オペレーターとドクターがイチャイチャしたり、傷ついたりする話   作:古魚

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ホルン ×

「各オペレーターは順次撤退! ドクターとの通信が回復次第、指示を仰いで!」

 

 波のように押し寄せて来るダブリン兵たち。手元の端末には、ロンディニウム都市防衛副砲の装填が終わっていることを知らせる、警戒の表示が点滅する。

 

「隊長はどうする気ですか!?」

 

 肉薄してきた兵を自慢の破城矛で蹴散らしながら、バグパイプが叫ぶ。

 

「私はここで、殿を務める。バグパイプ、後退するオペレーターの指揮を!」

 

 盾を構え、自慢のランチャーで榴弾を放つ。一挙に連射した砲弾が敵兵を焼き払うが、それでも続々とタブリン兵は前へ出て来る。

 

「早く!」

 

 ホルンの顔に余裕はない。だからこそ、バグパイプも退くことを躊躇った。

 

「しかしそれじゃあ、隊長が!」

「……全員が撤退を完了するまで、私は倒れません。それよりも、この後のことを考えるべきです」

 

 装填しながらホルンは話す。

 

「ここを放棄すれば、敵兵は民間人がいるキャンプへと一歩近づき、被害が出る可能性が増す。それだけは、絶対に避けなくちゃならない」

「隊長……」

 

 覚悟の決まった横顔に、バグパイプはそれ以上言葉を発することが出来ない。

 

「バグパイプ……フィオナ。ロドスを、ドクターを信じなさい。私たちヴィクトリア軍人の精神を、あの人は分かってくれている……あの人になら、ヴィクトリアの、大陸の運命すら預けてもいい……」

 

 盾を握り直し、ホルンはバグパイプへと笑いかけた。

 

「ドクターの指示を仰ぎなさい。これがテンペスト隊隊長の、最後の命令よ」

 

 ホルンは既に最大にまで装填したランチャーに、さらに五発の外付けマガジンを装備、両足にグッと力を籠める。

 

「障害を全て薙ぎ払うのが、嵐の務め!」

 

 そう叫ぶと、毎秒1発の間隔で榴弾の連射を始める。

 

「行って!」

 

 再び強く催促する。その姿を見て、バグパイプは敬礼を送り、その場を後にした。

 

「……ドクター、後を頼みましたよ」

 

 オーバーヒートしたランチャーを投げ捨て、ホルンは腰から長剣を抜く。

 

「テンペスト特攻隊隊長ホルン、リタ・スカマンドロス! ここを通りたければ、私を越えてみなさい!」

 

 名乗りを上げ、数え切れないほどの敵兵へと向かって行くホルン。

 剣を振るい敵兵を切り裂き、盾で押し込み、ゼロ距離で榴弾を叩きこむ。敵の炎のアーツを盾で受け止めるが、その熱は自身の肌を焦がす。

 端末からは、ロンディニウム都市防衛副砲発射の警報が響く。しかし、構わずホルンは剣を振るう。

 飛翔音。迫る203ミリの砲弾。着弾は、ホルンの足元ドンピシャだった。

 爆風と破片で、ダブリン兵たちも薙ぎ払われる。地面を大きくえぐり、辺りに砂塵が巻き起こった。

 

「……この程度で……倒れる訳がないだろおおおおおおおおおお!」

 

 しかし、ホルンはまだ、立っていた。剣を握りしめ、盾を構え、地面を踏みしめている。

 ホルンの上げる絶叫に近い咆哮は、撤退するバグパイプの耳にも届いていた。

 

「……隊長、死んだら、ダメですよ」

 

 ♦

 

 後退したバグパイプたちはドクターと合流、再度編成を見直した後、急いで現場へと戻って来た。

 

「これは……」

 

 ドクターとバグパイプの前に広がっているのは、大量に積み重なったダブリン兵たち。

 

「これ全部、隊長が一人でやったんだべ……?」

 

 衝撃のあまりバグパイプは田舎訛りで言葉を零す。

 

「あ、あれは!」

 

 誰かがそう叫び、指を指す。その先には、剣と盾を持つホルンの後ろ姿があった。

 

「ホルン!」「隊長!」

 

 ドクターとバグパイプ、テンペスト隊の隊員たちは、その姿を見るなり駆け出す。

 

「よかった、無事だった―――っ!」

 

 しかし、ゆっくりと一同の足は止まる。

 

「……ホルン、隊長?」

 

 ホルンは確かに立っている。しかし、ホルンの足元には真っ赤な血だまり。手に握られた盾は何か所も穴が開き、剣の刃も零れ落ちている。

 ゆっくりと歩み寄るバグパイプ。そっと、ホルンの肩に手を乗せたその瞬間。

 

「ホルン!」

 

 まるで糸が切れたように、ホルンの身体はその場に崩れ落ちる。

 慌ててバグパイプがホルンの身体を支える。

 

「……これは」

 

 開き切った瞳孔、焼けただれた肌、骨が見えている胴体。

 

「もう、とっくに……」

 

 駆けつけた医療オペレーターは、処置をする間もなく、そう告げる。

 

「ホルン……君は!」

 

 膝をつき、泣き崩れるドクターと、テンペスト隊員一同。ホルンの身体を抱きかかえたままバグパイプは、消え入りそうな声で呟いた。

 

「立派です……ホルン隊長」

 

 一人戦い続けたホルンは、ドクター達が駆けつける少し前に、全ての敵を殲滅した。しかし、自身の命を代償とした。

 ホルンは命尽きるその一瞬まで剣を振るい続けた。後から駆け付けて来る隊員たちに、無様な姿を見せたくはなかった。結果ホルンは、全ての敵を片付けた後、その場に直立し、部下へと背中を見せた。まるで、盾を構えて前線に立つ、いつものホルンの様に。

 

「敵兵は?」

「周囲には見当たりません。地面には二か所の大きな弾痕。おそらく、ロンディニウム都市防衛副砲が二発、ここに着弾しています。普通の人なら、まず立っていられません」

 

 オペレーターの一人がそう報告する。その報告だけで、ホルンの壮絶な最期を、想起することが出来た。

 バグパイプは、その場を立ち去る前に、ホルンの剣を地面へと突き立てる。それは、最期まで現場で使命を全うした、戦士の墓石だった。

 

【ホルンEND:バトルフィールドクロス】

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