織斑一夏誘拐事件から数日……
一夏は外見上は何も変わりなく過ごしていた。
……外見上は。
しかしその心の内では、未だ自身が誘拐されたことを考えていた。
「(なんで俺が誘拐されたんだ……俺のせいで千冬姉が……)」
どうして自分が。自分のせいで優勝を逃してしまった。
頭によぎるのは、誘拐されてしまった自分のへの不甲斐なさ。
そして、自分のせいで姉が被害を被ってしまったという憤りである。
自分がもっと強ければ。自分がもっと気を付けていれば。
そんな思いばかり考える日々。
「俺がもっと強ければ……みんなを守れるくらい強ければ……」
元々の性格も、正義感の強いものであったが、この事件を通じて少し変化していった。
もっと強く。千冬姉を、みんなを守れるくらいに強く。
彼の思考に<強さ>と<守る>という二つが強く表出する。
普通の人間ならば、<守る>ということは<強い>ということ。
守るためには強さが必要。という結論になり、自身を鍛えるなりなんなりをしたであろう。
しかし、彼は鈍感であった。意図を曲解して受け取ってしまう悪癖があった。
それは、自身にも適用されてしまった。
<守る>ということは<強い>ということ。
過去、篠ノ之箒を守った。
鳳鈴音を守った。
だから、自分は強いんだ。
自分は友人を守れているから、強いんだ。
そう思った。
思い込んでしまった。
ある種の自己防衛なのかもしれない。
こうして彼は、誘拐された時の恐怖をすっかり忘れ、平和な日常を享受するようになった。
……自身が<守る>ということに囚われてしまったことに、気づくことなく。
side ???
「いや~。ちーちゃんもいっくんがいたら本気出せないかぁ。」
「本当に危険だったらこっちからコアを停止させたけど、まさか偶然鉄骨が落ちてくるなんてね!」
「運がいいなぁ、いっくん!」
「さ~て!ドイツに残ったちーちゃんの姿を保存しなくちゃ!」
「指導しているちーちゃんなんて、滅多に見られないからね~!」
兎は気付かない。
偶然ではなく、必然であったことを。
「マスター!作戦完了したね!」
「おう、よくやったシリウス。」
「コミュ障ウサギにも気づかれてなかったみたいだしな。」
「あの人、自分以外は等しく下等生物だと思ってるからか、自分を超えられることを想定してないしね!」
「ま、それはともかく。あと数年もしたら原作が始まる。」
「それまでに宇宙に出なくちゃな。」
物語は進み続ける。
side 主人公
というわけで、原作開始前の重要なイベントを乗り切ったわけで。
これから我々は宇宙に飛び出していくわけだ。
「といっても、あらかた準備はできてるから、何時でも出ていけるんだけど。」
「しばらく猶予期間があるし、地上で対IS用の武装とかを作っておこうと思います!」
本格的にお披露目するのは、実際に対峙した時ということで!
「あ、宇宙空間での暇つぶし用に地球上の書籍とかの資料を集めておこうかな。」
長時間の航行になるだろうし、その間の時間を持て余すのはちょっとあれだから、可能な限り収集しておこう。
こうしていざ宇宙に行くことが近くなると、いろいろと浮かんでくるなぁ……
「ていうか、超空間ワープ技術を編み出さないと、太陽系を抜ける前に寿命きちゃうな……」
宇宙に出ることばかりに意識が向いてしまって、宇宙に出た後のことがおざなりになっていた。
寿命を超越するか、移動を高速にするかどっちかを実現しないと、中途半端なところで死にそうだ。
「いやー、やることたくさんでウキウキするなぁ!」
とりあえず情報蓄積用の新しいEBコア作ろうか!
地球情報管理用EB <エトワール・ル・イプト>
愛称は<イプト>
2号機であるレクトと対になる名前だ。
レクトは敵を知るために情報を収集するが、イプトは自らを成長させるために情報を収集してもらいたいな。
今回もレクトにデータ収集してもらって、事前インプットしたぞ。
「では、4号機起動!」
「……起動確認。おはよう、ますたー。」
おお、今回はずいぶんとゆったりした感じの声だな。
「うん。おはよう。早速だけど、君に名前を与えよう。」
「正式名称<エトワール・ル・イプト>。愛称は<イプト>だ」
「りょうかい……ぼくはイプト。よろしく……」
「イプトにはこれから地球上にある多くのデータ・書籍などを可能な限り収集してもらいたい。」
「紙媒体の資料も集めてもらいたいから、アームを展開できる小型ドローンも用意する。」
「おっけい……まかせろ……!」
やる気満々みたいだな。
紙媒体閲覧用のドローンは、前回の介入で使用した
ひとまずデータ収集のための準備はできた。
後は時間の問題を解決しなくちゃだな……