オペレーターとドクターがイチャイチャしたり、傷ついたりする話   作:古魚

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ケルシー2 ×

 落ち着かない様子で、アーミヤとドクターは無線機から声が聞こえるのを待つ。

 

「もう、20分以上経ちました……」

「大丈夫、ケルシーなら大丈夫なはずだ。それに、エリートオペレーターにも出て貰っている。後は待つしかできない」

 

 現在単独行動中のケルシー。源石の鉱脈付近で、サンプルの接収に向かっていた。しかし20分ほど前に、感染している生物と接触し、戦闘に入ったという報告を受けた。現場は外界からは孤立した山奥であり、「危険な場所だから」とケルシーは誰も連れて行くことはなかったため、援軍がすぐには到達できず、ただ二人は待つしか方法が無かった。

 そうして30分の時が経とうとしていたその時、無線機からノイズが聞こえた。

 

「こちら、ケルシー。ドクター、アーミヤ、聞こえるか?」

 

 無線機から聞こえるケルシーの声に、二人は無線機へと飛びつく。

 

「ケルシー! 無事か!?」

「ケルシー先生! 怪我してないですか!?」

「無線機は都合上音質が悪くなりがちだ。それに鉱脈という電波を狂わせるものも側にある。だというのに二つの声が無線機から聞こえれば、聞き取りづらくもなる」

 

 余裕を見せる様にケルシーは話すが、その声色、息遣いから、二人を騙すまでには至らなかった。

 

「今医療オペレーターを連れた部隊がそちらに向かっている、出来る限り引き返すんだ」

「……それは、できない」

 

 ところどころノイズが入る無線機。

 

「どうして!」

 

 アーミヤが声を荒げるが、落ちつき払った声で、返答が返る。

 

「先の戦闘で負傷した傷に、原石が混入した。というより、感染生物の爪そのものが源石化していたようだ。細かい検査は行えていないが、目に見えてオリパシーの病状が進行している。源石融合率が、ぱっと見40を超えたように思える。足はすでに動かない。パトリオットは融合率60を超えてもあそこまでの強さを発揮したが、どうやら私は、そこまで耐えられなそうだ」

「あきらめるなケルシー! まだ、何か手が……」

 

 ドクターの強い言葉を受け、無線機の先でケルシーは薄く微笑む。

 

「そんな声を出すな。君らしくないぞ」

 

 死が迫っているというのに、ケルシーの声は、いつもとなんら変わりない。アーミヤは、もう何も言えず、ただ膝をついて、涙を流している。

 

「『死』が私の身体にどう働くか、その律はすでに知っているだろう。私が受ける損害に関して心配する必要はない。それよりも、君自身の状態に常に注意を払うべきだ。石棺は極度の抑圧による疲労がもたらした傷は治癒できないのだから。これからは、私ではなく他の医療オペレーターに困りごとを話すと良いだろう。すでに権限は移行しておいた」

 

 苦しそうな呻きと、パキパキと乾いた音が無線に混ざる。

 

「ダメだ、私の主治医君だろう、ケルシー。君がそう言ったんじゃないか。それに、君以上にオリパシーについて研究を進められた学者はどこにいる? 君の経験と知識は、これからもロドスに必要なんだ」

 

 小さく笑うケルシー。喉にも結晶が出来始めたのか、掠れる声で告げる。

 

「私の知識と経験を欲してくれるのは……非常に嬉しい。だが、過去の経験は既になんら参考にする価値もない。あらゆる問題は知識の蓄積ではなく、想像と革新によって解決を見る。君は私よりもこうした特質の利用において優れている。よって、逐一私の意見を問う必要はない。こうした事柄においては、君の見解が私の考えよりも優先される……もう、オリパシー研究は最終段階に来ている。後は君の頭脳さえ健全なら、何も困ることは無い。早ければ後数年で、オリパシーの治療技術が確立するだろう」

 

 「うっ、あぁ」と、ケルシーがはっきり聞こえる声で、呻きを漏らす。その声を聴いたアーミヤは、無線機のマイクへとしがみつく。

 

「ケルシー先生! 嫌です! これまで私は先生に色々なことを教わりました、オリパシーの研究も手伝い続けました。でもそのゴールに、先生がいないのは耐えられません! 死なないでぇ……帰ってきてくださいよ、ケルシー先生!」

「そんな……ことを言うな、アーミヤ。君は十分、大きくなった。もう私がいなくとも、立派なCEOとしてやっていける……」

 

 無線機を握る力もなくなってきたケルシーは、マイクを地面へと落とす。声を届けるために、自分の身体を地べたに倒して、話し続ける。

 

「ドクターの健康管理を、頼むぞ、ほっておくと、平気で徹夜をするからな。自分の健康にも、気を使え。それから、私の部屋は、全て片付けてくれて構わない。必要な物だけ残し、後は燃やしてくれ。医療部は今も人手不足だから、求人を忘れずにな……」

 

 母親のように、優しい声でケルシーは語り掛ける。

 

「守ります! 絶対その通りにしますから、しますからぁ……」

「アーミヤ、ドクター。私は、君たちと過ごせて、本当に幸せだった。研究を最後まで見届けられなかったこと……は、残念だが……」

「ケルシー!」

「ケルシー先生!」

「あ、り……がとう。ロド……ス、は、わた……いなくても……大丈夫だ。これ……で、通信を……お―――――」

 

 無線機の先で、ゴトッと硬い物が地面に落ちる音と共に、無線機から声は聞こえなくなった。アーミヤが何度もマイクに呼びかけるが、反応はない。ドクターは、足腰に力が入らないのか、へなへなと、椅子へと座り込んだ。

 

 

 その後、ケルシーのもとにオペレーターが到着すると、人のような形をした巨大な源石の欠片たちが転がっていた。それらをロドスで検査したところ、僅かに、ケルシーのものと似た体細胞が検出された。

 

 以下、医療部の診断書。

 

『――原石融合率が100.00%を記録し、人間としての機能が崩壊。死亡したものと思われる。』

                      【ケルシーEND2:100.00%】

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