ゲゲゲの謎 龍の花嫁ルート(旧題:龍の花嫁) 作:負犬惜志夢
「ようこそ、遠い所からお越しくださいました。」
「こちらこそ、本日はよろしくお願いします。」
水木は件の村に訪れていた。
「何にもない所ですが、何かございましたらおしゃってください。」
「ありがとうございます。」
先方が自嘲したように、大変申し上げにくいのだが、この村は大きな山と森に囲まれている。
お世辞にも贅沢を言えるような環境に置かれていない。
「さて、長い電車の旅でお疲れでしょうが、さっそく件の患者との面会を手配します。」
「お気遣いに痛み入ります。」
そこからその病院の看護師がきた。
「水木様、遠路はるばるようこそおいでくださいました。それでは、患者の元へ案内させていただきます。」
「よろしくお願いします。」
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この病院について触れておこう。
この病院は随分古くからあり、俺が住んでいる場所ではめったに見られない木造のたてものである。
ぎし、ぎし
木でできた廊下を通る。そのたびに響く木が軋る音が酷く不気味である。
その上、今回の患者は
『幽霊のような患者がいる。』
『噂では心臓が止まっているのに生きている。』
噂は噂だ。馬鹿馬鹿しい。
そう思うだろうか。
俺はどうにも噂と片付けるだけの心の持ちようがなかった。
しかもその真偽を確かめるため俺はこうしてわざわざ訪れたという。
人は自分の想像したものに支配される。
たとえ、それがはたから見たら非現実的に思えても。
その患者にはその噂を信じさせるだけのものがあるのか。
「こちらです。」
それとも
がらがら
看護師は引き戸を開けた。
「失礼します。」
その患者は幽霊になったのか。
俺は顔をあげた。
「ぁあ゛ア」
部屋に入った瞬間に声が身体をこわばらせた。
部屋の主のうめき声だった。
「っ。」
俺は、絶句した。
「すでに、御存知かもしれませんが。」
看護師が俺に声をかけた。
「こちらの方は、心臓が止まっており、脈も、体温もなく、食事もとりません。」
青白い額、浮き出たあばら骨、棒のような手足。
おおよそ、人のようには思えない容貌であった。
病院のものでもそのこの世のものではない姿に恐れ逃げるほどの物であった。
のだが。
「...。」
「水木様?」
水木は黙ってしまった。
しかし、様子を伺うにそれは恐れからくる沈黙ではなく。
「ちがう。」
「はい?」
「この患者は人間だ。」
水木は沈黙を破り、口にした。
水木はこの状況に立ち会ったことがあるように感じていた。
先ほどまで彼は困惑していたのだ。
「看護師さん、このお方の担当になったのはいつ頃ですか?」
「一月ほど前でしょうか...。」
「この患者は入院してからずっとこの状態だったのですか?」
「いえ、姿はあまり変わりありませんでしたが、話すことはできていたかと存じます。」
どうやら、病院側は何も特殊なことをやっていないようだ。
「何故担当が変更したかを聞いてもいいですか?」
そうすると、少し難しい顔をしたが意を決して水木と向き合い。
「前の担当がこの病院を辞めました。それで私が担当することになりました。」
と、告げた。
水木は確信めいたものを感じた。
(もしかすると、その看護師が関係しているかも知れない。)
「分かりました、よろしければその看護師と連絡が取りたいのですができますか?」
「申し訳ありません、私はその方と連絡が取れません。ですが、院長ならあるいは。」
「ご協力感謝します。では、そう訊ねてみます。」
俺は駆け出した。
心臓が止まっていて、脈もなく、体温もなく、食事もとらない。でも、生きている。
それはまるで、不死身のような。
『不死身になれる薬が関係しているかも知れない』
「まさか、な」
脳裏に一抹の不安を抱えながら、向かった。
この話は墓場鬼太郎を大幅に改変しました。
多分重要です。
物語がいい所まで進めて嬉しいです。