そして、みんなの愛バになった ウマ娘キタサンブラック伝   作:雅媛

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ストックが切れたので次から更新が遅くなるかもしれません。


Sub-サトノクラウン1 サトノのジンクスと無敗の弥生賞ウマ娘

 サトノ家はウマ娘の家としてはかなり新しい。

 どこまで歴史があれば古いと言えるのかはわからないが、サトノのウマ娘がトゥインクルシリーズに出てきたのはほんの20年ほど前、活躍するウマ娘が出てきたのは10年程度しか経っていない。

 何十年とウマ娘を輩出してきた各名家から比べれば新興といわれるのは間違いない。

 だが、関係者と何よりもウマ娘たちの努力により着々と実力をつけ、GⅠの大舞台ででも活躍できるウマ娘を何人も輩出することができるようになった。

 

 だがそれでもサトノのウマ娘はGⅠを獲れなかった。

 ダートを主戦場として最終的に80戦もしたサトノタイガー

 菊花賞2着に入り、36戦もしたサトノノブレス

 

 惜しかったウマ娘は何人もいる。

 サトノもいつかGⅠで勝つだろうという人もいる。

 だが、サトノはいまだにGⅠで勝てていない。

 何時しかそれはサトノのジンクスなどといわれるようになった。

 

 

 

 そんなジンクスがサトノクラウンに、サトノのウマ娘に重くのしかかる。

 皆出来るだけ気にしないようにしている。しかし、何かの節にそれが顔を覗かせるのだ。

 

「がんばれ!!」

「君ならできる!!」

「きっとGⅠにも勝てるさ!!」

 

 いろいろな場で、関係者はみなウマ娘たちをそう激励する。

 だが、一方で

 

「彼女でもダメなら……」

「でもやはりジンクスは……」

「どうにかならないモノか……」

 

 などとどこかで皆噂する。

 

 彼らも別に貶めたいわけではないのだろう。

 本当に勝ってほしいのだろう。

 だからこそ不安なのだろう。

 

 一際聡かったサトノクラウンは、幼いにもかかわらずそこまで他人の考えがわかってしまった。

 心無い発言に不安になり泣き叫ぶほど幼くなれず

 自分の実力を信じ無邪気に勝利を信じるほど純粋にもなれず

 ただただ、サトノの使命を心に刻み努力する。

 いくら聡いとはいえ幼い彼女ができるのはそれだけであった。

 

 

 

 ジンクスへの対応方法はウマ娘によってさまざまだった。

 サトノダイヤモンドは果て無き努力とジンクスを崩すことに精を出すことで克服しようとしている。

 彼女の才能と努力なら、この重苦しいジンクスも壊すことができるのかもしれない。

 それだけ金剛石の輝きは眩しかった。

 だが、先にクラシックを走るのはサトノクラウンだ。

 後から来るサトノダイヤモンドにすべてを任せるようなことはしたくないし、何よりもこのジンクスを自分で壊し、自分がGⅠを勝ちたかった。

 

 それに、サトノクラウンには、キタサンブラックと戯れるサトノダイヤモンドにわずかながらの嫉妬心があった。

 自分が懸命に努力している中、『彼女(キタサンブラック)と』遊びに行くのはなぜ?

 同じ使命を背負う自分ではなく、『彼女(キタサンブラック)の』話題の方が多いのはなぜ?

 自分のレースではなく、『彼女(キタサンブラック)の』レースの応援に行ったのはなぜ?

 

 単なるくだらない嫉妬だと、サトノクラウンは自覚していた。

 キタサンブラックが悪い子ではないのは十二分に理解している。

 友達としては非常に良い相手だと解っている。

 それでも何かが残り続けているのだ。

 そのどこかに残るトゲが、サトノクラウンを駆り立てた。

 

 そうしてサトノクラウンが考えたジンクスの克服方法は別のジンクスに頼る、ということだ。

 トゥインクルシリーズの歴史は非常に古い。当然ながら様々な積み重ねがあり、様々なジンクスが存在する。そんな中に、これをしたウマ娘がこれに勝つ、というものがいくつも存在する。もちろんその前提条件を満たすのが難しいものばかりなのだが…… だが、より歴史があるジンクスを利用してサトノのジンクスを覆そうと思ったのだ。

 

 サトノクラウンが注目したのは無敗の弥生賞ウマ娘はGⅠで必ず勝利する、というものだった。

 古くはハイセイコーやシンボリルドルフ、最近でもアグネスタキオンなど、弥生賞まで無敗を果たしたどのウマ娘も必ず春のクラシック二冠のうち最低でも一つは勝っている。例外はフジキセキだが、彼女は怪我で春のクラシック二冠に参加していないしその前に朝日杯に勝利しており、GⅠで勝利するというならば間違いない。

 

 もちろん弥生賞に無敗で勝つ、というのは簡単なことではない。

 皐月賞のトライアルのうち一番人気があり格式が高いのがこの弥生賞だ。何せ本番と同じコース、同じ距離で走るレースであり、予行練習としてもばっちりのレースなのだから。

 だが、無策に直接GⅠを狙うよりこちらの方が計画的にサトノクラウンには思えた。

 

 

 

 そしてサトノクラウンは計画を成し遂げた。

 無敗の弥生賞ウマ娘となったのである。

 

 弥生賞まではできるだけ勝ちやすいレースを選んだのは確かである。

 だが当然ながらそれまでのレースだって楽ではなかったし、何より弥生賞は強力なライバルがいた。

 ホープフルステークスの覇者シャイニングレイだ。

 ジュニア期に珍しい中山2000mのこのレースに勝利を収めた彼女が圧倒的に1番人気であり、プレオープンとはいえ同じく前走中山2000mに勝利をしたトーセンバジルが3番人気、サトノクラウンは2番人気であったが前走が東京の1800mであり不安視されていた。

 道中で前に行くシャイニングレイにつられることなく中団でしっかり待機をして脚をため直線ですべて抜き去る。直線で追いすがってきたブライトエンブレムをしっかりと突き放し、ゴール板を先頭で通過した。

 

 完璧な勝利と、自分でも思った。

 

「よっしゃあああああああ!!!!」

 

 思わず雄たけびを上げたのもはしたないがしょうがないぐらいの喜びであった。

 もちろんまだ本番がある。

 だが、皐月賞は負ける気はまるでしなかった。

 

 

 

 

 皐月賞でライバルとなるのは誰がいるか。サトノクラウンは分析する。

 トライアルのスプリングステークスを勝利したのはあのキタサンブラックだ。

 ビデオを見る限り1800mでもスタミナが切れかけていた短距離適性の彼女が2000mを走り切れるとは思えない。前走共同通信杯に勝ち、スプリングステークス2着だったリアルスティールの方が注意するべきだろう。

 もう一つのトライアル若葉ステークスで勝利したレッドソロモンは皐月賞は回避すると聞いている。

 あと気を付けるべきというと朝日杯に勝利しスプリングステークス3着だったダノンプラチナか。だが彼女もまたキタサンブラックと同様2000mに適性があるとは思えない。

 そうすると共同通信杯2着に入ってそこから皐月賞に行くドゥラメンテの方が警戒するべきだろうか。

 

 誰もが油断できる相手ではない。だが、だれもが強すぎるというわけでもない。サトノクラウンは自分が万全の状態で負ける相手とも思えなかった。

 サトノのジンクスを破る。きっとそうすれば……

 その先を彼女も明確に意識はしていなかった。




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小ネタ
・弥生賞のジンクス
 サトノクラウンまでで、弥生賞まで無敗であった馬はすべてGⅠを勝っています。
 ダイシンフブキとフジキセキは朝日杯ですがあとはシンボリルドルフとディープインパクトの他、ウマ娘だとアグネスタキオン、他にもハイセイコー、、キーストンやロングエース、ロジユニバースなどみなダービーの時期までの2冠のどちらかのGⅠに勝っている馬です。
 一応メイタイが上がっているのを掲示板で見ましたが、メイタイが勝っている弥生賞は今の弥生賞とは同名の別物なので(現在の弥生賞が1965年が第一回で、メイタイは1959年ごろ走っていた馬)通常カウントされません。ホープフルステークスとか、同名の別レースがあるということが時々あります。
 ちなみにサトノクラウンの後に無敗の弥生賞馬になったのは翌年のマカヒキです。

サトノクラウン

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