そして、みんなの愛バになった ウマ娘キタサンブラック伝   作:雅媛

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Sub-サトノダイヤモンド1 私の大切な親友

 サトノダイヤモンドにとって親友といえるのはキタサンブラックであった。

 仲良くなったきっかけは小学校で同じクラスになったことだ。

 すぐに意気投合し、仲良くなり、よく一緒に遊んでいた。

 トウカイテイオーやメジロマックイーンのレースの観戦にも、二人でよく行った。

 とても仲の良い幼馴染なのは間違いない。

 だから、サトノダイヤモンドとキタサンブラックは親友なのだ、と皆思っているのだろう。

 

 それはサトノダイヤモンドから言わせれば全く違った。

 もちろん仲が良くなければ親友とは言えないだろう。だがそれは前提条件でしかなく、必要条件ではないのだ。

 サトノダイヤモンドはキタサンブラックをライバルと考えていた。もちろん、走りで、である。

 確かに自分の方が恵まれた環境にある。サトノの意地をかけて最高の環境でのトレーニングの提供がされている。豊富な知識を持ったトレーナーさんたちが指導してくれる。多くのサトノの出身者による情報共有なども盛んだ。

 一方キタサンブラックは普通だ。地元のちびっ子向けの練習施設には通っていたようだが一般のウマ娘も多く参加するような普通の施設だ。設備も環境も指導者も自分と比べられない。確かにキタサンブラックもお金持ちのお嬢様だが、ことトゥインクルシリーズに関して、という意味では情報も圧倒的に後れを取っている。

 このような状況ゆえにサトノダイヤモンドがキタサンブラックを自分と同等と見ている、と話すと様々な解釈をする。一番多いのは人格的な釣り合いである。確かにキタサンブラックは自称お助けキタちゃんであり、人助けを呼吸をするかのように行う。10人が10人いい子だと評価する人格者である。そういう点を加味して同等と解釈するのだ。

 

 だが違う。全く違う。

 サトノダイヤモンドがキタサンブラックに勝っている点とは何か。

 サトノから提供される最高の環境? トレセン学園の設備は最先端だ。入学後はその優位はまるでなくなる。

 サトノの最高のトレーナー? トレセン学園のトレーナーこそが最もエリートだ。サトノのトレーナーがそう劣るとは思わないがトレセン学園のトレーナーが劣るはずがない。

 事前に手に入る情報? トレセン学園に入れば情報などいくらでも手に入る。キタサンブラックの社交的で人懐っこい性格を考えれば、最新の情報をより多く、より早く手に入れられるのはキタサンブラックの方だ。

 今までのトレーニング? 確かに入学前の積み重ねはサトノダイヤモンドの方が圧倒的に上だ。だが、ピークもまだまだ遠い時期に、成長を阻害しない程度に行ったトレーニングの積み重ねの差など、微々たるものだ。キタサンブラックが本気で努力を始めれば、そのわずかなリードなど一瞬にして無になるだろう。

 皆が考えるような差などトゥインクルシリーズでの実力という面で見れば全く意味がない。

 

 キタサンブラックの真価は諦めないことと、レースに対する真摯さだ。

 あれほど最後まであきらめないウマ娘をサトノダイヤモンドは見たことがない。あれほどゴールするまで一生懸命走るウマ娘をサトノダイヤモンドは見たことがない。

 負けても負けても、どれだけ実力差があっても、ふてくされることもなく、あきらめることもなく、レースを楽しみ、一生懸命走る。

 まさにウマ娘の走りたいという欲望の具現化みたいなウマ娘だ。

 キタサンブラックと今までレースをして、サトノダイヤモンドは負けたことがない。今レースしても負けることはない。そう、過去はすべてサトノダイヤモンドの勝利だ。負ける可能性もない圧勝だ。

 だが、キタサンブラックと走るのは素晴らしく楽しいとともに底知れないほど怖かった。結果が見えない。全く諦めない。勝とうとする意志が尽きない。ゴールするまでいつ抜かれるのか、怖くてしょうがない。振り向いたら追いつかれるのではないか、振り向いたせいで追いつかれるのではないか、そんな強迫観念を毎回覚えていた。サトノクラウンを相手にしたって、全国ちびっ子レースの決勝でだって、そんな感覚を覚えたことはなかった。

 いつ追いつかれるか。トゥインクルシリーズで追いつかれないとなぜ言えるのか。サトノダイヤモンドにとって一番の脅威がキタサンブラックであった。

 

 キタサンブラックが選んだのは黒沼トレーナーだった。坂路の第一人者にしてハードトレーニングで有名なトレーナーだ。ミホノブルボンをはじめとしたウマ娘を育て、トレーナーの育成でも有名なあの人なら、キタサンブラックの実力を十二分に引き出すだろう。

 それが感じられたのが先日の併走であった。

 

「ダイヤちゃん。今日は併走できる?」

「大丈夫だよ。トレーナーさんにも昨日のうちに確認してるし」

「わーい、ダイヤちゃんと併走だ♪」

 

 無邪気に喜ぶキタサンブラックに対し、サトノダイヤモンドは重い気持ちを抱えていた。もちろん嬉しくないわけではない。だが同時に、彼女がどれだけ速くなっているかが怖かった。

 

 

 

 行われた併走は坂路コース1本1000mであった。

 

「でりゃああああ!!!」

 

 キタサンブラックをサポートしているミホノブルボンの掛け声で走り出したサトノダイヤモンドは、キタサンブラックが前に出たのにまず驚いた。逃げだ。伸び伸びと走る走るキタサンブラックを見て、サトノダイヤモンドは追走する。

 

「負けないよ、キタちゃん」

 

 競いに行くのはあまり良策ではない。キタサンブラックは自分が走りやすいように走っており、それに合わせるのは不利だ。自分なりの速さで走って、ある程度のところで差す。恐らく途中で失速するだろうことも計算するとこれで勝てると思った。

 だが、計算違いがあった。

 

「どっせい! どっせい!!」

「垂れない? あとその掛け声なにぃ!!!」

 

 変な掛け声で坂路を上っていくキタサンブラック。あまり失速しているようにも思えないし、このまま失速を待っていては出遅れる。変な掛け声に気が抜ける思いがしながらも、サトノダイヤモンドはスパートをかける。

 現状まだ実力差的に十分差すことができる。キタサンブラックを追い抜いたサトノダイヤモンドはそのまま坂路のゴール地点を通過した。

 

「いやぁ、やっぱりダイヤちゃんは速いね」

「キタちゃんも前より速くなってたよ」

 

 サトノダイヤモンドの内心は驚きでいっぱいだった。

 今まで短距離が得意で長い距離を走るのが苦手だったキタサンブラックが、坂路コースを走り切ったのだ。余裕があるわけではないが、歩いたり自分に話せるほどの余力は残して、だ。

 

 さらに驚いたのはこの後だ。

 クールダウンとして坂路のスタート地点に戻り、さて講評だという段階になり、キタサンブラックが移動を始めたのだ。

 

「では2本目、行ってきますね」

「え、キタちゃん!?」

「サトノダイヤモンドさんの講評は私がやりますから大丈夫ですよ。ライスさん、キタちゃんのこと頼みました」

「まかされたよ」

 

 当然のようにキタサンブラックは2本目に向かった。

 

「あの、キタちゃんそんなに走って大丈夫なんですか?」

「普段から1日3本走ってますし大丈夫ですよ。今日も3本走る予定です」

 

 一日3本の坂路トレーニングと聞いてサトノダイヤモンドは驚いた。

 あれだけ必死に競って1本走ったのに、さらに追加で2本走るつもりのようだ。普通なら2本でも厳しいといわれる坂路トレーニングを毎日3本なんて、地獄のようなハードトレーニングである。しかも今の話を聞くに、併走相手は友人でなければミホノブルボンかライスシャワーが務めているようだ。

 超一流のウマ娘を併走相手とするハードトレーニング。サトノでのトレーニングですら用意できない環境である。

 

 キタサンブラックの足音が背後で聞こえるような錯覚をする。いや、もしかしたらもう抜かれているかもしれない。

 だが、サトノダイヤモンドはキタサンブラックの親友(ライバル)である。

 だからこそ、負けてられない。ひとまず黒沼トレーナーの坂路調教のノウハウを全部手に入れようと、サトノダイヤモンドは積極的に質問をするのであった。





【挿絵表示】
サトノダイヤモンド

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小ネタ
・サトイモのグラタン
 グラタンドゥフィノアというフレンチのジャガイモグラタンがありますが、これをサトイモで作ってもおいしかったりします。
 牛乳と生クリームでサトイモを煮込み、軽く火が通ったらサトイモは取り出して牛乳を煮詰めます。
 グラタン皿にサトイモを並べて、煮詰めた牛乳ソースをかけて、とろけるチーズをかけて、オーブンで焼けば完成です。
 なお、サトノダイヤモンドとは全く関係ありません。

親友

  • 友達以上仲間でライバル
  • キタサト
  • ウオスカ
  • きのこの山とたけのこの里
  • 強敵と書いて親友と読む
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