そして、みんなの愛バになった ウマ娘キタサンブラック伝 作:雅媛
「いろんな相手と併走した方がいいと思いますので、友達を併走に誘ってみてください」
「わかりました!!」
ミホノブルボンに併走相手を探すように言われたキタサンブラックは誰にお願いしようか考える。ひとまずルームメイトのサトノダイヤモンドに声をかけることにした。
「ダイヤちゃん」
「何、キタちゃん」
「今日の夕方、坂路の併走してくれない?」
「ごめんね、今日はサトノのお家の方に帰らないといけないの。明日とかダメかな?」
「えっと、トレーナーさんに聞いてみるね!」
朝一番にサトノダイヤモンドに併走の打診をしたが残念ながら今日は無理なようだ。
とはいえ相手候補はまだいる。最初スイープトウショウやコパノリッキーも思いついたが、先輩で実力差があるだろうと思いなおす。できれば同年代の実力がそこまで離れていないウマ娘がいいだろう。
教室に入って友人とあいさつしながら併走相手を探す。
最初サトノクラウンも頭をよぎったが、サトノダイヤモンドがサトノの家のことで呼ばれているとのことなので、同じくダメな可能性がある。そんなことを考えていると、白い帽子をかぶったウマ娘が目に留まった。
「シュヴァルちゃん♪」
「なに? キタサン」
「今日良ければ併走しない? 坂路とかで」
「んー…… トレーナーさんに聞いてみるね」
「わーい」
シュヴァルグランに声をかけたキタサンブラック。入学当初のオリエンテーションで2人組になってから仲良くなったとキタサンブラックは思っているため、何かがあるたびに声をかけている。ちなみにシュヴァルグランはキタサンブラックのことを陽の者のオーラがつらい、溶けそう!! と思っている。だが、陰の者であるシュヴァルグランにはそれを口に出すだけの積極性がなく、毎回流されていた。姉ヴィルシーナに可愛がられ、流されてきたシュヴァルグランに、陽の者からの厚意を無碍にすることはできないのだ。
今回もシュヴァルグランはトレーナーに聞いてみる、としか答えていないにもかかわらず、キタサンブラックはOKしてもらった前提で話を進めているのが容易に感じられる。面倒だし後でトレーナーにダメといわれたと適当にごまかして断るといった方法もシュヴァルグランの頭によぎる。だが、あの太陽のような笑顔のキタサンブラックを曇らせる方がシュヴァルグランにとってつらいので、シュヴァルグランの判断で断るのもしたくなかった。
シュヴァルグランは休み時間の間にトレーナーのところに行って確認をしに行くが、トレーナーがダメって言ってくれないかな、と淡い期待をしていた。だが、トレーナーに確認をとると「黒沼トレーナーのところから坂路トレーニングのやり方を学んでこい」などと肯定的に回答されてしまったため断れなくなる。
結局キタサンブラックと併走をすることになるのであった。
「では、坂路併走を始めます。シュヴァルグランさんのトレーナーからもメニューを確認しており、今日は1本、全力で併走するようにということです。勝負だと思ってください」
「シュヴァルちゃん、負けないからね」
「うん、がんばるよ」
キタサンブラックの陽の気に当てられながらもシュヴァルグランはスタートの心構えをする。
キタサンブラックの実力はクラスメイト故ある程度把握しているが、クラスの中ではかなり下のほうである。クラスの中でも成績がよく、それなりに走れる自分の方が上だとシュヴァルグランは考えていた。なので普段の関係性と関係なくあまり気負いなく構える。
そしてミホノブルボンの掛け声とともに二人はスタートした。
最初から全力で飛ばすキタサンブラックに、ついていこうとするシュヴァルグランだったが…… 予想以上に速かった。
「でりゃあああああ!!!!」
(速い!?)
すごい勢いでかっ飛んでいくキタサンブラックを慌てて追いかける。
キタサンブラックが短距離適性が高いことをシュヴァルグランは思い出した。である以上スピードはそれなりにあるはずなのだ。面食らったシュヴァルグランであったが気を取り直す。短距離適性が高いということはスタミナには不安があるはず。最初からトップスピードで走っては最後まで持たないだろう。併走なので離れすぎないようにしながら、キタサンブラックを追走する。
「そいやっ!! そいやっ!!」
(全然垂れてこない…… というかその掛け声おかしいでしょ)
ペース的に坂路コースの半分も持たないだろう、シュヴァルグランは予想していた。なのでバテたところを差せばいい、そんな準備をしていたのだが…… 半分を過ぎてもキタサンブラックは失速しない。差も徐々に広げられており、このままだと追い抜けないと判断したシュヴァルグランはスパートをかける。だが、二人の間の距離は縮まらない。
焦るシュヴァルグラン。コースの三分の二ぐらいの時点でキタサンブラックが失速し始める。
「ぐぬぬぬぬ!!!」
「ここだああ!!!」
ペースが落ちたキタサンブラックを必死に差すシュヴァルグラン。
坂路コース最後の斜度が緩やかになるところでペースを上げて追い抜こうとするシュヴァルグランにキタサンブラックも追いすがる。
しばらく競り合うことになったが、最終的にはシュヴァルグランが差し切ってゴールした。
「ぜー、ぜー、シュヴァルちゃんはやっぱり速いね」
「はぁ、はぁ……」
「私もまだまだだなぁ……」
息を弾ませるシュヴァルグランは何も答えない。
そもそも陰キャだから、ではない。話す余裕がないのだ。
というよりもあそこまで競り合いをして話す余裕があるキタサンブラックの方がおかしい。最終的に勝ったのはシュヴァルグランだが、実力はほぼ拮抗していたと認めざるを得なかった。
シュヴァルグランはショックを受ける。
一時期は明らかに実力差があったはずだ。
入学後もなかなかトレーナーが決まらなかったキタサンブラックに比べ、自分はちゃんとトレーナーと契約し、努力も重ねてきた。トレーナーだって自分は有名な人に頼んでいるし、相性も悪くない。
差が開くことはあったとしても、縮まる理由はなかったはずだ。
にもかかわらず、今日の併走を見ると明らかに差が縮まっていた。焦らない理由がなかった。
「二人とも、クールダウンもありますのでひとまず移動しましょう」
「はいっ!!」
「……はい……」
帯同のミホノブルボンの後ろを二人は移動し始める。
「キタちゃんはいつもと違ってペースが一定ではなかったですね」
「ダメでしたか?」
「いえ、並んで粘れたのを考えると、ああいう方がキタちゃんにはあっているのかもしれません。今後併走を増やして勝負根性も鍛えましょう」
「わかりました!!」
「明日も併走相手を探してきてください」
「はい!! 明日はダイヤちゃんにお願いしてきます!!」
キタサンブラックの走りを講評するミホノブルボン。
二人の話を聞きながら、シュヴァルグランはいろいろ考えていた。
自分の実力が伸びていないのか。
キタサンブラックの実力の伸びが圧倒的に早いのか。
クラシックではどうするべきか。
そんなことがぐるぐると頭をめぐる。
「シュヴァルさんは後でトレーナーさんからも話を聞いてもらうとして……」
「……」
「シュヴァルさん?」
「は、はいっ!!」
考えすぎてミホノブルボンの講評を聞き逃しそうになり、慌てて我に返る。
ミホノブルボンはいつものポーカーフェイスで話を続ける。
「シュヴァルさんは末脚でも勝負ができると思いますが、基本的には王道の好位をとって抜け出すのがいいように思います。キタちゃんが飛ばしても、ある程度離されずについていった方が楽に勝てたのではないでしょうか」
「……そうですか」
あまりポジションなどを気にせずに走っていたし、トレーナーからもそういった指導はまだ受けていなかった。だが、そういったポジションを考えるだけでもかなり変わるかもしれない。
「とはいえ、シュヴァルさんもキタちゃんと同じくまだ体を作り、基礎を作る時期だと思います。ゲート練習もやっているのでしょう?」
「は、はい」
「スタートも非常に重要ですからゲート練習も大事です。逃げたり、好位を取ったりするのにはスタートも非常に重要ですし、後ろから行くレースの場合もスタートがいいとポジションを確保しやすいですからね」
「なるほど……」
「ブルボンさん、私あまりゲート練習してないけど……」
「キタちゃんはスタート得意なのでもういいです」
何気ないところでも何となく差を見せられた感覚を覚えるシュヴァルグラン。
シュヴァルグランはゲートがあまり得意ではない。
だが、キタサンブラックは今の時点でうまくスタートができるようだ。
今日の併走が仮にゲートからのスタートだったら結果は逆になっていたのかもしれない。
下だと思っていた相手に追いつかれそうだということにシュヴァルグランは今まで覚えたことのない焦燥感に駆られた。
坂路コースをミホノブルボンの講評を聞いたりしながら下まで歩いて降りてくる。
「ではブルボンさん、もう一本行ってきますね」
「はい、ライスさんも併走お願いします」
「まかせてよ!」
「え、キタサン、もう一本行くんですか?」
「いえ、あと二本は行きます」
ブルボンが当然のように話すのをシュヴァルグランは驚く。
シュヴァルグランはこの後、クールダウンをミホノブルボンに習って、その後はトレーナーとゲート練習を少しすれば終わりだ。
だが、キタサンは後2本も走るという。併走相手もあのレコードブレイカー、ライスシャワーという豪華っぷりだ。普段はミホノブルボンともよく併走していると聞く。
「ぼ、ボクももう一本……」
「いえ、シュヴァルさんはシュヴァルさんのメニューがあります。無理はするべきではないでしょう」
「……」
確かに無理をすれば怪我につながりかねない。
だが、こういった差の積み重ねが、キタサンブラックとシュヴァルグランの差を埋めているのだろうということは理解した。そして、差が埋まれば後は離されるだけだ。
かつてない焦燥感を覚えるシュヴァルグラン。
ミホノブルボンはそういったものを全く気付かずにクールダウンを始める。
「さて、クールダウンもしっかりやりますよ」
「は、はい」
「大丈夫です、しっかりやりますから」
その後の地獄のようなストレッチにシュヴァルグランは何度も悲鳴を上げることになるのを、彼女はまだ知らない。
【挿絵表示】
シュヴァち
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・シュヴァルグランの血統
母ハルーワスウィートは条件戦で5勝しかしませんでしたが尻尾がない馬ということで人気がありました。ヴ姉妹の馬主大魔神佐々木もファンの一人で、ハルーワスウィートの産駒はすべて馬主が同じです。
名牝グロリアスソングから続く牝系の良さやその後につけられた種牡馬の良さなどもあり、血統は非常に良いですがインブリードが
Halo 18.75% 3 x 4
Native Dancer 12.50% 4 x 5 x 5
Natalma 12.50% 4 x 4
Almahmoud 9.38% 5 x 5 x 5
Nasrullah 6.25% 5 x 5
とかなり強く、尻尾がないのも血の濃さの副作用の可能性があります。
シュヴァルグランもほかの姉妹もサンデー系をつけてますから
Halo 21.88% 3 x 4 x 5
のインブリードがあり、血統はみな良いと言えるでしょうが血が結構濃いです。
ちなみにハルーワスィートの2020、グランヴィノスの父はキタサンブラックです。同期と母の間にできた妹を見たシュヴァちはどのような感情を抱くのでしょうね。
シュヴァルグラン
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いつも茶色いものしか食べないんだから
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シュヴァちぃ♡
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ぬいぐるみもぐもぐ
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ひとりはおちつ「あ、シュヴァルちゃん!」