レイブンクロー探偵と魔法事件簿   作:黒雲涼夜

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2025/2/9 一部修正しました


セブルス・スネイプ

 ホグワーツ入学式翌日の朝。大広間では、世にも珍しい光景が広がり教師も含めて注目の的になっていた。それはハッフルパフのテーブルで朝食を摂る4人の人物。だがしかし、彼らが纏うローブの色は全員違っている。

「それで、寮はどんな感じだった?」

緑色のローブを着た少年……スリザリン所属のアルバーン・ラトマイアが尋ねると、初めに赤いローブの少年……グリフィンドール所属のレオナルド・ジョースターが小さく挙手をする。

「グリフィンドールは赤と金ばっかりだ。目には優しくないけど、談話室の暖炉は中々良いもんだぜ」

「へぇ……暖かみがありますね。金じゃなくて緑なら年中クリスマスじゃないですか」

黄色いローブの少女……トモリ・フラメルがパンを齧りながら返すとレオナルドは小さく噴き出し、青いローブの少女……アリス・シードが首を傾げる。こうなっている理由は、そもそもレオナルドが朝食を食べに出てきた3人それぞれに声を掛けた結果集まった。他の寮生が来ても1番波風の立たないハッフルパフテーブルの一角を占拠し、念の為マクゴナガルに許可を取ってこのような形になっているのだ。

「じゃあ、ハッフルパフはどんな感じなの?」

「こっちはまず、樽の扉をリズムに合わせて叩くことで談話室に入ります。……間違えたらビネガーを掛けられますが」

「うへぇ、嫌な仕掛けだな。俺たちグリフィンドールは絵画の太ったオバさんに合言葉言うだけだぜ」

トモリの言う談話室の入り方に、レオナルドはあからさまに嫌そうな顔をした。

「スリザリンも合言葉だね。……レイブンクローは?」

「レイブンクローは謎解き。ビネガー掛けられたりはないけど、出される問題が解けないと一生締め出されるよ」

「へぇ、解けたかい?」

「まだ。昨日は監督生の人がやってくれたし、今日解けなかったらと不安だよ。……それで、ハッフルパフの談話室は?」

アリスがアルバーンの質問に困ったように首を横に振ると、トモリに話題を戻す。

「はい。配色は寮のイメージカラー、という訳でもなく全体的に木造です。家具なども木製でしかも魔法で保存されてるので、新品の木の良い香りがします。それに寮内に植物が飾ってあったりして割と洒落てますね」

「ほう、それは中々に悪く無い。ではレイブンクローはどうだい?」

「こっちは周囲を窓に囲まれて光も取り込みやすくなってるよ。色は全体的に青で、天井に星が描かれてるからテーマは星空だと思う。……あ、あとロウェナ・レイブンクローの像があるよ。綺麗なティアラ被ってるのが」

アリスが記憶を探りながら答えると、トモリは眉を顰める。

「髪飾り……」

「ん……?トモリちゃん、何かあったの?」

「いえ、何も」

「答えられねぇことなら、あんまり漏らすもんじゃねえぞ。どうにも気になっちまうからさ。……じゃあ、スリザリンはどうなんだよ」

レオナルドに水を向けられ、優雅に紅茶(なおミルクティーである、優雅というべきかは議論の余地がありそうだ)を飲んでいたアルバーンは目をぱちくりとさせる。

「スリザリンの寮内には湖の中が見えるガラスが貼られ、様々な生き物が見える。……照明は薄暗く、家具等も暗い色のものが多いから全体的に暗く冷たい印象を受けるな。それはそれでまた良さがあるが」

「ほーん」

「なぜそんなに適当な返事なんだ君は……。君に聞かれたから答えたんじゃないか?」

「いや、ちょっと気になったくらいだしだからなんだって話でもあるしな」

アルバーンが苦笑すると、レオナルドは欠伸をしながら答えた。どうやら、まだまだ眠いらしい。

「……早めに目を覚ましておくことをお勧めしますよ。他は兎も角、魔法薬学は教授が実に厄介と聞いてますから」

「ああ、セブルス・スネイプ教授か。彼はグリフィンドールが嫌いだと聞くが、魔法薬学の腕自体は一流の魔法使いだね。正直、スリザリンだから気負う必要もないし、結構楽しみだな。……君たちはどんな授業が楽しみだい?」

アルバーンに尋ねられた3人は、頭の中に浮かんだ授業を思い返す。

「私は呪文学ですね。担当されてるフィリウス・フリットウィック先生は相棒が尊敬する数少ない教授で……私から見ればですけど、相当強いですね。多分、ダンブルドア校長を除けば最強格でしょう」

「わたしは魔法薬学かな……。薬とかちょっと興味あって」

「俺は闇の魔術に対する防衛術だな。やっぱり戦える呪文は使えるようになりたい」

トモリが挙げたのは呪文学、アリスは魔法薬学、レオナルドが防衛術をそれぞれ選ぶと、アルバーンは納得したように頷いた。

「成程ね……。ボクは変身術だ。ミネルバ・マクゴナガル先生は変身魔法の達人と名高いからね、実に興味がある。……それで、今日の初めの授業はなんだい?ボクはグリフィンドールと合同の呪文学が初めかな」

「俺も呪文学だな。そのフリットウィック先生って人の授業だ」

アルバーンの質問にまずレオナルドが答え、トモリは記憶を探る。

「……ハッフルパフは、レイブンクローと共に魔法薬学ですね」

「う、うん……。わたしも一緒」

トモリの答えにアリスが同意する。

 

「トモリは知っているかもしれないが、魔法薬学の授業は注意しなよ。……先生、中々に難儀な性格の人らしいから」

トモリは、苦々しい表情で頷いた。

 

 地下室に作られたその教室は薬品の独特な香りに彩られ、ホグワーツの他の空間とはまた違った趣を感じさせた。そんな部屋に集められたのは、ハッフルパフとレイブンクローの1年生。グリフィンドールとスリザリンを何故一緒にするのかとは疑問だが、教師の情報を鑑みるに触れない方が良い話だと判断し黙っておくことにした。トモリはシャーロックのように立場を問わず喧嘩を売るような失礼の擬人化とは違うのである。トモリはアリスが座る隣に視線を送るが、アリスは心底楽しみといった様子で目をキラキラと輝かせている。

(……来た)

トモリは、人間の気配に顔を上げる。生徒達の前に立っていたのは、まるで蝙蝠のようなローブに身を包み、黒髪をねめつけた陰湿そうな雰囲気を持つ見るからに不機嫌そうな男。彼こそが魔法薬学の教師、セブルス・スネイプであった。

「諸君。吾輩が受け持つこの授業は、馬鹿のひとつ覚えのように杖を振り回すようなことはせん」

(煽りか入るのウチの探偵と似た匂いを感じますね。余程何かしらを擦らせてますね)

スリザリンを贔屓する、とかグリフィンドールへの敵対心が凄い、という噂はトモリも聞いていたが、レイブンクローやハッフルパフへの対応は未知数であった。

「魔法薬学、この学問においては魔法薬剤の繊細な科学と厳密な芸術を学ぶ」

授業は、スネイプによる演説から始まる。魔法薬学とは何か、というもので、アリスはそれを熱心に羊皮紙へと書き写しているが、その速度は中々に速い。

「さて……トモリ・フラメル。新入生ではハリー・ポッターに次ぐ有名人」

しかしスネイプに名前を呼ばれ、トモリは眉をピクリと動かした。

「なんでしょうか?」

「質問だ。眠りの水薬を調合する際、どのような材料を使用するかね?」

トモリは、少し意外に思った。態々尋ねてきたのだから上級生向けの魔法薬について聞いてくるだろうと予想していたが、1年生から使用する教科書に載っている内容。つまりトモリでなくとも、最低限予習していれば答えられる内容だった。

「はい。材料としてはラベンダー、フロバーワームの粘液、カノコソウの枝です」

トモリとスネイプの視線が一瞬交差するが、すぐにスネイプは視線を外す。

「よろしい。……成程、優秀な探偵助手様にとっては簡単すぎるようだな。ではその隣」

「は、はい……!」

続いてスネイプが指名したのは、トモリの隣に座っているアリスだ。

「忘れ薬の材料を答えよ」

「はい!ええと…………忘却の川の水を2滴、カノコソウの小枝2つ、それと、ヤドリギの実が4つです」

「よろしい、分量まで答えたレイブンクローに2点、ハッフルパフには1点だ……他の者は何をしている?羊皮紙に書き込みたまえ」

スネイプは不機嫌そうな顔を崩さずにトモリとアリスに得点を与えると、ノートを取っていない生徒達に叱咤を飛ばす。生徒達……特にハッフルパフ生が慌てて羊皮紙に情報を記入する姿をトモリは横目で見ながら、自身も素早く羊皮紙に書き込む。

 

「さて、早速だが授業を本格的に始める。……教科書を開きたまえ」

スネイプはそう宣言すると、トモリの不安と裏腹に、至極真っ当な授業が始まった。

 

 「授業はこれにて終了する。次回より本格的に調合を開始するので、予習をしておくように。……トモリ・フラメルのみ残りたまえ」

スネイプがそう宣言し、授業が終わる。今回の授業では第1回ということもあり特別何か調合をする訳でもなく終わった。トモリはスネイプからの呼び出しに納得したように頷くと、周囲の効果の視線を無視してスネイプの元へと歩き出す。

「何か御用ですか?」

トモリが尋ねる。スネイプは無言で頷くも、何も返さない。そして生徒達も教室外で盗み聞きをしようとする生徒やトモリを待つアリスくらいになった頃、スネイプは杖をひと振りすると尋ねた。どうやは、盗み聞きや盗み見を防止する呪文らしい。

「あの男は……シャーロック・レイブンクローは何処まで知っている?」

「知っていることはそう多くありませんし、捜査は難航してますね。……だから私に質問したんですね?ついでにアリスにもしたのは、こちらの交友関係を知っているという意思表示ですか」

「……だとしたら、返答は変わるかね?」

「いいえ?私は貴方の質問に答えました。なら、私も質問する権利があるかと思います。……ホグワーツ関係者で、ここ1年以内でルーマニアに渡った人物は誰ですか?」

「答えると思うかね?」

「それは、私が貴方の左腕にあるものを知っていると分かっていての発言ですか?」

「脅すつもりかね?」

「いいえ。けれど、私が情報を出すなら相応の情報を出してください。……取引ってそう言うものだと思います」

その答えにスネイプはトモリをギラリと睨みつけ、すぐに背を向けた。

「黙秘する。情報も必要ない。…………さあ、話は終わりだ。すぐに次の授業へ行きたまえ」

そう言うとスネイプは奥の研究室へと入ってゆく。それをトモリは、黙って見つめていた。

 

「渡航歴が出ました」

そうシャーロックに告げたのは、ベルトルトという魔法省の職員だ。小太りの中年ながらも、事務仕事では優秀な男である。

「ご苦労」

そう言って履歴が書かれた紙を見る。大量に名前や出身国が書かれたリストの中に、線が20本引かれている。その線を引かれた20人こそが、ホグワーツ関係者であった。

「どうですか?」

そう尋ねたのは、ルーマニアの闇祓い局局長であるアンディ。

「成程ね。……表示された5人のうち、2名が現役教師。3名が現役学生の保護者、残りが元生徒だ」

「教師?」

「ああ、マグル学教授のクィリナス・クィレル。そして、魔法薬学教授のセブルス・スネイプの2人だ。とはいえOBや保護者も油断できない。……犯人を絞るために、更なる情報が必要だ。ルーマニア各地から情報を集めてくれ。奴らがどんな動きをしていたのかを」

「はっ!手配します!!」

シャーロックの指示で、ルーマニアの役人達が一斉に動き始めた。

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