31人クラスでクラス転移が起きたが30人しか転移出来ない模様   作:匿名P

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地上はキケンがいっぱい

 

 「それじゃ地上に送ってあげるね」

 

 お兄さんは笑うと指を鳴らした。次の瞬間、体が浮いた感覚にあい驚いて目を閉じた。目を開けるとお兄さんと初めて会った場所にいた。

 

 

 「これでいいんですか?」

 

 「うん。これで天界の問題は解決できた」

 

 「でも問題は残ってる感じしましたけど……」

 

 「いいの」

 

 お兄さんの刺すような視線に固まる。なんでそんなに触れてほしくないんだろう。

 解決なんてしてないのに。

 

 

 「君は地上に行って快適な生活を過ごしてくれ」

 

 「……本当にいいんですか?」

 

 「さっきから言ってるだろう?もう解決したんだ。後のことは僕が片付けるから」

 

 「分かりました……」

 

 「じゃあ、お疲れ様」

 

 納得は出来ない。けど、ここで質問を続けても意味が無い。

 俺は女神との約束を守る。地上で何が起こってるのか、この目で確かめる。

 

 

 「行ってらっしゃい」

 

 「え、そんな急に」

 

 考え事をしていたらお兄さんが赤いボタンをどこからともなく取り出してポチっと押した。

 体が上に吹き飛ばされる。毎度急!!

 こっちの事も少しは考えろォー!!

 

 

 「さてと、あの子のステータス元に戻しておくか」

 

 お兄さんは懐からスマホのようなものを取り出し操作する。

 シンのステータス画面を開き、リセットしようとしたが操作が効かない。

 

 

 「はぁーん。女神の奴、最後まで足掻きやがった」

 

 「まぁいいや。邪魔するなら僕が行けばいいか」

 

 お兄さんはスマホをしまうと空間からフェードアウトした。

 誰もいなくなった空間は崩壊し消滅した。

 

 

 ――――――――――

 

 

 「ガルルル」

 

 「もう起きる時間?早いって、もう少し寝させて」

 

 「グルルル」

 

 「しつこいなぁ。まだ寝るって言ってるじゃん」

 

 気持ちよく寝てたのに。誰だよ異世界でも起こしてくる奴は。

 こんなに寝心地の良い布団で寝たの久しぶりだなぁ。

 温かくてフサフサ。時々ドクドクって音が聞こえる。

 ん?音が聞こえんのおかしくないか?それに布団がフサフサってなんだ?

 俺は目を開けて起き上がってみた。

 

 

 「ん?地面低くない?」

 

 「グルルル」

 

 「あ、どうも。お世話になってます」

 

 「ガルルル!!!」

 

 「……逃げろォォォ!!!!!!!」

 

 俺が布団だと思っていたのは獰猛な獣の上だった。ライオンみたいなバケモノの上でぐっすり寝てたのか俺。

 怖ぁー1歩間違えばガブっといかれてた。だが、今はそんなことを考えてる場合じゃない。

 突然の逃走中。バケモノに追われている。捕まったら……考えるのはよそう。

 ていうか!なんでバケモノの上にいるんだよ!!

 適当に飛ばしすぎだろ!!バケモノの上は危険って教科書に書いてあっただろォ!!!!!!

 

 

 「ハァ……ハァ……」

 

 「ガルルル!!!!!」

 

 やばい。そんな走ってないのに体力が。運動は帰宅部の天敵だ。

 何も食べてないのに吐き気してきた。どれくらい距離あるんだろう。

 気になって後ろを振り返ってみる。

 

 

 「おいおいおい。冗談だろ。ガブって丸のみかよ」

 

 振り返るとバケモノが口を開けていた。俺の体なんて余裕で入るサイズだ。

 噛まれて真っ二つも嫌だけど、丸のみも嫌だなぁ。

 動け俺の足!!!!!!

 止まってみな、死ぬぞ!!!!!!

 

 

 「いやぁぁぁ!!!翼消えたぁぁ!!!」

 

 バケモノが首を最大限に伸ばしてガチンと噛む音が聞こえた。

 後ろを振り返ると翼が消えていた。あの翼、気に入らなかったからいいか。

 体には何も無かったと安堵したのも束の間だった。

 

 

 「え?口開けるの早くなぁい?」

 

 もう口を開けていた。次いかれるのは確実に体だ。

 なんとか距離を取ろうと足を必死に動かすのだが、足が言う事を聞かない。

 違う。足は動いてる。必死に動かしても遅すぎるんだ。

 

 

 「あ、魔法使えばいいじゃん」

 

 「突風(ガスト)

 

 魔法によってバケモノの体が風によって吹き飛ばされる。

 風はバケモノだけでなく周りの木々を薙ぎ倒していった。

 余裕が無くて高威力になってしまった。環境活動家に怒られるだろうな。

 

 

 「やり過ぎたぁーてか、ここどこ?」

 

 「森か?バケモノに追われるわ。森に飛ばされるわ」

 

 「色々起こりすぎだよ!!」

 

 「おい!こっちにいるぞ!」

 

 「捕まえろ!」

 

 「そうそうこうやって魔人を襲う人間もいるんだよね。いやぁ自然って怖い」

 

 俺は木が薙ぎ倒されて見晴らしが良くなった先を見てみると魔人を人間が襲っている。

 袋に魔人を詰めてどこかに運んでいる。いやぁ本当に色々起きる。

 ん?誘拐って自然に起きるっけ?

 起きないよね。やるか。

 

 

 「いや!」

 

 「お前らは奴隷なんだよ!自由に生きる権利なんてねぇ!」

 

 「はいはい。失礼しますね」

 

 「なんだてめぇ!!」

 

 俺は魔人の女性の腕を掴んでいる人間の男の腕を掴み離させる。

 男が俺に気を取られてる隙に魔人の女性は逃げた。

 

 

 「お前のせいで取り逃したじゃねぇか!」

 

 「知るか。魔人を捕まえなきゃいいだけの話だ」

 

 「なんだとてめぇ!やんのか!」

 

 「うわ!唾飛んだ!バッチィ!」

 

 「ぶっ殺してや、グハッ!!」

 

 「初対面で唾飛ばすとかバッチィだろうが!!」

 

 男が言い終わる前に、顔面にアッパーをお見舞いしてやった。

 男は地面に寝転がって動かなくなった。気絶してるだけだな。

 この男以外にも魔人を攫ってる奴はいた。周りにはいないな。

 もういなくなったのか。

 

 

 「あの女の人はどこ行ったんだろ」

 

 「あのーすいませーん!」

 

 「いないか。逃げちゃったかな」

 

 呼びかけても返事が無く、辺りを見渡しても人影は見えない。

 出来ることなら、こいつらに攫われた人たちも助けてあげたいんだけど。

 誰もいないと何も分からないや。

 

 

 「あのぉ……」

 

 「あ、いた」

 

 「呼びましたか……?」

 

 「はい。あやうくピンポンダッシュするところでした」

 

 近くの木の陰から魔人の女性が現れた。

 こちらに近づく気は無いようで木の陰から話しかけてきている。

 人間を信用していないのだろう。さっきは攫われそうになったんだ、仕方ないことだ。

 

 

 「?

 何の用でしょうか?」

 

 「あなたの仲間の人たちがどこに連れていかれたかとか分かりますか?」

 

 「なんでそんな事を?」

 

 「いや、まぁ、助けたいなぁと思いまして」

 

 女性が真剣な眼差しで見てくるので俺はたじろいで頭を掻く。

 女性は俺の言葉を聞くと目を伏せて黙った。二人の間にしばらくの沈黙が訪れる。

 沈黙を破ったのは女性の方だった。

 

 

 「お願いします!弟を、みんなを助けて下さい!」

 

 女性は木の陰から出てきて俺の前までやってくると頭を下げた。

 覚悟を決めた目を見て俺も背筋が自然と伸びる。

 

 

 「どこに連れていかれたか、分かりますか?」

 

 「多分、南東にある山賊のアジトに連れていかれたと思います」

 

 「道分かりますか?」

 

 「私たちも以前近くに住んでいたので分かります」

 

 「ナビお願いします。一人だと絶対に迷うので」

 

 「分かりました。ついて来てください」

 

 女性にナビをお願いして、俺たちはアジトに向けて出発した。

 一刻も早く到着して、助けてあげたい。

 

 

 「距離はどれくらいですか?」

 

 「だいたい200㎞くらいだと思います」

 

 「…………………………」

 

 「どうかしました?」

 

 「にひゃく?」

 

 「はい。それくらいはあるかと」

 

 「にひゃくを歩きで?」

 

 「はい」

 

 「…………………………」

 

 オワッタ。200㎞徒歩は聞いたことが無い。今聞いたわ。

 200㎞徒歩は途方もない時間がかかる。ん?なんか言ったか?

 徒歩じゃない方法、何か無いかな。一刻を争う事態なのに。

 何か無いかと辺りを見渡す。すると、先ほど逃走中を繰り広げたバケモノがいた。

 あ、そうだ。捕まえればいいんだ。テイムってのが魔導書に書いてあった。

 俺は気絶しているバケモノの近づく。

 

 

 「従属(テイム)

 

 魔法を唱えるとバケモノの首に紋様が現れた。

 あとは起きてくれればいいんだけど。

 起こすために顔をつついてみたりしてみた。

 

 

 「ガウ!」

 

 「あぁぁぁ!あぶねぇ!いきなり噛みつくなよ!」

 

 起きたと思ったら、顔を触ってる手に噛みつこうとしてきた。

 こんなのに噛まれたら無くなるから。

 バケモノは起きると前までの狂暴性が嘘のように大人しくなった。

 なんなら人懐っこい。顔を俺にすりすりしてくる。

 なんか可愛いな。名前つけてあげようか。

 どうしようかな。ストレートにバケモノでいいかな。

 

 

 「ゴンザにしよう」

 

 「ガウ!」

 

 元気良さそうにゴンザが返事をする。

 ゴンザは大きいから二人乗れる、それに足も速い。

 徒歩で行くよりずっと早く着く。はずだ。

 

 

 「あのぉ、一体何を?」

 

 「乗ってください。これで行きましょう」

 

 「え?」

 

 「さぁ早く」

 

 「いや、え?」

 

 「大丈夫ですよ」

 

 俺は女性に手を差し伸べる。女性は恐る恐る手を掴んだ。

 女性が手を掴んだ瞬間、俺は思いっきり引っ張ってゴンザに乗せる。

 

 

 「レッツゴー!」

 

 「ガウ!」

 

 合図をするとゴンザは走り出した。

 これで楽に辿り着けるな。

 ちょっと待て、早すぎる!!!

 

 

 「ゴンザ!スピード落として!!」

 

 「いやぁぁぁ!!」

 

 「うぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 ゴンザは俺の声を聞くと逆にスピードを上げた。

 ダメだ。言葉が通じてない。嬉しくなっちゃってるんだ。

 これはマズい。非常にマズい。いつ振り落とされるか。

 俺は必死にゴンザに捕まった。

 落ちて迷子だけはいやだぁぁぁ!!!

 

 

 「ようやく……スピード落とした」

 

 「……疲れました」

 

 「ガウ!」

 

 機嫌が良さそうなゴンザとは対照的に俺たちはグッタリしていた。

 ジェットコースター何回も乗った気分だ。何回も乗ったことないけど。

 

 

 「すいません……ナビお願いしてもいいですか?」

 

 「はい……分かりました」

 

 「ゴンザ、ゆっくり進んで」

 

 ゴンザは本当にゆっくり歩き始めた。言葉通じてる。

 なんでさっきあんなに猛スピードで進んだんだ。

 それに突っ込む気すら無いや。

 

 

 「あの……お名前伺いしても?僕の名前は……シンです」

 

 「私は……メズです」

 

 「あ……お願いします」

 

 「はい……こちらこそ」

 

 俺たちはテンションがどん底で再出発した。一名を除いて。

 地上も地上で楽じゃねぇな。ていうか現実が楽じゃねぇ。

 ゴンザの背中でそんな事を思った。

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