オペレーターとドクターがイチャイチャしたり、傷ついたりする話   作:古魚

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これ、ドクターの負傷で書いていたけど、よくよく考えれば△より〇かもしれない。
ごめん、より濃い曇らせ系はまた後で書くわ


ドクター △? 前編

「ドクター、無事か?」

 

 ケルシーが扉を開け、中に入って来る。ドクターはベッドから体を起こして迎える。

 

「ああ、見ての通り生きている。無事だ」

 

 いつもの白衣ではなく病人用の簡素な白いパジャマのドクター。弱々しい「無事」の言葉に、ケルシーはベッドに詰め寄る。

 

「何が無事、だ。主治医にまで自身の病状を隠すというのはどうゆうことだ!」

 

 珍しく声を荒げるケルシーに、ドクターは戸惑う。

 

「隠していたわけじゃないんだ、ただ、自分的にはなんとも―――」

「なんともないわけないだろう!」

 

 ケルシーがドクターの肩を掴む。

 

「体温が40度を超え、吐血までしていた。分かっているのか?」

 

 ドクターはここ最近体の不調を感じていた。ぼーっとしたり、頭が回らなかったり。しかし疲労のためだと判断し、眠るだけに留めていた。その結果、今日の昼前、ドクターは廊下にて倒れてしまった。

 

「心配かけて悪かったって……」

「どうして……どうして言ってくれなかったんだ」

 

 ケルシーはボロボロと大粒の涙を零しながら、ドクターの胸倉を掴み揺さぶる。

 

「私は、君の主治医だ……私は、ロドスの医療部の総責任者だ……信用できないのか?」

 

 ドクターはそんな風に泣き崩れるケルシーに、ただ謝ることしかできなかった。

 

「ごめん。君を信用していない訳ではないんだ。ただ本当に、自己管理が甘かった―――」

「約束しろ」

 

 ケルシーは涙を拭い、いつものキリっとした表情に戻す。しかし目元にはまだ涙の後が残っている。

 

「毎日、朝起きた後と寝る前に私のもとへ来てくれ。仕事が終わらず夜遅くまでかかる場合、私の管理が行き届く中で行ってくれ」

「しかし……」

 

 再びがっとドクターの胸倉を掴み、自身の顔を近づけるケルシー。その顔には鬼気迫るものがあった。

 

「返事はハイかイェスだ。拒否するなら、私は君を自室に監禁して生活を管理する」

「は、はい……」

 

 ドクターからの返事を聞いて、ケルシーは胸倉を話す代わりに腕をドクターの背中に回し、優しく包む。

 

「忘れないでくれ、君はこの会社に、私たちに必要なんだ。死なれては、困る」

「……すまない、ありがとう」

 

 ♦

 

 ケルシーが去って数分後、ふたたび病室の扉が開けられた。

 

「ドクター!」

 

 声を聴いて体を起こす前に、ドクターの身体の上にうさぎの少女が覆いかぶさる。

 

「あ、アーミヤ、苦しいよ」

 

 ドクターの首に手を回し、自身の頬をドクターの頬にすり合わせながら、名前を連呼し続ける。

 

「ドクター、ドクター。Dr.―――……」

「アーミヤ……」

 

 長い耳が、ぺしぺしとドクターの顔を叩く。

 

「どうして相談してくれなかったんですか。体調が悪いなら、言ってくれればよかったじゃないですか……この一週間、私を避けていたのは体調が悪いことを隠すためですよね?」

 

 ケルシー以上にぐしゃぐしゃになった顔でドクターの顔を見下ろすアーミヤ。

 その言葉、その表情に、ドクターは押し黙る。

 

「図星、ですね? どうして、ドクターは私を頼ってくれないんですか……そんなに私は頼りないですか? ケルシー先生でもよかったんです。私よりも何倍も頼りになるはずです……どうして、ロドスの誰かを、頼ってくれなかったんですか……」

 

 やや早口でそう迫るアーミヤ。

 

「心配を、かけたくなかったんだ……」

「そうやってため込んだ結果、一体どれだけの人に心配をかけたんですか!」

 

 強い言葉に、ドクターは肩をすくませる。

 

「ごめん」

「許しません。早く元気になってくれないと許しません」

 

 ドクターは自身に抱き着くアーミヤの背中に手を回し、優しく摩る。

 

「分かった、ちゃんと回復するから……君を、頼りにしていない訳じゃないんだ。それは、本当だから」

「その言葉、信じていいんですね?」

「ああ、いつも助かっている。ありがとう、アーミヤ」

 

 ♦

 

「入るぞ、ドクター」

 

 神妙な顔つきをした赤髪の女性が病室へと入って来る。手には保冷バッグをぶら下げている。

 

「ああ、スルトじゃないか」

 

 ドクターは読んでいたレポートを脇に置く。

 

「そんなところに立っていないで、座ったらどうだ?」

「……ああ」

 

 少々躊躇い気味に、スルトはベッドの脇にある椅子へと座る。

 沈黙。日ごろ何もしないでいる状況に敏感で、ドクターが執務を行っている時、秘書として同室にいると「チッ、時間の無駄」などと言って、勝手にどこか行ってしまうこともある。

 だがそれでも、頼んだ業務の処理、精度はとても良好で、定期的にドクターは秘書を頼んでいる。

 

「どうしたんだ? 何か用でもあったんじゃないか?」

 

 だんまりを決め込むスルトに、ドクターは優しく問う。

 

「その……すまなかった」

 

 開口一声が謝罪であることに、ドクターは心底驚いた。悪態をつき、当たりの強いスルトが、自分に対して謝罪をするなんて思ってもいなかった。

 

「えっと、何を謝ってるんだ?」

 

 しかし、ドクターはスルトに何かをされた覚えはない。

 

「……執務室を出て行ってしまったことだ」

「あ、ああ。え、いやそんな謝らなくても……」

 

 ドクターが倒れた時、秘書を行っていたスルト。いつも通り一通り業務を終えると、ドクターの静止を無視して、執務室を出て行ってしまった。ドクターが自分を止めるのは珍しかったため、スルトは、適当にプラプラしたら戻ってやろうと考えていた。

 しかし、いざ部屋に戻るとドクターはいない。呆れながら部屋で待っていると、ドクターが倒れたという話を聞いた。

 

「秘書をやっていたのに、あんたの変化に気づいてやれなかった。引き留めたのに、部屋に残ってやらなかった……」

 

 スルトはそのことに責任を感じていた。

 

「別にスルトが謝る必要はないよ。これは、私の自己管理が甘かったせいだから」

「それでも……秘書っていう立場なのに、あんたに気を使ってやれなかったのは、秘書としては失格だ」

 

 随分な落ち込みように、ドクターはどうしたものかと悩む。

スルトが悪いとは微塵も思っていないが、せっかくスルトが決心してきてくれたのに、反省を一切受け入れないのもどうだろうか、とドクターは考え込む。

 

「スルトは秘書の仕事、あんまり好きじゃなかったか? 仕事ができるから、私はよく頼んでいたが、君は、嫌だったか?」

 

 ふるふると首を振るスルト。

 

「嫌じゃ、ない。むしろ、あんたの側にいるのは、なんか……落ち着けて、むしろ、ちょっと嬉しかった」

「そうか。なら、これからもスルトに秘書を頼む時があると思う。その時は、暇になっても部屋を出て行かないでくれる嬉しいな。私も、出来る限り話し相手になるよう努めるからさ」

「……ああ、分かった」

 

 俯いているため、表情は前髪で隠れて見えない。しかし声はいつもの、ハリのあるスルトの声へと戻っていた。

 スルトは顔を上げると、保冷バックから袋に包まれたアイスを一本取り出し、ドクターへと突き出す。

 

「ん」

「くれるのか?」

 

 頷くスルト。受け取り、袋を開けると中には水色の棒アイスがあった。

 

「ありがとう、大事に頂くよ」

「私は、戻る。あんたのを見ていたら、私も食べたくなってきた」

 

 スルトはそう言って、部屋を飛び出した。

 アイスを食べながら、ドクターは貰った小袋を見つめる。

 

「この商品、見たことないんだよな……それにこのアイスも、いつもスルトが食べているアイスとは全然違う味だし……」

 

 そう考えながらアイスを食べきるドクター。ゴミ箱へそれらを捨てようとするときに気づいた。

 

「……ふふ。治った一週目の秘書は、スルトにしようかな」

 

 アイス棒には《早く元気になれ》と、小さく文字が刻まれていた。

                              【To be continued】

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