オペレーターとドクターがイチャイチャしたり、傷ついたりする話 作:古魚
夜も更け、多くのオペレーター達もベッドに入るころ、ドクターは自室へと戻っていた。
「ケルシーにしばらく徹夜は禁止と怒られたからなぁ」
この頃執務室に入り浸り、数分の仮眠を取りながら仕事を進めていたドクター。そのため、しばらく私室へと戻っていなかった。
1週間ぶりに自分の部屋の扉を開けると、すでに部屋の電気が付いていた。そして何やら人影も見える。
「……何してる?」
「あ! ドクター! やっと帰って来たね!」
ピコピコと耳を動かし、顔を赤くしながら手をふるフェリーン。エリートオペレーターであるブレイズが、一升瓶を片手に床へ座り、ドクターの部屋で飲んだくれていた。転がる一升瓶は二本、開いていないものが二本、手に持つ空になりかけが一本。
「ブレイズ、どうしてここ―――ふごぉ!」
「まあまあ気にしないでとりあえず飲みなって、ね? まだまだお酒はあるからさ」
ドクターが呆れ気味に口を開いた直後、その口には一升瓶が突っ込まれた。
疲れている頭に、アルコールが染みわたり、ドクターの判断力を奪っていく。
「……ブレイズ、一本くれ」
「お、乗ってきたね」
ドクターの言葉に、ブレイズは嬉しそうに瓶を開け、ドクターへと手渡す。
「ありがとう」
受け取ったドクターは上着を脱ぎ棄て、そのまま一気にラッパ飲みする。
「お~いい飲みっぷり。最近溜まってたんじゃないの?」
「まあな、ボリバルが今度でっかい催しをやるみたいで、そこにロドスも出張して出店を出すみたいなんだ。薬の販売と宣伝も兼ねているみたいでな。そしたらオペレーターたちも個人的に店を出したいと言うから、全部まとめて事務手続きを行っているところだ」
またぐびぐびと酒を飲み、続ける。
「それだけじゃないぞ? 新薬の検証にオリパシーのレポート、訓練メニューの作成に現場にいるオペレーターの指揮……」
ボロボロと出て来る仕事内容に、ブレイズは「うわー……」と憐みの目を向ける。
べらべらと仕事の愚痴を漏らしていたドクターだったが、急に黙り込み、今度は涙を流し始める。
「でもな……私にはこれくらいしかできないんだ。前線ではオペレーターたちが命を張って戦闘を行ってくれている。現地へ赴き調査をしてくれている。過去の記憶がないから、今まで自分が積み上げて来た研究成果もなにも分からない……。私は本当に、ロドスに必要なのか?」
「ドクター……君、そんな風に思ってたんだ?」
「ずっとだ。アーミヤに起こしてもらったあの時からずっと、私はどれだけこの組織の役に立てた? 作戦指揮はアーミヤが、研究ならケルシーが、訓練メニューならドーベルマンが、それこそ戦場に立つなら君がいる……私は―――」
その言葉に、ブレイズは不満げな表情を浮かべ、ドクターの両頬をつねる。
「いったいいつ、誰に君はいらないなんて言われたの? もし本当にそんなことを言っている人がいるなら、チェーンソーで切り刻んできてあげる」
「言われたわけでは無いが……」
「じゃあ! そんなこと言わない!」
ぺし、と軽くドクターの頭を叩くブレイズ。
「確かに、ロドスのオペレーターたちは皆優秀だから、ドクターがいなくても、出来ることは多いかもしれない。実際、ドクターがいなくてもこの会社は動いていたからね」
懐かしむように、空になった瓶を見つめながら話すブレイズ。ドクターは、飲む手を止め、俯いたまま。
「でもさ、それが何? ドクターが来たから変わったことだって一杯あったじゃん。何より、私たちが色んな場面で作戦を効率よく進めたり、他の企業と連携したり、国と交渉することが出来たのは、全部ドクターが手を回してくれたからでしょ?」
ブレイズは四つん這いになりながらドクターへと近づく。
「私は、ドクターの指揮が一番楽しく戦えて好きだよ?」
ぐりぐりと自身の頭をドクターの胸へ押し付ける。
「君のおかげで助かった子も、君のおかげで強くなれた子も、君のおかげで心を開いた子も、いっぱいいるの。だからドクター、自分でそんなこと言わないで。私が好きな君を、たとえ君自身でも、悪く言うのは許せない」
少し離れたブレイズは、まっすぐな眼でそうドクターに告げた。
「……ブレイズ」
「なぁに?」
「ありがとおおおおおおおお!」
ダバダバと涙を流しながら、ドクターはそう感謝を述べる。
「え、ええ……」
「アーミヤには、子供の手前こんなこと言えないし、ケルシーはそもそも話を聞いてくれるかも分からなくて、誰にも言えなくてぇ!」
さすがの勢いにちょっと引き気味のブレイズだったが、これが責任から解放されているドクターなのかと思うと、少し可笑しく思えてきていた
「なははは、ドクターも大変だねぇ。よし、お姉さんがハグしてあげよう!」
酔いが回っていたブレイズは、冗談半分にそう言うと、ブレイズより酔いが回っていたドクターは、迷いなくブレイズの身体へと抱き着いた。
「おっわっと! まさか本当に抱き着いて来るとは……」
照れか酔いか、ブレイズの顔が赤く染まる。しかし突き放すことはない、豊満な胸にドクターの頭を抱え、アーツの力で自身を温める。
「どう? 私の身体、暖かいでしょ?」
「ああ、安心できる……」
「もしまた何かあれば、私でよければ話を聞くからね。ドクターにロドスを出ていかれちゃうのは、私も困るし」
ぐいっとドクターの顔を持ち上げ、頬を両手で挟み込むブレイズ。
「君が私を信じて、私も君を信じる。君が指揮をとって、私が戦う、そーいうこと! 私たちこそロドスのベストコンビだよね! あ、今言ったこと、アーミヤちゃんには内緒だからね? もしアーミヤちゃんが知ったら、嫉妬しちゃうかもよ?」
イタズラっぽく笑い、ブレイズはドクターの鼻へとキスをする。
その行為に、一瞬あっけにとられたドクターだったが、ブレイズが一升瓶を持ち上げ叫ぶものだから、すぐに気にならなくなった。
「さあドクター! 今日は朝まで飲むよ! まだまだお酒もおつまみもあるんだから!」
どさっと、ブレイズは持ってきた鞄を開けると、底には多用の酒とつまみがぎっしり詰まっていた。二人だけの大宴会が始まった。
翌朝、いつまでたっても執務室に来ないドクターを心配して部屋を見に来たアーミヤは、半裸の状態で、酒瓶を抱えながら眠る二人の姿を見つけた。
二人は一か月、減給となった。
【ブレイズEND:二人だけの宴会】