ゲゲゲの謎 龍の花嫁ルート(旧題:龍の花嫁)   作:負犬惜志夢

5 / 10
上手くいくかな...


夕の話 薄暮

「水木君、君は幽霊を信じるかね?」

 

──────────────────────

 

幽霊とは死者がこの世に姿を現すものを指す。一般的には妖怪という括りに入れられ古くから恐れられている。

 

『この患者の心臓は止まっているのに生きている患者がいるという噂がある。』

 

水木は社長の言葉を思い出していた。

それは、噂の幽霊になった患者について、いかに生気の失われていた肌であり、ぎょろっと目が浮き出ていたり、手足に肉がなくほとんど枯れ木のような容貌だったという話、ではなかった。

 

『かつて裏の業界で一世を風靡した「M」のような薬が使われたのかもしれない。』

 

血清剤「M」。

この薬を打ったものは不老不死になれるという噂があるそうだ。

かつてこの薬を精製を独占していた会社が急な倒産をしたきり、「M」の話は忘れられていった。

 

その患者がいるという噂の病院に俺は行くことになった。

 

聞けば随分と田舎の方らしい。

 

「というわけで、一週間ほど家にはいないがその間の事を頼めるか。」

 

俺は出張の件を沙代に話していた。

 

「・・・。」

 

「まぁ、母さんにも伝えてあるからそこまで不安がることはないとは思う。」

 

出張で家を空けることも何度かあったし、そんなに心配はしていない。

 

「水木さん。」

 

「ん?」

 

「おかわりは、いりませんか?」

 

「ん、ぁあ、もらおうか。」

 

「先ほどと同じくらいで問題ないですか?」

 

「ああ、大丈夫、だ。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

いま、話をそらされた、か?

と、思ったのもつかの間。

 

「はい、どうぞ。」

 

いつもと変わりない笑顔を浮かべながら、米をよそった茶碗を渡してきた。

 

「ありがとう。」

 

仕事の話はよく分からないのかもしれない。

すこし、気をつける必要があるな。

 

そんなことを考えながら、白米を流し込んだ。

 

───────────────────────────────

 

明日のため、早めに寝床についた。

そのため、自分の部屋以外のところにはまだ家事をやっている沙代がいるので家の明かりが仄かに障子から部屋に差し込んでくる。

その明かりも消え、夜の闇が部屋を覆いほとんど周りが見えなくなった。

 

俺が寝ていることを気遣ってか、足音を小さくして廊下を歩く音が耳に響いて。

 

音が止まった。

 

「!」

 

ス スーっ

障子の開く音がした。

 

「・・・。」

 

水木は今障子の方向と反対に身体を向けているため、背後に沙代がいること以外の情報がない。

しかし本来ならば、水木にとってそんなことは大したことではないはずであった。

狸寝入りをする必要なんてなく、起きて彼女の話を聞いてあげるくらいの甲斐性は彼にはあった。

それができない。なぜか。

正直、これといって納得できるものがない。

沙代自身少ししたたかな少女であり、今回のような悪戯をしてきたことは何度かあった。

時々年さながらのあどけなさを出す彼女に愛おしさを感じられるのだが。

 

なにか、いつもと違う。

 

「水木さん、起きてますか。」

 

その違和感は彼女のささやきにより増した。

 

水木は寝たふりを続ける。

 

「・・・。」

 

ごそ、ごそ

 

「!」

 

寝ていると判断したか。

沙代は、俺の背にピタリと体を寄せてきた。

 

水木のうなじが彼女の息で撫でられる感触。

自分とは違う個体と感じさせる温かみ。

背に当てられた手指、鼓膜を揺らす衣擦れ。

 

目を開けて居ても、いなくても変わらない暗闇の中で確かな少女の存在に水木は惑わされていた。

 

すー、すー

すー すー

 

水井の呼吸と沙代の息遣い。

胸郭の拡張と収縮を感じる。

 

「ん、んぅ」

 

悩ましい声がきこえる。

 

すー、すー

はぁ すぅ、ふぅぅ、んんっ

 

彼女の荒くなっていく呼吸と

背に触れていた手が

 

「は っんん!」

 

自分の口抑え始めたあたりで初めて

彼女が自分を慰めていることが分かった。

 

すー、すー。

はあ はぁ はあ、はぁ・・・

 

荒い呼吸が静まったと思いきや次に瞬間。

 

「スー、スゥ、んすぅっ」

 

思い切り、吸って

 

んん、んんん!んぅ、ぁ、ふぁ゛、んぁ、あ、 ん゛っんん

 

布団から伝わる振動で痙攣しているのを感じた。達したようだ。

 

「ふぅ、ふー。」

 

背中に額が触れる。

呼吸を整えているようだ。

 

「はあ、はぁ、みず、き、さん。」

 

名前を呼ばれた。

 

「はぁ 、はぁ わた、し は、あなたを 、っ・・・」

 

───────ここで、こと切れたようだ。

消え入るような声だった。

 

─────────────────────────────────

 

朝、目が覚めた。

私に布団が掛けられていた。

夜あんなに求めていたあの大きな背中はなかった。まるで、夢のように。

私は、布団にほとんど残っていない彼の匂いを嗅いで。

 

「嘘つき。」

 

と吐き捨てた。




そろそろR-18タグ必要かな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。