オペレーターとドクターがイチャイチャしたり、傷ついたりする話 作:古魚
※注意!
作者は、9章以降まだちゃんと読んでないので、Wがロドスにいる理由はよく分かってないです。
「ねえ、あんた暇よね」
食堂で朝食を取っているドクターの元へ、Wがやって来た。
「ああ、まあ……」
ドクターの顔はやや困惑する。
「何よ」
「いや……W、君はここ三日間同じ時間に全く同じことを聞きに来ているなと……」
「そのたびに予定があるって言ったのは誰かしら?」
ドクターは現在の仕事、龍門と協力して行う大仕事の一区切りを迎えたため、5日間の休養をケルシーとアーミヤに言い渡されていた。そのため、ドクターとの時間を取ろうとこぞってオペレーターたちがドクターへと迫った。
一日目には、ロドス本艦が龍門近くに停泊していることをこれ幸いに、龍門の面子と梯子酒に向かい、二日目は、酒を抜くのと純粋な休養目的で、ムースやエイヤらと執務室で本を読んだ。
「それで、今日は空いているのかしら?」
「ああ、今日は何も予定が入っていない。動画を撮りたいと言っていたカシャも、急の用事で行ってしまったからな」
それを聞くと、Wはにやりと笑う。
「なら、私の買い物に付き合わせてあげるわ。荷物持ちとしてね」
「……………分かった、同行しよう」
しばらくの長考の後、ドクターは躊躇いながらもそれを承諾した。一回で頷いてくれると思っていなかったWは、拍子抜けたような、疑うような目でドクターを見る。
「いやに聞き訳が良いわね」
「まあな、私が倒れた時も、バレンタインの時も、君を怒らせてしまったからな。少しお詫びも兼ねている」
その言葉を聞いて、Wはボッと顔から湯気が上がり、分かりやすく顔が真っ赤になる。ドクターと視線が合うと、勢いよく振り返り、一歩離れる。
「今日の午前10時、龍門のショッピングセンター前に来なさい! 来なかったら……そうね、今日の夜、貴方のベッドにはサプライズが用意されてるわ」
捨て台詞のようにそれだけ言って、足早にWは去って行った。
「……ベッドを爆破されても困るし、行くとしよう」
呑気にベーコンエッグを食べながら、そうドクターは考えていた。
♦
約束通りの時間に、ドクターはモールの入口に立っていた。
「時間通りね」
そこへ、にやにやしながらWが近づいて来る。
「約束は守るさ」
「そう、いい心意気ね。行きましょう」
Wはドクターの手を取って、モールの中へと入っていく。
最初に訪れたのは、化粧品売り場だった。
真剣な目で、棚に並べられた品を見定めるW。しかし、ドクターはそれらのことに疎いため、一体何を考えているのかがよく分からなかった。
いくつか商品を購入したWは、そのままドクターを連れ、ショッピングを続ける。化粧品、香水、鞄、アクセサリーと、そのどれもがいわゆる見栄えを気にする上で購入する物たちであった。
ドクターの中のWは、傭兵、レユニオンとしてのイメージが強く、おしゃれが好きな女性としての印象は薄かった。時折服を買いに行っていることは知っていたが、それも、必要最低限のものだと思っていた。
そうこうしているうちに時は過ぎて午後1時、一先ず二人は昼食をとることにした。
「……何考えてるのよ?」
適当なカフェで昼食をとった後、二人でゆっくりとコーヒーを飲んでいる。ぼーっとコーヒーの水面を見つめるドクターに、Wはそう尋ねた。
「君は、おしゃれが好きなのか?」
純粋な疑問だった。それに対し、Wは、腹を抱えて笑い出す。
「あんた、頭は良いくせに、本当にバカよね。それとも、女性に疎すぎるって言った方が良いのかしら? まったく、アーミヤが泣くわよ?」
頬杖をついてWは得意げに話す。
「ファッションは女の一番の武器よ? このクソったれな大地に生きる女性の心の拠り所でもあり、見せたくない一面を隠す盾でもあり、意中の相手を手籠めにするための網でもある。私だって、戦闘時以外は気を使うわ。ロドスに所属してからは、流浪の生活をする必要も減ったしね」
「それなら、何故君はおしゃれをするんだ? 正直、今言った三つ全て、君には合っていないように感じたのだが……」
「……あんたは本当、私の神経を逆なでするのが好きね?」
その発言に、ドクターは慌てて謝る。
「す、すまない……」
「……私がおしゃれをする理由は、単に趣味だからよ。人を驚かす以外の唯一の趣味」
カフェを出た二人は、今度は服屋へと入って行った。レディース物が多く並んでおり、ドクターにとっては非常に居心地の悪い空間となっている。
「うーん……これとこれと……ああ、これもいいわね」
あれこれ呟きながら、Wはぽいぽいとドクターが持っている加護に服を投げ入れていく。
「これ、全部買うのか……?」
あまりの量に、ドクターは少々引き気味に聞く。
「そんなわけないでしょ。その中から3~4セットぐらいよ」
「すでに20セットは作れそうなぐらい服があるんだが……」
話している間にも、カゴには次々服が入っていく。
「さ、次は試着よ。こっち」
Wに手を引かれ、ショップの角にある試着室へと向かっていく。いくつもの小部屋が用意されており、カーテンで扉が作られている。
「全部試着するから、どれがいいか選びなさい」
「私が?」
「あんた以外誰が居るのよ」
「しかし服は自分の趣味に―――」
「選べ」
「アッ、ハイ」
ギリっと襟を掴まれたのを理由に、ドクターはしぶしぶWのファッションショーに付き合うことにした。
ベーシックやストリートカジュアルのような、シンプルで気軽な組み合わせから、ガーリーのように少女らしい服装など、多くのジャンルの衣装をWはドクターへ見せつける。
「それは少し肌を出し過ぎじゃないか?」
「肩が出てるじゃないか、風邪をひいてしまうぞ」
しっかりドクターはWの衣装に感想を述べる。しかし、そのどれもがまるで、お父さんからの意見のようなもので、Wは常に不服そうな表情を浮かべる。
「……ねえ、あんた服選ぶ気あるの?」
「もちろんあるぞ、気温に適応しやすく、すれ違う人から危ない視線を向けられないよう防御力のある―――」
「何のために感想聞いてると思ってるのよ!」
そこでWが限界になったらしく、キレ出した。
「私は別にお父さんとしての意見なんて求めてない! あんたから見て似合うか似合わないかを聞いてるの!」
「しかし、そうゆうのはもっとこう、彼氏とか、もっと大切な人から聞いた方が……」
この発言が、Wの地雷を踏みぬいた。
「ッ! もういいわよ!」
Wは試着していた服たちをカゴに戻し、店員に元に戻すよう頼むと店を飛び出していった。
「W!」
慌ててドクターはその背中を追いかける。
「まって、W!」
「追いかけて来るな!」
モール内で二人は追いかけっこを始める。一瞬Wはいつも使っている爆弾のトリガーを取り出したが、流石に躊躇ったのか、いつものサプライズを行いはしなかった。
「まてって!」
「なんで追ってくるのよ! あんたにとって、私はどうでもいいんでしょ!」
「なっ! どうしてそうなる!」
公園のようになっているモールの屋上まで追いかけっこは続いた。
「じゃあ! あんたにとって私は何なのよ!」
Wの声が、誰もいない屋上に響く。
「私は傭兵で、元々あんたらロドスと敵対したレユニオンにいた! あんたのお仲間だって殺した! 紆余曲折経て今はロドスに所属する形にはなっているけど、なんで私を雇ったのよ!?」
「それは、君の実力を見込んで……それに、利害も一致したから―――」
「あんたらロドスに! 私を入れる利なんかこれっぽちしかないじゃない!」
最近よく見た、Wの取り乱した泣き顔に、ドクターは押し黙る。
「以前敵対していて、未だにそれに対して反省の色すら出さない。哀悼の意すら示さないような私が、ロドスに居場所なんてあるわけないでしょ!? ケルシーが言って聞かせて、私に復讐しにこないように我慢してもらっている? 冗談じゃないわよ! 誰がそんなこと頼んだってのよ!」
Wは、自身の服の内ポケから、ロドスオペレーターであることを示し、自身の身分を示すものでもある記章を取り出す。
「こんなもの!」
それを、ビルの上から放り投げんと振りかぶる。慌ててドクターはWの腕へ飛びつき、それを制止する。
「やめるんだW!」
「離しなさいよ! どうせ私に、居場所なんてないのよ!」
自身の言葉で、涙が流れるのを加速させ、Wはへたり込む。
「どうせ……私に居場所なんてどこにもないの……どこにいたって、誰かに憎まれ、疎まれ……私を必要としてくれる人なんて……いないのよ」
ドクターはそんなWの背中をさすり、全てを理解する。
Wのここ最近の言動は、自身がロドスに居場所を見いだせなかったからこそのもの。これまでの彼女からはとても考えられないことだったため、気づくことが出来なかった。確かに、ロドス内にはWを強く敵視する者も多く、疎外感を覚えることも多いだろう。外勤オペレーターであり、ロドス本艦にいる時間が短いのも、それを加速させている。そのため、Wは自分を頼ったのだと。少なくとも自信をロドスに入れることを認め、かつ過去に何らかの関係があった自分を、自身がロドスにいる理由と、いる場所としようとしたのだろう。ドクターは、そう考えた。
「すまない、ようやく、君が求めていたことが分かったよ」
「うるさい、優しくしないで……」
「少なくとも、私は君を必要としている。君は私の過去を知る数少ない人物なんだ、私利的で申し訳ないが、私は君がいなくなると、困る」
なんとか言葉を選び、Wの心を落ち着かせようとドクターは声をかける。
「……それだけ?」
すると、顔を伏せ、自身の足を抱えた状態のWが、そう聞いて来る。食いついてくれたことで、自身の言葉がなんとか効果を発揮したことに喜び、ドクターは続ける。
「君はサルカズ傭兵の長として、それらと渡り合った時の仲介役は非常に助かっている。それに、いざ戦闘となった時も、君の爆発物を駆使した戦いは、後方火力支援として大いに貴重だ。それに―――」
そこからドクターは、Wが役に立っていること、必要だと言うことを永遠と並べた。気づけば、数十分時間が過ぎていた。
「……ロドスという会社に、私が必要なのは分かったわ」
「そうか! ならよかった!」
Wの答えに、一安心したドクターはそう表情を緩めるが、次の一言に、再び緊張が奔る。
「ロドスという会社に私の席があることは分かった、でも、ロドスという人の繋がりの中に、私が入れる場所はあるの?」
「それは……」
ドクターは、少し言葉を考える。だが、誤魔化したり下手なことを言っても、Wが傷つくだけと思い、思い切って言い切ることにした。
「残念ながら、多くのオペレーターは君を怖がっている。関係を築くのは難しいだろう」
「ふん」
Wが鼻で笑う。まるで、「分かっていた」とでも言わんばかりだ。
「でも……でも、私は君を怖がりはしない。君さえよければ、私の良き友人で、仕事仲間でいて欲しい」
Wは、その言葉で笑う。最初は小さく笑い涙を拭う。一息入れると、いつもの不敵で不気味な笑い声を上げる。
「気持ち悪い、まるでプロポーズでもするかのような言い回しで、友達でいてくれ? はん、バカにしてるの?」
その饒舌に、ドクターは苦笑い。
「いつも通り、だな」
「ええ、おかげさまでね。あんたが気持ちわるすぎて、もうどうでもよくなってきたわ」
記章をしまい直したWは、踵を返し、モール店内へと進行方向を変える。
「ねえ、友人として聞くわ」
「何なりと」
「あの服の中で、どれが私に似合った?」
いたずらっぽく、と言うよりも何か企んでいるような笑みで、Wは聞く。
「……あのオフショルダーの服のセットは、君らしくてよかったと思う」
一度、風邪をひくと言って止めたセットだ。だが、ドクターは内心、その服が一番Wに似合うと結論付けていた。
「ふ~ん、えっち」
「なぜ!?」
「まあいいわ。なら、あの服だけ買うわ。その後は、そうね……」
「まだどこか行くのか?」
「ええ、デート中に乙女の期限を損ねた責任は、取ってもらわないと」
Wのからかうような言葉と視線。そんなWの頬は、少しだけ紅潮していた。
【W END:道化師依存症】