黒い太陽に憧れて!   作:ポンノ

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9話 機は熟した

 

 この『魔力が絶対の存在である』と言える世界にて、スライムというのは今までの常識を覆せるモノだと俺は思っている。

 発見者がシドであるという欠点を除けば、完璧でしかないのだ。

 

 例えば普通の鉄の剣に魔力を100流すと、伝わるのは10程度。

 魔力を流しやすいとされてるミスリルの剣でも100流して50通るか通らないかと、極めてロスが多い。

 

 その点スライムは魔力伝導率が99%と、高水準にも程があるレベルで凄いのだ。

 それに加え、スライムはさっき例で上げた金属類とは違い、個体ではなく液体である。

 故に形態変化をすぐに行うことが出来る。

 

 その強みを生かし、イプシロンは胸を盛っている。

 執着心というか、諦めない心というか……とにかく凄いよな。

 それで『七陰』でもズバ抜けた魔力操作を得てるんだから。

 

 まぁそういうことだから、スライムは今の俺のように、全身を身に纏わせる事だって出来る。

 

 とは言え実はこの姿、まだまだ未完成なのだ。

 造形、出力、BLACKSUNのスペックは完璧に再現出来ているのだが、如何せん持続時間が短い。

 アルファ達が着用しているスライムスーツはビジュアルメインではなく、スペックメインの作りである。

 それ故にぴっちりスーツ。

 制作者の癖を感じるデザインなのだ。

 特にゼータはやばすぎる。

 

 ……まぁそれは一旦置いといて。

 この姿はビジュアルにも、スペックにも全振りでやっている為、まだ3分ほどしか使えない。

 アルファやイプシロンのもとで魔力操作の修行をしたのだが、それでも3分が限界。

 

 ……それでも、時間が限られていようとも、余力残さず、全て出しきって殺り合うのが怪人の闘争と言うものだ。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 雄叫びに似た叫び声を上げながらビルゲニアの元へ駆け出した俺は、ビルゲニアが左手に持っていた『ビルセイバー』を始めに蹴飛ばし、『サタンサーベル』を持つ右手を掴み、『サタンサーベル』を振れぬようにする。

 剣を持ったやつの対処法、剣を振れないように、剣を持ってる手を抑える。

 

 俺の左手がビルゲニアの右手を掴むのと同時に、もう片方の手でビルゲニアの首根っこを掴み、強く握る。

 このままへし折ってやろうとも考えたが、そうはさせんとでも言わんばかりに、ビルゲニアは空いた手で俺の手を掴み、抵抗の意思を見せる。

 そうだよ……そういうのだよ、ビルゲニア!

 それこそが、怪人が怪人たらしめる闘争本能なんだよ!

 

「ぐっ……!」

 

 唸り声を上げる俺とビルゲニア。

 次第に握る力、唸り声、そして俺の感情はボルテージを上げていく。

 

 このまま取っ組み合いになってもつまらないし……せっかくこの姿になったんだから、原作再現と行こうか。

 

 そう思い立った俺は、ビルゲニアの首根っこを掴んでいた手で背負投げを決め、『七陰』の面々が暴れていったお陰でボコボコになった床に叩きつける。

 叩きつけた衝撃で、床にそこそこ大きなヒビを入れながら一回バウンドするビルゲニア。

 

 起き上がり、抗おうとするビルゲニア。

 そんなビルゲニアの首根っこをもう一度強く掴み、獣のような雄叫びを上げながら一直線上に引き摺り回し、壁に投げつける。

 今度は先程叩きつけたときよりも強かったようで、壁を突き破る。

 

「ガッハァ……!」

 

 血反吐を吐きながら床を転がるビルゲニア。

 それでも『サタンサーベル』だけは離そうとしないとは……どれだけその剣だよりでここに来たのか。

 

「どうしたビルゲニア……お前の力はそんなもんじゃないだろ?もっと歯向かってみせろ。もっと抗ってみせろ。もっと楯突いてみせろ」

「ぐっ……舐めるなァ!」

 

 俺の言葉を聞き、歯ぎしりしながら『サタンサーベル』を構えて起き上がり、大振りに薙ぎ払うビルゲニア。

 先程斬られたときのように加速するものの、今の俺なら何とか見切れる。

 振るわれた『サタンサーベル』をギリギリで回避し、大振りであったが故に生まれた隙を付き、胸部目掛けて前蹴りを喰らわせる。

 

「ガァッ……!」

 

 再び吹き飛ぶビルゲニア。

 恐らく鳩尾に命中したであろう蹴りによって、その場に蹲ってしまう。

 

 とは言え、このまま残りの2分半蹂躙するというのも味気ない。

 それは今朝やった事だし。

 ……まぁ折角興が乗ってるんだし、ビルゲニアと同じ土俵で闘ってやるか。

 

 荒い息を上げながら立ち上がろうとするビルゲニアを横目に、俺は肩部にある肢、『黒肢脚(アームドブラック)』を両手で掴み、力尽くで引き千切る。

 実はこのスーツ、痛覚とかその他諸々の器官と同化してるせいで、肉体に激痛が走る上に、背中から血が流れる。

 まぁその程度で怯むほど弱くないんで、次のフェーズに移る。

 

 引き千切った『黒肢脚(アームドブラック)』の内部のスライムを収縮、硬化させて『キングストーン』のエネルギーを注ぎ込む。

 『黒肢脚(アームドブラック)』を右手に持ち替えて振り下ろす事で、その姿を変化させる。

 『世紀王ブラックブレード』へと、姿を変化させる。

 

「ふぅ……」

 

 息を整え、『世紀王ブラックブレード』を片手にそろそろ起き上がりそうなビルゲニアにゆっくりと、されど着実に歩み寄る。

 その間にも『世紀王ブラックブレード』には『キングストーン』のエネルギーを与え続け、強化を重ね掛ける。

 より強く、より凶悪に。

 

 まだ完全回復を果たしたわけでは無さそうなビルゲニア。

 それでも立ち上がり、俺目掛けて『サタンサーベル』を振りかざす。

 とても単調な軌道。

 見えやすく、分かりやすく、弾きやすい軌道だ。

 

 振りかざされた『サタンサーベル』を『世紀王ブラックブレード』で強めに弾く。

 それでも尚『サタンサーベル』は離さないが、今までの戦闘の中で一番でかい隙を作れた。

 ある一点を捉えた俺は、『世紀王ブラックブレード』を構え、左腕を斬り落とした。

 

「ぐああぁぁぁ!!!」

 

 叫び声を上げ、斬られた左腕から血を流すビルゲニア。 

 平衡感覚を失ったのか、後方に退きながら、その場に倒れる。

 

 じりじりと歩み寄りながら、切り落とした左腕を蹴飛ばし、トドメを刺すべく『世紀王ブラックブレード』を床に突き刺し、腹部の前で両拳を重ね、『キングストーン』に今俺が持つエネルギーを込める。

 真っ赤な輝きが増す赤い瞳、漆黒の身体から溢れ出る蒸気。

 

 機は熟した

 

 助走を付けながら空に跳び、『キングストーン』のエネルギーによって真っ赤に輝いた右足を突き出し、ビルゲニア目掛けて速度を上げて降下する。

 

「ライダァァーキィィック!!!」

 

 過去最大の声で技名を叫んで放ったキックは、ビルゲニアの肩に炸裂し、砂埃を立てながら奥へと吹っ飛んでいった。

 砂埃が晴れると、そこには先程の衝撃で崩れてきたであろう瓦礫だけしか無かった。

 そこにビルゲニアの影も形もなかった。

 だが殺った感覚はない。

 

「……逃げられたか」

 

 まだ熱を帯びた右足を見ながら、その場に倒れ込む。

 制限時間が来たのか、スライムで形成された『BLACKSUN』の姿は次第に戻っていき、いつもの『BLACK』の姿を経由し、そこから更に人間の姿になる。

 相当無理をしたためか、『キングストーン』がいつもより熱くなっている。

 オーバーヒートとかするんだ。

 

「あー……コレ駄目だ、もう動けん」

 

 『サタンサーベル』の斬撃がじわじわと痛む。

 なんならそこから血がドクドクと流れている。

 止血に失敗したみたいだ。

 どうしようか……『七陰』はもう戻ってるだろうし、ここにシドが来るわけがないし、バトルホッパーは整備中……あれ?これ詰みか?

 

「あー……このまま死ぬか」

「……ん?アレ?クロノじゃん。何してるのこんなとこで?」

「んお……?シド?」

 

 何とここに来たのはシドであった。

 一番ありえないと思っていたのだが……勘が鈍ったかな。

 

「ちょうどいい……シド、おぶってってくれ」

「んー……いいよ。ほら、掴まって」

 

 断られること承知でシドに依頼したら、条件無しで承認された。

 あまりにも珍しい事だったんで、驚きながらシドの顔を見てみると、満面の笑みを浮かべている。

 

「……やけに優しいな。頭でも打ったか?」

「いーや?久し振りに『陰の実力者』として楽しめたから、今は気分がいいの」

「なるほどな……良かったじゃねぇか」

 

 他愛もない会話をしながら、シドは俺を米俵みたいに背負って隠しアジトの出口へと向かう。

 もう力は使い切っちまったからなのか、反論や暴言を言うほどの気力はない。

 

「そう言うクロノこそ、随分顔がスッキリしてたよ?なにか良いことでもあった?」

「……まぁな。そこそこ楽しめた」

「それなら良かった。で、どうだった?僕が上げたスライムは。ちゃんと上手く使えた?」

「おう。今なら俺を酷使したことも許せるぞ」

 

 このスライムを入手するにあたって、わざわざバトルホッパーで遠征に行かされたり、そこで『キングストーン』の力を実験させられたりと……散々だったが、今なら許せそうだ。

 

「……それなら良かった。ホントに良かった」

 

 安堵するようなシドの声を最後に聞き、俺は一時的に気絶した。

 血が少なくなっちまったんだ。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 まぁ予測してなかった事はあったものの、クレア・カゲノー救出作戦兼『ディアボロス教団』隠しアジト壊滅作戦は成功した。

 成功したとは言ったものの、シドの姉さんを家まで運んだわけではなく、拘束だけ解いてアジトの入り口付近まで運んだだけ。

 最後は自力で帰ってもらうことにした。

 ちゃんと家まで帰ってきたらしいから、まぁ問題なしだろう。

 

 ただちょいと気になったのが、クレアの手の怪我が一晩で大体治っていたという事だ。

 ただの人間のはずなのに、俺と同等位の再生力を持っていた。

 人間の生命力には驚かされるものだ。

 

 んで、一週間後に王都の『ミドガル魔剣士学園』へと向かって行った。

 出発までの一週間、シドはクレアに可愛がられていた。

 そん時の顔はとてもとても愉悦なものだった。

 

 ……あ、ちなみにだが例の作戦後、俺が目を覚ますと黒い笑顔を浮かべたアルファが待っていた。

 その後アホみたいに長い時間説教されたのは、もはや言うまでもないだろう。

 すっごい怖かった。

 

 そんな訳でクレアが王都に旅立った日の夕方。

 俺はシドに呼ばれ、共に夕日を眺めていた。

 夕日も色が違うだけの太陽。

 とても身体に良い。

 

「……やっぱ便利な身体だよね」

「あん?」

「太陽の光を浴びれば何でも出来るんでしょ?」

「何でも……ってわけじゃねぇけど、大体のことは出来るぞ。身体のキズ治したり、エネルギー溜めれたり……色々出来る。コレさえあればな」

 

 そう言い、『キングストーン』を出現させる。

 『キングストーン』は万能なんだ。

 何でもはできないが、色々出来る。

 

「やっぱ便利だねぇー……」

「まぁな」

 

 そうして、再び夕日を眺める。

 

 すると、先程から俺達の背後に居た『七陰』の面々……アルファが口を開く。

 

「シャドウ、ブラック」

 

 アルファの声に振り返る俺とシド。

 『七陰』が全員集合して、全員が神妙な面持ちでいる。

 一体何なのだろうか。

 

「私達は、貴方の元を離れる時が来たわ」

「……え?」

「……へ?」

 

 思わぬ一言が飛んできたことにより、素っ頓狂な声を出す俺とシド。

 マジ?離れちゃうの?

 ……あ、教団関連で離れてく感じか?コレ

 もしかして今は離れるけど強くなって帰ってくるよって感じの、「2年後!!!シャボンディ諸島で!!!」みたいなアレか?

 

「……お別れよ」

「えぇ……」

「……そうか。頑張れよ」

 

 取り敢えずそれらしい激励の言葉だけ言って、アルファ達に向けて親指を立てて見送る。

 

 ……ってなわけで、アルファ達が旅立ってしまった。

 一応、「ピンチになったら俺達を呼ぶこと」っていう事は伝えておいたから、まぁどうにかなると思う。

 それに、定期的に誰か一人は来て、現状の通達をしてくれるらしいんで、尚更問題ないだろう。

 

「……ねぇクロノ。止めなくて良かったの?」

 

 俺がそんな事を考えてると、シドがこちらに来て話しかけてくる。

 コイツ、人を気遣う心あったんだな。

 てか人の心あったんだな。

 

「別に問題ないだろ。アイツ等ならなんとかやっていける、俺はそう信じてるぞ」

「なるほどね。クロノがそう言うなら問題なさそうだね」

 

 俺の発言を聞き、シドは納得する。

 案外適当に言ったのだが、それで良かったのか。

 

「そう言えばクロノ」

「おん?」

「クロノはこれからどうするの?」

「これから……ねぇ」

 

 ……そういや考えてなかったな。

 『七陰』は『ディアボロス教団』を討伐するための力を蓄え、シドは『陰の実力者』としての修行をするだろうし……

 

 ……となれば、俺もそれにあやかるとするか。

 

「俺は『黒い太陽』目指して『ゴルゴム』と戦う……ってところだな」

「そっか……そうなると、ちょっとの間僕達もお別れなんだね」

「まぁそうなるな」

「ちょっと寂しくなるね」

「……だな」

 

 お互い、ちょいとセンチな気分で顔を見合わせる。

 ……なんかこういう雰囲気は嫌いだな。

 仕方ない。

 空気を変えてやろう。

 

「……ま、これが今生の別れってわけじゃねぇんだ。またいつか……それこそ、2年後には確実に会えるんだ」

「まぁ、それもそうだね」

 

 よし、多少は空気が軽くなった。

 とは言え、約2年間会えないってのもつまらんな……。

 

 ……仕方ない。

 今回は特別に許可をやるか。

 

「それに、暇になったら俺の小屋にでも来いよ」

「え!いいの!?」

 

 年相応とでも言うべき反応なのか、俺の肩をガシッと掴みながら確認するシド。

 お前そんな顔出来たんだな。

 

「毎日来たら殴るが、定期的に来るなら構わん」

「了解!」

 

 満面の笑みを浮かべながらシドは言う。

 お前……そんな人間らしい顔出来たんだな。

 ガキみてぇな反応だな。

 

「……んじゃ、俺は行く。お前も頑張れよ」

「勿論。『陰の実力者』になる為には、妥協なんて必要ないからね」

「はっ、なら安心だ……またな、シャドウ」

 

 再開を確信した別れの挨拶を告げ、俺はバトルホッパーに飛び乗り、いつもの掘っ立て小屋へと戻っていった。

 




ほんっとに今更ですが、作者はアニメ知識だけで動いております
多分何処かで矛盾が発生するかもだけど……許してね☆

それにしても……赤評価になってからお気に入り登録をしてくださる方が増えてるのがすっごく嬉しい
このままこの作品を楽しんでくれる人が増えればいいなぁと、心から思っております
ので!是非とも感想をくださいな!
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