トム・マールヴォロ・リドル。
12月にもなれば、誰もが知る存在になっていた。
そもそも、組み分けの儀式のときから、マグル生まれの生徒たちの間では有名だった。
トム・リドルといえば、大英帝国が誇るヴァイオリンの神童だ。
11歳という若さにも関わらず、国内における主要オーケストラすべてと協演し、次期女王をも魅了する素晴らしい音色を奏でる天才的奏者である。さらに、彼の端整な顔立ちに加え、落ち着いた物腰と丁寧な言葉遣いは多くの女性を夢中にさせるのに十分だった。姉妹や母親が彼のファンになっている者は珍しくなく、マグル生まれの子どもたちは首を伸ばして、本物かどうかよく見ようとした。
なお、帽子が寮の名前を叫ぶまで、それなりの時間を要した。
3分ほど経過し、やっと「スリザリン」と宣言したとき、マグル生まれたちは互いに顔を見合わせたのは言うまでもない。なにせ、マグル生まれの子どもが「スリザリン」に選ばれることは前代未聞。実際、スリザリンの生徒――特に、2年のヴァルブルガ・ブラックは嫌そうな顔を隠そうともしていなかった。
ところがである。
「トム、君が選ばれることは分かっていたよ!!」
アブラクサス・マルフォイが、わざわざ立ち上がって歓迎していたのだ。
マルフォイ家は生粋の純血主義と知られており、アブラクサスも例外ではない。
マグル生まれの者たちの混乱は続く。
翌日の朝食時、トムが大広間に姿を現すと、ヴァルブルガが「隣に座りなさい」と促したのだ。昨晩の嫌悪の表情とは一変し、朗らかな笑顔と共に――しかも、穏やかに会話をしながら、朝食を楽しんでいたのである!
「トム・リドルは、いったい何者なんだ?」
マグル生まれたちは額を寄せて囁き合った。
実際のところ、トムが談話室で蛇語を披露したおかげで、ヴァルブルガを始めとした純血主義の生徒たちから「トムはスリザリンの末裔」だと認められ、態度が緩和したのが真実である。しかし、そのようなことは他寮の生徒たちが知る由もなく、トムも「スリザリンの末裔だとあまり知られたくない」と頼んだこともあり、真実に気づいたのは、教職員席のダンブルドアのみだった。
魔法族出身の生徒たちの間でも、トム・リドルの名前が広まるまで時間はかからなかった。
その最たる理由が、入学して5日目には非公式の決闘サークル「杖十字会」に入会したことだろう。
それも、不動のチャンピオン「アラスター・ムーディ」直々の勧誘だった。寮の垣根を越えた勧誘に驚きが走ったが、それ以上に話題になったのは初っ端から無言呪文を使いこなしていたことだった。杖を使っていないにもかかわらず、トムは完璧に魔法を扱っている。これを目にした多くの生徒が、寮に帰ってすぐに噂をした。
「今年の1年生、トム・リドルは6年生に匹敵する実力の持ち主だ。あれは凄すぎる!」
そこまで優秀なのだから、当然のようにスラグホーン教授主催の「スラグ・クラブ」のメンバーだった。
教授たちを魅了し、スラグ・クラブ出身の著名人たちと関われば、さすがの天才少年も天狗になりそうなものだが、トムの態度は変わらなかった。どこまでも落ち着き払い、誰に対しても謙虚に応じ、常にヴァイオリンと魔法の研鑽に身を捧げる姿には、誰もが感心したものだった。
「トム・リドルは、ホグワーツ開校以来の天才! これは将来が楽しみだ」
と。
しかしながら、天才少年が多くの悩みを抱えていることを知る者は少ない。
※
「……」
夕食の時間だというのに、トムは大広間に姿を現さなかった。
大広間近くの柱の陰に身を潜め、誰かが来るのをじっと待っている。そのうち、大広間から黒髪の少年が飛び出てきた。彼はトムを目に留めると、周囲を気にしながら駆け寄って来る。
「トム! 朗報だぜ。奴は夕食をとったあとだ!」
「本当か!? アルファード!?」
トムは弾んだ声で尋ね返すと、アルファード・ブラックは大きく頷いた。
「ムーディの席はいつも決まってるだろ。いま、そこに別のグリフィンドール生が座ってたんだ。いかに勇猛果敢なグリフィンドール生でも、ムーディより先に座る奴はいない」
「よし! あとは、ドロホフの報告を待つだけだ――ああ、ちょうど良かった」
トムは正面玄関に目を向ける。すると、高い頬骨が特徴の少年が近づいてくるところだった。
「ドロホフ、あいつは日課をこなしてるか?」
トムが尋ねると、アントニン・ドロホフはこくりと頷いた。
「……よくやった! これで、やっと食事ができる!!」
トムはガッツポーズをとると、意気揚々とした様子で大広間へと足を進めた。
そんなトムを見て、アルファードは楽し気に笑った。
「いやー、気軽に夕食をとることができないなんて、有名人は辛いなー」
「アルファード、茶化すな。僕だって、好きでやっているわけじゃないさ」
「ちゃーんと分かってるって。でもさ、なんだかスパイしてるみたいで面白くないか? なぁ、アントニンもそうだろ?」
アルファードが頭の後ろで手を組みながら、明るく声をかける。
だが、ドロホフは難しい顔のまま何も言わない。
トムはそんな彼の表情を一瞥すると、呆れたように息を吐いた。
「僕もドロホフも目をつけられてるんだ。君みたいに他人事じゃない」
入学早々、トムは厄介な上級生に目をつけられた。
上級生の名はアラスター・ムーディ。
強引に「杖十字会」とやらに入らされ、何かにつけて「鍛えてやる!」と連れて行かれる。彼の視界に入ったタイミングで拉致されるのだ。
「あいつのせいで、ヴァイオリンを練習する時間が確保できない。実に不愉快だ」
「えー? トム、ちゃんと練習してるじゃないか! 早く起きてやってるの知ってるぞ」
「仕方なくさ」
ムーディは最悪だ。
実際のところ、ムーディとの間に実力の差はあまりない。トムが杖を使わず、自己流魔法の組み合わせで戦えば、3回に1回は勝利を勝ち取ることができるだろう。しかし、ムーディはそれを許してくれない。
『お前の弱点は杖を使わないところだ。まずは、基本を身につけろ。基礎基本が身についてこそ、正しく機転を利かし、より良く応用することができる!』
ムーディはそう言いながら、嬉々として上級生が習うような魔法を繰り出してくる。杖を使うことを意識しながら、いままで習った呪文を使うのは慣れるものではなく、わずかなラグが生じてしまう。その隙に、敗北してしまうのだ。
そんな調子の決闘訓練を何度も何度も――トムがくたくたになって倒れるほど繰り返される。これはたまったものではない。
せめて、ムーディの興味の対象を自分からドロホフに変えようとしたが、悲しいことにムーディを興奮させるだけだった。
『今年のスリザリン生は見所がある!』
結果、ムーディは目を爛々と輝かせ鍛え上げる新入生が1人増えることになる。
ドロホフは決闘自体は好きらしいが、こちらの都合をあまり考えずに拉致られることに不満を抱いているらしい。
「アルファード、君も奴のお気に入りになればいいんだ。僕とドロホフの苦しみが分かる」
「素敵な御誘いだけど、遠慮しておくよ。俺は決闘には興味がなくてね。俺が興味を持っているのは、クィディ――」
「アルファード!!」
トムは反射的に声を上げた。
「僕が嫌いなことを知っているだろ?」
「いや……嫌いっていうか、君が嫌いなのは、レイブンクローのフーチさんだろ?」
アルファードが指摘してきたが、トムは何も答えない。
そんなトムを見て、アルファードはやれやれと肩を落としながら話し続けた。
「それに、君は箒のセンスもあるじゃないか。昨日の飛行訓練のときは、いい飛びっぷりで褒められたじゃん。運動神経だって悪くないんだしさ、嫌悪することはないだろー?」
「僕は箒に興味はないんだよ」
「それなら、なんでフーチさんに箒に関する質問をしたんだ?」
「……別に、なんでもいいだろ」
トムはそれだけ言うと、大広間に足を踏み入れた。
魔法の世界に足を踏み入れて、まず最初に調べたことは「空の飛び方」だった。
アイリスの夢を叶えるために、単独で飛行する魔法がないか調べたのだが、これは上手くいかなかった。なにしろ、空を飛ぶ魔法なんて存在しないのだ。せいぜい、箒を使って空を飛ぶことくらいである。
それならば、飛行する箒の仕組みを解明しようと考えたのだ。
「……あれは失敗だった」
トムは当時のことを思い出し、苦虫を嚙み潰した顔になった。
クィディッチの競技場に足を向け、学校備品の箒を調べていたところ、レイブンクローの上級生に声をかけられたのだ。
『君、箒に興味があるの?』
上級生はロランダ・フーチと名乗り、自身の箒――「銀の矢」に乗るように促して来た。
トムはすぐに断った。自分は箒の仕組みに興味があるのであって、乗って飛行する必要はない、と。しかしながら、フーチはぐいぐいと距離を詰めてくる。
『物は試しさ。これで飛んでごらん。くるっと一回転すればいい。そうすれば、この箒の素晴らしさが君にも伝わるはずだよ!』
仕方なく、一度だけ乗ってしまったことが間違いだった。既に一度、飛行訓練の授業で箒の乗り方は習っていた。もっとも、10秒浮かんだだけで飛行とは呼べない。だから、これが初めての「飛行」だった。
トムは箒をつかむと、恐る恐る地面を蹴る。すると、ぐんっと視界が高くなった。瞬く間に空高くへと浮上し、勢いよく風を切る。学校備品の箒よりも格段に速く、遥かに心地よい。強風に吹きつけられ、よろけてしまうかと思ったときもあったが、箒は思ったよりもトムの指示を聞き、蛇行せずに飛んでくれた。ぐるり、とクィディッチ競技場を回っていれば、西日に照らされたホグワーツ城が目に入った。自身の右手にそびえる城を眺めていると、心が浮足立ち、頬が緩むのを感じた。
ああ、自分は空を飛ぶことを楽しんでいる。
そう思ったとき、どういうわけか義母の名前を叫んでいた。
『……アイリス!!』
いまでも、どうして叫んでしまったのか分からない。
そもそも叫んでしまったことに、自分でも驚いていた。アイリスに感動を伝えたかったのか、それとも別の理由なのだろうか?
そのうち、この広大な空とホグワーツ城の荘厳な風景を独り占めしたような達成感と仄かに抱いていた郷愁が込み上げてきて、ゆっくりと地上に戻った。
『どうだった?』
『……良かったよ。勉強になった』
トムは箒を返しながら伝える。
アイリスが空に憧れる理由が、初めて理解できた気がした。風を切り、大空を飛ぶ心地よさは悪くない。
ところが、この一件がきっかけで、フーチに付きまとわれるようになる。
『あたしの箒“銀の矢”の理解者ができた! 君、クィディッチを始めなよ! 寮が違う? 構うものか! むしろ、君と戦ってみたい!!』
こうして、トムはホグワーツで最もクィディッチと箒に命を捧げる上級生に追われることになった。
ムーディとフーチ、2人の目を掻い潜り、ようやく――トムの心は落ち着いた。彼らに比べれば、苗字の変更を促してくる純血主義の先輩方や「スラグ・クラブ」の活動など大したことはない。純血主義のマルフォイたちは適当に流していればいいし、「スラグ・クラブ」では笑顔を絶やさず、寮監や会員たちと穏やかに接していれば無事に終わる。
戦闘狂や箒狂と比べれば、ずっとずっと楽だ。
「……?」
トムが黄昏ていると、アルファードの視線を感じた。
「……なんだよ」
「別にー。強いて言えば、君といれば退屈しなそうだと改めて思った。それだけさ」
アルファードはそう言うと、白パンに手を伸ばした。
「ほら、さっさと食べないと夕食の時間が終わるぜ?」
「……言われなくても、分かってるよ」
トムは言い返すと、ポークチョップを皿によそった。ホグワーツの料理は美味しいのだが少し大味なところもあり、アイリスの料理が懐かしく思えた。カレーやコロッケ、ナポリタンが大広間のテーブルに並ぶことはなく、アイリスの創作料理だったことを痛感する。特に、カレーは一度思い出すと、口がカレーの辛さを求めてしまい、しばらく苦しむことがあった。
ただ、トムは他の生徒より優遇されている。
月に一度、ヴァイオリンの練習でロンドンへ帰宅することが許されているからだ。そのたびに、アイリスに食べたいものを強請ることができた。
「アルファードは実家の料理が恋しくなることはないか?」
「ぜんぜーん」
アルファードはきっぱりと言い放った。
「ホグワーツの料理とたいして変わらない。むしろ、こっちの方が美味いかもしれない。それに、嫌いなものは取らなくても怒られないしさー天国だよ」
「……ドロホフは?」
「……」
トムに問われ、ドロホフはスープを飲む手を止めた。少し考えるように瞬きをしていたが、ややあってから頷いた。
「そうだよな……」
トムが肩を落とした、そのときだった。
「ふくろうだ!」
どこかの寮の誰かが叫んだ。
こんな時間に珍しい、と顔を上げると、窓から滑空してきたのは見慣れたモリフクロウ――ウタだった。ウタの姿を目にした瞬間、トムの不貞腐れていた表情が一変する。
「ウタ、こっちだ!」
ウタは彼の手のなかに、分厚い封筒を落とす。宛名に記された名前を見て、トムは弾けるような笑顔を浮かべた。
「ウタ、ご苦労様。アルファード、ドロホフ、ごめん。僕、先に戻る!」
ウタを労うと、トムは談話室へと駆けだした。胃は食事を求めていたが、そんなことよりも早く手紙を読みたい一心で走り続ける。
「……ついに届いた」
トムは自分のベッドに座り込むと、ペーパーナイフで封筒を開けた。
それはフランスからの便り――トムが唯一認めた親友からの手紙だった。祖父母の養子となった影響で、ジョナサンの姓はホワイトからヴェイユに変わっていたが、他は何も変わらない。
フランスでの暮らしぶりやクラリネットが上達したことが、つらつらと書き記されている。イギリスと異なり、フランスでは11歳も初等教育の年齢らしく、近所に住む小さな子たちと一緒に通っているらしい。
「なんだ……思ったより、元気そうじゃないか」
トムは安堵の息を零した。
前回の手紙に「学校の先生から、民族性の違いを理由に意地悪をされる」と書いてあったので心配したが、それについては祖父母が校長に直談判したおかげで解決したようだ。トムは何枚も重ねられた手紙をじっくり読んでいくと、手書きの楽譜が挟まっていることに気づいた。
「『射手座の日』……ああ、新曲だな」
ジョナサンは、こうして自作の曲を送り、意見を聞いてくる。楽譜の一番下に書かれたメモ書きによると、夜空を眺めているときに思いついたらしい。とはいえ、タイトルを決めることにかなり苦心したらしい。「良い感じに決めようとしたけど、ちょっと意味不明になっちゃった」という自虐コメントが寄せられていた。
「……ノクターン調……うん、今回も良い曲じゃないか!」
「へー、本当に良い曲だなー」
唐突に後ろから聞こえた声のせいで、トムは飛び上がりそうになった。慌てて振り返ると、そこにはアルファードとドロホフが立っている。特にアルファードは興味津々な様子で楽譜を後ろから読んでいた。
「凄いなー! 君、海外の作曲家と知り合いなのか?」
「……作曲家じゃないよ。同い年の親友さ」
「ますます凄い! 11歳か12歳ってことだろ?」
アルファードが絶賛するも、トムは複雑な気持ちだった。
「12歳。いまはフランスに住んでいる。作曲と作詞に関しては、僕よりずっと才能がある親友だよ」
「作詞も!? どうやってるんだ?」
「どうもこうも……心の内側にある言葉をペンに乗せるだけ、って言ってたよ」
僕には難しかったけど、という言葉は呑み込む。
作詞に挑戦したことはあったが、どうも自分には向いていない。どうしても「もふもふ」とか「ふわふわ」という擬音語に頼ってしまい、詩に幼さを感じてしまうのだ。かといって、そういった言葉を抜きに考えると、どうしても堅苦しく面白みのないものになってしまう。
その点、ジョナサンは年相応の作詞をするのだから、トムはいつも感心していた。
「とにかく、こいつは凄い奴なんだ」
「でもさ、この――射手座の日? には、歌詞がついてないみたいだね。あ……でも、ここ! 最後のところに『なにか良い詩ができたら、自由に歌詞をつけていいよ』って書いてある」
「……良い詩ができたら、だ。僕は作らない」
少なくとも、トムはやる気にならなかった。ましてや、自分の作った詞をアルファードたちの目に触れさせたくない。そういうつもりで言ったのに、アルファードは変な勘違いをしたらしい。
「だったら、俺たちで作ろうぜ! この曲の作詞!!」
「はぁっ!?」
「楽しそうじゃん!! アントニンもそうだろ!?」
アルファードがずっと黙っている友人に声をかける。
ドロホフはなにも言わない。この少年はほとんど話さないのだ。たまにぼそぼそと話すが、周囲の音にかき消されて聞こえない。話さなくても、意外と表情が豊かなので意志疎通に不自由したことはないが、入学してから一度も声らしい声を耳にしたことはなかった。
ところが、このときは周囲が静かなこともあり、ぼそぼそと呟いた言葉を聞き取ることができた。
「……作詞なんじゃ難すい……」
かなり訛りのある声だった。
それでも、何を言っているのか理解する。
「難しくないさ。ただ、センスに向き不向きはあるけど。作詞っていうのは心のなかで思ってること、そのまま書けばいいんだから」
トムは答えると、ドロホフの目に興味の色が芽生えた。「それだけなのか?」と目で訴えているような気がしたので、トムは大きく頷いた。
「簡単だろ。ただ、僕は恥ずかしいから御免ってだけ。言葉選びのセンスもない。でも、君は違うかもしれない」
トムはそう言うと、近くにあった無地の羊皮紙を渡した。
「とりあえず、興味があるならやってみたらどうだ?」
ドロホフはやや躊躇いながらも、羊皮紙を手に取った。黙りこくったままだったが、目の光は失われず、そのまま自身の机へと向かっていった。
これが魔法界の作詞家――アントニン・ドロホフ誕生へと繋がるのだが、このときは誰も知る由もない。
「にしても、良い曲だな……」
アルファードが「射手座の日」の楽譜を眺めながら呟いた。
「これ、ピアノに編曲してもいい? ピアノなら弾けるからさ。そうだ! 今度、ヴァイオリンとピアノの二重奏しないか?」
「気が向いたらな」
トムは手紙を封筒に仕舞いながら、口元に笑みを浮かべた。
アルファード・ブラックは馬鹿ではない。きっと、親友がマグルだと気づいたはずだ。アルファードは純血主義にそこまで傾倒していないこともあるだろうが、それでも、マグルの親友の才能を褒められたのだ。
(やっぱり、ジョナサンは凄い!)
トムは自分のことのように嬉しくなった。
「僕、ヴァイオリンの練習をしてくるから」
弾む気持ちに突き動かされるように、ヴァイオリンのケースを抱きかかえる。
「消灯までには戻って来いよー」
アルファードの声を背中に聞きながら、トムは今夜も寮を抜け出すのだった。
自分の夢を叶えるために。
フーチ先生は第一次世界大戦従軍疑惑がありますが、一度お忘れてください……。