プリキュアオールスターズ&仮面ライダー&スーパー戦隊vsクレヨンしんちゃん&ドラえもん  ギガントヒーローヒロイン大戦    作:マスターKU

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第11話 スーパーヒーローヒロイン激突!!(後編)③

 キュアムーンライトにいたってはセーラーマーキュリーとアギトに交えていた。

 先に動いたのは、マーキュリーだった。

 胸の前へ両手を寄せる。その間に青白い輝きが生まれ、小さな泡となって浮かび上がった。

 

マーキュリー「シャボン・スプレー!」

 

 腕を広げた瞬間、無数の泡が弾ける。白い霧が二人の間を覆った。

 ムーンライトは足を止めた。相手の姿が消えたからといって、闇雲には踏み込まない。

 正面から、靴底が地面を擦る音。しかし、その音へ向かって走る事もしなかった。霧の向こうで、マーキュリーが息を潜める。

 

 ――誘いに乗らない。

 

 わざと足音を立て、反対側へ回り込む。その最初の策は、すでに見送られていた。ならば、動かすしかない。

 

マーキュリー「シャイン・アクア・イリュージョン!」

 

 水の輝きが霧を押し分けた。ムーンライトは身を沈め、射線の外へ滑り込む。肩先をかすめた冷気が、背後の地面を白く染めた。回避と接近が、一続きだった。

 マーキュリーが次の構えを取ったときには、ムーンライトはすでに目前にいる。

 

マーキュリー「速い……!」

 

 迫る蹴りを、マーキュリーは両腕で受けた。重い衝撃。身体が横へ流れる。踏み直すより早く、ムーンライトの掌が迫った。

 マーキュリーは自ら後ろへ跳ぶ。掌をかわしきれず、肩に衝撃を受けたが、転がって距離を確保した。膝をついたまま、顔を上げる。

 ムーンライトは追ってきている。考える時間を与えない。遠距離技の構えを取らせない。

 それが、こちらへの答えなのだ。マーキュリーは再び霧を広げた。今度は姿を隠すためだけではなかった。

 近づいてきたムーンライトの周囲で、霧が細く裂ける。その動きを目で追いながら、マーキュリーは横へ跳んだ。蹴りが、先程まで頭のあった場所を通り抜ける。着地したマーキュリーは、すぐには反撃しない。

 もう一度、踏み込みを待つ。ムーンライトの肩が動く。マーキュリーが半歩退く。拳が頬の前を通過した。避けた。

 初めて、相手の一撃を余裕を残して避けられた。ムーンライトの足が止まる。

 

ムーンライト「……動きを見ているのね。」

 

 マーキュリーは答えなかった。息を整える。肩が痛む。腕にも痺れが残っていた。観察を重ねるために払った代償は、小さくない。

 ムーンライトも、それを理解していた。これ以上、同じ攻め方は通用しない。接近の速度を変える。踏み込む角度を変える。相手の視線が追いつく前に、決める必要がある。二人が同時に構え直した。霧の中で、短い攻防が続く。

 水の奔流をムーンライトが躱す。踏み込んできた掌を、マーキュリーが紙一重で外す。どちらも、完全には避けきれなくなっていた。

 ムーンライトの足元に霜が残り、マーキュリーの呼吸が乱れる。それでも互いに、相手から目を離さなかった。

 

     *

 

 ムーンライトが、ついに間合いを開いた。

 

ムーンライト「集まれ、花のパワー! ムーンタクト!」

 

 その手に現れたタクトを、マーキュリーは見つめる。攻撃の性質が変わる。拳でも蹴りでもない。先ほどまで計っていた間合いは、もう安全を意味しなかった。マーキュリーは足を引き、身体を安定させる。

 両手の間に、水の輝きが生まれた。透明な輪郭が重なり、弦を備えたハープの形を結ぶ。指先を添える。震えが、弦へ伝わりそうになった。マーキュリーは息を吐いた。

 目の前の相手も、疲れている。それでも、その構えには隙がない。避けてから撃つのでは、間に合わない。一方、ムーンライトもまた、相手の手元を見ていた。霧による誘導。水の攻撃。こちらの踏み込みを、少しずつ捉えてきた判断力。ここで半端に力を残せば、止められる。タクトを握る指に、力がこもった。

 

ムーンライト「花よ、輝け!」

 

 銀色の花を思わせる光が広がる。その輝きを正面に受けながら、マーキュリーがハープの弦を弾いた。

 

マーキュリー「マーキュリー・アクア・ラプソディー!」

 

 澄んだ音色が響く。水がうねり、青く輝く奔流となって前方へ走った。ほぼ同時に、ムーンライトがタクトを振るう。

 

ムーンライト「プリキュア・シルバーフォルテウェイブ!」

 

 銀の光が放たれた。水と光が、二人の中央で衝突する。空気が震えた。水しぶきが高く舞い上がり、その一滴一滴に銀色の輝きが映り込む。マーキュリーの足が滑った。

 踏み留まる。膝を曲げ、ハープを支える腕を下げない。ムーンライトの長い髪が逆巻く風に煽られた。タクトの先が押し戻される。握り直す。視線を上げる。水煙の向こうに、マーキュリーの姿が見えた。まだ、退いていない。マーキュリーにも、ムーンライトが見えていた。まだ、力を緩めていない。二人は同じ瞬間に悟った。いま攻撃を止めれば、押し切られる。しかし、更に力を注げば――。それでも、指は止まらなかった。マーキュリーが最後の音を奏でる。ムーンライトがタクトを振り抜く。

 衝突点が、白く膨れ上がった。次の瞬間、水と銀光が砕け、行き場を失った力が両側へ噴き返した。

 

ムーンライト「――っ!」

 

マーキュリー「ああっ!」

 

 二人の身体が、それぞれ後方へ弾き飛ばされる。ムーンタクトが地面を打った。水のハープが、形を失って散った。

 

     *

 

 霧が薄れていく。ムーンライトは片手を地面につき、立ち上がろうとした。腕が震える。向こうでは、マーキュリーも膝を起こしかけていた。二人の視線が合う。

 マーキュリーはもう一度構えようとした。しかし、上体を支えていた肘が折れ曲がり、地面へ倒れ込んだ。

 

マーキュリー「まだ……私は……」

 

 指先が地面を掻く。けれど、身体は起き上がらなかった。マーキュリーはその後、光となって消えた。

 ムーンライトも、すぐには立てなかった。片膝をつき、荒い呼吸の合間に、足へ力が戻るのを待つ。やがて、落ちていたムーンタクトへ手を伸ばした。柄を握る。反対の手で膝を押さえ、ゆっくりと立ち上がる。

 そのとき、薄れていく霧の向こうから、足音が聞こえた。

 

 金色の胸部装甲。

 

 黒い身体。

 

 赤い複眼。

 

 仮面ライダーアギトがムーンライトとの方へ進み出た。ムーンライトはタクトを握ったまま、彼を見据える。アギトは両腕を構えた。ムーンライトはタクトを腰の脇へ引き、空いた手を前へ出す。まだ戦える。そう確かめるように、足を踏み直した。

 

     *

 

 ムーンライトの蹴りが、アギトの側頭部へ迫った。アギトは左腕を上げて受ける。衝撃で上体が傾くが、足は踏み留まった。直様右拳を突き出す。ムーンライトは顔を僅かに傾け、その拳を躱した。金色の腕が頬の横を通り抜ける。その内側へ踏み込み、空いた手の掌を胸部へ打ち込んだ。

 

アギト「ぐっ……!」

 

 アギトが一歩退く。だが、ムーンライトが続けて踏み込んだ瞬間、その足が止まった。誘われた。アギトの腰が回る。低い位置から繰り出された蹴りを、ムーンライトは跳躍してかわした。着地と同時に振り向く。

 アギトも既に、こちらへ構え直していた。追撃はない。互いに、相手の次の動きを待っている。ムーンライトは呼吸を整えた。

 攻撃を当てる事はできる。しかし、一撃を受けても崩れず、必ず反撃を返してくる。勢いに任せて連続攻撃を仕掛ければ、その途中へ拳や蹴りを差し込まれる。マーキュリーとの戦いで痺れた腕が、いまの打撃で再び痛んだ。長引けば、踏み込みも鈍る。

 一方のアギトも、両腕の位置を僅かに変えた。ムーンライトは大きく逃げない。拳の外側へ、蹴りの届かない位置へ、最小限の動きでかわし、そこから打ち返してくる。疲れていても、その判断は速い。不用意に踏み込めば、また内側へ入られる。短い静寂の後、二人が動いた。アギトの拳を、ムーンライトが横へ払う。

 返した掌をアギトが前腕で受ける。ムーンライトはその腕を押し、横へ回り込もうとした。アギトが足を踏み替え、その進路へ肩を向ける。ぶつかった二人の身体が、同時に離れた。靴底が地面を擦る。

 ムーンライトは着地した足を引き、アギトは拳を握り直す。どちらも倒れない。

 それでも、最初と同じ動きはできなくなっていた。受けた腕が重い。呼吸の間隔が短い。ムーンライトの視線が、アギトの足元へ落ちる。

 アギトの視線は、彼女の手元を捉えていた。次の一撃で決める。その判断だけは、同じだった。

 

     *

 

 ムーンライトが、間合いを開いた。手にしたムーンタクトを身体の前へ掲げる。指先が柄を握り直し、先端が静かに弧を描いた。その軌跡に、紫色の光が残る。

 光は消えずに重なり、彼女の前で形を結び始めた。向かい合うアギトは追わなかった。両足を開く。膝を落とし、腰を据え、両腕をゆっくりと構えた。

 

アギト「はあぁ……!」

 

 深く、長い息。頭部のクロスホーンが左右へ展開する。金色の角が開き切った瞬間、足元にアギトの紋章が浮かび上がった。地面を照らす光が強まり、その輝きが右足へと集まっていく。ムーンライトは、それを見ていた。

 あの足に受け止められれば、簡単には押し切れない。先程のように、離れた場所から光を撃ち合うだけでは届かない。今度は、自分自身が踏み込む。タクトを持つ腕へ、さらに力を込める。紫の輝きが膨らみ、フォルテッシモを思わせる光の形が鮮明になった。その光が、彼女の全身を包み込む。ムーンライトが片足を引いた。重心を前へ移す。

 タクトの先に向けた視線は、アギトから逸れない。

 

ムーンライト「プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」

 

 地面を蹴った。紫色の閃光が走る。ムーンライトはタクトを前方へ向け、光とともに一直線に突き進んだ。長い髪と衣装の裾が、後方へ激しくなびく。アギトの足元で、紋章の光が収束した。右足が輝く。

 迫り来る紫の光を見据え、深く沈めていた身体を解き放つ。

 

アギト「だああああ!!」

 

 跳躍。空中で左脚を引き、右脚を突き出す。頭から爪先までを一つの軸に揃え、ムーンライトへ向かって蹴り込んだ。

 

 ライダーキック。

 

 紫の閃光と、黄金の蹴撃が激突した。

 

     *

 

 轟音が響いた。アギトの右足と、ムーンライトを覆う光がぶつかり、衝突点から激しい輝きが噴き出す。突進が止まった。

 ムーンライトの腕へ、凄まじい反動が返ってくる。

 

ムーンライト「くっ……!」

 

 タクトを握る手が震えた。前へ進もうとしているのに、身体が押し戻される。紫の光が激しく揺らぎ、視界の中央で、アギトの右足が食い込んでくる。ムーンライトは歯を食いしばった。腕を曲げない。タクトを逸らさない。全身を覆う力を、前へ、さらに前へと押し出す。

 アギトの身体も揺れた。突き出した右脚が、押し返される。

 

アギト「ぐ……ううっ……!」

 

 足先から伝わった衝撃が、膝、腰、胸へと突き抜けた。それでも、脚を引かなかった。引けば、その瞬間に突進を受ける。アギトは右脚へ力を込め続けた。二人の間で、光が膨れ上がる。衝撃波が地面を走り、砂埃を円形に押し広げた。砕けた小石が跳ね、光の中へ消えていく。離れた場所で倒れていたマーキュリーが、重い瞼を持ち上げた。

 紫と黄金の輝きが、視界いっぱいに広がっている。

 ムーンライトの身体が、わずかに前へ出た。アギトが押し返す。次の瞬間には、二人とも動けなくなっていた。互いの力を受け止めたまま、決定的な一撃を通せない。衝突点に集中していた光が、急に細かく震え始めた。

 

 紫と黄金。

 

 二つの輝きが、二人の周囲で幾重にも弾ける。ムーンライトの腕から、感覚が薄れていった。マーキュリーの攻撃を受けた肩が痛む。タクトを握る指が、柄の上でわずかに滑った。

 握り直す。それだけの動作にも、力を振り絞らなければならなかった。アギトの右脚にも、力を込めているのか、反動に耐えているのか分からない程の負荷がかかっていた。

 右膝が震える。全身へ返ってくる衝撃に、胸部の装甲まで軋んだ。それでも二人は、最後まで相手を見据えていた。やがて、拮抗が崩れた。ムーンライトを覆う光が、大きく波打つ。

 アギトの右足に集中していた輝きが、衝突点から激しく漏れ出した。押し戻そうとする力が、互いの身体へ跳ね返る。

 

ムーンライト「っ……!」

 

アギト「ぐあっ……!」

 

 紫の光が砕ける。黄金の輝きが、その内側で炸裂する。ムーンライトはタクトを支えきれなくなった。それでも、前へ伸ばした腕を引くことはできなかった。アギトも、突き出した脚を戻せなかった。限界を超えた力が、二人を包む。

 

ムーンライト「――っ、あああっ!」

 

アギト「うわあああっ!」

 

 一瞬、二人の姿が光の中に浮かび上がった。伸ばされたタクト。突き出された右脚。最後まで攻撃の姿勢を保った、その輪郭ごと――爆発が呑み込んだ。

 

     *

 

 爆風が駆け抜ける。砂埃が晴れていく。そこに、立っている者はいなかった。紫の光も、足元を照らした紋章も消えている。

 けれど、二人の姿はどこにも見つからない。キュアムーンライトと仮面ライダーアギト。二人は互いの必殺技に耐えきれず、マーキュリー同様、爆発とともに消滅した。

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