無しでよくこんなシナリオ思いつくわ……

 

 ……待てよ?

 今コイツ「我等」って言わなかった?

 コレ……もしかしなくても俺も巻き込まれた?

 

 俺が戸惑うのをよそに、シドは青紫色の魔力を解放するのと同時にスライムスーツを起動させる。

 最初からそれやってこの娘に着せてやれば良いものを……ストックはまだあるだろうに。

 

 てかどうしよう。

 コイツこのまま名乗りでかっこつけるつもりだろ。

 となると、シドの名前を伝えるわけにはいかないだろうし……さっき言ってた『シャドウ』の名前でも使うか?

 

「そう……我が名は『シャドウ』。陰に潜み、陰を狩る者」

 

 あ〜あ。

 予測できちまった。

 もう駄目だ。

 多分このままここに居ると俺の名前が勝手に決まる気がする。

 

「そしてこの男こそが我が右腕、我が組織のNo.2、同じ使命を果たす者……名は『ブラック』。この陰の世界を照らす、『黒い太陽』だ」

 

 ホレ見たことか。

 ここまで予測できんなら預言者かメンタリストにでもなれるだろ。

 てかその設定かっけぇじゃねぇかよ。

 これだけは中二病に感謝だな。

 

 それにしても……『ブラック』ねぇ……。

 まぁそこそこいい名前だよな。

 あんときはバリバリ否定してたけど。

 でもやるならサンは付けて欲しかったな。

 

 ……まぁいいや。

 今日から俺はシド……改めて『シャドウ』のごっこ遊びに付き合ってやるときは『ブラック』って事にしといてやるか。

 

「困難な道のりになるだろう……だが、成し遂げなければならない。『英雄の子』よ、我等と共に歩む覚悟はあるか?」

 

 神妙な面立ちで、エルフっ娘に尋ねるシド。

 顔からは察することは出来ないが、多分内心ウッキウキで言ってんだろうな。

 

「病……いえ、呪いに侵されたあの日、私はすべてを失いました。醜く腐り落ちるしかなかった私を、救ってくれたのはあなた達です。だから……あなた達がそれを望むなら、私はこの命をかけましょう。そして……罪人には死の制裁を……!!」

 

 被せられていた俺のコートを着直し、覚悟の決まった目をして答えるエルフっ娘。

 こりゃまた、あの中二病が喜びそうな言葉だ。

 

 ってか俺のコート返して。

 そんな顔で着こなさないで。

 俺より似合ってんのそこそこ精神的なダメージになってんだから。

 

「敵は恐らく強大な権力者とかだ。真実を知らずに操られている人達もたくさんいるはず……」

「でも、立ち塞がる者に容赦はできない」

「そうそう!そんな感じ」

 

 すげぇよな。

 こんな適当な会話が成立してんだぜ?

 こんなんじゃ世も末だろ。

 

 そんな感じで呆れながら座ってると、アルファが立ち上がり、シドに詰め寄る。

 

「他の英雄の子孫を探し出して保護する必要もあるわね」

「えっ、あぁ、うん」

 

 ……おっと?

 

「組織の拡張と並行して拠点を整備しないと……そのための資金集めも……」

「う、うん。まぁほどほどにね」

 

 あ、まずいなコレ。

 多分このエルフっ娘、シドのバカ中二病ストーリー信じてる。

 コレ後々果てしなくめんどいことになるぞ。

 

「じゃあ、えーっとそうだな。僕等の組織は……『シャドウガーデン』、そして君はアルファと名乗れ」

 

 『シャドウガーデン』……ねぇ。

 大方シドの前世の名前が「影野」みたいなので、それを英語に変えてみたらいい感じ!って感じの乗りで決めたんだろうな。

 

 それにしてもアルファは駄目だろ。

 もしこれからメンバー増えてったらベータとかガンマとかになんのか?

 恐ろしすぎだろこの組織。

 

「アルファ……ふふっ、いい名前ね」

 

 ……まぁ御本人がご満悦ならいいか。

 

 

 

 そんなわけで、改めて俺はシドが作り出した『シャドウガーデン』のNo.2として、『ブラック』として生きてゆく事になったのだった。 

 ってわけで掘っ立て小屋に帰るべく、俺は踵を返して、小屋の出口に向かう。

 コートは諦めよう。

 あんなのなら何時でも手に入れれる。

 

 

 そんな、少し気分が下がった俺に、果てしなく焦らせる言葉が飛んでくる。

 

「……それにしてもこのコート、いい香りね。安心する香りがするわ」

「あー……そう、か。そうなのか……」

 

 アルファの名前、そして俺の許可無しで作られた組織の名前が決まった為か、だいぶ気を抜いて油断していたところで、アルファからそこそこヤバい爆弾発言が飛んできた。

 多分無自覚なんだろう。

 

 そういうのが一番質が悪い。

 バリ動揺する。

 

「ま、まぁそんならそのコートは貰っとけよ、アルファ。」

「あら、いいの?ブラック」

「いーのいーの」

 

 ただあまり匂いは嗅いでほしくないよね……俺にも恥はあるわけだし。

 そんな事を考えて少し頬を赤く染める俺と、俺のコートを随分と大事そうにするアルファ

 

「……あ、そうそう。言い忘れてたけど、そのコートさっきまでブラックが着てたのだから。後で返してあげてねー」

「……へ?」

「今言うんじゃねぇよ……バカ」

 

 せめて最低限の空気は読んで欲しかった、と。

 顔が真っ赤に染まったアルファを見て、俺はそう思った。

 




いい香りがする人とは遺伝子から相性がいいってどっかのイケメンウマ娘が言ってた
異世界でもゲノハラを推していこう

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たくさん貰えれば貰うほど血管がサイケしてKICKするんですよ!
ア アラララァ ア アァ!
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