転生者、異世界で弔い屋やってます。   作:よくメガネを無くす海月のーれん

1 / 12
一度死んだ人が、自身の経験から他者の死に優しく触れていくお話。

亡くなった方に救いがあってほしい、そういう願いで書き始めました。よろしくお願いします。


弔い屋とキナ臭い依頼

仕事の準備をしている。

 

靴…膝下までを守ってくれるいくつかのベルトでがっちり止めるタイプのロングブーツ…よし

 

服…下は共和国産の繊維生地で編まれた伸縮性高めのズボンを魔物の革製ベルトで止めてある。上は要所要所を補強された布鎧ともいえるもの。その上から鉄板が入ったベスト、内ポケットにはファイヤースティックと煙草が少々…よし

 

鞄…背負うヤツの中身を今一度広げて中身を確認する。保存食に水が湧き出る石、折り畳みのナイフとうっすい毛布、生活に必要そうなものを詰めてある。あと治療キットと魔法陣紙、火に水に土、風は前に使ったから帰ってきたら補充。虎の子の光と雷、鉄は、ちゃんとあるな…よし

 

ポーチ…背負うヤツとは違って、即席で使うものだ。ベルト式で、ポーチ以外にもベルトに道具をはめ込むことが出来る。装備してんのは、匂い玉と閃光玉、木を加工して作った特製の筒、筒には地図や今回の依頼内容が書かれた紙の写しが入っている。あと白紙の紙が数枚だ。この筒は反対にして少し捻る。すると、底の外側の蓋が開いて、中にインクが入ってる。二重底になってて入れた紙は無事なように作った。ペンはファイアースティックの反対側を使えばいい。中を揺らして、ちゃぽちゃぽと音がするのを確認する。インクの補充もしてあるな…よし

 

武器…ポーチのベルトとズボンのベルトの間に持ち手から差し込むようにして、得物のメイスを装備する。握りの部分に滑り止めの皮が巻かれていて、先は四方向に突起が付いてる球体を思い浮かべてほしい。大体それだ。

 

他にも必要な道具はあるが、これらを持っていけば後はなくても現地調達でなんとかなる。特に、今回は寒さが厳しい土地でも暑苦しい火山地帯でもない。ただの戦場跡だ。

 

荷物の確認が済んだからしまい込む。一日の中で頻繁に使うものはなるべく最後にしまうのがコツだ。あとは消耗品。最悪荷物が嵩む時は、使って捨てて空きを用意するなんてよくあることだからな。

 

準備を済ませて、部屋に備え付けた洗面台に向かう。肩から上が映る大きさの鏡と備え付けの台…の上に置かれた、変な模様が刻まれた石が二つ入った桶、コップに歯ブラシと剃刀が入ってる。ま、支度は済ませてあるからな。俺の目的はこっち。

 

桶に入った石の片方を握る。握って力んで声に出す。

 

「流水」

 

そうすっと、石に刻まれた模様が光って水が湧き出る。便利だろ?魔力が必要になるんだが…その量に応じて、湧き出る量や勢いが変わる。込めた魔力が切れれば自動的に止まるし、これに関しちゃ現代よりも便利だと思ってる。

 

桶に十分水が溜まったのを確認して、顔を洗う。パシャリ、跳ねる水が冷たくて身震いするほどだ。今日は一段と冷える。冬の入り始めだからしょうがねぇが…なんでこういう時に仕事が多いかねぇ…。

 

仕事前のルーティンだ。顔を洗って、休みから仕事に頭を切り替える。これがないと、まぁ仕事に力が入らねぇ。

 

冷えちまった身体とは裏腹に覚醒する意識、眠気も飛んで気合もばっちり。側に置いてたタオルで顔を噴いていると丁度良くノックがかかる。

 

「時間だ」

 

「あいよ」

 

たったそれだけのシンプルな掛け合い、そこそこの付き合いになるが、どうにもな…。無口なヤツだ。まぁアイツの性分だからしょうがねぇ。水気をふき取って、荷物を背負って準備よし。

 

…気になるから、振り返って部屋全体を見回し、入れ忘れがないかを確認……おっ、やべ、消臭剤と()()を忘れてた。

 

消臭剤を慌てて背負ってた鞄に突っ込んで、ベット横の小物台の上に置かれた小手…ヤツを腕に着けて…よぉし!

 

「オーケー、完璧だ」

 

そうして、俺は部屋を出る。

 

中肉中背で少し猫背気味、髪はあんまり手入れする時間がないから雑多に揃えられてるだけ、死んだ目とくたびれた雰囲気を纏った黒髪黒目のおっさん予備軍。

 

苗字なしのイチイ 27歳。前世持ち。前世の名前は澪川 櫟(みおかわ くぬぎ)、過労が祟って死んだ社会人の…

 

よく創作でありがちな転生者……ということになる。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

この世界を簡単に表すなら、剣と魔法…あと摩訶不思議生物とロストテクノロジーが混ざり合ったファンタジーという、性癖の詰め合わせみたいな世界だ。

 

人以外の種族もわんさか居て、エルフにドワーフ、ヴァンパイアにドラゴン、ハーフリング、ハーピー、マーマン、ワーウルフ、トゥレーラなんていう摩訶不思議種族もいる。トゥレーラは見てるやつによって姿形を変えられるんだ。だから、大体隠密、諜報とかでよく見かける。

 

人以外だって色々だ。火を吹く犬に腕を巨大化できる猿、睡眠ガスを噴霧してくる蟻、生き物を自分達の巣に変えちまうこぶし大の蜂なんてのもいる。

 

まぁそんな摩訶不思議生物から人々を守るのが民間組織、それがギルドだ。国は守ってくれないっつーよりかは守る範囲が広すぎて対応出来ないのが現状。だから、民間組織に委託してる。

 

このギルドも、まー個人経営っつーなんつーか…物資支援や人の派遣、身分の保証、災害時の対応はやってくれるが、あとは現地に丸投げだ。デカい組織が各地に支部を作ってる…というより、デカい組織が、うちの名前使っていいしそれ相応の対価は払ってもらうけど支援するよって各地域に呼びかけて各々で作って恩恵だけ受けてる個人経営…現代のフランチャイズ方式に近い仕組みになっている。

 

そんなギルドで俺が所属してんのは珍しい、人の死を商売にしたギルドだ。つっても、殺す方じゃねぇ。死んだ方、ようは死体を回収、弔い、遺族への移送を主な業務にしてる。

 

通称:弔い屋。ギルドの中では支部…支店?をいくつかの国に持つ程度には繁盛しているところだ。いやな需要があるんだよ…ホント。

 

この世界は前世じゃ考えられないくらいに人の命が軽いし冷たい。魔法なんてものがあるし、そこらへんにいる生き物ですら対応を間違えたら死ぬ。それに前世よりも医療技術が世間一般に広がっていないことも理由だろう。帝国っつーロストテクノロジーを研究している国じゃあ最近になって医療技術が民間に普及してきた感じだ。

 

つまり、前世じゃあ当たり前に治せていた盲腸や重い風邪がこの世界じゃ本当に命取りになる。怪我だって摩訶不思議生き物のせいで頻繁にする。失血死なんてのも珍しくもない。そういう…冷たい世界だ。

 

そんな世界で、死んだ人間に時間を費やすなんて費用対効果が釣り合ってない…とか冷てぇサイコパスは思う事だろうよ。でも、この世界じゃあ死んだ人間はアンデッド、いわゆるゾンビや死霊になってこの世界に戻ってくる。そういうヤツの対処も俺らの仕事だ。

 

この世界で死んだ人間の価値はマイナスと言っていい。死霊術使いや一部の呪いを扱う人等にとっては価値があるんだろうが、それでもアンデッドとして戻ってくることのデメリットが大きい。なぜなら、アンデッドは生き返ったり、未練を晴らすことに必死だからだ。

 

自分を殺した相手を殺したい、自分を見捨てた男が許せない、純粋にまだ生きたい、()()()()()()()()()()()()()、そういう未練や生に本気なヤツラが手段を選ばずに色々やる。

 

自制心が強いヤツとか、未練が無害なものは放っておいていい。だが、誰かを殺したかったり、誰かを殺して成り代わってでも生きようとしたりするヤツはケツぶっ叩いてもう一度死なせなくちゃいけない。それが俺の仕事。

 

弔い屋は、仕事を主に三つのことに分けてチームで動く分業制だ。

 

まず、祈り屋。コイツは戒律が緩い神官や導師が担当する。死んだ人間を成仏させる力を持ってることが必須で、ゾンビやら死霊やらを強制的にホーリーすることだって可能だ。まぁやり方はチームの方針による。ウチのチームは、死んだヤツの未練を聞いたりして、出来る限り叶えてからオサラバしてやる方針だ。一回一回の仕事に時間が掛かる代わりに、満足度は高い。

 

次に、運び屋。コイツはアイテムボックスっつー魔道具や魔法を持ってるヤツが担当する。死んだ人間を遺族に届けたり、遺品を運ぶ役目だ。ご遺体が帰還する道中で損壊しようものなら、クレームが死んだ本人から来たりするので、異次元空間で傷が付かないように保管できなきゃいけねぇ。

 

最後、殺し屋。死んだヤツ専門って言ってるのになんだよソレって思うだろ?まぁようは戦闘専門のヤツだ。祈り屋と運び屋を守る役目を持つ。コイツは種族的な面から選ばれたり、戦闘技術を持ってるヤツじゃないといけない。こんな死が身近にある世界だ。命を預けられる相手っつーのはちゃんとしてないといけない。俺はココ。他の仕事として…前世で言う鑑識、死因とか現場を調査して、報告する役目も持つ。あと依頼があれば。マジの殺人事件の鑑識。殺す技術に優れているからこそ、殺された人や場所に詳しくなければいけないっつー考えだ。

 

さて…仕事の説明もそこそこに、今回の依頼とメンバーを紹介しよう。

 

部屋を出る。ここはギルドが運営している寄宿舎で、すぐそこがギルドになっている。ちゃっちゃかギルドに入ると、集合場所であるギルドの待合場の一角、4人テーブルの一つを陣取ってる男女二人が目に入る。

 

「よっ、遅れた」

 

「いつものことだから気にせん。それよりも準備を怠ることを気を付けてくれ」

 

そういうは、青白い肌に10人中9人が振り返って、1人がぶっ倒れそうな美貌、赤い液体が入ったカップを飲んでいる女。側に置いた荷物を守るように黒猫が座っていて、こちらを見つめてにゃあと鳴く。我らのチームの運び屋担当、ヴァンパイアのセルフィ。アイテムボックスの魔法が使えるし、それ以外じゃあ、血液の操作を組み合わせた水魔法が得意だったりする魔法使いだ。下の猫は使い魔だ。

 

「気ィつけてるよ。お前さんも大丈夫だろ?」

 

「問題ない。アイテムボックスの空きも確保してある」

 

「ならそっちは頼んだ。……レリエルも大丈夫だよな?」

 

頼もしい返事がきたから今度はこっちだ。フード付きの外套を目深にかぶった高身長な男。中は黒い軽鎧を纏っていて、顔や全身を覆っている。腰に備え付けた杖…にしちゃあエグイものが先端についている追放された騎士みたいな見た目。チームの祈り屋担当、種族不明のレリエルだ。まぁなんとなーくトゥレーラじゃないかと思ってるが、本人が口を開かないから別に気にしない。この世界で、それも弔い屋なんて仕事に就いてるヤツは脛に傷を抱えてる…で済めばいいほど厄介なモンを抱えてることが多い。そういうのに口を挟んでチームがバラバラになったなんてよく聞く話だ。

 

その点、ウチのチームは自分から話さない限り聞かないというのをルールにしている。結構うまくいってるんだぜ。

 

レリエルは俺みたいな殺し屋ポジでもおかしくないが…十分祈り屋としての仕事もできる。神官らしい。まぁ使う術も神官が使うものだからな。そこらへんは疑ってねぇ。未だに何信仰してるかわからんが…。

 

「あぁ…問題ない」

 

軽鎧からくぐもった声が聞こえる。息苦しくねぇのかとか、淡泊だなァとか思ったりするがコイツらしい。ウチのパーティーは気を遣わないってのが信条だからな。無口だろうが、饒舌だろうが、なんかあるならそれを伝えろ。問題なければ喋ってようがいなかろうが大丈夫。そういう、ドライなチームだ。

 

だから今んところ、大きな失敗も傷跡が残るような不和も発生してない。堅実なチーム、よく冷たすぎるとか仕事上の関係で関係性が希薄なんて言われるが、そういう関係構築は大体旅先でやってるからなぁ…帰ってきた後は個人の時間…そういう風に決めてんだ。用があるなら訪ねるし、祝い事があったら互いに祝う程度にゃいい関係だよ。

 

ま、そんなことはどうだっていい。仕事の時間だ。仕事の話に移らないとな。

 

「よし…なら、ブリーフィング始めんぞ」

 

そう言って、今回の依頼書を腰の筒から取り出す。ベストの内ポケに入ったファイアースティックと筒下のインク壺を取り出して、壺を依頼書の上に文鎮代わりに置く。

 

「今回は、今年の秋にあった連合国の中ンの小競り合い。それが終わったもんだから、その後始末。まぁ戦地に置いてかれたご遺体の回収だ」

 

すっぱり概要を説明する。そうすっとセルフィが口元に手を当てながらもう片方の手を挙げる。はい、どうぞ

 

「あぁ、遺体の回収指定のものはあるか?あと遺体以外の回収指定品の有無だ」

 

依頼書に目を落として、疑問に答えていく。殺し屋は文章が読めることも必須だったりする。まぁチームのまとめ役だからな。大体事務と戦闘両方を求められるのが殺し屋だ。なんでかって?一番強いヤツが一番死ににくいからだよ。

 

「それについては遺体の頭部が回収指定。指定品は指輪だそうだ。見た目は銀の輪に正方形に加工された黒翡翠がはめ込まれてるそうだ。ちゃんと依頼書に見た目も追記してある。現地に着いたら改めて伝える。今回は他に任意回収指定もあって、他に亡くなった方の頭部だ。依頼人が弔いたいらしい。亡くなった方と遺品のリストも用意してある。これでいいか?」

 

「問題ない。続けてくれ」

 

こういう風に、ずばずば疑問に思ったことを言えと常々言ってるから俺としてもありがたい。こういう回収指定品は追加報酬の対象だったりするからな…。伝え忘れて報酬を逃がすなんてこの業界じゃああるある…つっても、弔い屋に限って言えば、死んだ本人がそれを届けてくれとか自己申告してくれるからそういうミスは少ないんだが…。まぁ減らせるミスは減らしていった方がいい。

 

「続きだ。ご遺体の名前はフェルスバー・リエンジェンス。子爵の爵位を持つこの小競り合いで指揮官だった人だ。死因は撤退した人からの話によると、胸部を魔法…貫通力に高い魔法で打ち抜かれたことによるものらしい。咄嗟に騎士の部下が盾になったが、それすら貫かれて胸にぽっかり穴が開くほど…傍目で動かないのは明白だったし、お相手も指揮官をやったのがわかったのか全軍突撃してきたため、即座に副官が撤退を指示。だから、ご遺体の損壊具合は胸を貫かれたことによることしかわからん。敵方にご遺体の荒らされてる可能性もある」

 

「……少しいいか」

 

ご遺体のことを言った時点で今度はレリエルが口を開く。はい、なんだ?

 

「…相手側からの情報は得られなかったのか?それと…貴族持ちなら依頼に影響が出るのではないか?」

 

ふむ…俺はレリエルの言葉を頭で反芻しながら、ファイアースティックを顎に当てる。

 

確かにそうなのだ。基本、こういう遺体回収の依頼は関係者に話を聞くことが最も優先される。そこに敵がどうとか味方がどうとか関係ない。なぜなら、味方だったとしたらご遺体を回収してくれることを願っているわけだし、情報提供は惜しまない。敵なら、自分が恨みで殺されるかもしれないという恐怖や、自分が情報を出さなければ、いざ自分が死んだときに誰も助けてくれないだろうという心理から情報を提供してくれる。

 

弔い屋はいってしまえば、どんな奴にも等しく接する仕事だ。自分が死んだ後の面倒を見てくれるヤツに、高圧的な態度を取るヤツは少ない。その少ないヤツに貴族という生き物がいる。

 

ただ、下手に貴族を蔑ろにすると、貴族パワーで居なかったことにされたり、不幸の事故でお亡くなりになったりするかもしれないので、基本的に貴族関連の依頼は情報がありすぎるくらいなんだが…

 

俺はファイアースティックにインクを付けて、依頼書に書き足していく。相手側の情報提供不足が目立つ…っと。

 

「助かる。そういう意見に救われることがあるからな。…ただ影響に関しちゃあ考えなくていいって思ってる」

 

唇を湿らせながら話を続ける。今回の依頼は貴族相手では珍しい共同依頼者……その人を弔ってやりたいと願う人が多いからだ。

 

「まず、今回の最初の依頼者はご遺体のフェルスバーさんの奥さんからだ。夫が帰ってこないことを知って、せめて顔と誓いの指輪を回収したい…そうして依頼を出した」

 

「ただ、この依頼に追加で出資する人、奥さんからだけでなく他所からも依頼が出た。フェルスバーさんの副官だった人とフェルスバーさんの部下達、それにいくつかの貴族や商人からだ」

 

「共通して…彼を惜しんでいる。貴族にしては珍しい恨みよりも情が勝っている人だよ。ただ、魂を入れ込む素体やらは用意してあるから、現世に残る用意はできてるらしい。…ただ奥さんや副官の人達の言うことを信じるなら、あの人は最後の言葉を告げるために残ることはあれど、生き続けようと考える人ではない…そういう人とのことだ」

 

「…珍しい貴族だな。死んでしまうには惜しい」

 

「あぁ、なにせ指揮官のくせに前線に出た人だからな。人望もあって組織を纏め上げる力もあって…部下にこの人の為なら死地に立ってもいいと思わせるカリスマもある」

 

ファイアースティックで依頼書を叩きながら会話を練り上げる。神官だからな、別に故人を弔うだけが神官の仕事じゃねぇ。治したりするのも仕事だ。治療とかをやってると、よく聞くのが貴族の横入りだ。貴族のせいで、救えるはずだった命を救えなかった。そういう経験から、治療が嫌になってこっちに逃げてくる神官も多い。まぁ、人の死に触れるから、余計辛いんだがな。そういうわけで、下手な発言は不和を招く。言葉は選ぶに越したこたァない。

 

「だからこそ…こんなに願われてんだ。安らかに眠ってもらうのをな。俺達に依頼してきたのも、そこらへんがきっちりしてるからだろうよ。俺達はご遺体の意見を尊重する。他の問答無用で成仏させたりとかするチームじゃねぇ。それに…俺目当てでもあるだろうな」

 

心当たりがある情報を出していく。まぁ俺の転生特典…というにはしょぼいっつーか何つーか…でも欲しい人に取っちゃあ喉から手が出るほど欲しいモンだ。

 

「…お前か」

 

レリエルが俺を見つめる…まぁ軽鎧で覆われてるから視線は全く分からんが…俺はファイアースティックを持った手で後頭部を搔きながら、軽く頷く。

 

「依頼人的には確実に連れ帰ってほしいんだろう。なら俺が適任だ」

 

俺の転生特典はその仕様上、死霊術使いや弔い屋の職業と相性がいい。そんなもんだから、結構引っ張りだこなんだよなァ…うちは。

 

俺の転生特典については詳しいことは伝えてない。詳しく聞きたいって?なら、てめぇらの脛の傷出しなって感じだ。まぁ今んところさわりの部分だけで理解してもらえているから大丈夫だな。

 

「ま、依頼人の思惑なんて正直受ける側に影響がなければなんだっていいさ。こっちの相手側の情報は改めて照会するよう頼む。道中…経由する街で照会情報を改めて伝えるから、それまで待ってくれ」

 

「…承知した」

 

「報酬は分配方式。均等に分配する。任意や指定回収品の追加報酬も含めてな。ただ、ご遺体や指定品に含まれないもの…そういうので、拾えたものは発見者のもの。融通は当人同士で相談、必ず仲介者となる三人目を決めること。道中に消費した消耗品や道具はその日の最後に報告。戦闘での消耗品や道具類、武具類の不備は戦闘終わりに報告。状態が酷ければ依頼を中断し、途中で一時拠点に引き返して修理、予備の武具で済ませることが出来ると判断すれば依頼を続行する」

 

「今回は期限指定もない依頼だ。用意できるものや準備は怠らずにやるぞ」

 

「ひとまずの目的地は中継地点のラルハルト。依頼人がいる街だ。そこからご遺体が移動している場合や第三者による遺体の誘拐があった場合はその都度伝えてそちらに移動する。まぁ変わらず、戦地にいるだろうが…突発的な事態なんてこの仕事じゃ当たり前だ」

 

「ん~…伝えたいことは大体伝えたな。これにてブリーフィングは以上だ。最後に質問はあるか?」

 

俺は喋り切って疲れたから、ベルトに備え付けた革袋を掴む。水袋だ。それも水が湧き出る石が入ってる。んぐんぐと水を飲んでいると、セルフィが口を開いた…あい、水飲んでるけどどうぞ。

 

「依頼の内容や報酬も確認した。ただ一点、任意回収指定の事なんだが…」

 

そう言って、任意回収指定のリスト…死者のリストを見ているセルフィ。

 

「ぷはっ、どうした?」

 

熱心に見ているのを、横から俺とレリエルが覗き込む。セルフィが俺のファイアースティックを要求してきたので渡してやると、インクを付けて、一つ一つに印をつけていく。ん…?これ…

 

「気づいたか?兵士や騎士といった人間に対して、魔法職…魔法使いの死者が妙に多い。考えられる可能性は前線が抜かれて後方まで攻め込まれた場合か、前線にいる兵士や騎士が防げないような高度かつ遠距離から範囲魔法、範囲攻撃をされた時だ。しかし、この被害が弓兵といった人間ならまだわかる。だが、魔法使いとなると自衛のための魔法防壁を使えることが戦場に立つ最低限のラインだ。それに、戦場に出るとなれば、真っ先に作るであろう窮生のお守りも所持しているはず…それなのに、これほど魔法使いの死者が多いのはおかしくはないか?」

 

そう、印が付け足されたのは魔法使い。この死者リストは、実際に死んだ人を数えているわけではなく、戦地から帰ってきたときに、居なかった人がリストアップされている。ようは行方不明者リストだ。ただこの世界じゃあ、行方不明=死だから、死者リストとして扱われてるだけ……。

 

だが……

 

セルフィが口を開く。

 

「もしかしたら、もしかしたらの話だが…ご遺体は貫通力の高い魔法で打ち抜かれたのだろう?ただ、貫通力の高い魔法は、その分射程が短い。威力に魔力を消費しているからだ。遠距離からの狙撃となると人一人を打ち抜くのがやっとだろう。しかし、情報によれば、騎士が盾になったという。人が入った金属鎧…盾を持っているなら盾も含めてだが、それを貫通して、ご遺体に穴を開けたとなると、相当な魔法の遣い手だ…もしくは……」

 

「近距離による味方からの不意打ち…だろ?射程の欠点は近距離であるなら解決する。それに魔法使いの死者リストが多いのも納得だ。この中に犯人がいるんだろう。ただ、そうなると俺達みたいな弔い屋によって死んだ人間の追跡がされる。だから、魔法使いの死者を多くすることで、その追跡を逃れようとしている。他の魔法使いは、協力か殺害か…現地に行けばわかるだろうな」

 

言いにくくしていたから、俺が引き継いだ。まぁ味方殺し、それも慕われている人を殺したなんて、この世界じゃあマジのリンチにあって、生きたままバラバラにされて、死んだ後も死霊術使いに弄ばれたりするくらいの重罪だ。口にしたくないのは単純に忌避感からだろう。

 

人の死に冷たいのに、…いやだからこそ仲間や味方への信頼や義理という面はこの世界じゃ重い意味を持つ。なんせ、深い恨みを買えば、その恨みが直接殺しに来る世界だからな。

 

「なるほどな…相手側が情報を出さなかったのも、自分達がやったことではないから知らない。あるいは、裏切り者を庇うための隠蔽というところか」

 

打って変わってレリエルが口を開く。まぁ十中八九そこらへんだろうな。これまた面倒な依頼で…

 

「あぁ~…厄介な依頼を持ち込んで悪いな。今からでも依頼中止の書類は書いて来るが…どうする?」

 

これに関しちゃ俺の責任だ。依頼内容から読み切れなかった。こういう風に、簡単そうな依頼でも裏を読み解けない限りあっさり死ぬなんて普通にある。貴族が関わってんなら、下手こいて貴族パワーでそのまま亡き者にされて終わりなんてザラだ。だからまぁ、依頼主から文句言われたり、ギルドからペナルティもらっても気づいた時点で断るようにしてるし逃げるようにしてる。だからこそ今まで生きてこれた。

 

「いや…言った手前で言うのもなんだが、私はこの依頼を受けてもいいと思っている。最悪の場合、フェルスバー氏だけを回収すればいい。ただ少し時間をもらっていいだろうか?少し面倒だが、奥の手の為の買い物をしてくる」

 

「俺もだイチイ。味方に殺されたとなると、フェルスバー氏の恨みは大きなものとなるだろう。それを晴らしてやらねばあるまい。それが俺の仕事だ」

 

セルフィもレリエルも…なんつーか、人の死に対して関わりすぎるきらいがある。というか弔い屋やってるヤツは大体そうだ。大切な人を失ったから、友を失ったから、子を失ったから、ほかならぬ自分が死んだから。最後のやつは蘇生されたり()()()を作ってもらったやつだな。…そういう死に敏感になることがあって、弔い屋になる。

 

死んだ人間に入れ込み過ぎるのは…正直…な。俺だから言えることだが…。

 

「…おーけー、わかったよ。頼もしい仲間を持てて良かったと心底思ってる。セルフィ、俺も買い物に付き合う。風の魔法陣紙を切らしてたんだ。その補充がしたい」

 

若干うんざりとした顔で返答する。コイツ等は頑固だ。一度決めたことは貫き通す。だから俺が安全マージンを用意してやって心置きなく貫き通してやれるようにする。それが俺の役割だ。

 

キナ臭い依頼だ。出来る準備は入念に…やれることは最大限やる。俺達はそこに時間も金も惜しまない。唯一惜しむのは命だけだ。

 

「わかった、集合はいつにする?」

 

俺は首を回して首や肩のコリをほぐしてやりながら、ギルドに備え付けられた時計を見やる。時刻は朝の8:40を過ぎたところ…

 

「朝にブリーフィングをやってよかったよ…10時半に東門の小広場で…っつーかレリエルもついて来るか?買い物」

 

「…ふむ。付き合おう」

 

「なら、買い物が終わり次第、東門の小広場に行って手続きしてそのまま出発だ」

 

「わかった」

 

「承知」

 

そうして、俺等のキナ臭い弔い旅路が幕を開けた。……どうせ、スッパリ終わるはずねぇんだろうな。




読んでいただきありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。