黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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前回のお話が1時間でUA250くらい出してて日和った作者でございます
そんな見てくれるのであれば、コチラも書かねば……無作法といつもの……
そしてまた付きました評価9!
ほんとにもう……ありがとうございます!
パスタ食べたい


8話 踏み台になってくれよ!

 

「小娘がっ……!」

 

 薄暗い石造りの地下牢の中で、気絶した少女を見下ろす男が1人。

 この気絶した少女はシド・カゲノーの姉、クレア・カゲノー。

 王都の『ミドガル魔剣士学園』に向けていざ出発!というところでお馴染みの『ディアボロス教団』に攫われ、幽閉されてしまった。

 ……のだが、己の力のみで手の肉を削ぎ、魔封の鎖を外した狂人である。

 とは言え、顔面に拳を打ち込まれて気絶させられてしまった。

 

 そんな悲劇のお姫様(笑)兼強靭なゴリラ女を攫い、気絶させたのが、灰色の髪をオールバックに纏めた男、オルバ。

 オルバはクレアを殴った手に付着した血、そして流れ落ちた血によって作られた赤黒い染みを見つめる。

 

「まあいい。これで分かる……」

 

 そう呟き、床に溜まった血溜まりに手を伸ばす。

 その時、兵士が息を切らしながら地下牢に駆け込んで来る。

 

「オルバ様、大変です!」

「何事だ!」

「侵入者です!」

「何ッ!?」

 

 オルバは舌打ちをし、侵入者の元へと足を進めた。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 

 

 教団の隠しアジト内部にて、俺達『シャドウガーデン』は教団関係者と思わしき奴等の大虐殺を開始していた。

 今回はシャドウが居ないんで、No.2である俺が指揮を取ってるわけなのだが、命令出来るほどの肝が俺にあるわけもなく、全員に「自由に暴れろ」とだけ言っておいた。

 

 その結果がコレよ。

 出来上がっちまったんだよ、死屍累々が。

 

 主にデルタが嬉々として殺しまくったおかげで、俺の出番がなくなってしまった。

 それにあの馬鹿弟子、間違いなく強くなってるのだが、如何せん確認ってものをしない。

 デルタは馬鹿だから、完全に殺しきったかの確認をしない。

 そんな殺し損ねた奴等にトドメを刺したり、普通に教団関係者を殺したりとしてるのがイプシロンを始めとした、俺が助けた『七陰』の面々だ。

 イプシロンやゼータが殺るのは知っていたのだが、案外イータが文句を言わずに殺ってたのが意外だった。

 けどまぁ、彼女も『七陰』だもんな。

 

 先程名前を上げた4人は、初動で突撃していった面々。

 残りの3人、シャドウが助けた『七陰』の面々は俺について来て、教団関係者をバッタバッタと狩っていく。

 それこそ頭と体をお別れさせたり、上半身と下半身がグッバイ宣言してたりと、この娘達も果てしなく残虐であり、俺の出番がなくなる。

 俺は目的の場所までただ歩くだけ。

 それだけでいいってのが、如何せんつまらない。

 

「……なぁアルファ。俺戦っちゃ駄目なのか?」

「駄目よ、絶対に。戦ったら怒るわよ」

「……ベータ」

「駄目ですよ、ブラック様。あまり無理はなさらないでください」

「……ガンマ」

「申し訳ないですけど……駄目です」

「……畜生」

 

 実は先程、本日倒した怪人の数をアルフォに尋ねられ、バカ正直に9体と答えてしまった。

 それ故に今回の作戦で戦闘はするなと、アルファに釘を刺されまくってしまったのだ。

 んで、アルファは『シャドウガーデン』内でも権利が強いためか、ベータやガンマは逆らえず、アルファの指示に従うしか無い。

 辛い。

 

 そんな感じでトボトボ歩きながら進んでると、ちょいと開けたところでデルタ達と合流した。

 合流したのだが……デルタが真っ赤なのだ。

 いやまぁ、イプシロン達も多少返り血は付いてるのだが、デルタはその10倍位付いてる。

 

「……ハッ!ししょぉーーーう!!!」 

「ギャァァァ!!!」

 

 俺が居ることに気付いたようで、デルタは血塗れの笑顔でコチラにダイブしてくる。

 まぁ油断してた俺が躱せるわけもなく、その突撃が直撃する。

 痛みではなく恐怖が勝り、叫び声を上げてしまう。

 

「師匠!デルタはいっぱい狩ったのです!」

「だろうな。血が付きまくってるぞ」

 

 俺に抱きついたデルタは、尻尾をブンブンと振り回しながら返り血塗れの体をこすりつける。

 女の子にこんな事を言うのもアレだが、めっちゃ血生臭い。

 人間の血の臭いはまだ慣れん……というか、怪人の血に慣れすぎたせいで感覚がイかれてるんだ。

 最悪でしかない。

 

「師匠も一緒に狩ろう!」

「狩りたいけどアルファに禁止されてんのよ」

「ん?師匠は強いのにアルファ様の命令に従うの?」

 

 キョトンとした顔で尋ねてくるデルタ。

 デルタの言う通り、一応俺のほうがアルファよりも強い。

 それは間違いでないのだが……

 

「……アルファは怒るとおっかねぇからな。あの笑顔はマジで冷や汗もんだぞ」

 

 俺はアルファに手綱を握られていると言っても過言ではない。

 No.2のポジションなのに……情けない限りだ。

 

 そんな感じで話しながら、血塗れのデルタを引き剥がす。

 すると、俺の背後から禍々しいオーラのような物を感じ取る。

 どうやらデルタも察したようで、プルプルと震えている。

 

 恐る恐る振り向いてみると、そこには素晴らしい笑顔を浮かべ、仁王立ちで構えて待っていた。

 

「……ブラック?」

 

 本能で「あ、死ぬ」と察する事ができてしまった。

 おいベータにガンマ。

 アルファの後ろで敬礼をするな。

 

「……帰ってからが楽しみね♪」

「……あい」

 

 可愛らしい声を出してはいるが、殺意に似た何かを感じ取れる。

 おいイプシロン。

 追悼の意を込めて十字を切るな。

 ゼータにイータもだぞ。

 石を積んで俺の墓に見立てるな。

 デルタはそこに花を添えるな。

 俺は死んでねぇ。

 

 そんな感じのやり取りをしていると、俺達が来た道とは別の道から足音が聞こえてくる。

 それに合わせて、アルファ達はさも最初から決まっていましたよとでも言った表情を浮かべながら立ち位置を変える。

 俺の場所だけない……もういいや。

 後ろに隠れとこ。

 どうせ戦えないんだし。

 

 てな感じで不貞腐れつつ岩の上に座っていると、髪型オールバックの男がやってきた。

 コイツが幹部クラスの……あんまり強くなさそう。

 

「き、貴様等……一体……?」

 

 侵入してきたのが7人の少女と1人の男だったのも相まってか、明らか動揺したような声で追求する。

 その問いに対し、キリッとした顔でアルファが答える。

 

「我等は『シャドウガーデン』」

「『ディアボロス教団』の壊滅を目的とする者」

「我々は総てを知っている」

「『魔人ディアボロス』の復活、『英雄の子孫』」

「そして、『悪魔憑き』の真実」

 

 アルファに続いてベータ、ガンマ、イプシロン、そしてアルファの順に、ペテン師だったシドの考えたシナリオを語る。

 俺も最初はハッタリだとしか考えていなかったのだが、ゼータに連れられて調査してみたりすると、シドの言っていた事がホントの事だとわかった。

 「嘘も突き通せば真実になる」とは、よく言ったものだ。

 その証拠とでも言うのだろう……

 

「『ディアボロス教団』……その名を、その秘密を何処で知ったァァ!!」

 

 男はあからさまな動揺を見せつつも、腰に備えた剣を引き抜き、アルファ目掛けて剣を振り下ろす。

 まぁそんな単調な剣がアルファに当たるわけもなく、アルファはスライムソードを出現させ、攻撃を弾く。

 それと同時に、立ち位置に着いていたアルファ以外の『七陰』は跳び、男とアルファの戦いを囲むようにして見る。

 

 こっからはお手並み拝見だな。

 

「ブラック」

「おっ?」

 

 アルファの成長を見届けるべく、先程座っていた所と場所を変えて、別の岩の上に座ると、ちょうど横に座っていたゼータが話しかけてくる。

 

「この勝負、どっちが勝つと思う?」

「どっちが勝つか……ねぇ」

 

 ゼータに問われた質問に答えるべく、アルファと男の戦いをしっかりと見てみる。

 アルファは男の斬撃を弾きつつ、それによって生まれた隙をついて致命傷にならない程度の斬撃を与える。

 あくまでアルファがこの戦いで得ろうとしている物は対象の「殲滅」ではなく教団の「情報」。

 

 ……となれば、わかりきった話であろう。

 

「……この戦いで勝者は生まれない……か?」

「多分ね。今の状態ならアルファが勝つんだろうけど、相手は教団の幹部……」

「まぁ高確率で持ってるだろうな、()()()

 

 ってな感じにゼータと話していると、男が懐から赤い錠剤の入った瓶を取り出し、それを飲み込む。

 それと同時に男の肉体が一回り膨張し、筋肉は張り、目が赤く光った。

 それに加え、魔力量が爆発的に上がった。

 自身の限界点を無理矢理突破したのだ。

 

「っと!」

 

 予備動作と思わしき行動なしに薙ぎ払われる一太刀。

 それがアルファに当たれば流石にヤバいと察した俺はその場から跳ね、アルファをお姫様抱っこの体制で回収する。

 

「ふぅ……危なかったな、アルファ」

「……別に助けてもらわなくてもどうにかなったわよ」

「いいんだ。あくまでカッコつけたいだけだからよ」

「……ふふっ、馬鹿ね」

「なんとでも言え」

 

 いつも通りクスクスと笑うアルファを降ろし、あの薬を接種した男を見る。

 今にも暴れだしそうな程には凶暴で、驚異的な力を感じ取れる。

 警戒態勢だけ構えていると、男は剣を逆手持ちにし、自分の下に風穴を開けるべくして剣を突き刺す。

 発生した砂埃が晴れると、底にあったのは男が作った風穴のみ。

 そこに男の姿は無くなっていた。

 

「すぐに追いかけます」

「……いや、その必要は無い」

 

 穴を覗いたベータがあの男を追いかけようとするが、それを止める。

 その必要は皆無なのだ。

 

「どうせこの下にはアイツが居るよ」

「シャドウ様が……?……っ!まさか、不測の事態はこの事を!」

「そういう事だ……アイツの功績、しっかり記録しとけよ、ベータ」

「はいっ!ブラック様!」

 

 まぁ大方迷ってるんだろうけど、多分どうにかなるだろ。

 んじゃ、あとはシャドウ様(笑)にでも任せて帰りますか……あん?

 何だこの違和感は……何だこの不愉快な感覚は……。

 

 俺の身体に、魔力ではない何か、果てしなく強大な力、殺意の込められた俺を軽く超越するモノがこちらに接近している事を察知し、足が止まる。

 『キングストーン』が疼いている。

 この感覚が襲ってくるのは久しぶりだ。

 

「……ブラック?急に立ち止まってどうしたのよ」

 

 やるべきことは成したため、この場から撤収しようとする『七陰』。

 そんな中、アルファは俺の異変に察し、気にかけてくれる。

 

「わりぃアルファ。シャドウがちゃんとやれてるか心配なんでな。ちょいと見てくる」

「……そう。わかったわ」

 

 恐らく嘘であることはわかっているのだろうが、サングラス越しの俺の目を見て、大体察してくれたのだろう。

 流石アルファだ。

 

「……絶対帰ってきて。約束よ」

「おう、必ずだ……変身!」

 

 お互い振り向かず、背を向けた状態で約束を結び、アルファは他の『七陰』の元へ、俺は変身し、あの男が作った風穴から地下に潜り、開けた場所を目指す。

 近付いてくる何かに備えるために。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 幹部の男が作った穴を通り、俺は少し開けた場所へと辿り着いた。

 そこで俺のもとに接近し続けている何かをただ待つ。

 ただただ待つ。

 

 ―――来た。

 

「死ねぇ!仮面ライダー!」

 

 突如として出現した、背後からの気配に対応して振り向く。

 そこに出現したのは、俺目掛けて剣を振り下ろす剣聖ビルゲニアであった。

 見た目が変化していたわけではない。

 コイツ自体が強くなっているわけでもない。

 だが、コイツの……コイツの持っているからありえないほどの力を感じる。

 

 俺に振り下ろそうとする剣は、愛用していたであろう『ビルセイバー』ではなく、刀身が真紅に染められた剣。

 この世界では初めて見る剣だが、俺はソレを知っていた。

 

 『サタンサーベル』

 創生王を守る為に、そして創世王を殺す為の聖剣。

 だがそれは『BLACKSUN』での話。

 この世界だとどうなっているのか。

 

 本来の俺なら隙を生み出して反撃していたのであろうが、その圧倒的な力に恐れをなしたのか、将又別の感情が働いたのか、回避を選択した。

 

 俺は背後に跳び、ビルゲニアの攻撃を回避する。

 だか微かに回避行動に移るまでに時間があったのか、右腕が斬られる。

 

「……ッ!」

 

 右腕に鋭い痛みが走る。

 痛みからか、震える腕を見てみると、縦一線に斬られた跡と、その傷から滲み出る真っ赤な鮮血。

 あの剣は、この俺の身体を包み込んでいる強化皮膚『リプラスフォーム』を貫通したのだ。

 最低限の止血を行うべく、右腕の斬られた部分を左手で抑えながら、されど後退はせずに構える。

 

「ビルゲニア……!」

「よくぞあの奇襲を交わしたな、ライダー。だがその腕……無様だな」

「はっ……今まで負けまくってた癖によく言うぜ」

 

 ニヤけ顔を浮かべながら近付いてくるビルゲニア。

 ホントに腹立たしいのだが、今の俺が無様なのは間違いない。

 

 あぁ、それにしても腕が痛い。

 

「あの世に送る前に聞かせてやろう。次期『創世王』はこのビルゲニアに決まった!」

「何だと……?」

「創世王様から頂いたこの『サタンサーベル』を使い、貴様もシャドームーンも倒し、この世に『ゴルゴム』の帝国を築くのだ。その為にも仮面ライダー!貴様を倒し、貴様の『キングストーン』を頂くぞ!」

 

 そう言い切ると、ビルゲニアは『サタンサーベル』を横一閃に薙ぎ払う。

 今度も回避し、そこから隙を生み出して反撃に移ろうと考えたのだが、ここで想定外の事態が発生した。

 ビルゲニアが薙ぎ払った『サタンサーベル』の刀身が、赤く光り、加速したのだ。

 まるで剣自体が意思を持っているかのように。

 薙ぎ払われた『サタンサーベル』は俺の腹部を捉え…… 

 

「ガハッ……」

 

 ……掻っ切った。

 斬られた腹部から吹き出る血、じんじんと痛む斬られた跡。

 あまりの痛さに、斬られた箇所を抑えながら片膝を付いて、その場に崩れ落ちる。

 

「思い知ったか仮面ライダー!これが、これこそが真の『創世王』の力だ!」

 

 まるで勝利を確信したかのように、未だ起き上がれず、片膝立ちでその場に留まる俺に近付くビルゲニア。

 このままトドメを刺そうと考えたのか、ビルゲニアは鞘に収めていた『ビルセイバー』を取り出し、二本の剣をそれぞれ構える。

 

 本っ当に痛い。

 右腕も腹部も、どちらも痛い。

 

「いよいよ最期だな……仮面ライダー!」

 

 二本の剣が俺の首を捉えれる程に近付いたビルゲニアは、余裕の笑みを浮かべながら二本の剣を天高く掲げる。

 『ビルセイバー』と『サタンサーベル』の二本は重なり合い、それぞれオーラを纏う。

 

 痛い……痛いというのに……

 

「『キングストーン』は俺のもの……っ!?」

「ふっ……ふふふ」

 

 ……何故こんなにも、気持ちが昂ってしまうのか。

 果てしなく楽しんで居るのだろうか。

 

「ギャハハハハ!!!」

 

 あまりの愉快さに、その場に転げて大笑いする俺。

 あぁこれだ、これなんだ。

 この気持ち……心が踊るような最高な気持ち。

 これを俺は求めていたのだ。

 

 痛みを忘れ、心が楽しさで支配された俺は立ち上がり、嬉々とした声でビルゲニアに話しかける。

 

「そうだよ!それだよ……『剣聖ビルゲニア』!俺がお前に求めていたのはその強さなんだよ!」

「っ!狂ったか、仮面ライダー!」

「いいやぁ?全くもって俺は正常だぜ?」

 

 突如立ち上がり、笑い出した俺を見て怯えたのか、恐れをなしたのか、ビルゲニアは後ろに引き下がる。

 そんなビルゲニアに迫りながら、俺は持っていたスライムを起動させる。

 変身した俺の身体を覆うように黒いスライムは纏わり付き、俺の姿を更に変身させる。

 

 黒いボディはそのままで、今までの俺よりも生物的な姿。

 肩周りに覆われた、バッタの脚。

 身体に走る、赤く光った流動路。

 その肉体と相反するような、腰に巻かれたメカメカしいベルト。

 

 俺は一時的ではあるが成ったのだ。

 俺の憧れに。

 『仮面ライダーBLACKSUN』に。

 

「ビルゲニアァ……俺が『黒い太陽』になる為の踏み台になってくれよ!」

 

 二重になった仮面の下に狂った笑みを浮かべ、俺はビルゲニアの元へ全速力で駆けていった。

 

 久し振りに興が乗ったんだ。

 とことん楽しませてもらおう。

 




一体いつから…………オリ主が正常だと錯覚していた?
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