オペレーターとドクターがイチャイチャしたり、傷ついたりする話   作:古魚

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アーミヤ2 △

 ドタバタとロドスの医務室が並ぶ廊下に足音が響く。その足音の主は、一つの部屋にたどり着くなり、勢いよく扉を開けた。

 

「アーミヤ!」

 

 ドクターに名前を呼ばれ、ピンと耳を立てて反応するアーミヤ、窓の外へ向けていた視線をドクターの方へ移動する。

 

「ドクター? そんな顔をしてどうしたんですか?」

「どうしたじゃない、君が重傷を負ったって聞いて……」

 

 アーミヤの体には至る所に包帯がまかれ、頬にもガーゼが貼られている。心なしか、顔色も良くない。

 

「えへへ、ちょっと判断を間違えちゃいました。でも、民間人の方は救えたので―――」

 

 そこまで言って、アーミヤは激しく咳き込み。それを抑える手には真っ赤な血液が付着する。

 

「アーミヤ、大丈夫だ、喋らなくていい。今、手を拭いてやる」

 

 腹部への傷が胃まで届き、胃に穴が開いてしまった。そのためアーミヤは今、嘔吐や咳をすると、消化器官に入った血液を吐血する状態になっている。

 

「だ、ダメですよ! オリパシーが!」

「頼む、やらせてくれ。君に任せきってしまった自分の償いをさせてくれ……」

 

 そう言うと、ドクターは濡れたタオルでアーミヤの小さな手を優しく拭う。

 

「ドクターが責任を感じる必要はありません。あの状況で、ドクターが主戦場以外の指揮を取るのは、おかしいですから」

 

 サルカズの暴徒たちからとある町を守る際、大量の主戦力を相手に、ドクターはオペレーターの指揮を取っていた。しかし、非難が間に合っていなかった民間人を守るため、アーミヤと少数の部隊が独立して動いていた。その指揮は現場のアーミヤが取っていたのだ。

 

 混乱する民間人を守りながらの作戦指揮と戦闘をこなさなくてはならなかったアーミヤは、疲労から一瞬だけ判断が鈍り、敵のアーツをもろに食らってしまった。そこから何度も攻撃を受け、今の状態になってしまった。

 

「それでもだ、もっと、やり方があったはずなのに……」

 

 ドクターは吹き終わったタオルを密閉式の入れ物に入れる。

 

「……ドクター、私はロドスのCEOです。ロドスを代表する者の一人です。ですから、民間人の救助を優先する行動を行えたこと、何も後悔はしていません」

 

 アーミヤの強い意志の籠った瞳に、ドクターは「そうか」とだけ呟き、そっとアーミヤの頭を撫でる。

 

「アーミヤは強いな」

 

 その手をアーミヤは両手でつかみ、自身の頬に触れさせる。

 

「私を信じて、ドクターは私に独断行動の許可をくれたんですから、信頼には答えないといけません。嬉しかったんですよ、私に託してくれたこと……本当は、全員健全な状態で合流したかったんですけど……」

 

 アーミヤはその手を放し、薄く微笑む。

 

「負傷者1、になっちゃいました。私も、まだまだですね……」

 

 ため息とともにアーミヤは、枕に頭を預ける。

 

「ごめんなさい、ちょっと、疲れてしまったので、また眠らせて頂きますね」

「ああ、すまない。ゆっくりお休み、仕事は気にしなくていいぞ」

「本当ですか? それじゃあ、お言葉に甘えて、休ませて頂きますね」

 

 薄く微笑む血の気のない顔。布団の中から包帯のまかれた腕がドクターへと延びる。

 

「すみません、手を握って貰ってもいいですか? ちょっと、ドクターの温もりが欲しくて……」

 

 ドクターは何も言わず、その手を優しく、包むように握る。

 

「あぁ、ドクターの手は暖かいですね……まだ、この手に触れることが出来てよかった……」

 

 目を瞑りながら、アーミヤはぽつぽつと話す。

 

「ドクター、私、本音を言うと、少し怖かったんです」

 

 薄っすらと目元に涙が浮かぶ。

 

「体から流れ出る血液を見て、冷えていく体温を感じて、私、死んでしまうのかもって……もう二度とドクターに会えないのかもって……」

「大丈夫、大丈夫だ。私は、ここにいる」

 

 ドクターの言葉にアーミヤは涙を零す。

 

「ありがとうございます、ドクター。生きていて、よかった……」

 

 ドクターが軽く涙を拭ってやると、アーミヤの寝息が聞こえて来た。

 

「アーミヤ……」

「眠ったか?」

 

 扉が開き、ケルシーが病室へと入って来る。

 

「ああ、ケルシーか。どうしたんだ?」

「アーミヤの様態に付いて、詳しく説明しに来た」

 

 ケルシーの表情は険しい。

 

「オリパシーの進行具合には異常を見なかった、しかし、それ以外の、人間としての部分でかなりの損耗を受けている。主に神経に―――」

「簡潔に、頼む」

 

 ケルシーの説明を遮ってドクターは聞く。ケルシーは、目を伏せ、控えめな声で零した。

 

「アーミヤが、これまで通りの生活を送るのは難しい」

「そんなに、なのか」

「ああ、体のいたるところにガタが来ている。戦闘は愚か、事務仕事すら満足に行えるか怪しい。何せ、体を動かすための神経系にダメージが入っている。上手く体を動かせなくなる可能性が高い」

 

 ドクターは眠るアーミヤの頬を撫でながら、ケルシーに聞く。

 

「治療は、出来ないのか?」

「神経系を繋ぎ直すことはできるが、それでも、元通りにはならないだろう。それに、その手術が成功する可能性は限りなく低い。失敗すれば、植物人間状態になる可能性すらある」

 

 病室には、重苦しい雰囲気が流れる。

 

「……すまない、人間は機械じゃない。完全完璧に元の状態へ戻すのは、不可能だ」

 

 その後、アーミヤの体は回復した。幸い、事務仕事を行う程度にまでは復帰した。だが、頻発する右腕の痙攣、車椅子で移動する姿は、完治できていないことを示していた。

 アーミヤは「必ず完全に元の身体に戻して見せます」とリハビリに励んでいるが、医療部が出す診断結果は変わらない。

 

『完治の可能性:0.00%』

                        【アーミヤEND2:0.00%】

 

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