オペレーターとドクターがイチャイチャしたり、傷ついたりする話   作:古魚

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アーミヤ3 ×

「ドクター、どこですか……どこにいますか?」

 

 建物やらなにやらが崩れ果てた瓦礫の中、おぼつかない足取りで、アーミヤはドクターを探す。アーミヤが歩いた後ろには、赤黒い血の道が伸びている。

 

「どこに……いるんですか、ドクター。聞こえているなら、返事をしてください!」

 

 表情も苦しそうで、左手で自身の腹部を抑えている。

 

「どうして……どうしてこんなことに」

 

 懸命にドクターを探しながら、アーミヤは自身の一瞬の油断を悔やむ。

 

「あの時、私がちゃんと見ていれば、こんなことには……!」

 

 ドクターの指揮のもと、アーミヤ含めたオペレーター各員は戦闘を行っていた。ほぼ全ての敵が片付いた時、ドクターは私に撤退の指示を出した。

 そのため、持ち場を離れ、ドクターの側へ戻ったアーミヤだったが。まだ残党が残っていたようで、こっそり近づいてきていた敵の自爆で、辺り一帯を吹き飛ばした。ドクターの一番側にいた自分が、その存在に気づけず、こんな状態になってしまったことを、アーミヤは悔いている。

 

「貴方の指揮は完璧だった。これまでも、そして今回も……」

 

 アーミヤはその場にへたり込んでしまう。

 

「でもいつも言っていた、作戦終了まで気を抜いてはいけないと。私もそれを胸に刻み、皆さんにも伝えていた」

 

 何とか動こうと足に力を籠めるが、もはや立ちあがる体力も残っていない。

 

「だというのに私は……! 貴方の側に戻ったことで、安心しきってしまった。自分を呼び戻した以上、もう何も心配はないのだと、油断してしまった!」

 

 ボロボロと涙が地面を濡らす。

 

「アーミヤ、聞こえるか? アーミヤ!」

 

 通信機から、ケルシーの声が聞こえる。

 

「ケルシー先生……」

「アーミヤ、今救助隊が向かっている。そこを動くな、傷が悪化するぞ」

 

 ケルシーの声はいつも通りだが、ほんのりと焦りの音が混じる。

 

「ダメです、ドクターが。ドクターがまだ、私の助けを待っています……探さないと、探して助けてあげないと……」

 

 通信機の先で、ケルシーはグッと拳を握りしめる。

 

「アーミヤ、よく聞け」

 

 絞り出すような、内臓を抉られているかのような苦しそうな声で、ケルシーは告げる。

 

「ドクターは、死んだ」

「何を、言ってるんですか?」

「ドクターのPRTSが、心肺停止を報告した。生命機能が停止したことも……」

 

 アーミヤは頭の中が真っ白になっていった。

 キョロキョロと、あたりを見渡す。自分の目で見なければ、そんなこと信じられないと、アーミヤは「嘘です」を繰り返しながら、這って進む。

 やがて、積み重なった瓦礫の側に、見慣れたフードの裾を見つけた。

 

「ドクター……」

 

 見つけられたという喜びの数秒後、その裾の先を見て、一気に絶望へと変わった。

 裾の先にある瓦礫、その下から飛び散った血痕。そして、瓦礫から少し離れた位置に落ちる腕。

 

「あ、ああ、ああああ!」

 

 アーミヤはその腕を掴み、抱きしめる。

 

「ドクター……ドクター! ドクター!」

 

 自分を撫でてくれた手が、抱擁してくれた腕が、手を差し伸べてくれた腕が、冷たく生臭い臭いを発している。

 

「いたぞ! アーミヤさんだ!」

「今担架が来ますから! おい! 早くもってこい!」

 

 救護隊が到着した。

 

「アーミヤさん、動かないで」

 

 男二人がアーミヤを持ち上げ、担架に寝かせる。

 

「ダメです! まだ、ドクターが、ドクターがあの下に!」

 

 もがき、瓦礫へと手を伸ばすアーミヤ。

 

「行くぞ!」

「おう!」

 

 しかしそれには誰も答えることが出来ない。

 

「ダメ! ドクターが! ドクターがぁ!」

 

 いくら救護班と言えど、死んだ人を治療などできないのだ。

 

 ♦

 

 ドクターが死んで、1週間が経った。ロドスは、まだ少し、雰囲気が暗い。

 

「おはようございます、ケルシー先生」

「おはよう、アーミヤ……大丈夫なのか?」

 

 しかし今日から、治療を終え、アーミヤが仕事に復帰した。

 

「はい、体の調子は悪くないです」

 

 張り付けたような笑顔、ケルシーはそれをすぐに見抜いた。だが何を言うこともできない。無理に何か言っても、アーミヤを傷つけるだけだと考えているからだ。

 

「そうか……無理するな。少なくとも今週1週間は様子を見なくてはならない。業務量を減らそう」

「はい、お気遣いありがとうございます。では」

 

 そう言ってアーミヤは執務室の方へと向かう。

 

「おい、アーミヤ―――」

「ドクターは、もういません。分かってます」

 

 ケルシーの引き留めに、アーミヤは振り向かずに答える。

 

「ドクターの仕事をする時は、執務室で行いたいんです。仕事の振り分けが完了するまでは。ドクターと同じ場所で、仕事がしたいんです」

 

 もはやケルシーに、引き留める術はなかった。

 

 ドクターが死んで2週間が経った。この頃になると、ロドスも通常通りに戻り、日々仕事をこなしていく。ドクターが行っていた仕事の分配も完了し、もしもに備えるということで、ケルシーやアーミヤが不在の際、誰が二人の行っていた仕事をどれだけ肩代わりするのかも決まった。

 

 アーミヤは、まるで廃人のように業務をこなした。栄養剤だけを取り続け、眠る間もなく永遠と業務を行い続ける。それを止めようと、ブレイズやロスモンティス、Wなど、多くのオペレーターが声をかけるが、「仕事をしていないと落ち着かない」と、手を止めることは無かった。

 

 その怒涛の業務のおかげか、ロドスは以前よりもほんのり業績がのみ、ドクターがいない穴を完全に埋めることが出来るまでになった。この頃になると、アーミヤはやつれ、白髪も多く生えて来るほど老けていた。ケルシーが、無理やり麻酔等を使って休ませるに至り、アーミヤへの業務禁止令が言い渡されるほどだった。

 

 

 

 そして、3週間がたったある日。

 

 アーミヤは、目を覚まさなかった。

 

 ケルシーがアーミヤの自室へ出向いた時、アーミヤはベッドの上で、眠るように息絶えていた。机の上には、遺書と空になった強力な睡眠薬。

 

 遺書の中には『ドクターに会いたい』と、それだけが、書かれていた。

 

                        【アーミヤEND3:会いたい】

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